2010新春・新作短編 ケツ丸出しのヒーローたち 〜とある野球部の納会風景〜 番外編3 OB田所新之助物語
この番外編3は、緑翠舎高校・硬式野球部OBで、ホテル緑翠・副支配人、田所新之助(39)の物語である。
一、家庭教師
田所新之助(21)は、地元の県立大学・教育学部の3年生。将来は、社会科の教師を目指している。もちろん、母校・緑翠舎高校の教師になることが夢だった。
田所家は、地元の名門で、新之助の父親は、衆議院・議員・田所馬之助(51)。保守党の「若手」ホープの一人だった。
その年の夏、国会議員の馬之助は、総選挙を控え、連日、地元と東京の往復で、多忙を極めていた。しかし、父親の馬之助は、大学生で夏休み中の息子・新之助に選挙事務所の手伝いを頼むことはなかった。
それは息子が政治家ではなく、教師志望であることが大きかった。しかも、地元の母校・緑翠舎高校の教師を目指しているという。そんな息子に選挙事務所を手伝わせ、ともすると汚い政治の世界に首をつっこませたくはなかったのだった。
ただ、地元の有力支持者の一人から頼まれた家庭教師の仕事だけは、息子の新之助に是非ともやってほしいと頼んでおり、新之助も、かなり稼ぎのよいバイトだったので、快諾し引き受けていた。
是非とも家庭教師をと頼まれたのは、その年の春に、緑翠舎高校のある町に引っ越してきた吉田家の小6の長男・太郎君の勉強の世話をみてやることだった。
吉田太郎君は、父親がおらず、母親と二人暮らし。新之助は、太郎君の母親はきっと自分に太郎君の父親であり兄貴の役目も期待しているのだなと思ったのであった。
新之助は、お盆を挟んだ夏休み中の三週間。毎日、吉田家に通い、吉田太郎君の勉強をみてやることになっていた。
吉田太郎君は、小さいころから母親一人に育てられてきたせいか、小6男子にしてはかなりの甘えん坊だなというのが新之助の第一印象だった。
そんな太郎君。最初こそは、出した宿題はすべてやり、勉強中も新之助の教えることを真面目によく聴き、勉強に集中しているようだった。しかし、一週間もたたないうちに、新之助に慣れて来たのか、新之助に甘えるようになり、宿題もろくにやらず、勉強中もあくびばかりして、一向に勉強に集中している様子がみられなくなってきていた。
そこで新之助は、「ここは一発、ガツンとやって、厳しいところをみせないとダメだ!」と思い、そのチャンスをうかがっていた。
そして、家庭教師もちょうど二週間目に入る日。案の定、太郎君は、前の日に新之助の出した算数の宿題を全くやっていなかったのだった。
「コラァ!太郎君!!また宿題をやっていないじゃないか!!」
「ご、ごめんなさい・・・忘れました・・・」
「忘れたじゃないだろう!!これで宿題をやらなかったのは何回目だ?」
「・・・・」
「さあ、黙って下ばかり向いてないで、先生の目をきちんとみなさい!!」
「はぁい・・・」
と、蚊の鳴くような声で返事をし、やっとのことで顔を上げて、家庭教師・田所新之助の顔を見る吉田太郎君。新之助がいつもとは違って本気で怒っていることをその表情から悟ると、太郎君は、急に泣きそうな顔になるのだった。
新之助は、太郎君のいまにも泣きそうな顔を見て、「情けねぇなぁ・・・こいつ、もう泣きそうじゃん・・・」と思い、「このくらいで許してやっか・・・」と思うのだった。
しかし、「ここで許しては太郎君のためにはならない!心を鬼にして、約束通り、『あれ』を決行すべし!!」と心に決めるのだった。
新之助は、太郎君の目を、キッと見て、
「先生、ケツを叩くって言ったよな!!」
と、太郎君に問いかけるように厳しく言うのだった。
「えっ!!」
と、動揺を隠せない太郎君。
「忘れたとは言わせないぞ!!今度宿題を忘れたら、ケツ叩きだって、先生、太郎君と約束したぞ!!男同士の約束だったよな!!」
と、新之助は、自分の視線から逃げようとする太郎君の目を、逃すことなく見つめながら、厳しく続けるのだった。
「・・・グス・・・グス・・・」
太郎君は、新之助の厳しい問いかけから逃げることができず、答えることもできず、泣きべそをかきはじめ、グスグスと鼻水をすすり始めるのだった。母親からは、いつもかわいがられ、いままで、大人から厳しくされたことなどないことは明らかだった。
泣きべそを掻き始めた太郎君。しかし、新之助は手を緩めなかった。
「泣いても先生、許さないぞ!!さあ、答えなさい!!宿題忘れたらケツ叩きだって、先生と太郎君の、男同士の約束だったよな!!」
「・・・・・・グスグス・・・・」
しばらくの沈黙。しかし、ようやく、泣いても今回ばかりは許してもらえないと観念したのか、
「はぁい・・・」
と、太郎君は、真っ赤な顔になって下を向きながら、小さな声で返事をするのだった。
「よし!!じゃあ、立ちなさい!!」
と、厳しく命令する新之助。そして、新之助は、座っていた椅子を、勉強机から少し離して向きを変え、太郎君が真正面にくるように座りなおすのだった。
不安そうな顔で、自分の目の前に立っている太郎君。そんな太郎君を見て、思わず、心臓の高鳴りをおぼえる家庭教師・新之助だった。
新之助もその古風な町で生まれた男子だ。ガキの頃から高校を卒業したつい3年ほど前まで、オヤジからは、しばしば「あれ」を食らってきた。
しかし、自分自身が、誰かに「あれ」を食らわすのは初めてだった。それは、野球部で、後輩にケツバットを食らわす前とはまったく違い、新鮮で、なにか自分も急にオヤジと同じ大人になったようで、逆に、緊張してくるのだった。
新之助は、てのひらに、じんわりと汗を掻き始める・・・。「やばい・・・太郎君に、俺が焦っていることを見破られる・・・しっかりしないとダメだ!!」と、逸る自分の気持ちに喝を入れつつ、新之助は、両掌にかいた汗を拭うようかのように、自分のジーンズの太ももを両手で何度もさすり始めるのだった。
「さあ、ズボンとパンツを下ろしなさい!!!」
と、新之助は、太郎君の目に視線をキッとあわせ、一気に言うのだった。
「えっ・・・・」
と、再び、動揺して、泣きそうな顔になる太郎君。
一方、家庭教師・新之助は、「よっしゃ!!一気に言えたぜ!!」と、自分のペースで、事が運んでいることに、ホッとするのだった。いままで、はち切れんばかりにドッキンドッキンと鼓動していた心臓も、やっと落ち着きを取り戻していた。
「宿題を忘れて、先生からケツを叩かれる時は、生ケツだからな!!」
と、太郎君に厳しく「生ケツ宣言」をする新之助だった。
新之助の、いつもとは違う厳しい態度に、あきらめたのか、太郎君は、恥ずかしそうに、半ズボンとパンツを下ろすと、ピーナッツほどもない、かわいいオチンチンを両手で隠すようにして、新之助の前に立つのだった。
新之助は、太郎君に、
「さあ、こっちへきて、膝の上に屈んでケツを出すんだ!!」
と、厳しく続けるのだった。
太郎君は、ズボンとパンツは両膝の上あたりまで下げたまま、ヨチヨチ歩きで、新之助に近づいてくる。
新之助は、そんな太郎君の頭を左手でグッと押さえつけ、右手で、太郎君の右手首をギュッと握り、太郎君を自分の膝上に乗せるようにして屈ませ、太郎君の生ケツを、自分の膝上に丸出しにするのだった。
新之助は、太郎君の体重を移動させ、自分が叩きやすいポジションに太郎君の生ケツをもってくるのだった。そして、太郎君の生ケツが、ちょうどいいように、自分の膝上に突き出されると、
「よし!!今日は、十発で勘弁してやる!!だが、今度また、宿題をやらなかったら、二十発だからな!!いいな!!」
と、厳しく「ケツ叩き十発」を宣言する。
「はぁい・・・」
「よし!いくぞ!!数を数えるんだ!!」
そういうと、新之助は、いままで、逃げないように太郎君の右手首を太郎君の背中のところでギュッと握っていた自分の右手を、左手に掴みかえ、そのあいた右手を、今度はグッと高く上げると、右手のひらはギュッとすぼめるのだった。
後ろに丸出しの生ケツにスゥ〜〜〜となにかが来る「予感」を感じて、身を縮めるようにして、新之助の膝上でかまえる太郎君。「あ〜〜〜来る・・・・」と覚悟を決めるのだった。
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!!
