父子ラグビー物語 by 太朗 

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第一章  オヤジの書斎はボクらの遊び場

一、三つの約束


 小六の健太と、小四の健志にとって、オヤジの書斎はまさに秘密基地。机や本棚そしてキャビネットと、部屋中、不思議と発見がいっぱいだった。

 二人は、うるさい小二の妹・真由が入ってこないように、書斎の扉に鍵を掛け、男同士・二人だけで遊ぶのが大好きだった。

 健太と健志のオヤジ・高野健一36歳は、大手総合商社・紅華商事の社員で、週末も、出張や接待ゴルフで、ほとんど家にいることはなかった。大好きなオヤジから遊んでもらえない二人にとって、オヤジの匂いがする書斎は、大好きな遊び場の一つだったのだ。

 健一も二人の息子たちが自分の書斎で遊ぶことを認めていた。仕事が激務のため、息子たちと十分に遊んでやれない罪滅ぼしにでもなればと思っていたからだった。

 ただし、息子たちに、書斎で遊ぶ時には自分との三つの約束を守るように、言い聞かせていた。

 三つの約束とは、

「机の上と机の引き出しの中のものには、絶対に手をつけないこと」

「遊ぶ時は、書斎に鍵をかけたりして、妹を仲間はずれになどしないこと。」

そして、

「部屋の奥の鍵のかかったキャビネットは、絶対に触れたり開けたりしないこと。」

であった。

 約束を破った時は、「お前たちのズボンとパンツを下ろして、ケツが真っ赤になるまでブッ叩くぞ!」と、警告してあった。


二、健一の教育持論


 高野健一は、二つ年下の妻・由子とも相談して、

「ウソをついた時」、

「大人をバカにする口をきいた時」、

そして、

「約束を破った時」は、容赦なく叱ることにしていた。特に、男の子には、少なくとも小学生の間は、尻を叩く体罰も時には必要だと考えていた。

 ただ、体罰をするときは、どんなことをすると叩かれるのかというルールを事前にはっきりと決め、叩く時は決して感情的にはならないこと、そして、叩く時は時間を置くことなくその場でお仕置きすることを、決めていた。

 三番目の決め事は、子供が尻を叩かれるようなことをした時、その場で捕まえ叩き、それが悪いことだということを即座に教えなければ、教育的意味がないと健一が考えていたからだった。

 これが息子たちに対する健一の教育持論だった。

 健一が長男に恵まれ「オヤジ」となった時に読んだ「スパルタ教育---男の子の叱り方」という本には、「小学生までの子供に『後で叩くから、よく反省しておきなさい』と言っても、叩かれる時には、なぜ自分が叩かれるのかという理由を忘れてしまう」ということ、そして、「自分がなぜ叩かれるのかを納得せずに叩かれるのは、子供の心に悪影響を及ぼし、教育上かえって逆効果だ」ということが書かれていた。

 健一は、いわゆるハウツー本やマニュアル本に頼るのは嫌いであったが、上の記述は自分の子供のころの経験からも尤もだと思い、自分が子供を叩かなければならない時の参考にすることにしたのだった。


三、仲間はずれ


 六月の初旬、その土曜日の午後も、小六の健太と小四の健志は、学校から帰って来ると、さっそく、彼らの秘密基地であるオヤジの書斎へ自分たちの部屋から仮面ライダーと怪人の超合金のおもちゃを持ち込んで遊び始めていた。

 もちろん、まるで自分たちの姉のような口をきく、おマセでうるさい小二の妹・真由は入ってこないように、書斎のドアの鍵はしっかりとかけていた。

 いままでの経験から、土曜日に父親が出勤した時は、昼間に家に戻ってくるなど絶対にないことだったので、オヤジとの約束違反とは知りつつ、二人は、書斎の鍵を掛け妹を仲間はずれにして、仮面ライダーと怪人のおもちゃで秘密基地ゴッコで遊んでいた。

 いつも通り、書斎の外では、

「お兄ちゃん!いぃ〜〜〜けないんだ!パパの部屋の鍵しめちゃいけないのよ!早くあけなさい!でないとママにいっちゃうから!お兄ちゃん!聞いてるの!!」

と、妹の真由は父親の部屋のドアをトントンと叩き、自分も入れてほしいことを盛んに兄たちに訴えるのであった。

 部屋の中では、「女は、うるさくてやだよな!」「そうそう、男同士で遊ぼうぜ!」と、妹の声に耳を貸す健太と健志ではなかった。そして、しばらくしても書斎の扉が開かないことを知ると、真由は、いつものように、泣いて母親のもとへ行くのだった。

 母親の由子にしても、最近ますますヤンチャ坊主になってきた二人の息子には、手を焼いていた。夫の健一の言う通り、叱ってお尻の一つでも叩こうと思っても、二人とも、いつもすばしこく逃げてしまうのだった。好きではなかったが、あとで夫の健一にいいつけて叱ってくれと頼んでも、

「その場でお前が叱らないと効果がない」

と、夫の健一は、いつもの教育持論を持ち出すばかりだった。


四、オヤジの封印が解かれる時・・・


 書斎の中では、うるさい妹もいなくなり、秘密基地ゴッコを楽しんでいた健太と健志も、そろそろ飽きてくるころだった。そして、なにか面白い事がないか、いつものように書斎の中を物色し始めるのであった。

 その日は、健志が絶対にやってはならないイタズラを始めていた。オヤジの机の引き出しの中を、物色し始めたのであった。

「あ、健志、いぃ〜〜〜けないんだ!机は、いじっちゃダメだって、オヤジとの約束だろ!」

と、健太が健志に言った。

 高野家では、父親の健一は、息子たちには「おとうさん」でも「パパ」でもなく、なぜか「オヤジ」と呼ばせていた。一日も早く息子たちから「オヤジ」と呼ばれたい願望が健一には強かったからだった。

