続・モーレツ営業マン村田・修行の日々

 

<真之、長期出張>

「永田、ちょっといいかな?」

終業時間前、夕陽が会社の窓からオレンジ色の光を注ぎ込んでいる時間。永田真之は、課長の花森に呼ばれた。心なしか、課長の表情が険しい。

『ありゃ、俺、何かドジやったかな・・・』

恐る恐る課長の所へ行くと、小会議室へと誘われた。課長愛用の青竹は持っていない。とりあえず、別室でこってり絞られる、というわけではないらしい。胸と尻をなで下ろして、真之は花森の後について小会議室に入った。二人は膝をつき合わせて座った。

「お前さんに、来月頭から3ヶ月くらい、大阪の方へ出張してもらいたいんだ。もしかするともう少し期間は延びるかもしれないけどな。向こうでのアパートとか、生活に必要なものは、全て会社で用意する」

「それはもちろん仕事だから全然構わないですけど、出張の目的は何ですか?」

「大阪の第3営業の支援に入って欲しいんだよ」

第3営業と聞いて、真之は永田課長の顔を思い出していた。

永田裕治課長。丸っこい身体で人なつっこい笑顔が印象的な永田課長は、真之と同じ名字ということもあり、初対面の時から気さくに話しかけてくれた。それ以来、課長が東京へ来るたびに、色々かわいがってくれている。一緒に飲みに行った回数も数え切れない。

「あそこは今2つの問題を抱えている」

花森が話の核心を切り出すと、真之は頭の中から感傷を追い払った。

「1つは、この半年くらい、第3営業は目標を達成できていない。達成率は毎月だいたい90%前後で、ひどい月は80%台にまで落ち込んでいる。永田課長も、毎月初東京まで呼ばれては、部長や社長にハッパをかけられているよ」

真之は、この数ヶ月の永田課長の様子を思い浮かべた。俺と接してるときは、普段の永田課長と何ら変わりなかったと思うんだけどなぁ・・・。この間飲みに行ったとき、「お前さんみたいなバイタリティのある奴が大阪に来てくれたらなぁ」なんて言ってたけど、あれは俺へのお世辞というよりは、半分本音だったのか。そんなことを真之は考えた。

ハッパをかけられた、ということは、俺達と同じく目標未達成の罰を受けたんだろう。恐らくもっと厳しいやつを。そんな様子は微塵も感じさせなかったところに、永田課長の度量の大きさというか、男としての大きさを感じずにはいられない真之だった。

「2つめは、実は1つ目の話とも関連するんだが、第3営業には今インターンがいるんだよ。もう半年が過ぎたってのに、まだちっとも成果が上がらない。本人も、罰は飄々と受けるらしいんだが、それが効いてないっていうか、やる気に結びついて来ないというか・・・」

課長はコーヒーでのどを湿らせると、続きを語った。

「普通のインターンだったらここでお断りするんだが、今回はそうもいかなくてな。実は彼、東京の下町にある材木問屋の御曹司で、うちのお得意先なんだ。その社長から、”うちの息子を2年で男にしてやってくれ”と頼まれているもんだから、途中で投げ出すわけにはいかない。人材育成を頼まれたウチの会社の、信用問題にも関わってくるんだ」

なるほど、と真之は相づちを打つ。

「教育係の村田も、ほとほと困っているらしい。教育に時間を割いている分、自分の営業成績も落ちちゃっているし、インターンの犯したミスは連帯責任で取り、フォローしなくちゃならない。あいつの尻は、この半年、全然休まるヒマがないそうだよ」

真之は、罰を受けている村田の姿を思い浮かべた。

1年前まで村田とは東京で一緒に働いていたので、気心は知れている。学生時代は柔道をやっていて、堂々とした体躯を持つタフガイ。元大手商社マン。ウチの会社に転職してきて初めて尻たたきを受けるときも、普通の人なら途中で休みを入れてもらうのに、二十数発堂々と受けきったのが印象的だった。仕事も体格同様パワフルで、多少厳しいノルマを課せられてもそれをやり遂げるだけのバイタリティある仕事ぶりで、色々と教わることも多かった。

「村田も、心身共に、相当参ってるらしい。で、お前さんに支援に行ってもらい、このお坊ちゃんのサポートを村田と共にやって欲しいんだ」

「・・・それは、そのお坊ちゃんの教育係を村田さんと一緒にやれということですか?」

「あぁ、そういうことだ」

真之は心の中で溜息をついた。あの村田さんでさえ手を焼いているお坊ちゃんが、果たして俺が行ったくらいで変わるだろうか? しかも、確かにこれでは尻の休まるヒマもなさそうだ。ここ数ヶ月尻たたきとは無縁の生活を送っている真之には、かなりこたえる大阪出張となるだろう。

「だから、3ヶ月より期間は延びるかも、と俺は言ったんだ。3ヶ月でこのお坊ちゃんがノルマをこなせるように成長させることができれば、東京に戻ってきていい。でも、変わらないようなら、その後も面倒を見てもらうかもしれない。そんな事態になったら、下手すると一年くらい帰ってこられないかもしれないなぁ・・・」

花森課長はいたずらっ子のような笑顔を浮かべてニヤリと笑う。

「インターンの名前は中津。お前より学年は一つ上だが、同じ年の生まれだ。村田が遠慮している部分でも、同い年のよしみで、お前ならズバリと指導できるかもしれん。同年代が教育係につくとあれば、中津の発奮もあり得るしな。俺達が期待してるのはそこなんだよ」