と、新之助は、頭上に高く上げた右手を思い切り、膝上にプリッと突き出された太郎君のケツのド真ん中に、振り下ろすのだった。それは、新之助自身が、右掌が「痛てぇ!」と叫びそうになるくらい、渾身の力をこめた平手打ちだった。
「い、いち!!!」
と、意外にも太郎君は、「痛い」と叫ぶこともなく、新之助に命令された通り、自分のケツに振り下ろされた先生の「愛の鞭」の回数を数えたのであった。
尻叩き一発目ほど、印象に残ることはない。太郎君は、ケツに受けた熱い衝撃に、ギュッと目をつむり、必死で耐えていたのだった。太郎君のケツのド真ん中には、新之助の大きな手のひらのモミジ・スタンプが、薄くピンク色につき、やがて、色鮮やかに深紅にクッキリ染まることを待っていた・・・。
新之助は、「よし!順調だ!」と思い、満足そうに頷くと、右手を頭上高く上げ、再び、
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!!
と、厳しく、膝上の太郎君の生ケツを打ち据えるのだった。
「い、痛い!!」
と、思わず叫ぶ、太郎君。
「痛いじゃない!!!何回目だ?数を数えなさい!」
と、依然、厳しい新之助。
「あっ・・・に!!」
と、あわてて、回数を言う太郎君。
新之助は、再び、満足そうに頷き、右手を高く上げる。そして、その右手で、再び、太郎君のケツを、厳しく仕置きしようとした、その時だった!!
「きゃ!!先生!!うちの息子になにするんですか!!」
という女性の声とともに、ガチャンとなにかが床に落ちて割れる音が、新之助の耳に飛びこんで来るのだった。
「えっ!!」
と驚き、思わず、首を後ろに向ける新之助。
それは、二階で勉強している息子と息子の家庭教師のために、紅茶とケーキを運んできた太郎君の母親だった。新之助は、仕事がお盆休みで母親が下にいることは知っていた。しかし、いつもは留守の母親が、まさか勉強中、紅茶とケーキを運んでくるなんて、予想だにしなかったのだった。
いままで、新之助の膝上で、「男らしく潔く」宿題忘れの罰である膝上・生ケツ叩きのお仕置きを受けているかにみえた太郎君は、まさにここぞとばかりに、
「うわぁ〜〜〜ん!!おかあさん!!先生が、ボクのお尻、叩いたよぉ〜〜〜!!」
と泣き叫びながら、しかし、床に割れて落ちている紅茶のカップは、器用に避けながら、新之助の右手のひらのモミジが赤くついたケツを丸出しのまま、母親のもとに駆け寄り、母親の後ろに隠れてしまうのだった。
独りさびしく椅子に取り残された家庭教師・新之助。吉田母子の視線を痛いほどに感じ、全身から冷や汗がドッと噴き出してくるのだった。
「こ、これは・・・太郎君が宿題を忘れまして・・・そ、それで、男同士の約束でして・・・」
と、あわてて、言いわけをしようとする新之助。
しかし、太郎君の母親は、少しヒステリー気味に、
「もういいです!!早く帰ってください!!息子に手を上げたことなんて、いままで、一度きりだってありません!!暴力は反対です!!」
と、新之助を睨みつけるようにして、言うのだった。
新之助は、もうこれはダメだと、机の上の広げたままの、自分が持ってきた参考書などをあわててかばんにつめ、太郎君の部屋から退散しようとする。しかし、それだけではすまなかった・・・新之助が、太郎君の部屋を出ようとしたまさにその時、太郎君が、
「おかあさん!!ボクのお尻を叩いている時、先生のオチンチン、かたくなってたよ!!」
と、止めとばかりに、言い放ったのだった。
「えっ!!」
と、それを聞いて、思わず振り向いてしまう新之助。そして、図らずも、太郎君の母親と目があってしまう。
射るような太郎君の母親の視線。太郎君の母親は、新之助のそのなんともいえない表情から、息子の言っていることがウソではないことを悟るのだった。太郎の母親の目にメラメラと燃え上がる怒りの炎。
それに気がついた新之助は、まるでケツに火がついたかのようにあわてて階段を駆け下り、吉田家の玄関から飛び出して行く。開いたままの玄関。後ろから、太郎君の母親の、
「この変態男!!!許さない!!このままじゃ絶対すまさないから!!!」
との叫び声が追いかけてくる。
それに耳を塞ぐようにして、一目散にダッシュし、吉田家から離れようとする新之助。太郎君の母親が悔しそうに泣きじゃくる、その泣き声がようやく聞こえなくなって、ふと我に返ったようになる新之助。自分が靴もはかずに逃げてきたことに気がつくのだった。そして、
「や、やばいかも・・・あぁぁぁ・・・・オ、オレの人生、もしかして、これでおしまいか・・・?」
そう思うと、全身の力が抜けて、そこに座りこんでしまう田所新之助だった。
「オレは田所新之助だ!!今日から、おまえたちに、倫理・政経を教えることになった!!ビシビシ行くからな!そこんとこ、よろしく!!」
ピシッとスーツで決めて、母校・緑翠舎高校・1年A組の黒板に、デッカク自分の名前を書き、自己紹介する堂々とした自分の姿。そんな新之助の夢が、もろくも、音を立てて、崩れ去っていく・・・道に座り込んだ新之助の目から、涙がポタポタとこぼれおちてくるのだった。
二、お仕置きの仏間
男の人生、持つべきものは、自分が不祥事をしでかしてしまった時、それをもみ消してくれる剛腕政治家のオヤジさんかもしれない・・・。毎月1500万円のお小遣いをくれるリッチなおふくろさんがいれば、さらにすばらしいかもしれない・・・(爆)。
当然のごとく、吉田家で息子・新之助がしでかした一件は、「先生のオチンチンがかたくなっていた」事実とともに、新之助のオヤジ・田所馬之助の耳にも入れられた。
総選挙を目前にしたオヤジ・馬之助は、「これはヤバし!!敵陣営・革新党の犬どもが嗅ぎつけたら一大事!!」と、即刻、彼の「不祥事もみ消し工作隊」が動く。
その「不祥事もみ消し工作隊」は、オヤジ・馬之助が絶大なる信頼をおく秘書軍団だ。彼らは、必要とあらば、馬之助の身代りとなり刑務所暮らしも厭わない猛者たちだった。
彼らと吉田母子との間にどのようなやりとりがあったかは知る由もない。しかし、吉田母子は、翌日には、隣町へと引っ越していった。当然、そのために必要な役所での諸手続きは、馬之助の秘書軍団が、すべて滞りなく行っていた。
・・・・・・・・・・・・・
そして、総選挙・投票日の早朝。長かった選挙戦を終え、田所馬之助は、自宅の仏間で、不祥事を起こした息子・新之助をいまや遅しと待っていた。
田所家は、徳川の御代には代々城代家老職を務めた、その町では一番由緒ある武家の家柄だ。田所家の邸宅は、城址公園にもほど近い広大な敷地内にあり、江戸時代に建てられた木造平屋建ての住宅は、現住建造物としては唯一、県の重要文化財に指定されていた。
そんな邸宅には、田所家の息子たちを、代々、怖がらせてきた「仏間」があった。「お仕置きの仏間」と息子たちが呼ぶ仏壇がある部屋だった。
その部屋は、徳川の御代には、「切腹」をする部屋であり、実際、切腹をして無念のうちに果てたご先祖さまもいると子供の頃から聞かされて育てられる田所家の子供たちにとって、その仏間は、なんとなく薄気味の悪い部屋であった。
そして、田所家に生まれた男子ならば、その部屋が怖い理由が、もう一つあった。それは、仏間が、オヤジから「あれ」を食らう部屋だったからだ。
「や、やばい・・・菊之助のヤツ、やっぱ、家にいるよ・・・」
そう思いながら、オヤジが待っている仏間へと続く長い廊下を足早に歩く田所新之助。白ブリーフ一丁だった。
オヤジから「あれ」を食らう前は、いつも、白ブリーフ一丁で、仏間へと続く長い廊下を歩かされる・・・。それが田所家におけるお仕置き前のオヤジと息子の約束だった。オヤジ・馬之助は、超多忙な政治家だ。オヤジからのお仕置きの呼び出しは、いつも早朝だった。
県の重要文化財とはいえ、新之助の実家は、所詮、木造平屋建ての古い家だ。仏間でオヤジから「あれ」を食らう音は、家中に響くのだった。20歳を過ぎ大学3年生にもなって、オヤジの膝上でケツを叩かれるその恥ずかしい「音」を、高校生の弟に聞かれてしまう・・・新之助は、その恥ずかしさ、屈辱に、顔を赤らめるのだった・・・。
新之助は、四人兄弟の三男。長男・寅之助は、県立大学・医学部の5年生、そして、次男・龍之助は、県立大学・法学部の4年生。どちらも、下宿暮らしで、実家にはいなかった。新之助も、大学生になってからは下宿住まいだったが、吉田家での不祥事のために、オヤジから実家に呼び戻され謹慎中の身だった。そして、四男の菊之助は、緑翠舎高校の3年生で、受験勉強の真っ最中だった。
もう一つ、オヤジからのお仕置きに直面した新之助にとって悩ましかったことは、新之助の実家に勤める使用人たちの存在だった。もちろん、オヤジからケツを叩かれる音を、使用人たちにも聞かれてしまうのだった・・・。
特に、広大な庭の手入れをしている職人たちは、朝早くから仕事にかかっている。ブリーフ一丁で「お仕置きの仏間」へと向かう新之助の恥ずかしい姿は、庭で仕事をしている彼らからは、丸見えだった。
彼らは、新之助の姿を見つけると、律儀に、デカイ声で、
「新之助ぼっちゃま!!おはようございます!!」
と、挨拶してくるのだった!!