「だいじょうぶだよ。バレないもん!兄ちゃん、マジメだな!」

 長男の健太は、オヤジの「お仕置き」を本当に怖いと思い、どちらかというとオヤジの言いつけをマジメに聞くタイプであった。

 一方、次男の健志は、オヤジの顔色を見るのが得意な要領のいいタイプだった。オヤジから実際に尻を叩かれるのも、要領の悪い兄貴の健太の方が多く、二歳年下ということもあってか、健志は、まだ、オヤジが本気で怒った時の尻叩きを経験してはいなかった。

 妹を書斎から締め出すのも、健太はいつも後ろめたい気持ちでいた。ただ、弟から「マジメ」といわれるのが嫌で、妹が泣いても、鍵を開けないだけだった。

 健太は、これ以上の約束破りはマズイと、子供ながらに思っていた。さすが、兄貴である。そして、なんとか健志にそのイタズラをやめさせようとした。

「健志!やめようよ。オヤジにばれたら、ケツ、バシッだぜ・・・」

「大丈夫だてっば。もとに戻しておけば、絶対にバレないよ!」

「ダメだよ。もう、やめようよ!つまらないよ!やめろ、健志!やめないと、オレもう、部屋にもどるからな!あとは、もう知らないぞ!」

 健志は、兄貴が自分を置いて独りで子供部屋にもどることは絶対にしないと、確信していた。オヤジの机の引き出しの中を見るのが、面白くてやめられなかった。特に、スイス・アーミーのカッターナイフなどは、「カッコイイ!」と、触らずにはいられなかった。

 子供には重要な書類が入っていると言ってあるが、机の中に会社の重要な書類などを入れておく父・健一ではなかった。カッターやハサミなどをイタズラして、息子たちが怪我をしてはいけないと、机の引き出しに触ることを禁じていたのだった。

「あ、兄ちゃん、怖いんだろ、オヤジのケツ、バシバシが!この前も、泣いてたもんな、兄ちゃん。オヤジにケツ、バシバシやられて・・・」

「うるさいな、そんなこと、憶えてないよ!もう、本当に、やめろよ!」

 健太は、真っ赤な顔になってそういうと、弟が机から引っ張り出した引き出しを持って、強引にそれを机に戻そうとした。弟・健志もムキになって引き出しの両端を握って、兄貴に取られないようにした。

「あッ!」

「アッ!」

 二人の力のバランスが崩れた時だった、引き出しは傾き、引き出しの中にあったものが、机の上と床にばら撒かれた。

「ほら、言っただろう!もう、やめようよ!面白くないじゃん!」

 健志は、困ったことになると、すぐ泣いて逃げるクセがあった。引き出しの中の物が、机の上と床に散らばり、さすがにマズイと思ったのか、すぐに半泣きの状態となり、

「兄ちゃんが、引っ張るからだぞ!ボクのせいじゃないからな・・・」

と、逃げの姿勢に入った。

「泣くなよ・・・お前のせいじゃないから、早く落ちたヤツ拾うの手伝えよ・・・バレたら、お前も、ケツ、バシッだぞ!」

 弟のズルさは十分に知っていたが、弟に泣かれると、なぜか弱い、やさしい兄貴の健太だった。、

「う、うん・・・バレちゃうかな・・・」

「だいじょうぶだよ。泣いてないで、早く手伝えよ。」

「ボク、泣いてないよ!絶対に!兄ちゃんだろ、泣いてたの。この前、オヤジに、ケツ、バシバシやられた時。」

 『この前』というのは、半年位前に、健太が母親に反抗的な口をきいているところを、運悪くオヤジに見つかってしまったときだった。すぐにオヤジの分厚い平手が、バシィ〜〜〜ッと、健太のケツに飛んできたことは、いうまでもなかった。

「憶えてないよ、そんなの!いいから、早く、拾えよ!」

 そうして二人は、机の上や床に散乱した物を拾って、引き出しの中に戻し始めた。すべての物を拾い終え、引き出しを机に戻そうとした時だった。

 健志が、

「あ、鍵だ!なんの鍵かな??」

と言って、小さな鍵を床から拾った。錆びかけた古い鍵だった。

「ほら、それも引き出しの中から落ちたんだよ。早く戻しておこうよ。」

「ヤァ〜〜だね!実験しようぜ・・・」

 そういうと、健志は、顔にイタズラっぽい笑みを浮かべて、書斎中にある窓や棚の鍵穴に、その鍵を差し込んでは、ガチャ、ガチャっと回して、その鍵がどこの鍵なのかを探してまわった。

 健太は、いつオヤジにみつかるかと本当にハラハラしながらも、好奇心からなのか、もう健志を止めることもせず、その様子を眺めていた。

 しばらくすると、鍵穴の実験を繰り返していた健志が叫んだ。

「あ!開いたよ!開いた!ここの鍵だったんだ。」

 それは、開けてはいけないとオヤジから約束させられている、部屋の奥にあるキャビネットの鍵だったのである。

 いったいキャビネットの中には何が入っているのか・・・健太も好奇心を抑えることはできなかった。キャビネットの観音開きの扉を開けようとする弟の後ろに寄って来て、弟の肩越しに、中を覗き込んだ。

