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2010新春・新作短編 ケツ丸出しのヒーローたち 〜とある野球部の納会風景〜 番外編3 OB田所新之助物語  

五、弟・菊之助のお仕置き覗き

  自分の生ケツが打ち据えられる毎に、新之助の脳裏に蘇ってくるあの罵声・・・「この変態男!!」と自分の背中に浴びせられた吉田太郎君の母親のあの罵声が、新之助をいたたまれない気持ちにさせる。しかし、その一方で・・・

「俺はどうしようもない変態男だ・・・太郎君のおかあさんは、俺がいま、オヤジの膝上でケツ丸出しとなり、ケツを叩かれていることを知っているのだろうか・・・しかも、オヤジに迷惑かけたことを反省するどころか、オレの股間のイチモツは、ケツを叩かれば叩かれるほど、ますますギンギンに熱く硬くなってくる・・・ああ、太郎君のおかあさんの罵声を、今まさにここで、もう一度、浴びせられたい!!『この変態男!!』・・・ああ、女王様・・・この変態男めをお許し下さい・・・」

と、この期に及んでもまだ反省が十分でない新之助。

 そのことを知ってか知らずか、新之助のオヤジ馬之助は、

「まだまだ反省が足りん!!」

とつぶやきながら、その平手打ちを

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

と、回数を増すごとにヒートアップしてくる。

 オヤジからのケツ叩きも、すでに50発を超えていた。高校時代、硬式野球部で鍛えたムッチリ・プリケツの堅尻を持つ新之助にとっても、猛烈オヤジからの猛烈平手打ちは、平手と雖も、ズシィ〜ンと重かった。それは、新之助のケツと心に、ズシリとこたえるオヤジからの愛のムチだったのだ。

 加えて、オヤジの膝上で生ケツ丸出しという事実は、21歳の新之助にとっては、非常に恥ずかしいものだった。

 特に、オヤジからのケツ叩きにのぞむ時、己の股間の強張りを、いやがうえにもオヤジに見られてしまう。なぜなら、田所家のお仕置きは、常に、息子がマッパフリチンになり敢行されたからだ。

 そんな自分の恥部をオヤジにみられてしまう。まるで、自分がオナニーしている時の痴態をオヤジに見つかってしまうかのように。新之助にとっては、そのことこそが、一番恥ずかしいことだった。

 そして、広い豪邸とはいえ、防音設備などない木造平屋建て住宅だ。

「あぁ・・・オレがケツ叩かれてる音、みんな聞いてんだろうなぁ・・・」

と思うと、もう恥ずかしさで、カァ〜〜と後頭部が熱くなってくる新之助だった。

 そう、その音は、家中に、そして、庭で働いている使用人たちにも丸聞えだったのだ。

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

 そして、オヤジのケツ叩きが、100発を超えた頃だった・・・オヤジの膝上で、真っ赤になった生ケツをさかんにモジモジさせる新之助は、障子の向こうからの視線を感じるのだった。

 絶え間ないオヤジからのケツ打ちの痛みをどうにかやり過ごしながら、首をちょっと横に向ける新之助・・・。

「あっ!菊之助のヤツ・・・覗いてやがる・・・」

 それは弟の菊之助だった。菊之助は、オヤジの背中側にある障子をわずかに開けて、その隙間から、兄貴・新之助のお仕置きの状況を覗き見ていたのだった!!

 菊之助は、緑翠舎高校の三年生。来年は大学受験だ。オヤジ・馬之助からは、「万が一、浪人したら、兄貴たちが見ている前でケツ百叩きだ!それが嫌だったら、しっかり勉強せい!!」と、言い渡されていた。そうなのだ。現役合格のためには、その夏休みが「天王山」。なにがなんでも、必死こいて勉強せねばならぬ時だった。

 しかし、朝から蒸し暑い中、兄貴のケツ叩きの音である。勉強に集中できるわけがない。それで、兄貴がオヤジにとっちめられている状況をそぉ〜〜っと覗きに来たのである。それは、来春の「万が一」の時のための事前偵察でもあった。

「やばい・・・オヤジの平手の威力は全然、衰えてねぇ・・・昨日まで、選挙で、握手責めだったのに・・・」

と、菊之助は、兄貴・新之助に打ちおろされるオヤジさんの平手の威力・迫力を目の当たりにして、来春の「万が一」の時の己のケツの運命のヤバさを感じ取るのだった。

 そんなとき、思わず兄貴と目があってしまう!!

「やばい・・・」

思いつつも、条件反射的に、兄貴に向かって、ピースのVサインをしてしまう菊之助だった。

 それを見た新之助は、

「あいつ・・・人のケツが火を吹いてる時に・・・ピースなんかしている場合かよ!!」

思うのだった。

 その場の微妙な雰囲気の変化を察知したオヤジは、一瞬、新之助のケツを叩くのを止めるのだった・・・。

「ヤバし!!さては、オヤジが気がついたか!!」

思い、そぉ〜〜〜とその場を去ろうとする弟・菊之助。しかし、それは一歩遅かった!!