もちろん、新之助は、その挨拶が発せられている方向へは、恥ずかしくて顔など向けることなどできなかった。
「もう・・・やめてくれよ・・・挨拶なんてしてる場合かよ・・・」
と思いながら、自分に挨拶をしている庭師たち全員が、これから、オヤジの平手と自分のケツが「接触」する音を聞くのかと思うと、もう恥ずかしさで、顔はさらにカァ〜〜と赤くなり、足は、自然と、さらに早足となる。
そして、あろうことか、オヤジからケツを叩かれることを恥ずかしいと思えば思うほど、新之助のブリーフの中のイチモツは、鎌首をもたげ始め、「オチンチンがかたくなって」しまうのだった。
そんな新之助のブリーフの股間の反応を、あざとく見逃さない庭師が一人いた・・・。
「もしかして、アイツのチンチン、ビンビンじゃねぇ〜の・・・」
と思ってニヤニヤする、新之助と同じ年の庭師・佐用猿吉だった。
猿吉は、新之助と同じ年ながら、中学を出てすぐに、庭師の親方のところに弟子入りし修行をつんできた。猿吉は、自分とは身分違いの、まさに、金持ちのボンボンである新之助のことを、羨ましく思うと同時に、心の中では見下していたのだった。
「コラァッ!なにニヤニヤしてやがるんだ!!」
ポカァ!!
「痛てぇ!!」
と、ニヤニヤしいてる弟子の猿吉にキツイ拳骨を食らわす、親方の寺田芳蔵。田所家への「忠誠心」は人一倍の男だった。時代が時代ならば、田所家のお庭番。まさに、隠密といったところか。
「新之助ぼっちゃんは、ああして、恥を忍んで、俺たちの前を歩いてらっしゃるんだ!!さりげなく見送ってやるのが、男ってもんだろう!!」
「は、はい・・・」
「あの廊下を、ぼっちゃんたちがパンツ一丁で歩いていたら、挨拶はいらねぇんだ!!そこんとこ、よく覚えとけ!!このバカ野郎!!」
と、親方にどやされて、
「チェッ!!ほかにも挨拶したヤツはいるのに、なんで俺だけ拳固食らうんだよ・・・」
と、ちょっと不満そうな顔をする猿吉だった。
・・・・・・・・・・・
庭師・猿吉たちの視線をビンビンに感じながらも、やっとのことで長い廊下を歩き終え、オヤジの待つ仏間の障子を開ける新之助。線香のにおいが、新之助の鼻をつく。それは、お仕置きの香りだった。
「お、おはようございます・・・とうさん・・・・」
「挨拶なんていい。俺は忙しいんだ。これが終わったら、朝一番で投票。それが済んだら、東京の選挙対策本部へ直行だ!ったく、選挙前に、騒ぎを起こしやがって!!このバカ息子が!!」
「す、すいません・・・とうさん・・・・」
「いまさら謝っても、もう遅い!!さあ、早く、パンツを脱いで、こっちへ来い!!」
そう、「お仕置き仏間」で、仕置きを受ける息子は、マッパ・フルチン!!それが、田所家での「あれ」のやり方だった。
仏壇に向いて、椅子に座る新之助のオヤジ・馬之助。息子の仕置きが済めば、すぐ出かけられるようにするためか、スリーピースのスーツ姿で、上着だけ脱いでいた。そして、アイロンがピシッときいたYシャツの右袖は、肘あたりまでまくっており、予想以上に太い上腕をむき出しに、息子のケツが、膝の上にくることを、今や遅しと待っていた。
ブリーフを下ろして脱ぎ、真っ裸で、椅子に座って腕まくりしているオヤジの前に立つ新之助。「いよいよオヤジから、ケツを叩かれるんだ・・・」と思うと、新之助の股間のイチモツは、再び、ムクムクと鎌首をもたげてきてしまうのだった・・・。
もちろん、息子・新之助の股間の反応を、オヤジが知らないはずはなかった。オヤジ・馬之助は、かたくなってきてしまった息子のオチンチンを、忌々しげに睨みつけながら、
ビコォ〜〜〜〜ン!!
ビコォ〜〜〜〜ン!!
と、そのかたくなってしまったオチンチンを指ではじいて、竿ピンを食らわしながら、
「ったく・・・いい歳しやがって・・・まだ悪いクセが治らんようだな・・・どうすれば治るんだ・・・その悪いクセは!?」
と、息子を問い詰めるようにしかりつけるのだった。
「・・・・・」
無言のまま、しかし、時に「あっあぁ・・・」と悩ましげなため息をもらしながら、真っ赤な顔で、オヤジから食らう「竿ピン」に耐える新之助。オヤジの前で、気をつけの姿勢をとりながらも、無意識のうちに、両手は、ケツの方へと伸び、お仕置きを前に、何気に、己のケツをさすってしまう新之助だった。
「さあ、ケツを出せ!今日は徹底的にその悪いクセを叩き直してやる!!!」
と、シャツを腕まくりした右腕を伸ばし、右手で息子の左腕を引っ張るようにして、息子を、自分の膝上に屈ませるオヤジだった。
「と、とうさん・・・自分はもう大学三年生です・・・ケ、ケツ叩きだけは、勘弁してほしいです・・・」
と口では言いながらも、特に抵抗することなくオヤジの膝上に乗り、ケツを出す新之助。
もちろん、新之助は、オヤジから何発ケツを叩かれようが、自分のその「悪いクセ」が直らないことを知っていた。オヤジの勘違いが、新之助には、哀しくもあった・・・。しかし、新之助のオチンチンは、さらにビンビンに怒張し、下腹にピタッとくっついたまま、その筒先からは、うっすら透明の先走り汁が溢れだそうとしていた。
久々のオヤジの膝上に乗った感覚に、思わず、ドキッドキッと心臓の高鳴りをおぼえてしまう新之助。十分に成長した新之助にとって、仏間の畳に、両手・両足をつくことは簡単だった。新之助は、両手・両足に力を入れ、オヤジの膝上で、ケツを天井に向け、高く上げるのだった。
天井を突くがごとく高く突き出された息子のケツを見て、オヤジ・馬之助は、満足そうにうなずくと、
「よし!行くぞ!よく反省しろよ!!」
と、一発目の予告をする。
「お、お願いします!!」
と、オヤジの膝上で、さらにケツを突き出すように高く上げる新之助。
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、一発目が、新之助のケツの上に炸裂する!!