「あ!ボールだ!それに、トロフィー!」

と、健志が叫んだ。しかし、すぐに、

「なぁ〜〜んだ、それだけか・・・後は、昔の写真とかだけみたい・・・」

と、落胆の表情で、健志はキャビネットの扉を閉じようとした。

 なにか面白いおもちゃでも隠してあるのかと期待していたのだろう。どちらにしても、健志の期待は、見事に裏切られたようだった。

 しかし、今度は、兄の健太がそのキャビネットの中身に興味を示し始めていた。扉を閉めようとする弟に、

「ちょっと待って・・・」

というと、弟を押しのけ、そのキャビネットの中身を探り始めていた。

 すでに飽きてしまった弟・健志は、

「もうやめようよ・・・オヤジに見つかったら、ケツ、バシッでしょ・・・オレ、もう知らないよ・・・」

と言って、机の方へ行ってしまった。

 うるさい弟が行ってしまった後も、真剣な表情で、健太は、キャビネットの中身を調べていた。健太にも、そのボールがラグビーのボールであること位はわかっていた。そのキャビネットは、弟の健志が立って入っても十分に余裕のある広さと高さがあった。

 その中には、ラグビーボールや数本のトロフィーの他に、楯や、額に入った写真が何枚もしまい込んであった。そして、表彰状を入れる筒のような入れ物もたくさん入れてあった。

「あ!これオヤジが写ってる・・・オヤジ、ラグビーの選手だったんだ・・・」

 健太は、ひとりつぶやいていた。健太の見ている写真の下には、

「昭和○○年×月△日、全国高校ラグビー選手権優勝、京都・桃園ラグビー場」

とあった。また、

「昭和○×年□月◎日、全国大学ラグビー選手権優勝、東京・丹沢の宮ラグビー場」

と、書かれた写真もあった。

 それは、健一の長男・健太が、健一自身が十数年近く前に封印した学生時代のラグビーの思い出を解き放った瞬間だった・・・

 書斎で、健太が父親のキャビネットの中身に熱中している時、めずらしく、父親・健一が昼間から帰宅して玄関に入るところだった。明日からの海外出張が急遽決まり、そのための準備に、昼過ぎには会社を出て、家に戻ってきたのでだった。

 玄関に入ると、健一にとって目にいれても痛くないほどの末娘の真由が、

「あ、パパ!お帰りなさい!」

と、奥から出てきて、健一に飛びついてきた。

 上の二人の息子には、「スパルタ親父でビシビシやる」と豪語している健一も、真由には「パパ!」と呼ばせて喜んでいる大甘の父親であった。

 父親の胸に抱っこされて、真由は、

「あのねパパ・・・お兄ちゃんたちったらね、私のことね・・・」

と、その日仲間はずれにされたことを、さっそくパパに報告した。

「それは、お兄ちゃんたちがいけないね。お兄ちゃんたちは、まだパパの部屋にいるのかな?」

「うん、お兄ちゃんたちが、いけないよね!まだ、二階にいるよ、お兄ちゃんたち。でも、鍵が閉まってて、真由、入れないの、パパの部屋に!」

と、二人の兄貴たち、いや、二人の兄貴たちのケツの運命を左右しかねない、とてつもなく恐ろしいことを、末娘の真由は、かわいい顔して、サラッと言ってのけた。小さくても、さすがは真由も、女である。

「そうか・・・真由ちゃんは、ここでママといい子で待っててね。パパは、お兄ちゃんたちのところへ行ってくるから!」

「うん!真由も仲間に入れてあげてって、お兄ちゃんたちに、頼んで!」

「わかったよ、頼んであげるからね!」

 そういうと、健一は、スーツを脱いで靴箱の上に置くと、二階の自分の書斎へと階段を登っていった。真由は、二階へと続く階段を登っていくパパの後姿を、ニヤリと笑って、もとい、子供らしい屈託のない笑顔で眺めていた。

 ワイシャツを腕まくりしながら、二階への階段を登っていく健一。ワイシャツの袖を腕まくりして顕わとなった健一の腕は、現役のラグビー選手のように、手首から肘にかけて、厚い筋肉で包まれ、急激に太くなっていた。さすがに、小五から大学四年生まで、十二年間、ラグビーで鍛えた身体は、三十代半ば過ぎになろうとしている現在も、衰えてはいなかった。

「あいつら・・・今日は、タップリと・・・」

と、つぶやきながら、健一は、時々、パンッ!パンッ!と両掌を打ち鳴らしては、擦り合わせたりしていた。

 オヤジの太い腕と分厚い掌が、音を打ち鳴らしながら、自分たちのケツに、刻一刻と、近づいていることも知らず、書斎の中では、健志は、再び、怪人あそびに熱中し、健太は、オヤジの秘密のキャビネットの中身に夢中だった。