「コラァ!!菊之助!!男だったら、コソコソしとらんで、入ってこい!!」

と、オヤジ・馬之助が命令する。オヤジ・馬之助は、背中にも目があるのだ!!

「は、はい;;;;」

と、背中に冷や汗で、立ちあがって障子を開け、「お仕置きの仏間」に入ってくる菊之助。気まずそうな表情で、顔は真っ赤。真っ赤なケツ丸出しで、オヤジの膝の上に乗ったまま顔を上げ、自分を睨みつける兄貴・新之助とは目を合わすことができなかった。

「勉強に身がはいっとらんようだな!!」

「は、はい・・・す、すいません・・・」

「兄貴がケツ叩かれてるとこなんぞ覗きに来やがって・・・そんなことじゃ、来年の合格は、おぼつかんぞ!!」

「す、すいません・・・も、戻って、勉強します・・・」

と、どうにかその場を逃げ切ろうとする菊之助。

 しかし、それをオヤジは許さなかった。

「ダメだ!!部屋に戻る前に、お前のその雑念をきれいさっぱり、すっ飛ばしてやる!!裸になってこっちへ来い!!」

、菊之助にも、お仕置き宣言するオヤジだった。

 オヤジに逆らうことはできない。菊之助は、

「は、はい・・・」

と、真っ赤な顔で返事をすると、短パンとTシャツ、そして、パンツを恥ずかしそうに脱ぎ始めるのだった。

 そして、

「新之助!!立て!!菊之助が終わるまで、向こうで正座しとれ!!」

と、オヤジは新之助に、仏間の隅での正座コーナータイムを命じるのだった。

 新之助は、いまだ屹立している己の男性自身を恥ずかしそうに両手で隠しながらも、今度は、弟がケツを叩かれると聞いて、ほくそ笑みたいのを必死で抑えながら、仏間の隅に行き、正座するのだった・・・。

 今度は、オヤジの前に、弟の菊之助が、マッパフリチンで気をつけの姿勢。オヤジ・馬之助は、

「さあ、こっちへ来い!!」

と言って、菊之助の左腕をグイと掴むと、己の膝上に屈ませ、ケツを丸出しにさせるのだった。

 菊之助は、新之助と違って、色白でポッチャリした美青年だった。新之助の弟には見えなかった。それもそのはず、菊之助は、馬之助と赤坂の芸者・菊奴との間に生まれた子。すなわち、新之助とは腹違いの、妾(めかけ)の子だったのだ。

 もちろん、菊之助が生まれるとすぐに、新之助の実母であり馬之助の妻である田所園子の指揮下、秘書軍団の「不祥事もみ消し工作隊」が即座に動き、菊奴のもとから赤ん坊を引き取り、菊之助を、田所家の四男として、迎え入れたのである。

 それ以来、菊之助は、新之助たちと分け隔てなく、育てられてきた。もちろん、お仕置きも分け隔てなく敢行され、菊之助がなにかやんちゃを仕出かした時は、兄貴同様、オヤジの愛のムチが、菊之助の生ケツに、惜しみなく振り注がれたわけである。