緑翠舎高校・硬式野球部で3年間鍛えた新之助のプリッと盛り上がった堅いケツは、オヤジの平手が着地した部分にモミジの形が浮き出るようにうっすらピンクに染まりつつも、「漬物石」のごとくズシリと太々しくオヤジの膝上に鎮座していた・・・。
オヤジ・馬之助は、さすがに、かなり右手に響いたのか、痛そうに顔をしかめながら、その痺れをとるかのように、さかんに右手を振っているのだった。
そして、オヤジ・馬之助が、息子・新之助の生ケツを打ち据えたド派手な音は、庭で仕事をする庭師たちの耳にも、しっかりと届いていたのだった。
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、田所家の仏間でオヤジ・馬之助の平手が新之助の生ケツを連打する音が屋敷の庭にも響き渡ってくる。閑静な庭園には似合わない、かなりド派手な音だった。
その音を聞いてポッと顔を赤らめる青年・庭職が一人いた。何代にも亘って田所家の庭の手入れを「仰せつかって」いる寺田造園の社長であり親方である寺田芳蔵の一人息子の寺田芳之だった。
芳之(21)は、高校を卒業してすぐにオヤジの下で庭職になるための修行を始めた。修行も今年で3年目。いよいよ来年からは「見習い」から「いっぱし」になる予定だった。
仕事中に、仕事以外のことに気をとられるなどもってのほか、オヤジであり親方である芳蔵に見つかれば、どやされ、ポカリと拳固の一つでも食らうこと確実だった。
そして、芳之が屋敷から聞こえてくる「あの」音に気をとられて、仕事に全く集中していないことを、寺田園芸の若職人を束ねる「若頭」の水島俊一(37)が、オヤジさんより前に見抜き、芳之に声をかけてくるのだった。
「芳之!なにボォ〜〜としてんだ!!親方にどやされたいのか!!」
「あ、兄貴・・・す、すいません・・・」
寺田造園では、親方以外の先輩の庭師のことを、後輩たちは、「兄貴」と呼んでいた。もちろん、芳蔵の方針で、息子の芳之も、弟子入りする以上は、息子としてはではなく、弟子の一人として処遇され、芳蔵の弟子たちの間の序列をしっかりと守らされていた。
若頭の水島に注意され、さらに顔を赤らめる芳之だった。しかし、水島に注意さてた後も、芳之は、どうも仕事に集中できないらしい。それを見かねた水島は、
「芳之、一服すっか?」
と、親方にはわからぬように、芳之を、庭から使用人たちが利用している屋敷内の休憩場へと連れ出すのだった。
それは、水島が、「このままだったら、コイツ、絶対、なにか大ヘマをやらかす。」と察したからだった。それはベテランの感というものだった。
仕事場でヘマをしでかせば、ポカリと親方からの拳固一発で、済むはずがなかった。親方の息子ということで甘やかすわけでは決してなかったが、子供頃から知っている芳之を、水島は、少し年の離れた弟のようにかわいがっていた。そんな芳之に、みすみす仕事場でヘマをさせて、親方の命令を受け制裁を与えることなど、できるだけ避けたかったのである。
親方のことである。息子とはいえ、仕事場でヘマをしでかせば、きっと厳しい制裁を、いや、同様のヘマをしでかした他の若職人たちよりも苛烈な制裁を、芳之に与えるに違いない・・・。若頭の水島は、それを見たくなかったのである。
「芳之、あの音が気になるようだな・・・そんなに懐かしいのか?」
と、ニヤリと笑って、芳之に聞いてくる若頭の水島。
「か、勘弁して下さいよ・・・兄貴・・・懐かしくなんか、ないッスよ・・・もう忘れました・・・ガキの頃の話です・・・」
と、さらにいっそう頬を赤らめ、若頭にそう答える芳之。ちょっと不満げな顔をして下をむいてしまう芳之だった。
「ワハハハ・・・そうむくれるなって!からかって悪かったな・・・まあ、機嫌を直せよ・・・」
と、若頭の水島は、芳之の背中をポンと軽く叩くと、自分のタバコを芳之にすすめるのだった。芳之は、ふくれっ面したことをちょっと反省するかのように、
「ごっつあんッス・・・いただきます・・・・」
と、素直に、差し出されたタバコを一本いただくのだった。
しかし、言いわけするかのように、
「機嫌なんか悪くないッス・・・ガキの頃、オレ、兄貴からケツ叩かれたこと、本当ですし・・・」
と答えると、芳之は、タバコに火をつけることもなく、なにかを思い出すかのような表情で、耳まで真っ赤に染めて、再び、下を向いてしまう。忘れてなんかいない・・・芳之は、ガキの頃に食らった「あれ」のことをはっきりおぼているのだった。
そんな芳之を見ながら、若頭の水島は、顔に苦笑いを浮かべつつ、
「コイツ、マジで恥ずかしがってる・・・かわいいヤツだ・・・」
と思うのだった。
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
その休憩場にも、「旦那様」がいる母屋の仏間からは、旦那様の息子・新之助が、旦那様からケツを打ち据えられている音が、まだ聞こえてきていた。そして、同時に、過ぎゆく夏を惜しむかのように、蝉の鳴き声が、若頭の水島と、芳之の耳に入ってくる。二人は、思い出にふけるような顔をしながら、無言のまま、その二つの音に聞き入っているのだった・・・。
その古風な町で生まれ育った男たちは、「あれ」を食らう時、いやがうえにも周囲に響き渡る、オヤジの平手と息子のケツの「接触音」を聞くと、他人のケツの音とはいえ、皆、昔の自分を思い出してしまうのか、どうも少しセンチメンタルな気分になってしまうらしい。
ガキの頃、やんちゃ坊主だった芳之は、その古風な町で生まれた他の少年たちと同様、オヤジさんからは、よく「あれ」を食らったものだった。しかし、芳蔵の息子お仕置き法は、少し違っていた・・・それは、主に、自宅で造園業を営んでおり、自宅と仕事場が一緒、すなわち、芳蔵の家が、従業員を含めた大所帯、一つの大家族を構成していることによっていた。
芳蔵の一人息子・芳之は、子供の頃から、オヤジの仕事には興味津々で、家の外にある「仕事場」にはよく出入りして遊び、そこでやんちゃをしでかしていた。
芳蔵としては、一人息子が、オヤジの仕事に興味を持ってくれることはうれしかったが、造園業という仕事の性格上、子供がその仕事場に出入りすることはハラハラ・ドキドキの連続であった。
しかし、男の子である。オヤジの仕事に興味を持つことは大いに良いこと。いずれは自分の家業を息子に継がせたいと考えていた芳蔵は、息子・芳之を、仕事場に出入り禁止にすることはしなった。その代わり、「安全のための」厳格なルールを設け、それに息子が背いた時は、厳しくお仕置きすることにしていた。
特に、仕事場に置いてある、刃物類に手を出した時は、たとえ怪我をしなくても、厳しくてお仕置きし、そして、たっぷりと反省させたのだった・・・。
それは、10年前、芳之がまだ小6の頃。学校の一学期も終わろうとする夏休み直前の暑い時だった・・・。学校から帰ったばかりの芳之は、誰もいないはずの寺田造園の作業物置で、いつものように、オヤジたちの大切な仕事道具である鋏類を使って木や葉を切るマネをして遊んでいたのだった。
作業物置内のムッとする暑さも忘れて、その道具遊びに没頭する芳之。しかし、その楽しい遊び時間は、そう長くは続かなかった。
「コラァッ!!剪定鋏(せんていばさみ)をいたずらするなって、何度言ったらわかるんだ!!」
「あっ!」
と、芳之は、後ろからいきなり怒鳴られ、ビクッとして、手に持っていた重い鋏を、思わず作業物置の土床に落としてしまうのだった。
「コラァッ!!大事な仕事道具を落としやがって!!なんてことしやがる!!」
と、再び、後ろから怒鳴り声が聞こえる。それは、間違いなく、オヤジ・芳蔵の怒鳴り声だった!!
芳之の予想に反して、その日、オヤジたちは予定より一時間も早く、仕事から帰ってきてしまったのだった!!