五、約束破りの罰


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

「コラァッ!健太ァッ!健志ィッ!開けろぉ〜〜!」

 それは、まぎれもなくオヤジの怒鳴り声だった。

「ヤバイ!オヤジもう帰ってきたんだ!兄ちゃんどうしよう・・・」

と、再び半泣きのような声で、健志は健太の方にやってきた。そして、襲ってくるショッカーの戦闘員から身を隠すように、振り向いた兄貴の背中の後ろへと逃げこんだ。

 健太も、いきなりの父親の帰宅に、心臓が飛び出るくらいビックリした。しかし、健太には、そんな時も、騒ぎ立ててパニックに陥ったりしない冷静な一面があった。

 健太は、今日はもう逃げられない・・・最悪、オヤジの、ケツ、バシッ!が待っていると覚悟したのだった。

「だいじょうぶだよ、だいじょうぶだから・・・あせるなよ・・・泣かないの・・・泣くな・・・」

 声は半泣き状態だったが、弟の前で泣くわけにいかないのが、兄貴のツライとこだった。しかも、健志は、自分の後ろで、背中に隠れるようにして、ブルブルと震えていた。

 普段はやさしい大好きなオヤジも、怒ると、思いっきり泣くくらい怖いことを、二人とも充分に知っていたのだ。

「ボク・・・グスッ・・・泣いてないもん・・・グスッ・・・ボク、知ってるよ・・・グス、グスッ・・・この前・・・グスッ・・・」

「わかったよ・・・泣いたよ、この前、オヤジからケツ、バシってやられた時・・・だから、いまは泣いちゃダメだ!」

「グスッ・・・ボク、泣いてないもん・・・グスッ・・・だから、お兄ちゃん、助けて・・・グス、グス・・・」

 兄貴も、健志につられて、涙腺がゆるみ始め、ほとんど泣く寸前だった・・・

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

「コラァッ!早く、開けろぉ〜〜!」

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

「早く開けないと、二人とも、ひどい目に遭うぞ!いいのか!」

 だんだんオヤジの怒りが頂点に近づいてきていることが、健太にも健志にも感じられた。

「そうだ!健志はそのキャビネットの中に隠れてろ!ここは、オレにまかせるんだ!」

 ピンチになると、いつも健太は、カワイイ弟・健志のことを庇ってやるのだった。そして、いつも、自分だけオヤジからのお仕置きを受ける、そんな損な役回りを買って出ていた。

 弟・健志が、観音開きのキャビネットの扉を内側から閉めたのを確認すると、健太は、急いで書斎のドアに駆け寄り、鍵を開けた。

「あ、オヤジ!お帰りなさい!」

「オレの書斎で遊ぶ時は、鍵をかけないって約束はどうしたんだ!!」

 腕を前に組み、廊下に仁王立ちになって、健太を見下ろして睨みつけているオヤジの健一だった。身長185cm、元ラグビー選手らしい、ガッシリした体格の健一だった。

 健太は、久しぶりにオヤジの本気で怒った表情と声を聞き、思わずピシッと直立不動の姿勢で立たざるを得なかった。健太にとっては、健一は、普段はやさしいが、怒ると一番「怖い人」だった。

 慌ててドアを開けたのか、健太は、写真の入った額をキャビネットにしまい忘れていた。最初は、その写真を自分の後ろに隠し持っていたが、オヤジの睨んだ怖い顔をどうにか和らげようと、思い切って、

「これ、オヤジでしょう。カッコイイ!ボクもラグビーやりたい!教えて、教えて!」

と、甘えていってみた。

 しかし、いつものオヤジとは違い、さらに表情を厳しくさせ、その写真を健太から取り上げると、

「コラァッ!あのキャビネットは開けちゃダメだっていっただろう!」

「ごめんなさい・・・」

「それに、どうやって開けたんだ。鍵がかかっていただろう、あのキャビネットには!」

「引き出しのなかに鍵が・・・」

「健太ァッ!それじゃ、お前、オレとの男同士の約束を、三つとも、全部破ったんじゃないか!」

 健一は、息子たちに話しかけるときは、いつも、「オレ」と自分のことを呼ぶことにしていた。その方が、息子たちと、親子というよりは、友達のような付き合いができると考えてのことだった。

「うん・・・ごめんなさ・・・」

「『うん』じゃなくて、『はい』だろ!」

「はい・・・破りました・・・ごめんなさい・・・」

というと、「お仕置き」を覚悟し、うつ向いて床を見つめる健太だった。

「さあ、どうしようかな・・・これから・・・」

といいながら、健一は、健太の両肩に手を置き、部屋の中に入り、ドアの鍵を閉めた。カチャっと鍵がかけられる音に、健太は、さらにはっきりと「お仕置き」を覚悟した。健一が、健太を叱る時はいつも部屋の鍵をかけるのだった。

 高野健一・一家の住む家は、東京・杉並区の住宅街にある広い家だったが、健一の父親の代から住む古い家だった。二階の息子を叱る健一の声は、当然、一階の由子のところにも届いていた。

 由子は、いつも父親との約束を破って、書斎に鍵をかけて遊んでいる健太と健志を、今日こそは、健一にみっちりと叱ってもらいたいと思った。その怒鳴り声から、健一が相当本気で怒っていることはわかったが、息子たちのお仕置きは、健一にすべて任せることにした。

 真由が、母親に、

「おにいちゃんたち、パパから、叱られるの??なんか、かわいそう・・・」

と言った。

「だいじょうぶ。真由はそんなこと心配しなくていいの。」

とだけ、母親は娘に言った。

 書斎では、椅子に座った健一が、前に健太を立たせて、お説教と今日の「お仕置き」の理由を説明していた。

 健太は、オヤジの前に立たされてのお説教が、お仕置きよりも嫌いだった。ジッと動かずにオヤジの前に立って聞かなければならない上、すこしでも、下を向いたり、オヤジと目を反らしたりすると、ビックリして飛び上がるほど迫力ある大きな声で、

「コラァッ!しっかりオレの話を聞きなさい!!」

と、叱りつけられるのだった。

 お説教の時間は、健太にとって、非常に長いものに感じられた。そして、父親がいつ「さあ、準備しろ!」と命令いてくるのか、気が気ではなかった。もちろん、「準備」とは、ケツ叩きの準備で、半ズボンとパンツを脱ぎ、オヤジの膝の上に乗って、お尻を上に突き出すことだった。オヤジのひざ上で、むき出しのケツを潔く天井に向けてスクッと上げる!それが、オヤジ健一が、息子の健太と健志に教えたお仕置きを受ける時の体勢だった。

 お説教が終わると、健一は、わざといままで知らない振りをしていたことを、健太に尋ねた。

「健志も一緒に遊んでたんじゃないのか?真由がそう言ってたぞ!」

「あいつ・・・おしゃべり・・・」

「なに!なにか言ったか!男なんだから、言いたいことがあるなら、ハッキリといいなさい!」

「うん!」

「『うん』じゃなくて、『はい』だろ!」

「は、はい!最初は二人だったけど・・・健志はどっかへ遊びにいっちゃったんだ。部屋に鍵をかけて、キャビネットを開けたのは、独りになってから・・・です・・・だから、健志は、悪くないんだ・・・」

「本当か??ウソをついたら、お仕置き、もっと痛くなるぞ!」

「うん!本当!ウソじゃないよ!」

「『うん』じゃなくて、『はい』だろ!何度言ったらわかるんだ!」

ピシィ〜〜〜〜〜〜〜ッ!

