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いっぱし職人・鈴木雄太の薔薇薗特別少年院回想


一、少年院送り  

 その古風な街の中学校を卒業した鈴木雄太は、高校に進学することもなく、また、就職することもなく、毎晩、仲間とともに城址公園にたむろし、HIP−POP ブレイクダンスの練習に熱中していた。しかし、その古風な街では、黒のプーマジャージ、略して、ブラック・プージャーを着込んだ彼らの風貌は異彩を放ち、地元住民から警察に通報されることもしばしばで、地元の警察官たちからは「踊るヤンキー軍団」と目をつけられていた。

 特に、雄太は、生来の運動能力の高さから、「踊るヤンキー軍団」のリーダー格としてすぐに頭角を現し、「KING YUTA(キング ユータ)」とあだ名されていた。雄太の夢は、もちろん、東京にでて有名になってやると、ヤンキー少年特有の「オレ、ビッグになるぜ!」妄想に憑りつかれていた。

 しかし、古風な地方の街の「踊るヤンキー軍団」に、そんなビッグなチャンスがめぐってくるはずもなく、やがて彼らは、ダンスの練習はそこそこに、近隣のヤンキー少年集団たちと、小競り合いの喧嘩を始めるようになる。

 その小競り合いは、日増しにエスカレートして行き、やがてヤンキー少年集団同士の抗争事件へと発展する・・・。そして、遂に、それは、傷害事件へと発展し、「踊るヤンキー軍団」のリーダー格で「KING YUTA(キング ユータ)」こと鈴木雄太は、警察のお世話になることになる。

 刑事事件にまでは発展しなかったものの、鈴木雄太は、家庭裁判所での審判に付され、「相当長期(24ヶ月以上)の保護観察が必要」との審判が下される。

「鈴木雄太君。少年院でしっかり勉強してきてください。」

 中学校時代の教頭先生にも似た風貌の、中年オヤジ、もとい、家庭裁判所・裁判官が、やさしく、しかし、厳とした諭すような口調で、鈴木雄太に審判の結果を告げるのだった。

 紺のブレザーにノーネクタイの白シャツを着て、裁判官の前に座る鈴木雄太は、裁判官のその言葉に、生唾をゴクリとのみこむと、

「は、はい・・・」

と、元気なく返事をする。

 少年院送りと聞き、雄太の顔は、もうベソかき寸前なほどに歪んでいた。

「やべぇ・・・少年院送りだ・・・薔薇薗(ばらぞの)だけは勘弁してほしい・・・」

と、雄太の心の中に不安が拡散する。

 そんな雄太の様子をサディスティックに眺める黒縁メガネの中年オヤジ裁判官は、表情一つ変えることなく、

「鈴木君。大丈夫ですか?なにか質問があれば、遠慮なくどうぞ。」

と言うのだった。

 雄太は、思わず、

「あ、あの・・・ボ、ボクは、こ、これから、どこの少年院に行くのですか?」

と聞くのだった。

 その裁判官は、

「君はこれから鑑別・観護措置のため、少年鑑別所に行くことになります。君にどこの少年院で勉強してもらうかは、そこの先生方が決めてくださいますので、心配する必要はありません。」

と言うだけだった。 

 そして、裁判所の裏口から鑑別所行きのバスに乗せられる鈴木雄太。窓には頑丈な金網が張り施されていた・・・。

 そのバスで、後ろに座っていた別の少年が、小声で、雄太に話しかけてくる。

「おめえ、キング・ユータだろ?おめえ、薔薇薗送りらしいな・・・」

「そ、そんなの誰が決めたんだよ?」

と思いつつも、その声を無視する雄太。

 しかし、その少年は、雄太のシカトに構わず、話しかけてくる。

「あそこは、ヤッベェーぞ・・・しってっか?すっげぇーリンチがあるらしいぜ・・・」 

「・・・・・・」

「チンコの穴にトゲトゲのバラ刺されてさぁ、シャバに出てきたときゃ、チンコが使い物にならねぇーんだってさ!!ワハハハハ!!!」

 その大きな笑い声に、雄太たちに付き添っていた職員の一人が、

「コラ!!私語は禁止だ!!静かにしてろ!!」

と一喝するのだった。

「あの噂、や、やっぱマジだったんだぁ・・・ヤッベェ・・・どうか薔薇薗送りにだけはなりませんように・・・」

 雄太は、少年院で自分を待ち受けているかもしれないリンチのことを考え、恐怖に慄き、両足をガタガタと震わせるのだった。

 

二、バラが咲いた

 その古風な街の外れにある「薔薇薗(ばらぞの)特別少年院」。近隣各県のヤンキーたちの中でも、特に凶暴で犯罪傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満の者が収容される少年院だった。

 その少年院施設の中庭は、花壇となっており、収容されている院生たちによってバラの花が栽培されていた。それは、バラの栽培を通して、彼らに生命の尊さを学ばせ、もって社会復帰の一助にするための、矯正プログラムの一つだった。

 6月。バラの収穫時期。その花壇のバラも満開だった。

「さあ、今年もいよいよバラを収穫する時期が来た。もうバラの摘み方はわかっているな!!鋏で花を傷つけないように丁寧に摘むんだぞ!!さあ、始め!!」

「はい!!」

 その少年院のベテラン法務教官・浪岡の指示で、その日の花壇当番である12名の院生たちが、バラの花を丁寧に摘み始めるのだった。

 院生たちは、全員、丸刈り坊主頭に日よけの白い帽子をかぶっていた。

 全員、元ヤンキーとはいえ、ヤンキーたちのプライドともいえるプーマジャージ、略して、プージャーを着ることは、少年院を「卒業」して娑婆に出るまでは許されなった。

 彼ら院生は、一人の例外もなく、白のカンコー製・体育上着に、白のカンコー製・体育短パンを身に着けている。それがその少年院の指定屋外作業着だった。

 そして、その白短パンは、入院中、何度も洗濯を繰り返したためか、これも一人の例外もなく、ヨレヨレのはき込まれ感を残しつつも、ややピッチリ目で、短パンのケツの部分には、白ブリーフのブリーフラインがくっきりと浮かび上がっている。それは、その少年院の指定パンツが、白ブリーフであることを如実に物語っていた。

「さあ、みんな!!『バラが咲いた』を歌うぞ!!」

 そう言いながら、浪岡教官が「バラが咲いた」歌い始める。

「♪ バラが咲いた、バラが咲いた、真っ赤なバラが・・・」

 仏の浪さんこと浪岡教官は、薔薇薗特別少年院においては、希少な温情派法務教官であったが、浪岡が若い頃に「歌声喫茶」でよく歌ったフォークソングを折に触れ院生の少年たちに歌わせることがあり、少年たちにとっては、それが、うざいといえば、うざかった。

 面倒くさそうな顔をしながら、十二人の院生たちは、浪岡教官にならって、

「♪ バラが咲いた、バラが咲いた、真っ赤なバラが・・・」

と歌いながら、その特別少年院の中庭の花壇に満開になった真っ赤なバラを摘み始めるのだった。

「ほら!!元気がないぞ!!もっと元気な声を出してみんなで歌うんだ!!♪ 淋しかった、ぼくの庭に、バラが咲いた・・・」

「はい!!♪ 淋しかった、ぼくの庭に、バラが咲いた・・・」

 そんな少年たちのうざったそうな歌声に紛れて、B集団寮103号室の岡林裕一が、となりで作業をしている亀山直人に、小声で話しかけてくる。

「亀山さん・・・あいつが俺たちの集団寮に来るのは今夜からだったよな?」

「ああ、そうだ・・・」

「よし!一本しっけいするか・・・」

「おい、いいのか?見つかったら、やべぇぞ・・・」

「そんときゃ、そんときさ・・・赤鬼なんて、こわくねーし・・・」

 そういうと、岡林裕一は、自分が摘んだ真っ赤なバラの花を一本、白短パンの腰のところにさして、上着で隠してしまうのだった。

 

三、検身場   

 薔薇薗(ばらぞの)特別少年院において、法務教官と院生たちの間に、100%の信頼関係が成り立つことはない。

 法務教官たちは、常に、職業的猜疑心(プロフェッショナル・スケプティシズム)を抱きつつ、少年たちに臨んでいた。その象徴が、少年たちの居室がある集団寮の通用口のところにある「検身場」であった。

 朝、学科授業棟、運動場、職業訓練棟、屋外作業場などへ向かう時と、夕方、そこから各自の居室へ戻る際に、院生の少年たちは、必ず「検身場」を通って、担当の法務教官から「身体検査」を受ける。

 その身体検査とは、院生たちの健康状態をチェックするものではない。院生たちが、各自の居室から持ち出してはいけないもの、逆に、各自の居室に持ち込んではいけないものを、規則に違反して持っていないか否かを調べることを目的とする検査だった。

 その日の夕方。バラ花壇での作業を終え、2列に整列し「いち!に!いち!に!」の掛け声とともに、大きく両手を上げ下げしながら行進し、集団寮に戻ってきた岡林たち。

 検身場では、彼らが着ている白の体操服シャツと白短パンを脱いで、検身場の壁の棚に置かれているカゴに入れ、パンツ一丁、担当教官の前に一列に整列する。

 その日の検身担当は、いつもと違って、3人だった。

「やべぇ・・・3人もいやがる・・・」

 通常、検身担当は2人。担当1人の楽勝日もあった。しかし、その日の担当は3人。鬼のように厳しい集中検身日だ。規則違反物を集団寮の居室に持ち込むことなど不可能とも思える日だった。

 整列した白ブリーフ一丁の12名の院生たちの前で、一段高い壇の上に立った法務教官の赤沢は、

「点呼!!」

と、怒号のような号令をかける。

 列の一番端にいた亀山直人は、右手をスクと上げると、腹から絞り出すような大きな声で、

「番号!!」

と、号令をかける。

 検身の列に並んでいた少年たちが、端から、 

1!2!3!4!5!6!7!8!9!10!11!12!