勇気を振り絞り、やっとのことで、その声がする方へ顔を向ける芳之。作業物置の入口のところには、鬼の形相で仁王立ちのオヤジ・芳蔵がいた。
そして、その後ろには、いつも芳之とキャッチボールをして遊んでくれるやさしいお兄ちゃんの水島俊一が、「仕方ねぇなぁ・・・今日はかばってやれないぜ・・・」とでも言いたげな顔で立っていた。俊一兄ちゃんは、その時、入門10年目の27歳。「いっぱし」を卒業し、「若頭」をサポートする5人の「若副」のうちの1人に昇格していた。
さらに、やさしい俊一兄ちゃんの後ろには、俊一兄ちゃんの下で修行中の、入門したての「見習い」の職人が、数人立っていた。彼らはまだ十代だ。ニヤニヤ笑いを隠しきれない様子で、意地悪い目つきで俊一のことを見下ろすようにしていた。
まさに「現行犯逮捕」状態の芳之。言い逃れはできなかった。そして、オヤジ・芳蔵の行動も速かった。
「芳之!!落とした鋏を持って、こっちへ来い!!!」
と、芳蔵は、厳しい口調で、息子に命令するのだった。
「はい・・・・」
と、芳之は、もう泣きそうな元気のない声で返事をし、オヤジの命令に従うのだった。
そして、芳之は手に持った鋏をオヤジの芳蔵の渡すのだった。息子から受け取った鋏を調べる芳蔵。そこには、水島俊一の名前が彫られていた。
「俊一!これは、おまえのか?」
と、若副の水島俊一に、その鋏を見せる芳蔵。
若副の俊一は、ちょっと戸惑ったような顔で、それを受け取って調べると、
「ええ、コイツはオレの剪定に違いありません・・・」
と、答えるのだった。
「チッ!しょうがねえヤツだ!しっかりと子供の手の届かねえところにしまっとけ!!」
と、俊一を叱責する芳蔵だった。後輩である見習いたちの前で、親方から叱責され、頬を赤らめる俊一だった。
そして、芳蔵は、己の前に立って、もう泣き始め、グスグス鼻をすすっている息子の芳之を、
「芳之!!男のくせに、メソメソ泣いてんじゃねぇ!!!」
と、叱りつけるのだった。
「・・・・・グスグス・・・ズゥ〜〜!!ご、ごめんなさぁーーい・・・・」
と、オヤジさんから怒鳴られ、あやまりながらも、泣くことを止めることができない芳之。自分のせいで、大好きでやさしい俊一兄ちゃんがオヤジから叱られたことが、男として申し訳なくて、なぜか悔しくて、涙が出てきてしまうのだった。
メソメソ泣いている芳之に、芳蔵は、
「芳之!!オレの目を盗んでいたずらしやがって!!これから、どうなるか、わかってんな!?」
と、さらに厳しい態度を息子にみせるのだった。
オヤジさんから、まさに「お仕置き」宣告をされたも同然の芳之。目にはさらにいっぱい涙をため、
「えっ・・・・グスン!!」
と、わかってはいても、やはり「お仕置き」宣告のショックで、なにも答えられずにいる。
やさしい俊一兄ちゃんは、かわいい芳之のピンチだとばかりに、
「お、親方・・・じ、自分が、その剪定を、道具箱にしまい忘れたのがいけねぇんです・・・どうか、芳之のこと、許してやってください!!」
と、芳之の助命嘆願ならぬ、助ケツ嘆願をするのだった!!
しかし、芳蔵は、さっきとは打って変わって、やさしい口調で、
「俊一よ・・・おめえは、やさしい野郎だなぁ・・・いつも、芳之のこと、かわいがってくれて、感謝してるぜ・・・けどなぁ、やさしいばっかしじゃ、若頭にはなれねぇぜ・・・」
と、弟子の俊一を諭すのだった。
「は、はい・・・そ、それは・・・わかってます・・・」
とだけ答え、口ごもってしまう俊一。
親方・芳蔵は、再び、厳しい口調になり、
「いいか、俊一!!おめえも、一人前の庭職だったら、庭職として命の次に大事な剪定を、無断でいじられた上に、土の上に落とされて、はいそうですかって、黙っていられんのか?えっ!?いられねぇだろうが!!!違うか!?」
と、詰め寄ってくる。
「ま、まあ・・・そうッスけど・・・」
と、自信なさげに答える俊一。
「バカ野郎!!まあそうッスけどじゃねぇ!!おめえの鋏を無断でいたずらした挙句、落っことしやがった、この芳之を、ビシッと叱るのが本当だろうが!!」
と、親方。
「は、はい・・・そ、それは、わかってるッス・・・」
と、俊一。
「だろうが!!芳之のこと、ただじゃ許せねぇはずだ!!」
「ま、まあ・・・」
と、再び、自信なさげな俊一。
そんな「ノリ」の悪い俊一に、ついに痺れを切らした親方・芳蔵は、
「まあじゃねぇ!!このまあまあパンダ!!!」
と言い放つ。見習いたちから、ドッと笑いが起こるが、その場の空気を察してか、その笑いはすぐに止むのだった。
そして、芳蔵は、
「いいかぁ、俊一!オレが許す!!今日は、ここにいるオレのバカ息子のケツを、おめえが、思いきりぶん殴ってやってくれ!!」
と、弟子の俊一に、息子・芳之のケツを叩くように「依頼」するのだった。もちろん、それは事実上の親方命令だった。
「えっ・・・そ、それは、親方・・・芳之はまだ見習いになったわけじぁ・・・」
と、咄嗟に、親方からの「依頼」を断ろうとする俊一。
しかし、親方・芳蔵は、たたみ掛けるように言うのだった。
「バカ野郎!!くだらんへ理屈こねてんじゃねぇ!!いいか!コイツがオレのいいつけを守らず、ここでおめえの仕事道具をいたずらしやがったのは、いままでに10回や20回じゃ、きかねえはずだ!!オレは、今日っていう今日は、コイツに、仕事場でのケジメってヤツを、ビシッと叩きこんでやりてぇんだ!!俊一・・・おめえもそのことはわかってんな!?」
「は、はい・・・」
「なら、迷うこたぁねぇだろ!!トットと脚立をここへ持ってきて準備しろ!!」
と、命令するのだった。
そして、息子・芳之が逃げないように、息子の右腕をギュッとつかむと、涙目の息子をジッと睨み下ろすのだった。泣きながらも、思わず、オヤジと目が合ってしまう芳之。オヤジの目は、
「いいか、これからおめえの大好きな兄ちゃんから、ケツを叩いてもらうんだ!兄ちゃんから嫌われたくなかったら、男らしく、覚悟を決めやがれ!」
と、自分に語りかけているように感じる芳之だった。
「脚立」と聞いて、思わず、苦笑いし、ケツをさするようなしぐさを見せる見習いたち・・・「脚立」は、芳蔵の弟子たちにとって、センチメンタルな尻叩きのための道具だった。
芳蔵は、弟子たちが仕事場でヘマをすると、仕事から戻ってきてから反省ミーティングを開き、罰として、土をならすための木槌の柄の部分だけとってきたものを「尻叩き棒」にして、ケツ叩きの懲罰を敢行するのだった。
それは、親方の芳蔵、または若頭、または若副が、脚立に片足を太腿が地面に水平になるように乗せ、その水平になった太腿に、ヘマをしでかした弟子が屈んでケツを出し、その突き出されたケツを、「尻叩き棒」で数回打ち据えるというものだった。
ヘマの度合いにより、打たれる回数が決められ、ヘマの度合いが大きいと、庭職の仕事着である股引のケツ宛ての部分をペロンと下ろして、生ケツ丸出しで打たれることもある、痛し恥ずかしの、弟子たちには「ためになる」懲罰だった。
覚悟を決めたような顔をして、作業物置から、脚立を持ってくる俊一。俊一は、それを拡げて、地面にドンと置くと、その梯子段のちょうど三段目あたりに、左足をかけ、芳之がケツを出すための「お仕置き台」を、己の太腿でつくるのだった。
仕置きの準備が整ったのを見ると、今度は、オヤジの芳蔵が、息子・芳之に、意外なほどにやさしい口調で、
「しょうがねぇよな・・・芳之・・・オレとの約束やぶって、兄ちゃんの道具で遊んでたんだもんな・・・」
と、諭すように言うのだった。
芳之も、左腕で涙を拭き拭き、
「は、はい・・・ごめんなさい・・・」
と、覚悟を決めた口調で返事をするのだった。
お仕置き場所は、寺田造園の広い敷地内の作業物置のすぐ外。日差しがまだ強い、暑い夏の夕方だった。
「よし!それでこそ男だ!!ズボンとパンツを下ろせ!!」
と、息子に厳しく命令する芳蔵。
息子・芳之は、あきらめのため息をもらすようにしてうつむくと、恥ずかしそうに、ジーンズ半ズボンとブリーフを下ろすのだった。
ジーンズ半ズボンとブリーフを膝まで下げた息子に、芳蔵は、
「まだダメだ!!完全に脱げ!!ズボンとパンツは、仕置きが済むまで、オレが預かっておく!!」