 いきなり、健一の分厚い右掌が、健太の少しキツメになったジーンズの半ズボンから、元気に出ている左太腿を強襲した。

「い、痛い・・・!」

 オヤジの怒りと厳しさに触れ、急に涙ぐむ健一。いよいよ、約束破りの罰である厳しいお仕置きが始まるのであった。

「は、はい・・・本当です・・・ボクのこと信じて・・・」

「泣くんじゃない!健太!オレの目を見なさい!」

 健太は、弟を庇おうと必死の思いで、「ウソはついていません」と訴えるように、オヤジの目を見つめようとした。目には、涙がいっぱい溢れていた。

 キャビネットの中では、観音開きの両扉の真ん中にできた隙間から、健志が外を覗いていた。座っていた健志には、健太のジーンズの半ズボンの尻の部分だけが見えた。オヤジが厳しい声を上げると、健太が、両尻を、キュッと締めるのが観察された。

 キャビネットの外からは、

「わかった!それじゃお前の言葉を信じる!さあ、準備しろ!お仕置きだ!ケツをブッ叩たいてやる!」

と、オヤジの迫力ある声が聞こえてきた。健志は、胸がドキドキしてきていた。

「やっぱり、オシリたたくの・・・」

と、涙ぐんで、最後の許しを請う、健太だった。

 健一は、少し優しい声になって、健太を諭すように、

「そうだよ。約束を破ったら、オシリを叩くって、健太とオレは約束しただろう。お前も、もう来年は中学生なんだ。わかるよな!」

 今回は、オヤジは、絶対に許してくれない。そんな頑とした厳しさが、健一の言葉には感じられた。

「は、はい・・・」

「じゃ、男らしく、準備をしなさい。」

健太は、肩を落とし、うつむきがちに、

「はい・・・」

と、力なく返事をした。

 そして、穿き古した小さめのブルージーンズの半ズボンと白いグンゼブリーフを脱いで、オヤジに渡した。オヤジは、息子の半ズボンとパンツを受け取った。そして、健太の背には届かないような、壁の高い位置に取り付けてある何かをかけて置くためのフックのところに、その半ズボンとパンツを掛けた。

 お仕置き中は、半ズボンとパンツは息子から取り上げて、いつもそのフックにかけて置くのが、健一のやり方だった。

「ズボンとパンツはお仕置きが終ったら返してやる。さあ、こっちへ回って、オレの膝の上に乗りなさい。」

 キャビネットから覗いている健志は、

「あ〜、兄ちゃん、ケツ、バシバシやられるんだァ〜〜、ボク、どうしよう・・・」

と、なにか自分だけオヤジのお仕置きから逃げているようで恥ずかしく、兄貴に申し訳のない気持ちになってきていた。

 健志も、四年生になり、心身ともに少し大人になったのだろうか、今までとは違い、「お仕置きを免れて、超ラッキー!」などとは、とても思えないでいた。

 水色のT−シャツだけになった健太は、父親の開いた両足の間に立った。

「向きが違うぞ!今日屈むのは、オレの左足だ!」

 そういって左太腿を指差すと、健一は、健太を回れ右させ、自分の左太腿の上に屈ませた。健一は、まだ紺のスーツ・パンツに黒の靴下のままだった。

 左足の上に屈む。それは、健一の利き腕である右手でケツを叩くことを意味していた・・・健太にとっては、いつもより数倍、痛くてツライお仕置きになることは確実だった。

 健太が屈むとき、オヤジ・健一は、健太の股間をチラリと観察する。お仕置きのため長男のことをこうしてひざに乗せるのは、半年ぶり位かと思う健一。しかし、健太の股間は、前回よりも、明らかに男として成長していることを確認する健一。

 そして、健一は、口には出さないが、

「あっ・・・コイツ、もう毛が生え始めている・・・そろそろアレも覚えるんだろうな・・・風呂一緒に入った時、皮、剥いてやらないといかんかな・・・」

思うのだった。

 しかし、健太が屈むと、オヤジは、健太をお仕置きすることに専心する。健太の上半身を下げさせ、ケツをもっと上げるように、いつものお仕置き時よりも厳しく促すのだった。

「ほら、健太、もっと頭を下げて、床に両手をつけるんだ!男らしくケツをもっと上にピシッと突き出せ!」

「は、はい・・・」

と、健太は、いつもよりも厳しくなった父親の命令に戸惑いつつも、その指示に素直に従うのだった。ケツが今まで以上にむき出しになったようで、思わず鳥肌が立つ。そして、向きが変わったので、両手を床につけて顔を上げると、健太のちょうど前方に、あのキャビネットが見えた。