と大声を上げていき、12名全員が揃っていることが確認されると、再び、院生・亀山直人が、デカい声で、

「B寮、花壇担当係、総員12名、異常ありません!」

と報告する。

 檀上の赤沢教官は、壇から降りると、少年たちを睨みつけながら、

「お前らB寮の規則違反は、今月、すでに10件を超えている!!今日は、徹底的に調べてやるからな!!」

と言うのだった。赤沢は、40代前半の法務教官で、院生からは赤鬼と呼ばれて恐れられていた。

 そして、その日の検身場には、もう一人の鬼がいた。30代前半の青谷教官で、院生からは青鬼と呼ばれて恐れられていた。青鬼こと青谷教官は、やはり白ブリーフ一丁で整列した十二名の院生を睨みつけながら、右手に小型の木製バットを持って、院生たちを威圧していた。

 赤沢教官は、整列している院生たちの後ろにまわると、院生たちの白ブリーフに包まれたプリッとしたケツの盛り上がりを見ながら、

「パンツを膝まで下げる!!」

と命令するのだった。

 覚悟はできていた・・・。しかし、院生たち十二人は、一斉に「あぁ・・・」と、なんともいえない切ないため息をもらしながら、肩を落とし、

「はい・・・」

と元気なく返事をすると、己の股間とケツを唯一包んでいる白ブリーフの腰ゴムに手をかけ、恥ずかしそうにややためらいながら、それを膝まで下ろすのだった。

 院生たちは、己の男性自身とケツに、スゥ〜とした冷気を感じる。院生たちは、これから始まる恥辱の儀式を覚悟しながら、両ケツペタをピクリピクリと震わせるのだった。

 院生たちの覚悟は裏切られることはなかった。

「その場で屈んで後ろにケツを突き出せ!!」

 赤鬼こと赤沢教官の容赦のない命令が少年たちに飛ぶ。

「は、はい・・・」

 十二人の院生たちは、一斉に屈んで、後ろにいる赤沢教官の方にケツを突き出すのだった。

 それを頷きながら満足げにながめる赤沢教官。しかし、赤鬼の命令は、それだけでは終わらなかった。

「ケツを割れ!!」

 その命令に、顔を赤らめない院生はいなかった。「ケツを割る」とは、少年院・刑務所で使われる隠語で、己の両ケツペタを己の両手でムンズとつかんでおっ拡げ、ケツの谷間の一番恥ずかしい部分を、後ろに晒すことだった。そして、教官たちは、院生たちのケツの谷間の奥に何かが隠されていないか精密に検査をするのである。

 赤鬼こと赤沢教官は、検身場でこの「ケツを割れ!」という命令を多用することから、教官たちの間では、「ケツ割りの赤さん」とあだ名されていた。

 院生たちは、

「は、はい・・・」

と返事をすると、やはり一斉に、両手を後ろにまわして、左右それぞれのケツペタをムンズとつかみ拡げ、ケツの谷間を、赤沢教官の前に晒すのだった。

 赤沢は、その場にいる三人目の教官・黄川田俊太に、「おい!!黄川田!!早くガラス棒を持って来い!!」と命令するのだった。

 黄川田は、20代の新人法務教官で、薔薇薗特別少年院に赴任してきたばかりだった。

 院生たちが、ケツの谷間を拡げたと同時に、検身場に漂い始めた発酵臭に、思わず、鼻をつまみたくなる黄川田。しかし、その一方で、娑婆ではヤンキーで反抗的だった少年たちが、赤沢の命令一下、操り人形のように一糸乱れず行動することに、ある種の感動を覚えていた。そして、自分とさほど年の違わない院生たちのケツの谷間の恥部が己の前に一斉に晒されている、そんなアブノーマルな光景に興奮を禁じ得なかったのだ。

 そんな黄川田である。赤沢の命令が自分に発せられたものであることにすぐに気がつかなった。

「おい!!なにをグズグスしてるんだ!!遅い!!」

 赤沢のいらついたその声に、黄川田新人教官は、ハッと我に返り、あわてて、

「は、はい・・・」

と返事をすると、ガラス棒12本と膿盆(のうぼん)と呼ばれるそら豆の形状をした医療用のステンレス製容器が載せられたステンレスプレートを持って、赤沢の脇に立つのだった。

 赤沢は、

「ボケェっとしてんじゃねぇ!!」

と、ステンレスプレートを両手で持ち、自分の隣に直立不動の姿勢で立つ、新人・黄川田を一喝する。

 黄川田は、研修中、研修教官から「薔薇薗にいる『ケツ割りの赤さん』には気をつけろよ・・・あの人、院生たちがいる前で、平気でおまえら若手のことを叱りつけるからな・・・」と言われていた。

 自分にケツを向けて整列している院生たちも、今の赤沢の自分に対する叱責を聞いていたに違いない・・・そんなことを考え、恥ずかしさで、ポッと頬を赤らめる黄川田。院生たちが自分の方を向いていないことがせめてもの救いだった。

「はい!!申し訳ありませんでした!!」

 黄川田は、気合の入ったデカい声で、赤沢に詫びるのだった。

 その応答に、「チッ!」とだけ舌打ちすると、赤沢は、黄川田の持ったステンレスプレートから、ガラス棒を一本とり、

「よし!行くぞ!」

と言うと、己の前で屈んで両ケツペタをおっぴろげ、恥穴を晒している院生・亀山直人の、菊門という名のその恥穴に、手に持ったガラス棒を遠慮会釈なくブスリと乱暴に挿入するのだった。

「あぁっ・・・」

 亀山から思わずなんともいえない切ない声が洩れる・・・。亀山は、己のケツの谷間の奥の方に、なんともいえない不快感を覚えるのだった。

 亀山は、屈んだ姿勢を保ちながら、ギュッと目をつむり、恥ずかしさと、ケツの谷間に感じるそのなんともいえない不快感に、思わず目をつむりジッと耐え忍ぶだった・・・。

 亀山のその何とも言えない切ないうめき声は、他の院生たちにも聞こえていた。

「きびしぃ・・・今日は、ケツの穴もしらべられるんだ・・・」

と覚悟を決めるのだった。

 赤沢教官は、中腰になって、亀山のケツの谷間を、持っていた小型LEDライトで照らしながら、

「違反物を隠してはいないだろうな・・・どれどれ・・・徹底的におまえのケツをしらべてやる!!」

と言いながら、亀山のケツの谷間に突き立てたガラス棒を、奥に入れたり少し引いたり何度も執拗に繰り返しするのだった。

グチュグチュ、グニュグニュ・・・

 己の恥部の穴で、何度もピストン運動繰り返すガラス棒の摩擦熱で、亀山の不快感は増大していく・・・クソがしてぇのに、なかなか出すことを許されないあの感覚だ。

「うぅっ・・・も、もう・・・ケツになにも隠してなんかないッスよ・・・もう勘弁してくださいよ・・・」

 亀山は、ギュッと両目をつぶりながら、赤沢教官が納得するのをジッと待つのだった。

 それは、亀山にとっては、異様に長い時間に思えた。赤沢教官が、自分のケツの谷間にガラス棒を挿入し、それを挿入したまま、何度も何度も、ピストン運動させている・・・。

 赤沢教官は、やっと納得したのか、ガラス棒をスポッと一気に引き抜くと、無造作に、黄川田の持っている膿盆の上に置くと、

「よし!!ケツ、異常なし!!手をどけろ!!」

と言い、亀山の突き出された生ケツに、べチッ!!と一発、強烈な平手打ちを食らわすのだった。膿盆の上に置かれた「使用済み」ガラス棒は、その約八割の部分に淡黄色の粘液がこびりついていた・・・。

「ありがとうございました!!」

と、上体を起こす亀山に、赤沢はすかさず、

「バンザイだ!!両手をしっかり上に挙げていろ!!」

と命令する。そして、亀山の右ケツに、いま自分が焼き付けた右手のひらの手形が、クッキリと赤く浮かび上がってくるのをみて、満足そうな顔をするのだった。

「はいっ!!」

 亀山は、まだケツの谷間に何かが挟まったような感覚に苛まれながらも、デカい声で返事をし、両手をスクと上に挙げ、万歳の体勢をとるのだった。

 そんな亀山に、今度は前から、青鬼が責めたてる。

 ガラス棒で、たっぷりと恥ずかしい穴を責めたてられたその刺激で、亀山の男性自身は、半勃起状態だった。しかし、赤沢からは、万歳の体勢を命じられており、それを隠すことはできなかった。

 そんな亀山の男性自身をジロジロながめながら、青鬼こと青谷教官は、ニヤついた顔で、

「なんだおまえ、いい年こいて、包茎かよ・・・」

と言うのだった。

 恥ずかしさと屈辱で、真っ赤な顔になりながらも、亀山は、その悔しさにジッと耐えるのだった。

 亀山は、その十二人の少年たちの間では、一番の年長の20歳。髭も濃く、すでに一丁前の成人男性の風貌だった。亀山は、その年の一月、少年院で成人式も済ませていた。

 恥ずかしがる亀山の姿を楽しむかのように、青谷教官は、ニタニタした笑みを顔に浮かべながら、右手に持っていた木製バットの柄で、亀山の半勃起状態の逸物を、ツンツン、ツンツン、とつつくようにして玩ぶのだった。

 恥辱もその頂点に達したのか、亀山は、再び、両目をギュッとつむり、挙げた両手の拳をギュッと握りしめるのだった。

 そんな亀山に、青谷は、

「時々、竿に違反物を隠すバカ野郎がいっからな・・・亀山、剥けや・・・右手だけ下ろしていいぞ!!」

と命令するのだった。

 青鬼こと青谷教官の職業的猜疑心は、院生たちの陰茎にも及ぶ。青谷教官は、院生たちが包皮と亀頭の間になにか違反物を隠してはいないだろうかと常に疑いの目を持ち、包茎の皮被り野郎には特に容赦なかった。そんな青谷に、教官たちの間でつけられたあだ名は、「皮剥きの青やん」だった。

 そんな青鬼の命令に、 

「は、はい・・・・」

と、恥ずかしそうに返事をした亀山は、真っ赤な顔のまま、右手をおろし、己の半勃起状態でも皮被り息子の包皮をゆっくりと剥きあげるのだった。

 亀山の真っ赤に充血した亀頭が、ズルリと、青谷の前に晒されるのだった。亀山の亀頭と包皮の間、特にカリと陰茎の境界のチンカス溜りに溜まったチンカスの青臭い強烈なオス臭が、あたりにただよい始める。

 青谷は、ニヤリと笑って、

「よし!!チンカス以外はなにも隠していねぇようだな・・・竿は、風呂んとき、しっかり剥きあげて洗っとけ!!よし!!サオ、異常なし!!」

と、亀山が「皮剥き青やん」の恥辱の男根検査に合格したことを告げるのだった。

 亀山は、恥ずかしさと悔しさをグッとのみこみ、青谷教官に、

「ありがとうございました!!」

と挨拶するのだった。

 その間にも、白ブリーフを下ろしたまま一列に整列してる院生たちのケツ側で、赤鬼こと赤沢のケツ検身が進行していた。

「よし!!ケツ、異常なし!!手をどけろ!!」

「はい!!」

バチィ〜ン!!