と、容赦のない、下半身スッポンポン命令を下すのだった。そして、真っ赤な顔になって、恥ずかしそうに、膝まで下げたジーンズ半ズボンとパンツをさらに下げて、脱ぎ捨て、それをオヤジに渡す芳之だった。
ランニングシャツ一枚の芳之の股間にチョコンと出ている「皮被り」は、周囲から丸見え。周りの見習いの弟子たちは、芳之のかわいいイチモツを指さしながら、ニヤニヤ笑って、お互い、なにやらヒソヒソ話をしている。それに気がついた芳之は、恥ずかしそうに、そして、悔しそうに唇をかみしめ、下を向き、己の恥部を隠すようにランニングシャツの裾をできるだけ伸ばそうとするのだった。
芳之のお仕置き準備が整ったのを見て、オヤジ・芳蔵は、弟子の俊一に、目で合図する。親方からの合図に、コクリと頷くと、俊一は、心を「ちょっと」だけ鬼にして、己の左太ももをパチィ〜〜ンと叩き、
「芳之!!お仕置きだ!!こっちへきて、ケツを出せ!!」
と、命令するのだった。
「は、はい・・・グスン!!」
と、ちょっと悲しそうな涙声になりつつも、素直に覚悟決めて、兄貴の「太腿」の方へと近づくのだった。大好きなお兄ちゃんから、厳しい声で、お仕置きだからケツを出すよう命令され、芳之は、再び、泣きたくなってしまうのだった。
俊一兄ちゃんの太腿に、まるで鉄棒の前回りをするかのように両手をかけてよじ登ると、体重を前に移動して、上体を下げ、ケツを出す芳之。かわいい芳之のプリッとしたケツが丸出しになる。ケツを出しながら、芳之は、「兄ちゃんのももって、すごくかたいなぁ〜〜」と思うのだった。もちろん、高校時代、空手で鍛えた俊一の太腿は、鋼のごとく硬かった。
夏の屋外でのお仕置きだ。芳之の生ケツが藪蚊の餌食にならないように、すでに用意周到、蚊取り線香がたかれていた。
若副の俊一と息子の芳之が準備万端整ったのを見ると、オヤジの芳蔵は、
「 よし!オレの前だからって、遠慮はいらねえぜ!コイツのケツに、男がけじめをつけるってのはどういうことか、ビシッと教えてやってくれ!!」
と、俊一に声をかけるのだった。
俊一は、左手で芳之の腰のあたりをギュっと押さえ、右手を頭上高く上げるのだった。
ケツの後ろにその気配を感じ、ケツにさっと鳥肌が立つような感覚に襲われる芳之。俊一兄ちゃんの太腿にギュッとつかまって、ギュッと目をつむり歯を食いしばるのだった。
それは二人にとっては、異様に長く感じる間だった。芳之、俊一ともに、心臓がドキッドキッと高鳴る・・・芳之が俊一兄ちゃんからケツを叩かれるのが初めてならば、俊一が、小6の子供のケツを、お仕置きとして叩くのも、初めてだった。
再び、俊一兄ちゃんは、「ちょっとだけ」心を鬼にして、その振り上げた右腕を、ブンと振り下ろし、
パチィ〜〜〜ン!!
と、芳之のケツを打ち据えるのだった。
俊一兄ちゃんからお仕置きの一発目を食らい、ケツに感じた熱い衝撃に、芳之は、ギュッと俊一兄ちゃんのかたい太腿にしがみつくのだった。
周りの見習いたちは、「いまのはそれほどでもなかったな・・・」と思いながらも、「これからが本番・・・本番・・・兄貴のケツ叩きは、キツイからなぁ・・・」と思いながら、ニヤニヤして、お仕置きの様子を高みの見物だった。
一方、俊一は、一発目を終え、芳之を心配そうに見るのだった。芳之が自分の太腿にギュッとしがみついてくるのを感じる俊一だった。そして、俊一は、また「少しだけ」心を鬼にして、
パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!
パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!
と、芳之のケツを、右、左、中央と連打していく。そして、ケツ叩きが10発を超えた頃だった。
芳之が、足をバタバタさせ始め、甘えたような声で、
「お尻から火が吹いてるよ〜〜、お尻が熱いよ〜〜〜!!」
と、助けるを求めるような声を出し始めたのだった。
俊一が芳之のケツを叩く様子を傍らでジッとみていたオヤジ・芳蔵は、息子のその声に、
「なにィ〜〜、火が吹いているだと!!よし!!オレが調べてやる!!」
と、ちょっと怒ったような声で、芳之の少しピンク色に染まったケツの方へと近づき、 息子の左右の両ケツペタを、片方ずつ、ギュ!ギュ!とつまむようにして、「火が吹いてるか」どうかを調べるのだった。
そして、息子のケツを調べ終えると、芳蔵は、いきなり、
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、息子のケツの中央部に、腰を思い切り入れた右手・平手打ちを食らわすのだった!!
「ぎゃぁ〜〜〜!!痛いよぉ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
と叫び、さらに足をバタバタさせる息子・芳之だった。
芳蔵は、
「 火なんて吹いてねぇじゃねぇか!!この大ウソつきめ!!なめたマネしやがると承知しねぇぞ!!」
と、芳之を怒鳴りつけ、右手のひらを大きく開き、右腕を大きく後ろに振りかぶり、思い切り腰を入れて、それをスイングさせるように前に振り、さらにもう一発、
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、息子の丸出しのケツに、強烈な平手打ちを食らわすのだった。ピンク色に染まっていた芳之のケツに、今度は、少し濃いオヤジの手のひらの痕がベッタリとつくのだった。
「俊一!!おめえも、もっと真剣にコイツのこと叱ってやってくれ!!おめえが、真剣じゃねぇから、コイツもなめたこといいやがるんだ!!」
確かに、俊一の右手のひらと芳之のケツの「接触音」は、ド派手だった。しかし、俊一は、親方にはわからないだろうとたかをくくり、微妙に手を抜いて、親方の息子である芳之のケツを叩いていたのだった。
しかし、もうその手抜きは、親方・芳蔵が許さなかった。
「いいか!俊一!大人をなめるようなマネしやがったら、どういう目に遭うのか、タップリと、芳之のケツに教えてやってくれ!!」
と、芳蔵は、俊一に、手抜きなどせず、もっと真剣に芳之のケツを叩くように促すのだった。
再び、見習いの後輩たちの前で、親方からどやされ、俊一は、ちょっとふれくされ気味に、
「親方・・・自分、マジで、本気だしていいんスかぁ?」
と、親方に挑戦するかのような口調で言うのだった。
「バカ野郎!!おめえ、いままでなに考えてやがったんだ!!」
と、さらに語気を荒げる親方。そして、
「いいか!!俊一だけじゃねぇ!!ここにいる全員に俺は言ってるんだ!!もし、コイツが仕事場でいらずらをしでかしやがったら、オレの息子かどうかだなんて、関係ねぇ!!遠慮なくビシッと叱ってやってくれ!!いいな!!」
と、俊一だけでなく、まわりにいた見習いたちにも、語りかけるように言うのだった。
弟子たちからは、それぞれが、小さな声だったが、
「はい・・・親方・・・わかりました!」
との返答があった。
それは、仕事場における「しきたり」と「序列」を、俊一をはじめとする弟子たちだけでなく、いま俊一の太腿にしがみつき、ケツ丸出しで仕置きを待っている息子・芳之にも確認させるための、親方そしてオヤジ・芳蔵の説教だったのだ。
「さあ、コイツのケツを存分に叩いてやってくれ!!仕事場での仕置きに、オレの息子かどうかなんて、関係ねぇんだ!!」
と、息子のケツへのキツイ仕置きを、弟子・俊一に依頼する親方・芳蔵だった。
それを聞いていた芳之は、俊一の太腿をさらにギュッとしがみつき、
「あ〜〜〜、今度は、もっと痛いのが来るよ〜〜」
と、覚悟を決めるのだった。
俊一は、芳蔵の目をジッと見つめる。そして、親方の「マジ度」をその瞳の中に確認すると、黙って頷き、
「さあ、芳之!!今度のは、痛てぇぞ!!しっかり歯を喰いしばってろ!!」
と、命令すると、さきほどよりもやや力を込めて、左手で芳之の腰をグッと固定すると、右手を高く後ろに上げ、それを、芳之のケツの少し下のあたりを狙うようにして、ブン!と思い切り力を込めて振り下ろすのだった!!