 キャビネットの中では、健志が、オヤジのキツイ一発目を待ってジッと目を瞑っている兄貴の顔を見つめていた。

「あ〜、兄ちゃん、ごめん・・・」

 健太は、ちょうどオヤジの左ひざの上に、ケツを頂点として、くの字になるように乗った。上半身を充分に下げさせられたため、足は床につくことができず浮いていた。

 健太の丸くかわいいオシリは、足や胴体の皮膚に比べて日焼けせずに残っており、オシリの輪郭が白くくっきりと浮かび上がっているようだった。そのカワイイ双丘は、プリッと右上を向いて、オヤジの左ひざの上に、チョコンと乗って、約束破りのオヤジのお仕置き、すなわち、健太が、男として人間として、また少し成長するために飲まなければならない「苦いお薬」を待っていた。

 健一は、再び腕まくりをして、両手を合わせて、擦り合わせたり、握ったりしながら、

「よぉ〜し!今日は、いままでで、一番、痛いヤツだ!約束を三つも破ったんだからな!覚悟はいいか?」

と、再び厳しい調子にもどって、健太に尋ねてきた。そして、左手を健太の腰の部分にあてがい、ギュッと押さえた。良薬は口に苦し!健太には、ちょっとツライ、お薬の時間が始まろうとしていた。

 キャビネットの扉の隙間からその様子を覗いていた弟の健志には、健太がその言葉を聞き、目をつむり、「あ〜〜〜!」といった様な、なんともいえない悲痛な顔をする様子がみえた。健志も、思わず、目を閉じて、身をすくませてしまった。

「は、はい・・・」

と、目をジッと閉じたまま、力なく答える健太だった。

「聞こえないぞ!健太!男の子なら、もっと元気に返事をしろ!」

と、デッカイ声で厳しく言ったかと思うと、予告もなく、右手で

バシィ〜〜〜〜ッ!

と、健太のケツに、容赦のないキツ〜〜〜イ一発目を放った。

「い、痛っ・・・」

 一瞬大きく見開いたと思った健太の目が、再びギュッと閉じられ、兄貴の顔が真っ赤になっていくのが、健志にはわかった。容赦なく痛い、オヤジのケツ叩きの始まりであった。

 どんなお仕置きでも、一発目は、印象深いものである。一発目がケツに炸裂するまで、胸ははちきれんばかりにドキドキし、たとえ、どんなにケツ叩きに慣れていても、一発目の打撃ほど、痛く感じるものはない。

 今回は、予告なくいきなりやってきた一発目だった。健太のケツから脳天にかけて、半年ぶりの、あの衝撃が襲っていた。やっぱり、オヤジの手は、鋼のように硬くて痛い!それに、オシリが熱かった。健太は、ケツを思いっきりキュっと引き締めた。そして、両足をバタバタさせた。

「コラァッ!足をバタバタ動かすな!」

と、怒鳴られ、

べシィ〜〜〜〜ッ!

と、ケツに二発目の強打をもらってしまった。

 オヤジは、右足で息子の両足を、しっかりロックすると、

「その位!痛くも痒くもないはずだぞ!さあ、元気に返事をしなさい!」

と、長男を厳しく叱咤激励した。

「ハイッ!」

と、またもやオヤジの右手が、いきなり振り下ろされるのではないかと、ケツにムズムズするものを感じながらケツをギュっと引き締め、絞り出すようなデッカイ声で、健太は返事をした。

「よし!じゃ、始めるぞ・・・しっかり歯を食い縛ってろ!」

「ハイっ!」

と返事をして、健太は、全身に力を入れた。特に、両ケツはさらに一段とギュッと引き締めていた。

 オヤジは、右手を振り上げ、三発目を、健太の尻のちょうど真ん中に、

バチィ〜〜〜〜〜〜ッ!

と、振り下ろした。

 それからは、健一の分厚い右掌が、膝の上にプリンと置かれた息子のケツの双丘を連打していった。

 健一は、息子のケツを叩いているときは、説教はしなかった。自分の考えは、自分の掌から息子のケツを通して、伝わると思っていたからだ。

バシッ!バチッ!ビシっ!ビシッ!ピシ!ピシ!ベチッ!バン!バン!ベチィ〜〜〜〜ッ!

 時には、右ケツ、時には、左ケツ、時には、中央、そして、時には、腿にも、健一の鋼のように硬くて大きな掌が、休むことなく、振り下ろされていた。特に、オヤジの痛打は、健太のケツ下部から腿上部にかけてを、丁寧に満遍なくカバーしていった。

 オヤジの掌は、健太のケツの双丘をちょうど覆い尽くすくらいデッカイ手だった。一発・一発も、ズシン・ズシンと重く、平手打ちながら、一発ごとに脳天に響いていた。そして、ケツがどんどん熱くなってくるのを、健太は、感じていた。

「泣くもんか!」

と、健太は、奥歯をギュッと噛みしめた。


六、兄貴のプライド、弟のプライド


 キャビネットの中では、健志が震えるように、外で兄貴がオヤジからお仕置きを受ける様子を眺めていた。

 オヤジの掌が、兄貴のケツに向って振り下ろされる度に、ドシン・ドシンと、兄貴が前に押し出されて来るようだった。兄貴が、目を瞑って真っ赤な顔をして、必死で耐えている様子が、健志にはわかった。

「兄ちゃん、泣いてない・・・すごい・・・がんばって・・・」

と、健志は兄貴を応援していた。

 健一のお仕置き方法は、回数を決めないで叩く厳しいやり方だった。回数を決めてしまうと、息子たちは、その間だけ、反省した振りをするからだった。

 息子たちが本当に反省しているかは、声の調子や態度でわかった。お仕置きは、健一が、息子たちが本当に反省しているとわかるまで、何発も、ビシビシ、続けられた。

バシッ!バチッ!ビシっ!ビシッ!ピシ!バシ!バチィ〜〜〜〜ッ!