「ありがとうございました!!」

 赤沢教官は、ケツ検身が終わると、ケツになにも隠し持っていなかった院生たちの右ケツペタに、強烈な平手打ち食らわし、まさに「検査済み異常なし」を、少なくとも約12時間は保証する、真っ赤なもみじマーク合格証を焼き付けていくのだった!!

 

四、エリート・石井良太のやらかしショートストーリー   

 赤沢教官のガラス棒は、ブリーフをおろして後ろにケツを突出し並んでいる12人の院生たちの中では一番色白な十九歳の少年、石井良太のケツの谷間に迫っていた。

 石井良太がここ薔薇薗特別少年院に入院以来、半年の月日が過ぎようとしていた。入院以来、赤沢教官や青谷教官ら鬼の法務教官たちから「おまえらは人間のクズだ!!」と罵倒されるのにもやっと慣れてきた頃であった。しかし、良太は、赤鬼のガラス棒をケツ穴に突っ込まれる感触だけは、どうにも慣れることができないでいた。

 内側に黄色い染みがついた白ブリーフを膝まで下ろし、ケツを後ろへと突出し、両手で己の左右両ケツペタをしっかりと拡げて、赤沢教官のケツ検査を待つ間、良太は、ケツの谷間に突き立てられるガラス棒の冷たく不快な感触を思い出しながら、

「ああ・・・こんなはずじゃなかったのに・・・ボ、ボクは、元ヤンキーの他のヤツらとは違うのに・・・」

と、悔しく情けない気持ちが良太の胸にこみあげてくるのだった。

 石井良太は、緑翠舎高校出身で、県下随一の名門国立大学医学部に現役合格を果たした秀才だった。良太には、国立大学医学部出身のエリート医師という輝かしい将来が約束されているはずだった。
 
 しかし、良太はやらかしてしまった・・・。

  大学で医学生のみしか入れないテニスサークルのGW合宿の最終日。打ち上げコンパで、酒に酔った一年生の良太に、先輩の一人が耳打ちをする。

「これから、オレんちの別荘に来いよ・・・おまえとエッチしてもいいって言ってる女の子が待ってるからさ・・・なあ、来るだろう?」

 もちろん、健康な18歳の男子である良太は、股間の愚息がすぐに元気いっぱい実戦配備完了!の状態となり、酒を飲んだ勢いもあり、

「はい!!行きます!!よろしくお願いします!!」

とやる気満々に、その先輩の誘いにのってしまったのである。

 警察の調書によれば、その先輩の別荘の一室で、良太は、「これで童貞ともおさらばだ!!」と言わんばかりに、ターザンのような雄叫びをあげて、その部屋のベッドの上で酩酊状態で横になっていた20歳の看護学校生A子の上に飛びのり、A子に乱暴をはたらいてしまったらしい。

 果たして、翌早朝、目覚めたA子は、隣に素っ裸でいびきをかいて寝ていた良太に驚愕し悲鳴を上げ、即座に警察に通報してしまう。

「おい!起きろ!!」

と、A子の通報でかけつけてきた警察官にたたき起こされ目覚めた良太は、あえなく、準強姦罪の容疑で御用となってしまう。良太にとっては同意の上でのエッチだったかもしれないが、A子はただ酔っていただけで良太とのエッチの同意など一切していなかったのである。

 そう、良太は、やらかしちまったのである。

 警察は、良太の一件を成人と同じ刑事事件として処理しようとしたが、警察の上層部からの指示で、少年事件として処理されることになる。

 良太の父・石井良一は、その街に古くからある石井総合病院の院長で、県警察幹部、県議会議員、市議会議員など、地元に幅広いコネクションを持っている。もちろん、地元選出の衆議院議員・田所馬之助とも懇意にしており、彼の鶴の一声で、良太の件は少年事件に落ち着いたとの噂もあった。

 良太に乱暴されたA子側との示談が成立したものの、通っていた国立大学医学部は退学処分となり、家庭裁判所から良太に下された少年審判は、

「石井良太君。少年院でしっかり勉強し直してきてください。」

だった。

 少年鑑別所に送られるため裁判所に出頭しなければならない日の朝、良太の父・石井良一は、田所馬之助の強い勧めもあり、息子の生尻を膝上に抱き、その古風な街の伝統である、オヤジの右平手と息子の生尻スキンシップ法により、「少年院でしっかり勉強しなおして来い!!」と、たっぷりと良太のケツをひっぱたき、息子を送り出したという。

 そんな良太に、少年鑑別所の法務教官たちは、冷徹にも、「特に凶暴で犯罪傾向が進んだ」少年として、薔薇薗送りの処遇を下したのだった。

 薔薇薗特別少年院の入院初日。

 赤沢教官は、石井良太に、

「おまえ、外でどれだけエリートだったかは知らんが、そんな経歴、ここでは一切通用しないぞ!!特別扱いは一切なしだ!!ビシビシ根性を鍛えなおしてやるから覚悟しとけ!!」

と手厳しかった。

 しかし、その警告は脅しではなかった・・・。

ブスッ!!

 赤沢教官のガラス棒は、元ヤンキーの他の少年たちと分け隔てすることなく、元エリート・良太のケツの谷間にも、遠慮会釈なく、突き立てられるのだった。

「うぅ・・・」

 良太は、ケツに感じる不快感に思わず目をつむり、そのガラス棒で、ケツ穴を弄られる(まさぐられる)屈辱に、ジッと耐えるのだった。

グチュグチュ、グニュグニュ・・・

「なにか隠してねぇだろうな・・・おまえみたいな、大人しいヤツこそ信用ならねぇんだよ・・・」

と、赤沢教官は、右手に持ったガラス棒を、前後に押し引きしながら、そして、時には、回転させながら、良太のケツの谷間を、徹底的に調べていくのだった。

「あぁ・・・なにも隠してませんよ・・・もういい加減、信じて下さいよ・・・あぁ・・・いつまで続くんだ、こんな扱い・・・」

 そう思いながら、ガラス棒でケツ穴の奥の奥まで弄繰り回される凌辱にグッと耐える良太だった。

「よし!!ケツ、異常なし!!手をどけろ!!」

バッチィ〜〜ン!!

 赤沢がケツ谷間に突き刺したガラス棒がズボッと一気に抜かれる解放感に安堵したのもつかの間、良太の右ケツに、赤沢の平手打ちが強襲する!!

「痛てぇ!!!」

と思わず叫び、手のひらでケツをさする良太に、赤沢は、

「このくらい痛くない!!おまえに傷つけられた人の気持ちをもっと考えろ!!誰がケツをさすっていいと言った!!両手は上にあげてバンザイだ!!」

と、厳しく言うのだった。

 良太は、悔しさと恥ずかしさで、顔を真っ赤にさせながら、

「はい!!ありがとうございました!!」

と挨拶するのだった。良太の右ケツには、赤沢教官の平手もみじが真っ赤にクッキリと浮かび上がっていた。

 もちろん、A子を傷つけ泣かせた良太の半勃起ち仮性包茎の愚息にも、青谷教官から「チンコになにか隠してんじゃねーだろうな・・・皮をしっかり剥き上げろ・・・」の指示が飛び、青谷教官から徹底的に玩ばれるのであった・・・。

 エリート医学生から転落し、少年院で赤鬼と青鬼から屈辱的な扱いを受ける石井良太。

 しかし、心配はご無用。良太が転落していくその先は、かたい地面の上ではなく、オヤジが敷いてくれたフカフカのクッションの上なのである。

 少年院・退院後の良太の行先はすでに決まっていた。

 それは、東京にある帝都医科大学。(国立・帝都大学・医学部ではない!!)そこは、他大学医学部を退学処分になった医者の息子たちだけが入学する私立の医系単科大学だ。学費は、年間3600万円、卒業までの総学費は、2億1千600万円。もちろん、これは留年や休学をしない場合であり、留年や休学をした場合は、留年・休学1年につき3600万円が加算される。それに加え、毎年4月の「建学開校記念日」には、一口1000万円の寄付金を最低2口以上納めなければならないのだった。もちろん、わけあり学生のみが通う大学だけあり、奨学金制度など一切ない。

 総合病院を経営する父・良一にとって、その程度の出費は朝飯前であった。父・良一にしてみれば、良太には、もうどこでもいい、医科大学を無事卒業し、医師の資格さえとってくれればいいと、あきらめていたのである。

 そして、息子を、石井総合病院の「副院長」に早々据えて、腕のいい女性外科医を嫁さんにでもして、優秀な孫(もちろん男子)を産んでもらい、その孫に英才教育を施し、国立大学医学部出身のエリート医師に育て上げ、院長にでもすれば、石井良一の地元での面目も保たれ、石井総合病院の将来も盤石であると考えていたのである。

 当然のことながら、薔薇薗特別少年院OBという黒歴史を持つ愚息の良太に、石井総合病院に来院する「患者様」を診させるつもりなど毛頭ない。副院長室という「座敷牢」で大人しくしていてもらい、種馬として、夜の夫婦生活さえしっかりと営んでもらえばいいと、父・良一は、すでに覚悟を決めていたのである。 

 

五、チンコロ・常田(ときた)へのご褒美   

 少年院・刑務所において、「チンコロ」とは密告者を意味する。そんなチンコロが、赤沢教官のガラス棒ケツ検査を受けるため、後ろにケツを突き出し並んでいる12人の院生たちの中にも一人いた・・・。

 赤沢教官のガラス棒の次なる餌食は、その12人の院生たちの中では、一番小柄な常田(ときた)だった。

 常田のケツを検査するため赤沢教官が右手にとったガラス棒を見て、傍らに立っていた新人・黄川田教官は、

「えっ・・・太ってぇ・・・」

と驚愕する。

 そして、少年たちの前で木製バットを持って睨みを利かせていた青谷教官は、ニヤニヤ笑いを隠せないでいた。

 赤沢教官が右手にとったガラス棒は、いままでの院生たちのケツに突き立てられ、その中でグニュグニュと探りを入れ、白ブリーフを膝までおろしケツ丸出しの少年たちを不愉快と屈辱の極みへと落としめたガラス棒よりも、一回り、直径にして、約1.5倍ほど太い、極太ガラス棒だったのだ!!