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、芳之のケツのど真ん中に着地する、俊一の平手。
まわりの見習いたちは、
「入った!!」
「いまのマジだ・・・」
と思う。見習いたちの顔から、ニヤニヤ笑いが消えるのだった。
さっきほどのド派手な音はしない。しかし、それは、最初のケツ叩きより、ズシリと重く、芳之の脳天まえでガツンと響くものだった。
「いっ・・・・・」
思わず、うめき声にもならない音を芳之は発しただけ、あとは、俊一兄ちゃんの太腿にギュッとつかまって、ケツに感じるジリジリとした焼けるような痛みにジッと耐えるのだった。不思議と涙は出てこなかった。泣いたら、俊一兄ちゃんに恥ずかしいと思うのだった。
高校時代は、空手部で鍛えた水島俊一の平手は、鋼のように硬い。そして、最初の十発は、上手に力を抜きつつ、腕を振り切ってしまうことなく、芳之のケツのすんでのところで腕を止めていたのだった。
しかし、今度は、力を抜かずに、すんでのところで、一瞬、腕を止める。それは、腕を振り下ろす力を、己の平手から、すべてあまさず、芳之のケツにガツゥ〜〜〜ンと伝える、俊一兄貴のケツ打ちテクニックの一つだった。
すなわち、空手という武道の有段者である俊一は、己の力を強弱自在にあやつる術を体得していたのだった。そう、ある時は抑制的に、そして、ある時は爆発的に、
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、芳之のケツに己の平手を打ちこめるのだった!!
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、右ケツペタ、左ケツペタ、そして、ド真ん中と、俊一兄ちゃんの平手は、容赦なく、芳之のケツを打ち据え、「大人をなめんじゃねぇぞ!!」とのメッセージを芳之の脳天へぶちこんでいた。
追加の十発もしないうちに、芳之のケツは、みるみるまに真っ赤に染まっていく。そして、その赤みが深まるにつれ、ケツに累積してくる熱い焼けるような痛みに、芳之も我慢しきれなくなってくる。
次第に、俊一兄ちゃんの太腿の上でケツをモジモジ動かすようになり、そして、両足もバタバタさせるようになる。俊一は、芳之のその反応を見て、連打から、ケツを打つを間隔を少しずつ緩め、
ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、一発入れては、芳之の反応を観察し、また
ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、一発入れては、芳之の反応をみるようにしていた。
そして、追加のケツ叩きも二十発に近づいてくると、芳之の口から、涙声まじりで、
ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
「ごめんなさい・・・グスン!!」
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
「もうしません・・・許して下さい・・・グスグス!!」
と、真剣に謝る声が聞こえてくるのだった。
その声を聞いて、こいつは真剣に反省しているなと思った俊一兄ちゃんは、
「よし!!これまでだ!!」
と言って、芳之の両脇を持って、その場に立たせてやるのだった。
芳之は、恥ずかしそうに、モジモジしながら、そして、必死でケツを両手でさすりながらも、
「お兄ちゃん・・・ごめんなさい・・・」
と言うと、ペコリと頭を下げるのだった。
そのかわいらしさに、思わず笑みがもれる俊一。しかし、その笑みをかみ殺すかのように、兄貴としての威厳を示すかのような口調で、
「よし!今回だけは許してやる!もう二度と物置で勝手に遊ぶんじゃねぇぞ!!危険なんだからな!!」
と言うと、芳之の頭を、さっきまでケツを打ち据えていた右手のひらで、「よくがんばった!」とのメッセージでも伝えるかのように、ギュギュとこするように撫でてやるのだった。
もちろん、ケツ叩きが済んでもお仕置きが終わったわけではない。芳之は、まだ、オヤジの芳蔵から、パンツとズボンを返してもらってなかった・・・。
ケツ叩きの後は、いつも、寺田造園の母屋、すなわち、芳之たちの家に戻っての反省のコーナータイムが芳之を待っていたのだった。
しかし、今回は、オヤジ・芳蔵には、考えるところがあった。
「そろそろ、コイツにも、あれを経験させた方がいいな・・・」
と芳蔵は考えていた。ここで「あれ」とは、寺田造園でヘマをやらかした時、その制裁のケツ叩きを受けた後に科される、反省のための恥辱のコーナータイムだった。若職人たちの休憩小屋の隅で、ケツ丸出しで反省のため正座させられるのだった。
もちろん、そこでは、芳蔵の目は届かない。コーナータイムの監視役は、若職人仲間同士が行う、弟子たちだけによる自治制度が、成り立っていたのである。そして、そこで受けなければならないのは、反省のためのコーナータイムだけではなかったのだ。ケツ丸出しで正座しコーナータイムをしなければならない弟子には、若職人仲間たちからの制裁が待ちうけていたのだった。
芳蔵は、息子に、弟子たちの間にあるその「しきたり」を教えるのに、今が絶好の機会だと考えたのである。
芳蔵は、俊一からのケツ叩きを食らい終えた息子・芳之の腕をギュッと掴むと、
「さあ、こっちへ来い!!」
と言って、息子を引っ張るように、若職人たちの休憩小屋へと連れて行くのだった。
その休憩小屋は、寺田造園の広い敷地の一番端っこ、母屋からは一番距離のあるところにあった・・・。自分の家ではなく、いつもとは違った方向に、ランニングシャツ一丁、下はフルチンのまま、オヤジに引っ張られていく芳之の顔には、ありありと不安の表情が浮かんでいた。
そして、その休憩小屋につくと、その六畳ほどの和室の隅に、放り投げるようにして息子を座らせると、
「いいか!!オレがいいって言うまで、そこで、しっかり反省してろ!!」
「はい・・・」
と元気なく返事をして、正座の足の痺れを覚悟しつつ、いつもの通り、部屋の角の方を向き、真っ赤なケツを後ろに晒したまま、反省のための正座をする芳之だった。
しかし、
「おめえら!コイツが、まじめに正座して反省してるかどうか、オレの代わりに、しっかり見張っておけ!!」
と弟子たちに命令すると、オヤジ・芳蔵は、その休憩小屋から出て行ってしまうのだった。
「えっ!」
と思わず、首を後ろに向ける芳之。
すでに、オヤジは、部屋から出て行っていなかった。もちろん、やさしい俊一兄ちゃんもいない。
自分の後ろで、自分のコーナータイムの監視役として残っていたのは、年の頃は16〜18歳くらいの、見習いの職人たち数人であった。彼らは、全員、ニヤニヤしながら、まるで、獲物を見つめる猛獣のように、芳之に視線を集中していたのだった。
小6の男の子にとって、男子高校生くらいの年の職人たちは、とてつもなく怖い存在だった。芳之は、恐れおののくかのように、後ろに向けていた顔を、すぐに前に向け、ギュッと目をつむる。そして、無意識のうちに、なにか怖くて、膝がガタガタ震えてきてしまうのを、必死でおさえようとするのだった。
芳之を、見習いの弟子たちに任せて、母屋へと戻ってきたオヤジ・芳蔵。心配でないわけはなかった。しかし、いつも大人の中でかわいがられ甘やかされている、一人息子の芳之に、将来、自分の弟子になった時に先輩になるであろう彼らの中で「もまれる」経験をさせたかったのである。
少しのからかいと少しのいじめと少しの暴力・・・それらは、少年が一人前の野郎に成長するために、どうしても必要な「必須栄養素」のようなものかもしれない。
芳蔵は、息子が泣いて逃げだしてくるのか、それとも、彼らから「いじられる」ことに耐えて、少しは成長して戻ってくるのか・・・母屋でジッと待つことに覚悟を決めていた。もちろん、息子が、まだ見習いの弟子たちから、どう「いじられる」のかは、己の経験から、芳蔵にも、想像することはできるのだった。
案の定、親方が、その休憩小屋から出てしばらくすると、親方の前では自分にやさしい兄ちゃんたちの態度が、突然、意地悪いものになるのだった・・・。そして、それが、若者たちの間の「序列」のルールであることを、芳之は、身を以って知ることになるのだった。
芳之の監視役の若職人たちは、芳之の後ろから、芳之に向かって、丸めたティッシュを、ポンポンと投げつけてくるのだった。そして、
「コラァッ!芳之!!しっかり反省してるのか!!」
と、親方の声色を真似て、芳之に声をかけてくるのだった。
「絶対に後ろは振り向かない!」と無視を決め込む芳之に、若職人たちは、
「コイツ、俺たちのこと、無視してやがる!!」
「生意気じゃん!!」
と始まるのだった。
そして、
「オイ!芳之!!こっち向けよ!!」
とか、明らかにからかって、
「芳之君!!こっち向いてくれないと、オイラ、さびしいよ〜〜!!ガハハハハ!!!」
と、声をかけてくる。
それでも、それに無視し続ける芳之に、若職人たちは、口調を荒げ、
「芳之!こっち向けって言ってんのが聞こえねぇのかよ!!」
と言って、ついには、芳之の後ろに来て、芳之の両脇をかかえると、
「こっちへ来いよ!!」
と、芳之をズゥズゥーーっと、引っ張り出すのだった。
仰向けになって、ケツを畳に擦られながら、ただただ引っ張られるしかない芳之。ケツと畳が擦れて、ケツに火を押し付けれたように熱かった。しかし、芳之は、
「あっ熱い・・・や、やめて・・・・」
と、声に出すのがやっと。怖くて、抵抗などできなかった・・・。抵抗したとしても、到底かなわない相手であることは、芳之にもわかっていた。
情けなさがこみ上げてきて、鼻がツゥ〜〜ンとなり、目には涙が溢れてきて、わんわんと泣きたくなる。しかし、それを必死で堪える芳之。
「俊一兄ちゃん・・・助けて・・・」
と、必死で祈ってみる芳之。しかし、俊一は助けに来ることはなかった。俊一は、芳蔵から、別の仕事を言いつけられており、休憩小屋に様子を見に来ることはできなかったのだ。
そして、ランニングシャツ一丁、おちんちん丸出しのまま、若職たちが胡坐をかいている円座のド真ん中へと、引き出されてしまう芳之だった。
まずは、軽く歓迎のあいさつか・・・若職人たちは、胡坐をかいたまま、芳之を膝の上に乗せて、
「芳之!!オレたちからも、お尻ペンペンしてやっからな!!ありがたく思えよ!!」
と言うと、平手で芳之のすでに真っ赤なケツを、
パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!