 健太は、ケツを膝の上にプリンとだし、永遠に続くのではと思われるオヤジの尻叩きに必死で耐えていた。その姿勢を保つだけで大変だった。ケツが、ホカホカ熱かった。キャビネットの中でこちらを見ている弟の手前、「絶対に、泣くもんか!」と、奥歯をグッと噛みしめて必死でガマンしていた。兄貴としてのプライドだった。

 五十発は軽く超えていただろう。いつもなら、そろそろ、健太もシクシク泣き始めるときだった。

「どうだ!ケツ、痛いか!約束破ったんだから、当然だよな!このくらいの罰は!」

「は、ハイッ!」

「よし、よぉ〜〜く反省しろよ!」

 もうそろそろ許してやるかと思いながら、健一は、最後の仕上げの臀打に入っていた。

バシッ!バチッ!ビシっ!バシッ!バチッ!ビシィ〜〜〜〜〜ッ!

 最後の一発は、特に強かった。

「どうだ!きちんと反省したか?」

「ハイッ!」

 いつもは泣いてしまう健太なのに、今回は、必死で涙を堪えて、大きな声で返事をしているのが、健一にもわかった。もう十分だろうと思った。

「よしッ!じゃあ、立ちなさい!立って、オレの目をしっかり見なさい!」

 健一は、押さえていた左手を離し、右足のロックをはずしてやった。そして、左手を下に差し出し、息子が起き上がるのを手伝ってやった。

 まだ、ホカホカする尻をさするのは許されなかった。大きく開いたオヤジの両足の間に立って、両手は脇にピシッと付け、オヤジの目をしっかりと見て、仕上げの説教を聴かなければならなかった。健太は、大好きなオヤジの顔を見ると、甘えたくて、涙が溢れてきそうになったが、必死でガマンした。

 健一も、息子の目を真剣に見つめ、どんな小さな約束でもしっかりと守ることの大切さをわかりやすい言葉で説くのだった。

 普通はここで「ごめんなさい!」と、息子の心からの謝罪の言葉を聞いてお仕置きは終わりのはずだった。しかし、いつもは落ち着いて集中してオヤジの話に耳を傾ける長男が、なぜかソワソワ、キャビネットの方ばかりを気にしているのであった。

「ハ、ハァ〜ン!」

と、健一は感づいた。

「健志がキャビネットのなかに隠れてるんだな・・・」

 いつものように、健太が健志を庇って隠れているように言ったことも、すぐに推測がついた。

 よくあることだったので、知らないふりをして兄貴の顔を立ててやり、健志のことを見逃してやろうかとも思った。しかし、健一は思いとどまった。健志ももう四年生だ。約束をやぶったり、ズルをしたり、ウソをついたりすることが、いいことか悪いことなのかを、自分の掌で健志のケツにビシビシと教えてやる年齢だと思った。

 さっそく、健一は、あの一枚だけしまい忘れてあった写真を取って、キャビネットにしまいに行く素振りをした。

「ああ、それはボクが自分でしまっておくから・・・オヤジは先に下に行ってて・・・」

と、オヤジを見て、健太が慌てだした。

 健一は、

「いいから、健太が先に下に行ってなさい。オレは、これをしまったらすぐに行くから!」

「ああ、ダメ、ダメ・・・」

と、必死でオヤジの前に立ち塞がろうとする健太だった。

 その時だった。

「ウワァ〜〜〜ッ!ゴメンなさぁ〜〜い!」

と、泣きながら、健志がキャビネットから飛び出してきて、オヤジの足のところに抱きついてきた。

 健志は、泣きながらも、

「兄ちゃんは・・・グス・・・悪くないんだ・・・グス、グス、ボクが・・・・」

と、オヤジにさかんに兄貴は悪くないことを訴えようとしていた。

「健志、だまってろ・・・」

と、健志をさかんに制止しようとする兄貴だった。

 しかし、健一は、健太を厳しくけん制した。

「健太!邪魔するんじゃない!健志に最後まで言わせてあげろ!」

「はい・・・」

 健志は、部屋の鍵を閉めたのも、引き出しをイタズラして鍵をみつけたのも、そして、キャビネットを開けてしまったのも自分だと、泣きながら白状した。

 健一は、次男に厳しく言った。

「それで、お仕置きが怖くて、キャビネットに隠れていたのか?卑怯だぞ、健志!」

 大好きなオヤジから「卑怯だ!」と言われて、さらに悲しくなったのか、健志は、ウワァ〜〜〜ッと泣き出してしまった。

 思うに、男の子が「卑怯」という言葉を覚えるのは、小学校の高学年頃ではないだろうか?漢字では書けないが、友達が使っているのを聞いて、自然と覚えるのである。友達から言われると胸にグサっと刺さる、その言葉の持つ非常にネガティブな含蓄とともに。

