モーレツ営業マン村田・修行の日々

 

<小説:モーレツ営業マン村田・修行の日々> 投稿者:K2 (8月13日(月)21時38分30秒)

 私の名前は村田といいます。20代後半の頃、自分を試し、鍛えてみたくて
「厳しい」という評判のある今の会社に、営業マンとして転職しました。

 会社に来てみて思ったのは、まるで大学の運動部をそのまま引き抜いてきた
んじゃないかという社員の面々。私より若い連中も、先輩も、課長も、みんな
比較的ガッシリして、精神的にもタフそうな人たちばかりでした。やはり、評
判通り厳しい会社なんだと、私は決意も新たに課長との面談に臨みました。

 課長は私よりやや小柄でしたが、何かスポーツをやっているような体格をし
ていました。話し方も豪快で、大きな声でズバズバと切り込んでくる感じでした。

 そこで、この会社の仕組みを説明されました。社員各人は、年間・月間それ
ぞれにノルマを持っていること。そのノルマは、年初・月初に直属の課長と面
談の上決定されること。年度末・月末に業績報告を行い、ノルマ以上の業績に
対しては報奨金が、ノルマ未達成時にはペナルティが課せられるということで
した。この時点で、ペナルティは何かということは聞かされませんでしたが・・・。

 その後、私はチームのメンバーに紹介されました。チームは課長を含めて11人。
私は3番めに若いメンバーとなりました。みんな体育会系のノリでサッパリし
たタイプで、私もおなじ体育会系なのですぐに打ち解けることができました。

 次の日から、私は営業に回りました。しかし、思惑とは外れ、商品はなかな
か売れませんでした。いままでやってきたやり方では歯が立たない客先が多く、
商品知識がまだまだ不足している自分。会社には営業成績グラフが貼ってある
のですが、チームの面々は順調にグラフを伸ばして行く中、私のグラフはなか
なか伸びていきませんでした。

 その月の下旬になると、少しずつコツもつかめ、なんとか少しずつ売れてく
るようになりました。それでも、ノルマの80%しか達成できませんでした。

 ついに、はじめての月末の業績報告の日がやってきました。その月は、メン
バー10人中ノルマを達成できたのは3人、あとは90%台が4人と80%台
が3人、もちろん自分が一番最下位でした。

 まずは、ノルマ達成の3人が表彰されました。その後、課長の講評があり、
ノルマ達成できたのがたったの3人とは情けない、来月は頑張って全員達成す
るようにとの激が飛びました。

 その後、課長は机の中から1本の棒を取り出しました。ちょうど長さ50〜
60センチ、直径3、4センチくらいの堅そうな丸木の棒で、棒には墨で「努
力」と「一発入魂」という文字が書かれていました。

 すると、「村田にはまだ説明していなかったが、うちの社では、どの営業チ
ームもノルマ未達成時のペナルティとして尻を叩く。うちのチームでは、この
棒で気合いを入れている。これから順番にペナルティを与えるから、名前を呼
ばれたら受けに来い。」と、いつになく厳しい表情でペナルティについて説明
されました。おいおい、こんな話聞いてないよと思いつつも、もう遅い。早速、
ペナルティが始まりました。

(つづく)

 

<小説:モーレツ営業マン村田・修行の日々2> 投稿者:K2 (8月14日(火)20時55分02秒)

 ノルマ未達成のメンバーは、一斉に上着を脱ぎました。私も見よう見まねで
上着を脱ぎ、覚悟を決めました。課長は棒を持ち、机の前に来ました。まずは、
未達成の中でもいちばん達成率の高い人から始まります。