と一人が叩いては、次のヤツの膝の上にまわし、
パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!パチィ〜〜〜ン!!
とまた一人が叩いては、次のヤツの膝の上にまわす。まさに、「ケツ叩き・まわし」のいじりの試練を、芳之に与えるのだった。
それが済むと、今度は、仰向け、
「あっ!コイツ、もうチン毛はえてきてるじゃん!!」
と、「おちんちん解剖!!」の試練が、芳之を待ちかまえている。
チン毛が生えてきてると言っても、まだまだ小6だ。うぶ毛とは違う、縮れた剛毛が、ほんの2〜3本、芳之の「皮被り」やタマタマの周辺に、ニョロッと生えてきてるだけだった。
しかし、それも十分にからかいの対象になるのだった。
「コイツのチン毛、切っちゃおうぜ!!」
と誰かが言えば、誰かが、なんと剪定鋏を持ってきて、芳之のチン毛を、切ってしまうのだった!!
もちろん、仕事に使う「庭職にとって命の次に大切な」剪定で、チン毛を切ったことが親方にわかれば、彼らにもキツイお仕置きが待っていることは確かなのだが、そこはまだまだ見習いの甘さだった。
「おちんちん解剖!!」の試練は、まだまだ続く、当然、チン毛の次は、竿である。
「コイツ、立つのかな・・・」
と、誰かが、意地悪く言ったかと思うと、また誰かが、
「実験してみようぜ!!」
と言う。
そして、芳之の股間のイチモツが、若職人たちのあやしげな指によって、つままれ、もまれ、引っ張られ・・・そして、シコシコと、扱かれるのであった。
シコッシコッ!!
シコッシコッ!!
と、若職人たちの指が、遠慮なく、芳之の股間に伸び、芳之の「皮被り」を扱きたおしていくのだった。
芳之も、健康な男の子。いや、もう男になりつつある、男の子であった。股間がだんだん気持ちよく、重くなってくる・・・
「や、やめて・・・お、おしっこが、で、でちゃうよ・・・」
と、若職人の兄貴たちに、指の動きを止めるように、必死で懇願する芳之。すでに精通現象は、夢精により果たしていたが、はっきりと意識があるときに、その股間のむず痒い重さを体験するのは、生まれて初めて。その生理現象の本当の意味を知らないでいた。
もちろん、「解剖」中は、若職人の兄貴たちによって、しっかり畳の上に押さえつけれられ、抵抗することはできない・・・
シコッシコッ!!
シコッシコッ!!
シコッシコッ!!
シコッシコッ!!
と、その容赦なき扱きに、ついに、芳之の股間のイチモツの高まりは、最高潮に達し、ついには、
「あっあぁぁぁ・・・・・出ちゃうよ・・・・」
と悩ましげな声を上げる芳之。
ドピュ!!ドピュ!!
と、まるで、その若職人の兄貴たちの顔に、己の精液をぶっかけるような勢いで潮を吹く、芳之のイチモツ・・・。
若職人の見習い兄貴たちは、それを見て、
「あ〜〜あ!!コイツ、出しちゃったよ・・・・ったく、早漏だな!!ガハハハ!!」
と大笑いするのだった。
芳之は、股間に気持ちよさを感じつつも、自分が、なにかとてつもなく悪いことをしたのではと不安になり、シクシクとべそをかき始めるのだった。
そんな芳之に、最後の試練が襲いかかる。
「うわぁ!!コイツのチンチン、ネチョネチョだ!!汚ったねぇ〜〜〜!!」
「かわいそうだろ!!誰か、ティッシュで拭いてやれよ!!」
「やだよ!!マジ汚ねぇ!!」
と、若職人の兄貴たちは、「解剖結果」の報告会を意地悪くする。そして、ついには、
「あっ!!そうだ!!コイツのこと、布団でグルグル巻きにしちゃおうぜ!!」
と言ったかと思うと、休憩小屋に備え付けの昼寝用のせんべい布団を拡げ、芳之の両腕と両足を持って、芳之を持ちあげると、その布団の上に寝かせるのだった。そして、芳之は、あれよあれよいう間に、その布団でグルグル巻きに「簀巻き」にされてしまうのだった。
「サッカーしようぜ!!」
と、若職人の兄貴たちは、「芳之いじり」の仕上げをしようとする。
もちろん、彼らは、芳之に怪我をさせるような蹴り方はしなかったが、布団でグルグル巻きにされた芳之は、休憩小屋の六畳の畳の上を端からは端まで、足蹴にされてはゴロゴロ、また足蹴にされてはゴロゴロと、何往復も転がされるのであった・・・。
ついに、芳之は、情けなくて、悔しくて、
「ごめんなさい・・・許して下さい・・・わぁ〜〜〜〜〜ん!!!」
と、大声を出して、泣き始めてしまうのだった。
もちろん、若職人の見習い兄貴たちは、「これはチトやりすぎたかも・・・」と、芳之を蹴るのをやめ、布団から出してやると、泣いている芳之を囲んで、
「悪かったよ・・・泣くなよ!!ちょっとからかっただけだろ・・・」
「そうそう・・・おまえのことがかわいくてさぁ・・・」
「悪く思うなよ!ちょっといじってやっただけだからな!!」
と、今度は、励ますように、芳之の肩や背中をポンポンと叩くのだった。
「そうそう、おまえ根性あるよ!!空手部出身の兄貴のケツ叩きチョップによくあれだけ耐えられたなぁ!!」
「そうだよな!!オレだったら、すぐにギブだよ!!おまえ、すげえ!!だから、泣くな!!」
と、芳之をおだてるようなことを言い始めるのだった。
芳之も男の子だった。おだてられて悪い気はしない。若職人の見習い兄貴たちに褒められて、ちょっと自慢したい気分になり、ようやく泣くのをやめるのだった。
「さあ、もういいから、あっちいって、正座してろ!!そろそろ親方がくるぞ!!」
と、若職人の兄貴たちからの「いじり」からやっと解放され、再び、部屋の隅で、反省のコーナータイムをする芳之だった。
正座をしながら、芳之は、休憩小屋で若職人の兄貴たちから「いじられた」ことを告げ口するつもりなど毛頭なかった。
俊一兄ちゃんと同じくらい、ここにいる見習いの兄ちゃんたちのことが好きになりつつあったからだ!!でも、まだあの兄ちゃんたちのことちょっと怖いけど・・・そんなことを思いながら、芳之は、反省の休憩小屋にパンツとズボンを持ってお仕置き終了を告げに来る「親方」芳蔵の足音を、いまは遅しと待っていたのだった。
あっというまの反省タイム一時間。見習いの兄ちゃんたちから「いじられた」おかげで、実質的な正座時間も超短くなり、足もしびれなくて、オチンチンはちょっと気持ちよくて・・・あとから考えてみると、芳之にとって、そう悪くはない、反省のコーナータイムだったのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!
と、いまだ、田所家の母屋から響いてくるケツ叩きの音・・・。
若頭の水島俊一(37)と、見習いの芳之(21)は、並んでタバコをふかしつつ、10年前の寺田造園でのちょっと恥ずかしい出来事を思いだしながら、お互い、無言のまま、その音を聞いていた。
「さあ、仕事に戻るか?もう、仕事に集中できるな!!芳之!!」
「はい!兄貴!!」
そういうと、二人は立って、親方たちのいる庭園の方へと戻っていくのだった。