「分かりました。どこまでやれるか分かりませんが、頑張ってみます」

そう言うと、真之は、おもむろに背広を脱いで立ち上がった。

「この仕事は、相当気合い入れないと、俺、参っちゃうかもしれないです。この数ヶ月、気合い入れてもらってないんで、軽く気合いを入れてもらってもいいですか?」

ああ、もちろん、と花森は頼もしい部下の心意気に感心せざるを得なかった。ちょっと待っててくれな、と言い、花森は愛用の青竹を取りに会議室を小走りで出ていった。真之は、背広をたたんでソファーの背もたれにかけると、椅子と机を壁際に寄せ、空間を作った。

両手でゆっくりと自分の尻肉を揉んだ。この数ヶ月、自分の成績が良かったから、ちょっと慢心があるかもしれない。ここで気を引き締めておこう。真之はそう思った。

ちょっとすると、軽い笑顔を浮かべて、花森課長が戻ってきた。手には愛用の青竹が握られている。花森課長も背広を脱ぎ、腕まくりをした。

「何発行くか? 30発?」

「そ、そんなに多くなくていいです。10発ぐらいで・・・」

「遠慮しなくたっていいのに」

ガハハ、と花森課長の豪快な笑い声が響いた。

「じゃ、10発な。せっかく会議室にいるんだから、生尻行っとくか。よし、ケツ出せ」

真之はちょっと予想外の展開に戸惑った。生尻での尻叩きなど、この会社に入ってから、数えるほどしか受けたことはない。でも、自分から気合いを入れて置いて欲しいと言っておいて、遠慮を繰り返すのも申し訳ない。覚悟を決めて、靴を脱ぎ、スラックスを脱ぎ、トランクスを下ろした。壁に手を突いて、準備を整えた。

「永田真之、気合い入れの10発、よろしくお願いします!」

「よし、遠慮なく行かせてもらうぞ」

花森課長は、真之の左後ろに立った。真之のワイシャツの裾をめくり、生尻を出す。右手で青竹を握り、真之の尻に軽く当てて、位置を確認している。冷やりとした感覚が尻から伝わって、真之の緊張を嫌が応にも高める。

大きく振りかぶり、最初の一発が真之の尻に打ち込まれた。

バシッ。「一発!」

う、と真之の口から思わず声が漏れた。花森課長の青竹ってこんなに痛かったっけ、と思った。

「次行くぞ」 バシッ。「二発!」

バシッ。「三発!」

真之の額には脂汗が浮かび始めていた。

バシッ。「四発!」
バシッ。「五発!」

ここで真之は、つい尻を引いてしまったらしい。花森課長の容赦ない檄が飛ぶ。

「ほら、永田、尻が引けてるぞ! もう一度最初からやり直すか?」

「はい、済みませんでした! 最初からは勘弁してください。六発目お願いします!」

真之は気合いを入れ体制を立て直し、尻を花森課長に向けて突き出した。尻はもうまんべんなくほの赤くなっており、熱を持ち始めていた。

バシッ。「六発!」

花森課長は、間合いの取り方が絶妙だ。尻に青竹が当たった瞬間から、痛みが最大に達してすこし引きかけるあたりで、次の一発を繰り出してくる。

バシッ。「七発!」
バシッ。「八発!」
バシッ。「九発!」

真之は自分の尻が早くも限界に近づいていることを感じた。しかし、この程度で音を上げていては、大阪での仕事はおぼつかないだろう。加えて、中津にも示しがつかない。真之は気合いを振り絞った。

「ラスト行くぞ」「よし来い! ラストお願いします!」
バシッ。「十発!」

いってぇ〜と思わず声を上げて、真之は尻を押さえながら花森課長の方を向いた。手は尻に当てたまま、礼をする。

「10発気合い入れ、ありがとうございました!」
「よし、大阪では頑張ってくれよ!」

男同士の真剣勝負の時間が終わった。真之はトランクスを上げた。ペニスが少々勃起しかかっていたのがちょっと恥ずかしかったが、構わずトランクスをはいた。

「それにしても、久々に食らうと効きますね〜」

真之は顔をしかめて尻を撫でながら、花森に言う。

「はは、そりゃそうさ。生尻で受けるといつも以上に一発一発がこたえるし、それに今日は餞別だと思って、普段滅多に使わないフルスイングでやらせてもらったからな」

「そりゃないですよ、それなら最初から言ってくださいよ! 花森課長ってば意地悪だなぁ〜」

会議室に二人の笑い声が響く。机と椅子を元の位置に戻し、二人は小会議室を後にした。廊下を歩いていると、腫れた尻にトランクスが擦れて、痛い。自分の席に戻ってから、椅子に座るのにかなり苦労した。

家に帰って真之が風呂場で尻を見てみると、赤紫のあざになっていた。明日には真っ青になっているだろう。触ると、コリコリと堅く、尻のあざが広範囲に渡っていることが分かった。

花森課長は手加減なしだからなぁ、と独り言を言いつつ、今夜尻に張る湿布がないことに気付いて近所のドラッグストアに湿布薬を買いに走る真之であった。

※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・組織・事実等とは一切関係ありません。

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