 久々にオヤジの膝上で、生ケツを晒す羽目になり、弟・菊之助は、ケツになにかスゥ〜〜〜と冷たいものを感じつつ、落ち着きなく、オヤジの膝上でケツをモジモジさせている。

 オヤジ・馬之助は、己の膝上で生ケツ丸出しの四男・菊之助に、いつもの質問をするのだった・・・。

「さあ、俺から何発もらえば、勉強に集中できるんだ?」

「・・・じゅ、十発?」

と、自信なく答える菊之助。しかし、菊之助が答え終わるか終わらないうちに、

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

と、オヤジの一発目が、菊之助の生ケツを強襲する。

「ヒィ〜〜〜、痛っ〜〜〜」

と思わず悲鳴を上げる菊之助。オヤジの右手のひらは熱かった・・・。

 オヤジは、

「バカモン!!足りん!!」

と、厳しく菊之助を一喝する。

「じゃ、じゃあ・・・二十!?」

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

「バカモン!!足りん!!」

「さ、三十!?」

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

「まだまだ!!」

「よ、四十!?」

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

「まだまだ!!」

と、正解の回数が言えるまで、ウォームアップの平手打ちが容赦なく菊之助のケツを強襲するのだった。

 50、60、70と菊之助は、「正解」を得ることはできなかった。そして、ついに、

「百!!」

と菊之助が答えた時、オヤジは、満足そうにうなずき、

「よし!今日のところは、百叩きで許してやる!!これから本番だからな!!しっかり歯を喰いしばっとれ!!」

と、膝上の菊之助に命令する。

「ひぇ〜〜〜〜、いままでも十分痛かったのに、これからが本番だなんて!!」

と思い、思わず、身をすくめ、奥歯をグッと喰いしばる菊之助だった。

 しかし、オヤジは、予想だにしない質問を菊之助に投げかけてくるのだった。

「さあ、今度は、何発目だ?」

「えっ・・・・わ、わかりません!!」

「バカモン!!!」

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

と、菊之助の生ケツに、涙がジィ〜〜ンと溢れてきそうなキツイ、オマケの二発を見舞う馬之助。

「痛てぇ〜〜〜!!」

と、思わず叫けんでしまう息子だった。

「このくらいの簡単な算数ができなくて、大学なんぞに受からんぞ!!」

と、オヤジははき捨てるように言うと、

「一からやり直ぉ〜〜〜し!!」

の無情のケツ叩き一からやり直し宣言をするのだった。そう、お仕置きの回数の数え間違え、回数の失念は、一からやり直し!それが、膝上お尻ペンペン時のオヤジと息子の男同士の約束だった。

 オヤジ・馬之助は、息子たちにケツを叩かれた回数を、声を出して数えさせることはさせなかった。しかし、息子たちは、お仕置き中、ケツを叩かれた回数を頭の中でしっかりと数えていなければならなかった。オヤジ馬之助が、時々抜き打ちで、息子たちに、「今、何回目だ?」と聞いてくるからだった。もちろん、即座に、例えば、「69回です!!ありがとうございます!!」と答えられなければ、一からやり直しである。 

 なぜなら、反省が十分であるならば、自分のケツを叩かれた回数くらい、しっかりと銘記しているはずだからだ。己のケツを叩かれた回数を間違える、忘れるなど、もうそれだけで、反省が十分でない。いやそれどころか、それは、前のお仕置きの効果が、息子たちのケツに全く浸透していない証拠だと、オヤジ・馬之助は信じていたのだった。だからこそ、お仕置きは一からやり直されるのだ!!

 再び、身をすくめ、奥歯をグッと喰いしばる菊之助だった。菊之助の予想は裏切られなかった。

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

と、オヤジの愛の平手打ちの集中砲火が、菊之助の色白のムッチリケツを、容赦なく、熱ぅ〜〜〜くするのだった。

 こうして、菊之助は、オヤジから百叩きを食らい、恥ずかしそうに尻をさすりながら、自分の部屋へと戻っていく。そして、もちろん、新之助のお仕置きが、再開されるのだった・・・。

 

六、庭職・猿吉のいけない妄想

 庭にいるといやでも耳に入ってくる、新之助の長引くお仕置きのケツ打音を聞きながら、庭職の猿吉(21)は、仕事に集中できず、自分の好きな尻叩きの妄想にふけっていた・・・股引の中のイチモツは、もうギンギンに石のように硬くなっていた・・・。

「おい!!誰か!!代わってくれんか?右手が痛くてかなわんわい!!」

「いっ・・・痛いっ・・・と、とうさん・・・そ、そんなに強く耳をひっぱらなくても・・・」

 新之助のケツ打音がやっと止んだと思ったのもつかの間、新之助がオヤジ・馬之助に左耳をギュッと引っ張られながら、なんと素っ裸のフリチンのままで、縁側に引き出されてきたのである。もちろん、庭で仕事をしている庭職・猿吉たちの目の前にである。

 そんなちょっと情けない新之助の姿を見て、庭職たちは、ニヤニヤ笑いを押し隠すの必死だった。そして、新之助は、庭職たちの、特に、自分と年があまり違わない若手の職人たちの視線をチクチクと感じながら、顔を真っ赤に染めるのだった。

 新之助の顔に負けず劣らず真っ赤だったのは、オヤジからの愛情がタップリと注がれた新之助のプリッとした野球部ムッチリ・ケツだった。もちろん、新之助のチンコは、いまだに、ビンビンだった・・・。ピタッと下腹にくっついた新之助のジュニアの先端、すなわち亀頭は、まだ半剥け状態。しかし、その亀頭は赤黒く、我慢汁がほとばしっており、その充血のほどを物語っていた。

 ズル剥けのなかなか立派なチンポを持つ猿吉は、密かに、

「勝ったぜ!!」

と思い、ガッツポーズを決めるのだった。

 そんな中、新之助の亀頭よりも、さらに赤黒かったのは、新之助のオヤジ・馬之助の右手のひらだった。馬之助は政治家だ。前日までの選挙戦で、握手し通しだったことに加え、息子のケツを渾身の力を込めて200発近く叩いたためだった。

 オヤジ・馬之助は、ついに自身の右手にも限界を感じ、しかし、息子の反省はまだまだ十分でない状況の中、縁側に息子を引っ張ってきて、使用人たちの「手」を借りようと思ったわけだった。そして、手を借りるなら、腕っ節の強そうなヤツが揃っている庭師たちのだれかが良いだろうと、庭師たちに声をかけたわけだった。