 薔薇薗特別少年院では、以前は、この極太ガラス棒で、厳しくケツ検身を行っていた。しかし、「先生、痛てぇー!!」と、少年たちがあまりに悲鳴をあげるものだから、少年たちの人権も配慮に入れ、数年前より、現在の太さのガラス棒を使うようになっていたのだった。

 しかし、赤沢教官は、その経験から、もちろんこれは、趣味的ではなく、職業的な経験からだが、ごくごく稀に、具体的には、3〜4年に一人か二人、この極太ともいえるガラス棒を、乱暴にケツ穴に挿入されても、まったく痛がらない、むしろ、ガラス棒を入れられたその瞬間から、もうそれはそれは、なんともいえない気持ちよさげな顔をして、恍惚にひたってしまう院生がいることに、気がついたのである!!

 そんな院生を発見したとき、赤沢教官は、必ず、その院生を相談室へと呼び、

「なにかあったらオレにつつみ隠さず相談するんだぞ。どんな些細なことでもよろしい、正直に相談すればご褒美だ・・・いいな・・・」

と、その極太ガラス棒をチラつかせながら、パンツを下ろさせ、その院生のケツ穴に個別カウンセリングをたっぷりと施してやるのだった。

 チンコロ・常田も、そんな特異な敏感ケツ穴を持つ、レアーな院生の一人だった。

ズブッ!!

 赤沢教官は、右手に握りしめた極太ガラス棒を、チンコロ・常田のケツの谷間を一気に貫くように、突き立てるのだった。

「あっあぁ〜〜〜ん・・・」

 ケツにその極太ガラス棒をブスリと挿入された瞬間にチンコロ・常田が発した声は、他の少年たちの不快で屈辱感に満ちた切ない呻き声とは、完全に異質のものだった。

 それは、呻きというよりも、あまりの気持ちよさに思わず上げてしまったよがり声なのであった。

「よし、よし・・・たっぷりと調べてやるからな・・・」

と、チンコロ・常田の後ろで、ニヤニヤしながら、赤沢教官は、チンコロ・常田のケツ穴を、右手に持った極太ガラス棒で、弄り始めるのだった。

グチュグチュ、グニュグニュ、グチュグチュ、グニュグニュ

 赤沢教官の極太ガラス棒が、チンコロ・常田のケツ穴の奥の方を刺激するたびに、常田は、

「あっあぁ・・・・あ、あぁ〜〜〜ん!!」

とよがり声を上げる。そして、己のケツに挿入された極太ガラス棒の動きに合わせるかのように、ケツを微妙に前後左右にフリフリするのだった。

「あっあっあぁあぁ〜〜〜ん!!」

と、赤沢教官の極太ガラス棒が常田のケツの奥を突くたびに、常田のよがり声は、甘美な悦に浸りきった哀切な響きを増してくるのだった。

 チンコロ・常田は、痩せて小柄なだけに、股倉の後ろにぶら下がった玉袋がなかなか立派に見える。そんな裏玉も、常田のケツの動きに合わせるかのように、ユラーり、ユラーりと悩ましげに揺れているのだった。

 チンコロ・常田のよがり声とそのケツの動きに、新人教官・黄川田は、驚きながらも、刑務官のようなその紺の制服のズボンにつつまれた股間に熱いものを感じてしまうのだった。そして、仕事上がりのシャワー室でみた、青谷教官の股間の毛の密林からヌッと鎌首をもたげていたズル向けで立派な男性自身にその極太ガラス棒を、さらに、常田のケツに学生時代野球で鍛えた自分のプリケツを、それぞれ重ね合わせて、あらぬ妄想に引きずり込まれそうになるのだった。

 そんな黄川田を、ニヤニヤしながら眺める青谷教官は、

「アイツ、まんざらでもないらしいな・・・アイツも俺から、チンポの皮を剥きあげてほしいクチのようだな・・・しかし、職務中に、なんだあのボケーっとした顔は・・・ブッたるんどる証拠だな・・・よし!あとでたっぷりとこのバットで気合を入れ直してやる・・・」

と思うのだった。

 常田のケツが調べられているその横で、すでに検査の終わった院生たちは、両手はバンザイするように上げたまま突っ立ていなければならない。当然、白ブリーフは膝までおろしたままなので、赤沢教官の右手でバチィ〜ンと叩かれ、ベタリと真っ赤なもみじ印の合格証がついた右ケツを後ろにさらしたままだ。

 また、これからケツ検査が待っている院生は、中腰で前屈みとなり、後ろにケツを突出し、両ケツペタを両手で拡げたままのなんとも恥ずかしい恰好をとり続けている。

 そんな院生たちの耳にも、チンコロ・常田のよがり声が届いていた。ある院生は、ニヤニヤ笑いを必死で隠し、またある院生は、そのゾッとするような気持ちの悪いよがり声に、思わず目をギュッとつむるのだった。

「あの変態野郎・・・またよがってやがる・・・」

 「アイツは変態だ・・・」と、大半の少年たちがそう思っていた。しかし、教官のみていないところで、常田を殴ったり蹴ったりいじめたりはできない。なぜなら、常田は、チンコロだからだ。そんなことをしたら、常田はすぐに教官に密告し、常田に手を出した少年にはキツイ懲罰が待ち受けている。他の院生たちは、そんなこと百も承知だったのだ。

 そんな中、常田の横で、後ろにケツを突出し、自分のケツにガラス棒が突き立てられるのを覚悟して待っている院生・岡林裕一は、常田のよがり声を聞いて、

「やべぇ・・・教官たちにバレている・・・またチンコロがチクリやがった・・・チェッ!またケツバットかよ・・・オレ、昨日、青鬼からやられたばかりだっていうのに・・・畜生、ついてねぇぜ・・・」

と思い、唇を噛みしめつつ、懲罰を覚悟するのだった。みれば、岡林のケツには、バットで一発殴られたとわかる青あざがついていたのだった。

 ほどなく、ズボッと常田のケツからあの極太ガラス棒が抜かれ、

「よし!!合格だ!!」

バッチィ〜〜ン!!

のケツ平手打ちの音が、岡林の耳に飛び込んでくる。

「あぁ・・・いよいよオレの番だ・・・」

と身構える岡林裕一。

「よし!!次!!」

「はい!!お願いします!!」

と、デカい声で返事をし、両手で左右のケツペタを今まで以上にガバッと拡げる岡林だった。

「なんだ・・・岡林・・・今日はやけに素直じゃねぇーか・・・なにか隠してるんじゃねぇーか?よし!調べてやる!!」

ブスッ!!

 赤沢教官が右手に持った、今度は、普通の太さのガラス棒が、岡林のケツの谷間に突き立てられる。

「うっ・・・気持ちわりぃ・・・」

 己のケツ穴に突き刺さるガラス棒のなんとも言い難い気持ちの悪さに、思わず目をつむり、グッと堪える岡林。

グチュグチュ、グニュグニュ

 岡林のケツ穴が調べられている間、チンコロ・常田は、己のサオを調べている青谷教官に、

「お尻には隠してないです・・・短パンの中です・・・早く、短パンの中を調べてください・・・」

と、必死に目で訴えていた。

 自分を食い入るように見つめるチンコロの視線に気がついたのか、青谷教官の顔から、そのニヤニヤ笑いがスッと消えるのだった。そして、青谷教官は、声を荒げ、

「黄川田!!そこで、なにボケッとしてるんだ!!ケツ検の補助が終わったら、院生たちが脱いだ服を調べろ!!」

と、なにか妄想に耽ったような顔で、赤沢教官の後ろにただ突っ立っている新人教官・黄川田に厳しく命令するのだった。

 その命令を聞いて、ホッと安堵の表情を浮かべたのは、チンコロ・常田だった。

 常田は、万引きの常習犯だった。そして、その万引きのほとんどは、KING YUTAを喜ばすためにやったことだったのだ。そう、常田は、KING YUTA率いる「踊るヤンキー軍団」のパシリをしていたのだった。

 常田は、忠犬チンコロだった。しかし、常田の忠誠心は、赤沢教官や青谷教官に向けられたものではなく、KING YUTAに向けられたもので、それはここ薔薇薗特別少年院の中でも、薄らぐことはなかったのである。

 KING YUTAこと鈴木雄太が、家庭裁判所で少年院送りの審判を受けた頃、ここ薔薇薗特別少年院の院生たちの間では、「KING YUTAが入ってくるらしい・・・」とのウワサがささやかれ始める。

 そして、岡林ら、元ヤンキーで、B寮の中でも特にやんちゃ坊主の院生たちが、

「アイツがオレたちのB寮に入ってきても、大きな顔させるわけにはいかねぇ、どっちが先輩か、きっちりケジメつけてやるぜ・・・」

「おまえ、アイツにもやるつもりなのか・・・」

「ああ、もちろんだ・・・バラ摘みも近いからな・・・オレたちも新入りの時、先輩からやられたみたいに、バラをブスリとやってやるんだ・・・」

と密談しているのを、チンコロ・常田は、聞き逃さなかったのだ。

 そして、チンコロ・常田は、その計画を阻止すべく、機会をみはからって、赤沢教官に、それとなく、

「先生・・・鈴木雄太って人が入ってくるんですか?今日、岡林君たちが、話してましたよ・・・」

と、密告したのであった・・・。

 新人・黄川田教官の脱衣物検査が済むまで、院生たちは、まだパンツを上げることを許されなかった。

 チンコロ・常田は、バンザイの恰好をして、股間とケツを丸出しのまま、ほくそ笑みたくなるのを必死で我慢していた。

「兄貴がボクたちの寮にやってくる・・・そうすれば、ここは男だけだから、兄貴は、ボクのこと、ギュッと抱きしめてくれるかもしない・・・そして、そして、兄貴を助けてあげたご褒美をボクのお尻に・・・フフフフ。」

 忠犬・常田が一番欲しかったご褒美は、赤沢教官の極太ガラス棒ではなく、彼が兄貴と慕うKING YUTAの股間に屹立する、あのKINGな肉棒だったのかもしれない・・・ワンワン!!