 「よし、まずは今井から来い。」

 先輩の名が呼ばれ、今井さんは課長のところへ出て行きます。

 「今井、今月の達成率95%でした。申し訳ありません!」

 そう言うと、今井さんは、机に両手をつき、尻を突き出しました。

 「よし、来月は頑張れよ。」

 課長は右手に棒を持ち、思い切り振りかぶりました。

 「一発!」

 バシッという音とともに、棒が今井さんの尻に振りおろされました。
今井さんは、歯を食いしばっています。

 「二発! 三発!」

 棒が今井さんの尻に唸りをあげて打ち込まれ、プリッとした尻たぶに、容赦
なく食い込みます。

 「四発! 五発!」

 今井さんは課長の方へ向き、

 「ありがとうございました! 来月は頑張ります」

 といって、尻をさすりながら私たちの方へ戻ってきました。

 今井さんが戻ると同時に、もう次の人は礼をし、ペナルティを受けています。
私は、小声で今井さんに聞きました。

 「今井さん、これってもしかしてノルマ1%マイナス毎に一発なんですか?」

 「ああ、そうだよ」

 そうなると私は20発です。学生時代にお仕置きで5、6発叩かれたことは
ありますが、一度に20発というのは経験ありません。

 「痛いですか?」

 「ああ。手加減なしだから結構効くぞ。でも、俺も初めてのときは30発食
らったぜ。お前さんはガタイもいいし、大丈夫大丈夫」

 尻をなでつつ、今井さんは豪快に笑い飛ばします。とはいっても、やはり痛
そうです。と思っているうちに、あっという間に私の番となりました。

(つづく)

 

<小説:モーレツ営業マン村田・修行の日々3> 投稿者:K2 (8月15日(水)21時40分36秒)

 「よし、ラスト、村田来い。」

 私は覚悟を決め、課長のところへ行きました。

 「村田、今月の達成率80%、申し訳ありませんでした!」

 机に手をつき、足を肩幅よりやや広く、そして尻にグッと力を入れて歯を食
いしばりました。学生時代の経験から、下手によけようとするより、思い切っ
て受けた方がかえって痛くないからです。

 「よし、初めてだからきついかもしれんが、来月は頑張れよ。じゃ、行くぞ」

 課長は棒を持ち、振りかぶりました。

 「一発!」

 バシッと私の尻に棒が食い込みます。じーんとしびれたような感じで、かな
り強い部類の尻たたきでした。

 「二発! 三発! 四発! 五発!」

 連続して尻に痛みが走ります。思わず尻を押さえて走り回ってしまいそうで
したが、グッとガマンしました。

 「六発! 七発! 八発! 九発! 十発!」

 課長はガンガン、手加減なしに攻め込んできます。実際に受けてみると、
「バシッ」というより「ズシッ」と重みを感じます。

 「十一! 十二! 十三! 十四! 十五! 十六! 十七!」

 私も、気合いを入れてじっと尻の痛みに耐えます。が、歯を食いしばってい
ても、「ウッ」と小さいうめき声が、無意識に口から洩れてしまいます。先輩
方も、あと少しだぞ、頑張れよという視線で見守ってくれている気がしました。

 「十八! 十九! 二十!」

 もう尻は燃えているような感じです。終わると、何とか最後の気合いを振り絞って、

 「ありがとうございました。 来月は頑張ります!」

 と礼を言いました。しかし、あまりの尻の痛さに、

 「いってぇ〜っ!」

 と尻をなでつつ、部屋を走りまわってしまいました。

 課長は笑いながら、

 「やはり見込んだとおり根性があるな。来月はこんなに叩かれないようがん
ばれよ!」

 と誉めてくれました。ノルマ未達成の罰を受けて、誉められるというのもな
んだか不思議な感覚ですが。チームのみんなも、

 「いや、堂々としててすごかったよ。俺がはじめてのときは途中で一回休み
を入れてもらったもんなぁ」

 「すごいすごい。大したもんだぜお前さん」

 などと言ってくれました。

 たしかに非常に厳しく、痛いペナルティでしたが、チームの面々との連帯感
はこの日からいっそう強くなりました。

(おわり)

※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・組織・事実等とは一切関係ありません。

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※ 太朗謝辞

 2001年に8月、かつあきさんの掲示板にK2さんが投稿された小説を上にアップさせていただきました。当時、太朗が掲示板からコピー&ペーストしてテキストファイルにしてあったものに、改行など一切手を加えずにそのまま掲載させていただきま した。

 太朗は、K2さんの小説の大ファンの一人であり、いまでも時々読んではお世話になってます*^^*。

 K2さん、太朗の掲示板への掲載を快諾していただき本当にありがとうございました。

 

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