 そんな旦那様の呼びかけに、親方の芳蔵が、早速、縁側に近寄ってきて、

「旦那様、なにか御用でございますか?」

とうやうやしくおうかがいを立てる。芳蔵とて、馬之助の用件は百も承知で、顔に浮かぶ笑みを押し隠すのに必死だった。

「誰か・・・お前のところの若衆で、このバカ息子のケツを面倒見てくれそうなヤツはおらんかね?」

と、馬之助は、芳蔵だけでなく庭で働いている若手庭職たち全員に聞こえるようなデカイ声で芳蔵に問いかけてくるのだった。もっとも、馬之助の声がデカイのは、地声なのであるが・・・。

 あ〜〜、チョッキン、チョッキン、チョッキンなと、庭で働いていた若手庭職たちの剪定バサミの音が、一瞬にして、ピタリと止まるのだった。そして、いままでダンボのデカ耳で聞耳をたてつつも見て見ぬ振りをしていた若手職人たちは、一斉に、母屋の方を向くのだった。

 猿吉に限らず、若手職人たち全員が、

「やったぁ!!新之助のケツを叩けるぜ!!」

と勇み立ち、股引(ももひき)の中のイチモツをギンギンに強張らせるのだった。そうなのだ・・・この古風な町で生まれ育った青年たちは、ケツ叩きと聞くと、叩く場合も、叩かれる場合も、チンコがビンビンにおっ勃起つのであった。

 そして、若手職人たちは、もう誰一人として、顔からニヤニヤ笑いを隠すものはいなかった。皆、ギラギラした目つきで、新之助の真っ赤なケツに、視線を投げかけていた。それはまるで、獲物に狙いを澄ませたプレデターのようだった。

 そして、彼らは、庭職の命ともいえる剪定バサミはしまいこみ、ケツ叩きの練習をするかのように、パチィ〜〜〜ン、パチィ〜〜〜ンと両手を打ち鳴らすのであった。それは、まるで、「旦那様!親方!新之助さんのケツを一番強くぶっ叩けるのは、オイラですぜ!!」と、馬之助や芳蔵にアッピールするかのようだった。

 一方、それを聞いて、絶句するのは、おケツの真っ赤な新之助だ。ホッカホッカの己のケツに、痛いほどの視線を感じつつ、

「と、とうさん・・・そ、そんなぁ・・・は、反省してます・・・もうあんなバカことはしないので、許して下さい・・・」

と、涙声で、オヤジに懇願するのだった。芳蔵からケツを叩かれるのであれば、まだ我慢できた。しかし、たいして年の違わない、庭職の誰かからケツを叩かれるなんて!!新之助にとっては、恥辱の極みだった。

 その場からどうにか逃げようとする新之助。しかし、オヤジに耳をギュッとつままれたまま、動くことはできなかった。新之助は、ホカホカで痒くなってきた己のケツを右手でさすりつつ、左手では、己のビンビンになった股間のイチモツをどうにか隠そうとすることしかできなかった。

 そんな新之助の恥ずかしくも情けない姿を、あざけりの表情を隠そうともせず、ジッとみつめる猿吉。剪定バサミの音は止まったままだ。もう仕事にはならなかった。

 猿吉も、兄貴たちに負けず劣らずのアッピールをすべく、両手をバチィ〜〜〜ン!!両掌をスリスリ・・・バチィ〜〜〜ン!!スリスリと小気味よく打ち鳴らしていた。

 猿吉は、新之助と同じ21歳。中学を卒業してすぐに、芳蔵の弟子となったため、すでに中堅の若手。同じ年の芳之よりも三年先輩で、芳之も猿吉のことは「兄貴」と呼んでいた。

 猿吉は、なかなか器用で仕事はなんでもそつなくこなし、兄貴連中からの評判もすこぶるよろしい。21歳の若さにして、すでに「いっぱし」から「若副」への昇格の声もあがっていた。

 そんな猿吉は、親方・芳蔵が、旦那様である馬之助にどう応えるのか、期待に股間をビンビンに強張らせ、ことの成行きを見守っていた。

「そうスねぇ・・・」

と、しばらく目を閉じて両腕で胸のところで組み、考え込む芳蔵。

 そして、ようやく、おもむろに両目を開けると、庭に散らばっている若手職人の方を向き、

「おい!!猿吉はいるか!!?」

と、声をかけるのだった。

「は、はい!!!」

と、待ってましたとばかりに、威勢よく返事をすると、猿吉は、小走りで縁側のところへ来て、芳蔵のよこで、芳蔵がやっているように、左膝のみを地べたについて腰を低めるのだった。