 

六、新人教官への試練

「黄川田!!そこで、なにボケッとしてるんだ!!」と、先輩の青谷教官から一喝され、顔に「やべぇ・・・」という表情をありありと浮かべてしまう新人の黄川田教官。

 しかし、ハッと我に返り、

「はいっ!!」

と返事をすると、真っ赤な顔のまま、超ダッシュで、院生たちがさきほど脱いだ体育上着と体育短パンを調べにかかるのだった。

 その時の黄川田の表情といえば、同じ院生たちの前で一度ならず二度までも、先輩から叱責されたことを挽回するかのように、まさに必死のパッチという言葉がぴったりであった。

 新人・黄川田のその必死さを、もちろん、院生たちも感じとっている。

「あの兄ちゃん、オッサンに怒鳴られて必死こいてんじゃん・・・おもしれぇー」と内心、面白おかしく思い、ニヤニヤ笑いを必死で堪えていた。しかし、黄川田のことをジロジロみる院生はいない。皆、見て見ぬ振りだ。

 なぜなら、こういう場面で、教官と目があってしまうと、それが仮に偶然であっても、

「おまえ・・・さっき、ニヤニヤしてオレのことを見てたよな!?なめやがって!!懲罰だ!!」

と、あとで、どんな仕返しを受けることになるかわからないからだ。黄川田のような新人教官は、院生たちにって、まだ「仏」とも「鬼」とも判然としないため、なおさらであった。

 一方、その若さゆえだろうか、新人・黄川田の汚名を挽回しようとするその必死さは空回りしてしまう。

 脱衣物を入れるカゴの中の、12組の白上着と白短パン。白短パンのケツは、どの院生のものも、やや茶色く薄汚れている。そして、そこから、赤いバラの花一輪を見つけ出すことは比較的容易なことだった。

 短パンに上手に隠された赤いバラ一輪。それはすぐに黄川田の目に飛び込んできたのだった!!

「あっ!!あった!!」

 黄川田は、「これで挽回できる!!院生たちになめられないですむ!!」と思い、そのバラをサッとつかみとると、そのバラを持った右手を大きく上げて、

「あっ、ありました!!バラの花です!!これは集団寮には持ち込み禁止物です!!」

と、デカい声で、青谷に報告するのだった。

「やべぇ、やっぱみつかっちまった・・・」と思う岡林。事情を知る他の院生たちも、「そりゃ、みつかるよな・・・今日は、こんだけ厳しいんだもんな・・・」と思うのだった。

 その赤バラをパンツに、そして、検身場で短パンを脱ぐ時には短パンに、上手に隠していた岡林裕一は、肩を落とし、自分の名前が呼ばれることを覚悟するのだった。院生たちが穿く白短パンには、「B103 岡林裕一」と、己の氏名と所属寮、そして、居室番号が明記された大きめの名札が前と後(ケツポケットのところ)に貼られているからである。もちろん、他人の短パンの中に忍び込ませ、万が一見つかっても自分は懲罰を逃れるといった、狡賢いことをする院生も時にはいた。しかし、岡林の性根は、そこまでひねくれてはいなかったのである。

 他の院生たちは、ある者は固唾をのんで、また、ある者は「フフフ・・・岡林のヤツ、また懲罰食らうのか・・・面白くなりそうだぜ・・・」と内心、ワクワクしながら、事の成り行きを見守っている。

「よし!!黄川田、誰の脱衣物の中に入っていたのか報告しろ!!」

と、青谷教官が要求してくる。

 しかし、先輩・青谷のその言葉に、黄川田の頭は、真っ白になってしまう・・・。黄川田は、確認し忘れたのだった。 

「えっ・・・・・」

 黄川田の一瞬のとまどいは、赤沢、青谷教官にはもちろんのこと、院生たちにも伝わっていた。

 自分の名前が呼ばれることを覚悟し、心臓がはちきれんばかりにドクン、ドクンと鼓動していた岡林は、思わず拍子抜けし、

「えっ・・・・この新入りの兄ちゃん・・・もしかして、やらかしちまったのかよ・・・・」

と思うのだった。

 他の院生たちは、

「ちょっとーー、先生・・・しっかり確認してくださいよ!!」

「やべぇ・・・もしかして、連帯責任かよ・・・」

と、一様に迷惑そうな表情を浮かべるのだった。

「オ、オレに当たりませんように・・・」

と必死で祈る院生もいた。

 なぜなら、こういった場合、

「どうせ、こいつら全員クズだから、誰が懲罰食らっても同じだよな・・・」

と、自分の確認ミスを隠すため、適当な院生の短パンを手にとり、その短パンの名前を報告する、教官も中にはいたからである。

 しかし、黄川田は、性格的なものももちろんあるが、新人ということで、そこまで要領よく狡賢くは振る舞えなかった・・・。

 しばしの沈黙・・・検身場に嫌な空気が流れるのだった。

 そして、その空気に耐えかねたように、黄川田は、今まで以上のデカい声で、

「確認し忘れました!!すみませんでした!!」

と謝罪し、青谷に向かって、ペコリと頭を下げるのだった。

「こ、こいつ・・・やらかしやがったな・・・」

と青谷教官が、黄川田を叱りつけようとするのを早回りするかのように、院生たちのケツ側にいた赤沢教官が、

「黄川田、こっちへ来い!!青谷も、バットを持ってこっちへ来い!!」

と、短く命令する。

「はいっ!!」

「はいっ!!」

と、返事をする黄川田と青谷。

 命令を発した赤沢の声は、青谷もビビらせるほどのド迫力だった。青谷は「やべぇ・・・赤さん、相当、怒ってる・・・」と思うのだった。

 顔面蒼白の黄川田と、真剣な顔つき青谷は、少年たちのケツ側へと廻り、青谷は、手に持っていた木製バットを赤沢に渡し、黄川田のみを残し、再び、少年たちの前側へと戻るのだった。

 黄川田は、気をつけの姿勢で、赤沢の前に立つ。どうにか直立不動の姿勢を保とうとするが、黄川田自身も、事の重大さに気がついたのか、カタカタと小刻みな震えを抑えることができなかった。

 そして、さっきまで青谷の手に握られていた木製バットを前に立てて置き、そこに両手を置いて、自分の前に、仁王立ちになっている大先輩・赤沢教官と、どうにか目をあわすことができた黄川田。

 赤沢の表情は、意外にも、恐ろしくはなかった。しかし、同時に、自分をまっすぐに見つめてくる、その威厳に満ちた真剣な眼差しに、黄川田は、畏敬の念を禁じえないのだった。

「君は、重大なミスを犯した。それに対する、私の指導方針も十分に理解しているはずだ。黄川田、そうだな。」

 さっきまでとは全く違う、丁寧な口調の赤沢のその言葉が、かえって黄川田を震えあがらせる。青谷も、「赤さん、本気で怒ってるぜ・・・」と思うのだった。

「は、はい・・・」

「よし。もし君が、私のここでの指導方針に不満があるのならば、すぐにここから出ていってもよい。それは君の自由だ。誰もとめはしない。」

「は、はい・・・」

「しかし、ここに残って、私たちと仕事をしたいのであれば・・・・」

 そこで、赤沢は、しばしの間を置く。その間のとり方は絶妙だった。黄川田は、次に発せられるであろう赤沢先輩の言葉を十分に予測し、恥ずかしさで、パッと顔を赤らめるのだった。

「もう、くどくどと言わなくても君ならわかっているな・・・お仕置きの体勢をとりなさい!!」

 赤沢が、若手新人教官を、特に、院生たちがいる場所で叱る時の言葉遣いは辱め効果覿面のものだった。「罰」ではなく「お仕置き」という言葉を意識的に使うのである。

 まだパンツを下ろしたまま、バンザイの姿勢をとらされたままの12人の院生たちも、自分たちのケツの方で交わされる赤沢と黄川田の会話が耳に入っていた。

 「お仕置き」という言葉を聞き、院生たちは、

「あーあ・・・かわいそうに・・・・」

「フフフ・・・こりゃ、おもしれぇ・・・」

「お仕置きか・・・だったら、俺たちのケツの方じゃなくて、前でやってくださいよ、その方が楽しめますから・・・・グフフフフ。」

と、それぞれに思うのだった。しかし、すでに青鬼が、自分たちの前に戻ってきて、自分たちに睨みを利かせている。ニヤケた顔をすることはできなかった。

 しかし、白ブリーフを膝までおろし、両手はバンザイのままだ。顔の表情はとりつくろえても、前の反応は、隠しようもない。

 列の中央に並んでいた院生の福本は、その「お仕置き」という言葉に反応してしまったらしい。福本の半皮被りの男性自身は、再び、元気に鎌首をもたげ、ピクピクと上下に悩ましく律動している。

 福本は、その古風な街出身の少年らしく、子供の頃から、オヤジさんの膝上で、ことあるごとに「お仕置き」を受けてきた。しかし、オヤジさんの、家庭内暴力とまではいかないが、やや頻繁すぎた「お仕置き」に目覚めてしまったのである。

 福本の元気な息子の動きを青谷が見逃すはずもない。青谷は、ニヤニヤしながら、福本に近づき、右手人差し指で、ビコーン、ビコーンと、福本の血管が浮き出たやけに逞しい男竿に、竿ピンを食らわすのだった。

 それは、あたかも、「あとで相談室へ来いよ・・・個別カウンセリングだ・・・・」と、福本を誘っているかのようだった・・・。

 

「お仕置きの体勢をとりなさい!!」

 赤沢の、そのやさしい言葉遣いながらも、厳とした響きのこもった命令に、黄川田は、さらに顔をあからめる。年下の院生たちの前で、まるで子供が親から言われるように「お仕置き」を言い渡されたことは、黄川田のプライドを直撃していた。

 黄川田は、チラリ、チラリと少年たちのケツを眺めるのだった。少年たちのケツに目がついているような気がして仕方なかった・・・後ろを向いているはずの少年たちの「視線」が、一斉に自分に向けられているように感じたのである。

 黄川田は、恥ずかしさでもう耳まで真っ赤になり、ガックリと肩を落としながら、小さな声で、

「は、はい・・・お、お仕置き・・・お願いします・・・」

とつぶやくように言うと、回れ右をする。

 そして、自分の腰にある警棒と鍵の束を外し、それを右手に持ったまま、バンザイのような恰好をすると、両足を開いて、上体を前に屈めて、赤沢教官の方へ制服のケツを出すのだった。

 黄川田は、ブーツのような黒革靴をはき、紺の警備服ズボンだった。学生時代・野球部鍛えた黄川田のケツは、ムッチリとしてデカく、その紺の警備服ズボンは、かなりのピッチリ目で、新人とはいえ、ケツの部分のテカリ具合は、すでにベテラン並みだった。

「いよいよだ・・・」

 院生たちは、自分たちの後ろで、黄川田が「お仕置き」のためケツを出したことを察知する。

 院生たちのほとんどが、入院以来、己のケツでもって、そのバットの感触を嫌というほど経験しており、赤沢の方に丸出しにしている生ケツをピクッ、ピクッと、震わせる院生もいた。

 自分の前に差し出された黄川田のケツを見て、赤沢は、木製バットを握りしめる。そして、黄川田の横に立ち、

「ミスは誰にでもある!!しかし、若造よ!!まだまだ先に続く道は長いぞ!!功を急ぐな!!」

と念じながら、両手に握ったその木製バットを頭上斜め横に構え、渾身の力を込めて、腰を思い切りグイと入れて、黄川田のテカッた制服のケツに振り下ろすのだった。

ガッツゥ〜〜〜〜ン!!!

「うっうぅ・・・・」

 赤沢先輩のケツバットの迫力に、思わず、呻き声を上げる黄川田。学生時代、野球部では、毎日のように、先輩、コーチ、監督さんからケツバットを受けていた黄川田だが、社会人になってからは初めての、久々のケツバットに、思わず目をつむる。つむった目の奥には火花が散っていた。

 そばにケツ丸出しで立っている院生たちにだけは、聞かれまいと、

「いってぇ・・・・」

とつぶやきたいのを、必死で封印する黄川田。

 ジンジン、ズキズキと焼けつくように熱く痛むケツを、利き手とは逆の左手で押え、必死でさするのだった。右手には、警棒と鍵束を持っている。思わず右手でケツをおさえ、警棒や鍵を落としたら、さらなる「お仕置き」になること必然だったからである。

 そして、ジンジンと痛むケツを我慢して、何事もなかったように、黄川田は、赤沢の前で再び、直立不動の姿勢をとると、

「あ、ありがとうございました・・・」

とやや大きな声で、赤沢に「お仕置き」の礼をし、ぺこりと頭を下げるのだった。

 赤沢は、

「次からは気をつけるんだぞ!!ここはオレたちにまかせて、おまえは、もう教官室に戻っていろ!!」

と言う。いつもの赤沢のやや乱暴な口調に戻っていた。しかし、その言葉を聞いて、黄川田は、少しホッとするのだった。

 ケツを手で押えながら、やや足をひきずるようなぎこちない歩き方で、検身場をあとにする黄川田。

 その気配を後ろで感じながら、院生たちは、

「アイツ・・・もう戻ってこないかも・・・」

と思うのだった。自分たちの前で赤沢や青谷からケツバットをされ、その翌日から、まったく顔を見なくなった新人教官の姿を、少年たちは、もう何人も見ていたのであった。

・・・・・・・

 検身場を後にして、ややぎこちない歩き方で、教官室へ戻る黄川田に、他の先輩教官たちの、好奇の視線がそそがれる。

「畜生・・・この年になって、ケツバットだなんて・・・しかも、院生たちのいるところで・・・」

 そんなことを考えると、悔しさと情けなさで、思わず泣けてきてしまう黄川田。しかし、その日、敷地内の独身寮の自室に戻るまでは、グッと我慢。先輩たちの前では、ケツをさするのも我慢して、平然とした顔を装う努力をする。

 しかし、その足をやや引きずるようなぎこちない歩き方と、悔しさと情けなさを押し殺そうとしている様がありありとでている表情をみて、先輩教官たちは、

「おい黄川田、大丈夫か?」

と、すれ違うごとに声をかけてくる。

 そして、渡り廊下の向こうから、「いっ!にっ!いっ!にっ!!」とデカい声を出しながら、両手・両足を交互に高く上げ下げしながら、二列に並んで行進してくるA寮の少年たち・・・。

 その少年たちとすれ違う時、黄川田の羞恥心は、再び、頂点に達する・・・B寮の検身場で起きたことなど、A寮の院生たちがすぐに知るはずなどない。しかし、少し冷静になって考えればわかる、そんなことにさえも考えを至す余裕が、その時の黄川田には全くなかった。

 半分ベソをかいているような表情を浮かべ紅潮した顔を、恥じるように、その少年たちから反らし、ただただ、その少年たちが通り過ぎるのを、グッと堪えて待つしかなかったのである。

 その日のケツバットは、焦ってミスを犯した黄川田にとって、ケツにも心にも鮮烈な印象を残す、反省効果抜群の「お仕置き」となった。

・・・・・・・・・・

七、反省文とケツバット・・・

 先輩教官からケツに大目玉を食らい、ケツを痛そうに押えながら新人・黄川田教官が去った検身場では、青谷教官が、まだパンツを下ろしてバンザイをしたままの12人の院生たちを、鬼の形相で睨みつけながら、

「このバラを持ち込んだのは誰だ?」

と詰問を始めるのだった。

「・・・・・・・・・」

「正直に白状した方が身のためだぞ!!」

と、後ろで、赤沢教官も、12人の院生たちを責めたてる。

「誰なんだ?さあ、早く言え!!」

 しかし、すぐには誰も名乗り出ず、だんだん険悪になっていくその場の空気に、12人の院生たちは、ゴクリと生唾を呑み込みながら、

「持ち込んだヤツは、早く言えよ・・・でないと、連帯責任でみんなが迷惑するんだぞ・・・」

と思うのだった。

 バラを持ち込んだ当の本人・岡林裕一にも、その空気は十分に読めていた。

 元ヤンキーの岡林にとって、今のB寮での自分のリーダー的立場は重要だった。だからこそ、KING YUTAこと鈴木雄太が入寮してくるその晩に、鈴木雄太に誰がB寮のリーダーか示しをつけなければならないと思っているのだった。

 もちろん、ここで、知らぬ振りを決め込み、名乗らないことも可能だった。その場で、「そのバラは、岡林君が持ち込もうとしました!」と言い出すものなど、誰一人としていなかった。チンコロ・常田でさえも、密告はできても、その場で表だって岡林を名指しできるほどの勇気は持ち合わせていなかった。

 また、よしんば連帯責任となっても、あとで、岡林を責めたてる勇気のある院生は、B寮にはいないであろう。

 しかし、そうなっては、元ヤンキー岡林の立場は、台無しになること明白だった。そして、元ヤンキー岡林自身の男のプライドが、そうなることを許さなかった。「自首」していさぎよく懲罰を食らう。それが元ヤン岡林の男の美学だったのだ。

「よし!ケツバットなんてどうってことないぜ!!」

と、岡林は覚悟を決めると、一歩前へと進み出て、

「そのバラを持ち込んだのはボクです!」

とデカい声で、教官たちに自己申告するのだった。

「それは本当か?」

と、青谷教官と赤沢教官が、岡林の前後から近づき、はさみうち状態となる。

「はい!!ボクが持ち込みました!!すいませんでした!!」

「なんで持ち込もうとしたんだ?」

「えっ・・・そ、それは、・・・バ、バラの花を机の上に飾りたいと思ったからです!!」

 岡林のその言い訳に、教官たちだけでなく、その場で並んでいた院生たちも思わず吹き出したくなる。岡林は、間違っても、バラの花を机の上に飾ってそれを愛でるガラの野郎ではないからだ。

 岡林のその言い訳に、青谷は、ニヤニヤしながら、

「ほぉ・・・おまえ、バラの花がそんなに好きだったとは知らなかったぜ・・・本当か?」

と聞いてくるのだった。

 岡林は、今まで以上に姿勢をただし、デカい声で、

「はい!!本当です!!」

と、やけに自信をのぞかせる返答をするのだった。

 しかし、薔薇薗特別少年院において、岡林のその返答を真に受ける教官といえば、仏の浪さんこと浪岡教官くらいなものであろう。

 青谷や赤沢といった鬼教官は、岡林の言っていることがウソだと知りつつも、これ以上責めても岡林は絶対に本当のことは言わないとわかっているのか、岡林だけへの懲罰で、その騒動に幕引きをはかるのだった。