「コイツぁ、新之助坊ちゃんと同い年の猿吉って申します・・・いっぱしの中では一番の出世頭になるのではと、この芳蔵めが、見込んでいるヤツでございます。坊ちゃんの尻を温めさせていただく役目は、コイツが一番かと存じます・・・」

と、芳蔵は、うやうやしく、しかし、馬之助に猿吉を強烈に推薦するのだった。

 馬之助は、しばらく考え込んでいた。角界では、弟子たちに奮起を促すため、出世の遅い弟子を、わざと、出世の速い同じ年・同期の弟子の付き人にあてがうことがよくあるという。馬之助は、芳蔵が猿吉を推す真意を、そう受け取り、これは新之助に対する苦いが良く効くクスリになるだろうと、決断をするのだった。

 馬之助は、

「親方がそこまで言うならば・・・コイツのケツは、猿吉に任せたよ!!コイツの甘ったれた性根をタップリと叩き直してやってくれ!!」

と言うと、いままでグイとつまんでいた新之助の左耳を、今度は押すようにして、新之助を真っ裸のまま、縁側の下へと押やると、自身は母屋へと引っ込んでしまうのだった・・・。

「と、とうさん・・・」

と、涙声で、馬之助に助けを乞う、息子・新之助。しかし、オヤジは、母屋から出てくることはなかった・・・。

 親方・芳蔵は、

「さあ、坊ちゃん、男なら、いつまでもメソメソしてないで、こっちへ来て、立ちなさい!!!」

と、丁寧ではあるが、威厳に満ちた命令口調で、新之助に命令するのだった。

 新之助は、芳蔵の厳とした態度に逆らうことができなかった。そして、芳蔵と猿吉の前で、マッパフリチン、直立不動の姿勢となるのだった。同じ年の猿吉とは、悔しくて目を合わすことができなかった。

 そんな新之助の体躯を、芳蔵は、前から後ろ、上から下まで、ジックリと観察し、時々、なんともいえないいやらしい手つきで、触れてくるのだった。芳蔵から体を触れられる度に、ゾクッとし、新之助は、身をくねらせて「あっあぁ・・・」と、よがり声を上げるのだった。

 親方・芳蔵のそんな「身体検査」が終わると、芳蔵は、つくづく感心したように、

「さすが、緑翠舎の野球部出身でいらっしゃる・・・これなら大丈夫だ・・・」

と、呟くように言うと、猿吉に向かって、

「おい!猿吉!!棒を持ってこい!!」

と命令するのだった。

 猿吉は、親方から「棒」と聞いて、色めき立ち、ひときわはずんだ声で、

「は、はい!!いま、お持ちします!!」

と言って、若職たちの休憩小屋へと走っていくのだった。

 「棒」と聞いて、不安になる新之助。いったいになにが「大丈夫」なのか・・・。そして、その不安は的中するのだった・・・。すぐに戻ってきた猿吉の右手に握られていた「棒」は、地面をならす1メートルほどの木槌の柄で、直径2.5cmほどの樫でできた棍棒だった。そして、その真ん中あたりには、墨痕鮮やかに「懲戒棒」と描かれていた。

「坊ちゃん、旦那様から坊ちゃんの尻の面倒を任された以上、庭職の流儀に従ってもらいますぜ!」

と、いままでよりも高圧的な物言いに転じる芳蔵だった。

 新之助は、ただ、

「は、はい・・・」

と、不安そうな表情で答えるしかなかった。

 そうこうしている間に、真っ裸の新之助は、芳蔵のところの若手職人たちに、囲まれ、彼らの円陣のど真ん中に立たされてしまうのだった。親方・芳蔵が、おもむろに解説を始める。

「この懲戒棒は、こいつら職人たちが、仕事でなにかヘマをやらかしたときに、必ず尻にいただかなければならねぇ制裁の焼き入れ棒です。これから、この猿吉が、この懲戒棒を5本、坊ちゃんの尻に入戒しましょう・・・坊ちゃんが、ご自分の尻で、見事、猿吉からの5本の戒(いましめ)を受け取られたなら、この芳蔵め、旦那様に、坊ちゃんはもう十分反省されたとご報告申し上げましょう!!」

と、芳蔵は、新之助のケツをどう面倒みるのかを説明するのだった。

 新之助は、

「なんだ・・・いろいろ御託を並べやがって・・・結局、ケツバットってことか・・・楽勝じゃん・・・」

と、芳蔵の懲戒棒のことを半ば見下して、思うのだった。

 緑翠舎高校・硬式野球部出身の新之助にとって、ケツバットなど朝飯前のこと。鬼の今泉監督の日本一きついケツバットで三年間鍛えられてきた己のケツに対する過信が新之助にはあった。しかし、新之助は、ほどなく、世間が広いことを、己のケツを以って、思い知らされるのであった。

「さあ、猿吉!!俺が許す。手加減はいらねぇ。新之助坊ちゃんのケツを、この棒で、思い切り面倒みてやるんだ!!」

と、芳蔵は、猿吉に懲戒・敢行の命令を下す。

 初めて握る懲戒棒。いままでケツを殴られるばっかりだった猿吉。やっとこれで誰かのケツをぶん殴られる側に回れることに心が躍った。しかも、その第一号が、あの新之助だなんて!!