「よし!懲罰だ!!」

「はい!!お願いします!!」

「よし!!おまえのその素直な態度に免じて、今回は特別に、おまえに選ばせてやる!!」

 そういうと、青谷は、ニヤニヤ笑いながら、岡林に近づくと、

「懲罰委員会とケツバット・・・どっちか選べや・・・」

と言うのだった。

 ここ薔薇薗特別少年院においても、通常、院生への懲罰は、懲罰委員会にかけたのち、懲罰寮と呼ばれる全室個室の寮に移され、懲罰期間中、その個室内に閉じ込められ、正座し、反省文をしたためるという罰が科されるのだった。

 もちろん、やんちゃな元ヤンキーの院生たちにとっては、この個室に閉じ込められて正座して反省文というのは、この上もない苦痛だった。

 一方、ただでさえ、規則違反をしばしば犯すやんちゃな院生の多い、薔薇薗特別少年院にあっては、すべての規則違反を、公式な手続きを踏んで、懲罰委員会にかけていたら、それだけで正常な業務に支障をきたしかねないという「大人の事情」もあった。

 そこで、やり手の法務教官である赤沢や青谷は、院生たちを懲罰委員会にかけない代わりに、ケツバットという体罰を科したのである。

 もちろん、代替罰としてのケツバットは、少年院の正式な記録には残されることのない、まさに、法務教官と院生たちの間の「秘め事」なのであるが、長年、これが秘め事であり続けられる理由は、まさに、

「先生・・・懲罰寮一週間で反省文ってきついッスよ・・・ちょっとオマケしてくださいよ・・・」

「よし・・・まあ、こっちも、少年院のお偉いさん集めて懲罰委員会開く手間も省けるしな・・・それじゃ、ケツバット一本で手打ちとするか・・・」

という、院生と教官の間の絶妙な利害関係の一致があるからなのである。

 当然、教官から懲罰を宣言された院生は、正式な懲罰である懲罰寮行きを選択することもできる。

 しかし、そこは、元ヤンキー。正式な懲罰を選び、

「アイツ、ケツバットが怖くて、懲罰寮行きを選んだらしいぜ・・・」

と、他の院生から噂されては、男が廃るのである。

 まさに、反省文かケツバットかの選択は、元ヤン院生たちにとって、男の度胸を試されているに等しいわけで、ほとんどの院生が「ケツバット」を選ぶのだった。その検身場にいたB寮12名の院生のうち、懲罰に際して、「ケツバット」を選択しなかったのは、元エリートのやらかし良太と、チンコロ・常田の2名だけだった。

 もちろん、岡林も、待ってましたとばかりに、

「ケツバットお願いします!!」

と、デカい声で、ケツへの「代替懲罰」を願い出るのだった。

「よし!!回れ右して、こっちへ来い!!」

と、岡林に赤沢教官から声がかかる。

「はい!!」

と返事をすると、まだパンツを下ろしたままの岡林は、回れ右して、ヨチヨチ歩きで、院生たちのケツ側にいる赤沢教官の前へと進む。

「よし!!岡林!!パンツを脱いで頭にかぶれや!!」

と、青谷教官が、ニヤニヤ笑いながら、岡林に屈辱的な命令を下すのだった。

 もちろん、その命令に口答えは許されなかった。少年院で、教官の命令は絶対だ。どんな些細な口答えでさえも、「担当抗弁」として扱われ、懲罰が加重される。

 岡林は、悔しそうな顔をしながらも、

「はい!!」

と返事をして、膝までおろしていた白ブリーフを脱ぎ、それを両手で顔の方へと持っていく。

 少年院での入浴は週三日が原則。岡林の2日間はきッパの白ブリーフの内側は、黄色く薄汚れていた・・・。

 そんな白ブリーフを、一瞬ためらいながらも、思い切ったような表情で、一気に丸刈りの頭からかぶる岡林。

「うっ・・・くっせぇ・・・」

と、己の白ブリーフから放たれる臭気に、思わずむせ返りそうになる。

 そんな岡林の情けない恰好をみながら、赤沢教官と青谷教官は、ニヤニヤした嘲りの表情で、岡林に、

「よし!ケツを出して、懲罰の体勢につけ!!」

と命令するのだった。

「はい!!」

と、白ブリーフを被り、こもった声で返事する岡林。両手は再び万歳するようにあげ、おじぎをするような恰好で上体を屈め、ケツを後ろにプリッと突き出す!!

 中学時代は元番長の岡林。地元の工業高校へと進み、硬式野球部に入部するも、先輩からのシゴキ・ケツバットにむか腹を立て、中学時代の仲間とその先輩を「フクロ」にし、傷害罪で御用となった・・・。こうして薔薇薗へとめでたく「転校」になったわけだ。

 岡林の後ろへ突き出された生ケツは、一時は野球部員にもなっただけあり、なかなかプリッと引き締まった肉厚のケツだった。

 そして、薔薇薗での生活が板についてきたのか、そのケツにはクッキリとブリーフの日焼けラインがついていて、ケツのブリーフに覆われた部分だけ日焼けせずに白ブリーフの型がクッキリと白く残っている。これは、浅黒く日焼けした、元気でやんちゃな男子が、ブリーフを常用している証拠であろう。

 もちろん、右ケツペタには、さっき、赤沢からやられたもみじケッパンの「手のひら合格証」がクッキリと浮かび上がり、そして、左右両ケツには、前日、青谷から「態度が悪い!!」とやられたケツバットの紫色の痕が、うっすらとついていた。

「よし!行くぞ!!」

 木製バットを握りしめて、岡林の丸出しのケツに、照準を定める赤沢教官。その目は、鋭い鬼の目だった。そして、バットを振りかぶると、思い切り腰をいれて、そのバットを岡林のケツにめがけて振り下ろすのだった。

ベッチィ〜〜〜ン!!

 濡れ雑巾をコンクリートの床に叩きつけたような鈍い音が、検身場に響き渡る。院生たちの中に、そのケツバットの目撃者は一人もいない。ただ、その音を聞くのみである。そして、どの院生たちも、その音を聞いただけで、思わず目をギュッとつむり、ケツペタにキュキュッと力を入れてしまうのだった。

ガッツゥ〜〜〜ン!!

と、その重い衝撃は、岡林のケツから脳天へと突き抜けていく。

「うっうぅ・・・」

とうめき声を上げながらも、どうにかふんばる岡林。

 前日の青谷教官からのケツへのキツイ一発の痕がうっすらと残る岡林のケツに、再び、うす赤い懲罰の記憶が上書きされていく・・・。

 岡林のどうにかふんばった姿をニヤニヤして眺めながら、今度は、青谷教官が、

「もう一丁だ!!今回の違反は、懲罰寮2週間分に相当するぞ!!」

と言うと、赤沢教官から、バットを受け取り、まるで本塁打を狙う4番打者のように、豪快なケツバットを、

ベッチィ〜〜〜ン!!

と、岡林の生ケツに見舞うのだった。

 そんな青谷の本塁打級の打撃を生ケツに受け、

「あぁぁぁ・・・・」

と、なんとも言えない哀れな叫び声をあげて、前へと倒れ込む岡林。

「ちっ、畜生・・・ケ、ケツが・・・」

と低いうめき声をあげながら、その倒れたままの恰好で、ケツの方に両手を持っていき、そぉ〜っと触れてみる・・・。

ズキッ!

「いっ、いてぇ・・・」

 キツイ懲罰ケツバット2本を食らい、岡林のケツは、ちょっと触れただけズキリと痛むのだった。ケツがだんだん熱ってくるのを岡林は感じるのだった。

 岡林のその姿を見ながら、青谷教官は、

「外では番長だったか、なにか知らねぇーが、ケツバット2本くらいで倒れ込むようじゃ、番長の名が泣くんじゃねぇーか!!よお!?岡林君よぉ!?」

と言いながら、穿いていたブーツ様の黒革靴で、岡林のケツを、まるで火がついたまま道端に捨てられたタバコ吸い殻の火をもみ消すかのように、ギュー、ギューと何度も踏みつけるのであった。

「いっ、いた・・・・ち、畜生・・・・人のケツ、ゴミみたいにふんずけやがって・・・・」

 岡林は、ブリーフの足穴部分から覗く両目をうるませながら、絶対に「痛い」とはだけは口に出して言わないように、根性張ってその苦痛と屈辱に耐え忍ぶのであった・・・。

 

八、KING YUTA入寮 〜恥辱の新入りパンツ行進〜   

「鈴木!!準備はできたか?」

「はい!」

 その日の夕方、薔薇薗特別少年院・新入寮107号個室で、入寮7日目の新入院生である鈴木雄太は、集団寮に移動すべく、身の回りの準備を整えていた。

 雄太を迎えに来た木村教官は、20代後半で、後頭部を高く刈り込んだ短髪のヘアースタイル。浅黒く日焼けして、精悍な顔立ちだった。

 そんな木村教官は、107号個室で、正座して待っている雄太の恰好を、いぶかしげな顔つきで見ると、

「バカ野郎、聞いてなかったのか?脱げ!!」

といきなり雄太に命令するのだった。

「えっ!?」

 雄太は、その命令に、キョトンとした顔で、木村教官の顔を見るのだった。

「なんだ・・・黄川田の野郎・・・赤さんからケツバット食らって、気が動転しちまったらしいな・・・こりゃ、独身寮に戻ったら、たっぷり説教と追加のお仕置きだな・・・」

と木村教官はつぶやくのだった。木村は、独身寮で、新人教官・黄川田の指導係の先輩だった。

 そのつぶやきの意味がわからず、再び、雄太は、

「えっ?」

と声を上げてしまう。

 雄太のその反応に、木村は、少しいらついた表情を浮かべ、

「こっちの話だ・・・制服を脱げと言ってんだ!!さっさと脱げ!!」

と指示を出すのだった。

「はい!!」

 鈴木雄太は、6月の蒸し暑さの中、すでに汗で濡れている白開襟シャツとグレイの制服ズボンを脱ぐのだった。そして、再び、107号個室の畳の上に正座し、

「脱ぎました!!」

と、木村教官に報告する。雄太のそのキビキビした態度は、少年院・入院以来一週間、教官たちの怒号の中で、少年院内での行動様式を叩きこまれた成果だった。

「ランニングもだ!!いいか、この部屋からお前が持ち出していいものは、お前自身の身体と、お前が今はいているパンツのみだ!!ランニングも脱いでパンツ一丁!!」

 木村教官のその言葉に、少し戸惑いながらも、雄太は、キビキビとした行動で、着ていたランニングシャツを脱ぎ捨てるのだった。

「脱ぎました!!」

と、雄太は、木村教官に再び報告する。

「よし!!立って、こっちへ来い!!」

 雄太は、その指示に、「はい!」とデカい声で返事をすると、107号個室の入り口のところに立っている木村教官の前に立つのだった。

 自分の前に立つ雄太の白ブリーフ一丁の姿を、木村教官は、頭のてっぺんから足のつまさきまで、なめるように見ると、ニヤリとした笑みを浮かべ、

「もう漏らしちまったのか?元気だな・・・」

と、雄太に言うのだった。

 その質問に雄太は、ポッと顔を赤らめ、

「は、はい・・・すいません・・・」

と、神妙に言う。

・・・・・・・・・・

 一週間前の入院以来、毎日、教官たちの怒号の中、少年院内で院生がとるべきキビキビとした行動を叩きこまれてきた雄太。特に、6月の蒸し暑い炎天下での、集団行動・行進特訓には、さすがの雄太もクタクタだった。

 しかも、裁判所から鑑別所へ移送される時、移送車の中で他の少年から聞いた 「チンコの穴にバラ刺されてさぁ・・・」という噂が、雄太の頭から離れることはなかった。

 一日の特訓が終わり、夜、消灯後、107号個室の布団の中に入ると、集団寮で自分を待ち受けているであろう「リンチ」のことばかりを考え始め、ぐっすりと眠れた夜など、一晩とてなかった。

 しかし、若い雄太の適応力は、そんな試練をも徐々に克服し、少年院で久々に穿くことになる白ブリーフの履き心地にも違和感を感じなくなった6日目の夜。

 中学時代、彼女と言えるほどの仲ではなかったが、ただ一人、自分の「ダンス」をほめてくれて、

「雄太なら、きっとメジャーデビューできるよ!大丈夫!!もっと自分に自信もちなよ!!」

と言ってくれた、同級生の小林愛奈が、雄太の夢の中に出てきたのである。

 中学校の体育準備室で二人きりの雄太と愛奈。体育の授業がもうすぐ始まろうとしている。廊下から、他の女子生徒と体育教師で生活指導担当の熊田の楽しそうな話し声が聞こえてくる。彼らはもうすぐ体育準備室に入ってくるに違いない。そんな中、

「やばいよ・・・ここじゃ、マジ、やばいってば・・・」

と必死でとめる雄太を無視するかのように、小林愛奈は、体育上着を脱ぎ、ブルマーまで脱ぎ捨てて、自分の方に迫ってくるのだった。

 ブラジャーとパンティだけの小林愛奈の姿を目の当たりにし、もう我慢しきれなくなった雄太は、愛奈に飛び掛かり、愛奈をマットの上に押し倒すのだった・・・。

「コラァ!!こんなところで何しているだ!!」

 体育準備室の後ろの扉がガラッと開き、雄太の背後で、体育教師・熊田の怒号と女子生徒たちの悲鳴が聞こえてくるのだった・・・。

「あっあぁぁ!!」

と、夢の中で声を上げる雄太。その声に、ハッと目覚め、布団から上体を起こす雄太。気がつけば、白ブリーフに包まれた自分の股間に、あの気持ちの悪いヌルリとした生温かさを感じる。

「や、やべぇ・・・やっちまった・・・」

とつぶやく雄太。青臭いザーメン臭が雄太の鼻をつく。しかし、夢精をこいても、替えのパンツなどあるはずがない。それが少年院という所だ。雄太は、股間に感じる気持ち悪さをただただ我慢して再び寝るしかなかったのである。

・・・・・・・・・・

 白ブリーフのフロント脇にデカデカとこしらえてしまった薄茶色いゴワゴワの染み。雄太の若さゆえだろうか、その染みは、まだ強烈に鼻をつく青臭さいザーメン臭をあたりに漂わせていた。

 そんなパンツの染みを木村教官からジロジロと観察するかのように見られて、真っ赤な顔で下を向く雄太。そんな雄太に、木村教官は、意外にも兄貴のような優しい声で、

「あやまる必要はねぇぞ・・・夢精は規則違反じゃねーからな。だが、パンツの替えは、明日の風呂ん時までねーぞ!!」

と言うのだった。

「今夜のB寮担当は青谷さんか・・・ったく、パンツの目立つところにデカい染みこしらえやがって・・・コイツ、青谷さんから、ネチネチ、徹底的にいじられるんだろうな・・・なんたって、皮剥きの青やんだもんな・・・」

と思うと、木村教官は、自分の前にパンツ一丁で立つ鈴木雄太のことが少し哀れに思えてきて、ちょっとだけ兄貴心をのぞかせてしまったのである。

 しかし、これではいかんと、思い直したのか、木村教官は、すぐに厳しい声になり、

「両手をあげて、オレがいいというまで、そのままだ!!」

と、雄太に指示を飛ばす。

「はい!!」

と返事をし、バンザイの体勢をとる雄太。

 そんな雄太の態度に満足そうに頷くと、木村教官は、ズボンのポケットから油性の極太黒色フェルトペンを取り出すと、雄太の白ブリーフのフロントの部分に、デッカク、アルファベットの「B」の文字を描きつけるのだった。

 そして、雄太に、「回れ右!!」の指示を出すと、今度は、雄太の白ブリーフの左ケツの部分にも、デッカク、アルファベットの「B」の文字を描きつける。

 これは、院生の「誤送」防止のためである。B寮に入寮すべき院生を、誤って、例えば、A寮に送ってしまうことは、「重大事故」として扱われる。それは、死刑判決を受けていない収容者を、処刑場へと送ってしまうのと同等の「重大事故」と認識されていた。

 そして、パンツ一丁になるのは、脱走防止である。もとより、薔薇薗特別少年院に、刑務所のような塀はない。新入寮から集団寮への連絡渡り廊は、建物の外部であり、その少年院のアキレス腱でもあった。なので、院生たちを、少年院・諸施設間の連絡渡り廊下を行進させるときは、複数の法務教官が監視にあたるか、または、ブリーフ一丁なのであった。

 雄太の白ブリーフのフロントとケツに、「B寮新入り」の刻印である、アルファベットの「B」の文字を描き終えると、木村教官は、

「よし!!両手をおろして、行進準備!!その場で足踏み、始め!!掛け声を忘れるな!!」

と雄太に厳しく命令するのだった。

 雄太は、両手をおろし、でっかい声で、「はい!!」と返事をすると、

「いち!に!いち!に!」

と、めいっぱいの大きな声を張り上げながら、両手、両足を交互に高く上げながら、その場で足踏みを始めるのだった。その足踏みは、両手、そして、両太腿が、床と水平になるまで上げる、気合の入った「その場で足踏み」だった。

「いち!に!いち!に!」

 そして、ほどなく、木村教官の

「前へ進め!!」

の指示で、雄太は部屋をでて、新入り寮の廊下へと進み出る。そして、廊下で待っていたもう一人の教官に挟まれて、雄太は、夢精の染みつきパンツ一丁で、「いち!に!いち!に!」とパンツ行進をさせられるのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ここ薔薇薗特別少年院で、新入りの入寮パンツ行進は、儀式のようなものだった。複数の新入寮者がいる時でも、パンツ行進は、一人ずつだった。

 薔薇薗OBならば、そのパンツ行進のことは、一生忘れることはできないであろう。

 少しでも掛け声が小さかったならば、監視教官の「声が小さい!!」との怒号が飛び、バシッ!とケツにキツイ平手打ち一発だ。

 少しでも足や手の上げが低くても、「もっと気合をいれて、しっかり手足をあげる!!」との命令飛び、やはり、バシッ!とケツにキツイ平手打ち一発が飛ぶ。

 パンツ行進のある晩の、消灯前の集団寮は、いつになく静まり返っている。院生たちは、全員、これから入ってくるであろう「新しい仲間」がどんなヤツなのか、じっと耳を澄ませて、探っているのだ。

 パンツの染みのことなど恥ずかしがっている暇はない。ただただ、両手足を大きく振って、

「いち!に!いち!に!」

と、少年院全体に響き渡るような大声を張り上げて、新入り寮生は、行進しなければならない。

 集団寮では、先輩寮生から、リンチという名の「引っ越し祝い」が待っているかもしれない。元ヤン院生とて、リンチは怖い。しかし、リンチが怖ければ怖いほど、その元ヤン院生は、それを必死に隠そうとして、精一杯の虚勢をはる。

「いち!に!いち!に!」

ズシン!!ズシン!!ズシン!!ズシン!!

 スリッパをはいて、パンツ一丁。コンクリートの廊下に、自分に足音をめいっぱい響かせようとする・・・。まさにカラ元気である。

「いち!に!いち!に!」

「声が小さい!!もっと腹から声を出せ!!」

バシッ!!

「はいっ!!いち!に!いち!に!」 

「手がだんだん下がってきてるぞ!!もっと両手をしっかりあげろ!!床と水平になるまでだ!!」

バシッ!!

「はいっ!!いち!に!いち!に!」

 真白きブリーフ一丁で人生一からやり直し!!真白きブリーフ一丁で根性一から叩き直し!!

 こうして、KING YUTAこと「裸の王様」鈴木雄太は、青谷教官や院生・岡林らが待つB寮へと恥辱のパンツ行進をしていったのである。 

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