 この制裁の棍棒を握れるのは、親方以下、若副の兄貴までだった。この「懲戒棒」を握ることを許可されることは、すなわち、親方から「もうおめえは、いっぱしを卒業して若副だ!!」と言われているようなものだったのだ。そのことも、猿吉を得意がらせるのだった。

「さあ、坊ちゃん、両手を肩の位置まで上げて、両足を肩幅に開いてグッと踏ん張って、尻を後ろにお出しなさい!!そうしたならば、奥歯をグッと喰いしばって、覚悟なさい!!前につんのめったりすれば、やり直しですぜ!!」

と、芳蔵が、懲戒棒をケツにいただく際の心構えを、新之助に説くのだった。

「は、はい・・・」

と返事をし、芳蔵から言われた通りにする新之助。ゴクリと生唾を飲み込み覚悟を決める。ケツ筋がなにかを予感して、ピクッピクッ!と緊張で痙攣しているかのように動くのを感じる新之助だった。「猿吉なんかに、『お願いします』なんて、絶対に、殺されたって、言うもんか!!」と心に誓う新之助だった。

 得意満面で、新之助の後ろへと回り、「懲戒棒」を構えて、新之助の真っ赤なケツに狙いを定める猿吉だった。

 芳蔵も、猿吉も、新之助に挨拶など求めてこなかった。ただ、後ろで、ブンと空を切る鈍い音がしたかと思うと、

ガッツゥ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!

と、脳天直撃の激痛をケツに感じる新之助。

バサァーーーーーーーーー!!!

と、まるでスライディングでもするかのように、前にブッ飛ばされる新之助だった。

 新之助を遠巻きにして見守っている若手・庭職たちからは、一斉に、

「元ぉ〜〜〜い(もと〜〜〜い)!!!」

「元ぉ〜〜〜い!!!」

と声が上がるのだった。

 「元い(もとい)」とは、體操などでやり直しを命じるときの語である。懲戒棒によるケツ叩きの制裁もやり直し、いまのはカウントされないということだった。

 なかなか立ち上がらない新之助に、

「さっさと立ってケツ出せよ!!」

「野球ごっこで、遊んでる暇なんてねぇ〜〜んだよ!!」

「学生さんと違って、こちとら、仕事で忙しいんだよ!!」

と、辛辣なヤジが、職人たちから口ぐちに浴びせかけられる。

 悔しさで拳をグイと握りしめ、立ちあがって、再び、芳蔵に言われたようにケツを後ろへ突き出す新之助。しかし・・・

ガッツゥ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!

バサァーーーーーーーーー!!!

ガッツゥ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!

バサァーーーーーーーーー!!!

ガッツゥ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!

バサァーーーーーーーーー!!!

と、今度こそはと、いくらグッとしっかりふんばってケツを出しても、猿吉の懲戒棒を、己の両ケツペタで、しっかり受けとめることができない新之助だった。悔しさと、ケツに熱い雑巾がペタリと張り付いたような感覚が、新之助を苦しめる。涙が、新之助の両頬をつたって、ボトリ、ポトリと地面を濡らしていた・・・。

 その日、新之助は、新之助のようにスポーツで鍛えた腕っ節とは較べものにならない、毎日の重労働で鍛え上げられたガテンな職人の腕っ節の頑強さを、己のケツを以って、いやというほど思い知らされたのであった。

・・・・・・・・・・

「コラァ!!!仕事中だぞ!!剪定持って、ボケェ〜〜〜とニヤニヤしてるバカがどこにいる!!」

ポカァ!!ガツン!!

「あたぁっ!!!!」 

 親方・芳蔵の愛のゲンコツで、新之助のケツを懲戒棒で打ちのめす妄想から覚めるいっぱしの庭職・猿吉。

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

ベッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

と、旦那様の馬之助が息子・新之助のケツを、膝上ペンペンする音が、母屋の仏間から庭へも、いまだ聞こえてきていた。

「チッ!今日の仕置きは、やけに、長引いてんな・・・」

と思う、親方・芳蔵。

 弟子の多くが、あの音のために、仕事に集中できないでいることに気がついていた。その中でも、猿吉は、完全に、心ここにあらずの状態で、仕事とはなにか別のことを考えていることが、手にとるようにわかった。

 そこで、カミナリと拳固をガツンと落とし、以って、他の弟子たちへの見せしめとするつもりの芳蔵だったのである。

 しかし、ただみせしめてお終いにする親方・芳蔵ではなかった。

  たとえば、若頭の俊一は、見習いの芳之が仕事に集中できていないと見るや、芳之に一服の煙草を与えて、気分転換させようとした。しかし、芳蔵の弟子に対するアプローチは少し違っていた・・・。

 なにを思ったか、芳蔵は、その時の猿吉には、誰が見ても少し荷が重すぎるのでは?という仕事を、猿吉に与えたのであった!!

「猿吉!!ボォ〜〜〜としてる暇があったら、ちょっと、こっちへきやがれ!!」

と、親方。

「は、はい・・・」

と、真っ赤な顔で恐縮して、親方についていく猿吉。

 親方・芳蔵は、田所家の庭園の一角にある、大木の下までくると、猿吉に命令するのだった。

「猿吉!!これから、いっぱしの卒業試験だ!!この木を、首尾よく剪定できたら、来月から、おめえを、若副にさせてやる!!!」

「えっ!!本当ッスかぁ!?や、やらせてください!!この仕事!!」

と、喜び勇む猿吉。器用で、いつも強気の猿吉は、自信満々だった。しかも、首尾よく運べば、若副になれる。若副になれば、見習いたちに威張りちらせる!!猿吉はうれしくて仕方なかった。

 その大木は、旦那様が殊更気に入っている、ソメイヨシノの桜木だった。

「いいか・・・この木は、旦那様が特にお気に入りの桜だ・・・春になって、満開になった時、いかに美しく魅せるか・・・それが、俺たち、庭職の腕の見せどころだ!!いいか、猿吉、この木が、桜の花で満開になったときのことを想像して剪定するんだ!!」

「はい!!」

 猿吉は、脚立を上手つかって、木の上まで、スルスルと登り、鼻歌交じりの上機嫌で、剪定を始めるのだった。

 ああ、桜の木の上で、吹かす鼻歌は、コブクロか直太朗か・・・しかし、桜の木の枝に跨りながら、猿吉が上機嫌で吹かした鼻歌は、なんと、ガキの頃、おばあちゃんから教えてもらった、作詞・北原白秋、作曲・山田耕筰の「あわて床屋」だったのだ!!これを選曲ミスと言わずして、何と言えばいいのだろうか・・・。

♪春は早うから 川辺の芦に かにが店出し 床屋でござる

あ〜〜〜〜〜ちょっきん ちょっきん ちょっきんな

と、小気味良いメロディーに乗せて、次々と桜の小枝を剪定していく猿吉。

 しかし、

あ〜〜〜〜〜ちょっきん ちょっきん ちょっきんな

あ〜〜〜〜〜ちょっきん ちょっきん ちょっきんな

と、猿吉は、チト調子に乗りすぎたようだった・・・。なんでも器用にこなしはするが、仕事にやや雑なところがある・・・そんな猿吉の弱点が、致命的な剪定となって出てしまう!!

 それは、「あわて床屋」の最終節を鼻歌で吹かしている時だった!!

♪邪魔なお耳は ぴょこぴょこするし そこであわてて ちょんと切りおとす

あ〜〜〜〜〜〜ちょっきん ちょっきん ちょっきんな!!!

チョッキン!!!!!

と、猿吉が、桜の木の枝一本を切り落とした時だった。

 下から、親方・芳蔵が、

「バカ野郎!!!どこに目ん玉つけて、切ってやがる!!!このスットコドッコイ!!!」

と、怒鳴っている。

 猿吉が、ハッと気がついた時は、遅かった・・・うさぎさんの耳を切り落としてしまった「あわて床屋」の蟹さんよろしく、猿吉は、絶対に切るべきではない枝を、剪定してしまったのだった!!

 

七、ブリヂストン (2013年10月 加筆修正版)

「猿吉!!おめえは、見習いに降格だ!!先輩に一から気合いを入れ直してもらえ!!」

「は、はい・・・・」

 親方のその言葉に、絶句する猿吉。

 しかし、旦那様の大切なソメイヨシノの桜木の枝を一本、間違って切り落としてしまった、とんでもないしくじりを演じてしまったのだ。

 もう見習いは卒業した「いっぱし」職人の猿吉には、ことの重大さがわかっていた。自分の失態が旦那様の逆鱗に触れ、庭職全員解雇となれば、寺田造園の存続もあやうくなる・・・。

 猿吉は、返す言葉もなく、ただただ生気なく返事するだけだった。その顔はすでに青ざめていた。

 親方の尋常でない怒鳴り声に心配して寄ってきた若頭の俊一は、「猿吉・・・おまえもあのケツ叩きの音に翻弄されていたのか・・・助けてやれなくてすまん・・・・」と後悔しながらも、親方が猿吉に命じた仕置きに、心を鬼にして、

「猿吉!!ブリヂストンだ!!すぐに帰って用意しろ!!」

と猿吉に厳しく言い渡すのであった。

 見習いが「先輩に一から気合いを入れ直してもらう」とは、先輩方全員から、「ブリヂストン」を食らうことを意味していた。

 ブリヂストン・・・寺田造園で修行を積んだ庭職ならば、この言葉を聞いて、ポッと頬を赤らめない職人はいなかった。

 ブリヂストンといえば、タイヤである。しかし、タイヤ会社に「異業種ボランティア体験研修」で出向させられるわけではない。

 寺田造園における「ブリヂストン」とは、「懲戒棒」とは違い、入門したての、新入りの見習いを懲らしめるために、職人たちの間で代々受け継がれてきているお仕置き法の一つなのだ。

 具体的には、木に吊るしたタイヤの穴の中にベンドオーバーさせられ、タイヤの穴からプリッと突き出た生のおケツを、木の枝でつくったケツ笞(ムチ)棒で、ビシッ!ビシッ!と容赦なく叩かれるのである。

 「ブリヂストン」のもう一つの特徴は、全員参加型の制裁であるという点だ。ここで言う「全員」とは、同期と親方以外の先輩全員を意味する。

 一日でも入門が早ければ、同じ「見習い」であっても先輩であり「兄貴」と呼ぶのが寺田造園でのならわしだ。

 今回の「ブリヂストン」において、「見習い降格、一から出直し」の懲罰的降格人事を親方から命じられた猿吉にとって、先輩とは、いままで後輩であった「見習い」を含めた全員であるから、猿吉よりも入門が早いことになる「見習い」の兄貴たちからも、ビシリと一発!!むき出しの生ケツに気合いを入れられるのである!!

 若副への昇進の夢をあと一歩のところで逃してしまった猿吉。しかも、入門したての新入り見習いに戻って「ブリヂストン」を食らう羽目になるとは・・・・

 泣くに泣けない猿吉は、顔面蒼白。下をジッとみつめたまま、顔さえあげることができなかった。

 猿吉に詳しい説明はいらなかった。「ブリヂストン」の懲罰ケツ笞を司る若頭の俊一は、さきほどまさに猿吉が間違って切り落としてしまった旦那様の桜木の枝を持ってきて、

「わかってるな!!寺田造園の作業場に戻ってすぐに準備するんだ!!」

と言い、その枝を猿吉に渡すのだった。

「・・・・・・」

 言葉もなくただコクリと頷いた猿吉は、その枝を受け取り、それをジッと見つめるのであった・・・その枝は、ほどなく鬼の「ケツムチ棒」となって、猿吉自身のケツに、ビシーッ!ビシーッ!と容赦なく飛んでくるのだ!!そのことを覚悟しながら、猿吉は、トボトボと生気なく旦那様の庭園を独り寂しく去っていく。

 その後ろ姿を、ジッと見つめる寺田造園の職人たち。猿吉が傍を通りすぎる度に、「まあ元気を出せ!」と猿吉の肩をポンと叩き励まそうとする兄貴もいれば、つらそうな顔をして首を横に振っている兄貴もいた。そして、ニヤニヤ笑いを隠しきれない兄貴たちも少なくなかった・・・。

 そんな職人仲間たちに見送られながら、完全に肩を落とした猿吉は、「ブリヂストン」の懲罰を食らった後、しばらくは乗れないであろう自転車にまたがって、寺田造園へと戻っていくのだった。

「も、もしかして、俺も猿吉兄貴のケツ、ビシッ!!ってやれるんスか?」

「バカ野郎!!声がでけえ!!」

 入門一年目の見習い・誠一が、「いっぱし」兄貴の雄太から、頭を拳固でポカリ!!とやられる。

「い、痛てぇ!!」

 見習いに拳固は食らわしたものの、涙目の後輩の顔をニヤニヤしながら見て、兄貴の雄太は、見習いの誠一に、小声で、

「ああ・・・おめえは、もうアイツの先輩だからな・・・遠慮はいらいないぜ!!」

と耳打ちするのだった。そういう「いっぱし」の雄太も、猿吉とは同じ年でありながら、少年院で「勉強」してきた関係上、猿吉よりも入門が半年ほど遅く、さきほどまでは、猿吉の後輩だったのだ。

 湧きあがってくる興奮をどうにか抑えながら、

「やったぜ!!」

とガッツポーズを決める見習いの誠一。近くに落ちていた木の枝を拾うと、

「シュッ!ビシッ!!」

と声を出して、その木の枝で素振りを始めるのであった・・・。

 一方、雄太は、少し違っていた・・・。雄太は、

「入門が半年早いってだけで、兄貴っ面して威張りやがって・・・猿吉・・・反省の時間を楽しみにしとけよ・・・」

と、すでに「ブリヂストン」ケツ笞の後、猿吉に科されるであろう「休憩小屋での反省のためのコーナータイム」のことを考えていた。

 元ヤンキーの雄太は、「少年院」で同室の先輩から受けた、あの辱めの私刑(リンチ)のことを思い返していたのだった。


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