 その時、健太が弟を庇うように、

「健志は、卑怯なんかじゃない!」

と、目にいっぱい涙をためて、オヤジに反論してきた。

「健志に、隠れてろって言ったのは、ボクなんだ・・・だから、健志の、オシリは叩かないで・・・」

 健一は、オヤジとして、健太からそういう言葉が聞かれることがうれしかった。いますぐにでも、健太を抱きしめて褒めてやりたかった。

 しかし、ここは、しっかりと健志をしかり、ケジメをつけないとダメだと思い、褒めてやりたい気持ちをグッと押さえていた。

 健一は健志の目線の高さになるまでしゃがむと、次男の両肩を手で持ち、健志の目をみて言った。

「よし、わかった。健志は、卑怯なんかじゃない!でも、オレとの約束を破った罰から逃げるんじゃ、男らしくないだろ??」

「う、うん・・・男らしくないと思う・・・」

「『うん』じゃなくて、『はい』だろ!」

「は、はい・・・」

「じゃあ、オレが、健志のオシリをいまから叩かなければならない理由もわかるね。」

と、健一は、やさしく諭すように、健志に話しかけた。

「はい・・・ボクが、オヤジとの約束を破った・・・ごめんなさ・・・」

 健志は、オヤジからオシリを叩くことを宣言され、また泣き出してしまった。

「男だろ!泣くんじゃない!兄ちゃんは、泣かなかったぞ!さあ、こっちへ来なさい・・・」

「は・・・グス・・・は・・・グス・・・はい・・・グスゥッ」

と、健志は、自分が泣くのを必死で抑えようとして返事をした。

 健一は、健志の肩に両手をかけると、やさしく、机の方まで連れて来てやった。そして、

「健太は、壁の方を向いて、健志のお仕置きが終わるまで、反省してなさい。」

と、命令した。健太は、オヤジの言いつけどおり、壁の方を向いた。ズボンとパンツをまだ返してもらっていない健太。少し大きめの青いT−シャツの裾から真っ赤なオシリがその双丘をのぞかせていた。

 健一は、スーツパンツのポケットからハンカチを取り出すと、健志に涙を拭かせ、鼻をかませた。そして、健太のお仕置きと全く同様の手順で、健志のお仕置きを始めた。壁のフックには、健太と健志の、ジーンズ・半ズボンとパンツが、仲良く並んで、掛かっていた。

 健志は、オヤジの右ひざの上に乗っていた。それは、健志のお仕置きは、健一の左手で行われることを意味していた。健一も、まだ小四の息子の尻を、自分の利き手で思いっきり叩くのは、かわいそうだと思ったのだった。

 オヤジの右ひざに屈まされ、上半身を下げ、床に両手をつく健志だった。健志のオシリは、兄貴のお下がりの少し大きめの薄黄色のT−シャツに丸々隠れていた。健志には、そのT−シャツの裾は、少し長すぎるよだった。

 健一は、そのT−シャツをゆっくりと巻いてめくり上げた。桃のようなカワイイ健志のケツがペロンと顔をみせた。健一は、思わず微笑んで、

「カワイイ尻をしてやがる・・・でも、今日からは健志も甘やかさん!手加減はせんからな!」

と心に誓った。そして、指の間を閉じて掌を固めると、左手を頭の上まで上げて、健志のケツの上に、一発目を振り下ろす準備をした。

 子供、特に男の子には、「怖い人」が不可欠だ。でないと、増長して歯止めが利かなくなるからだ。健志にとって、オヤジの健一が、本当の意味で、その「怖い人」になる時だった。

バシッ!バチッ!バシッ!バチッ!バシッ!バチッ!

 後ろを向いていた健太は、その音で、健志の尻叩きが始まったことを知った。

「健志ガンバレ!」

と、心の中で応援していた。

 オヤジの「兄ちゃんは、泣かなかったぞ!」の言葉が胸に響いたらしかった。ケツを叩かれている最中、健志は、必死で歯を食いしばり、涙を堪えた。

バシッ!バチッ!バシッ!バチッ!バシッ!バチッ!

バシッ!バチッ!バシッ!バチッ!バシッ!バチッ!

何回も、何回も、オヤジの鋼のように硬い左掌は、健志の尻に、オヤジの断固たるメッセージを伝達していた。

「オヤジィ〜〜痛いよぉ・・・」

と、さすがにギブアップしたのだろうか、しばらく叩き続けると、健志は、半泣きの声をもらすようになってきていた。

「この位、痛くない!」

と、口では厳しいことを言っていても、次男のケツの火照り具合から、そろそろ許してやるかと、健一も思い始めていた。そして、少し強めの仕上げの臀打に入った。

バシッ!バチッ!ビシっ!バシッ!バチッ!ビシィ〜〜〜〜〜ッ!

やはり、最後の一発は、特に強かった。

「どうだ!きちんと反省したか?」

「うん!」

「『うん』じゃなくて、『はい』だ!」

オマケの一発!バシィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!

「い、痛ぃ!ハイ!ハイ!ハイ!反省したから・・・ぶたないでぇ〜〜!」

「『はい』は一度でいい!もう一発いくか!」

と、右手で健志の腰をグッと押さえつけ、左手を高く上げた。

「は、はい!きちんと返事するから、もうぶたないでぇ〜〜〜!」

と、健志は、スルスルっと、オヤジの膝から逃げ出した。さすがに、次男は、長男に比べて、すばしこくて、逃げ足が速かった。

 そして、

「ごめんなさぁ〜〜い!」

といって椅子に座っている健一の胸に飛び込んで、ワンワン泣いてしまった。健一のイタリア製の高級ワイシャツは、健志の涙と鼻水でグチャグチャになりそうであった。

 健一は、そのまま泣かせて置いた。そして、泣きつかれたのか、そろそろ泣き声もおさまりかけてくると、健志を胸から離し、やさしく、

「よし、よし、もう泣くのはやめなさい・・・お兄ちゃんに笑われるぞ・・・」

と言った。

 健志は、

「グスン・・・グスン・・・はい・・・ボク、泣いてないもん・・・」

と鼻水を吸いながら言った。

「じゃあ、健志は、お兄ちゃんの隣に行って、立っていなさい!」

と、指示を出した。

 オヤジは、これで、お仕置きを終わらせるつもりはなかった。翌日から海外出張であることも忘れて、その日は、徹底的に、本気でオヤジが怒っていることを示し、二人の息子に喝を入れてやろうと思っていた。


七、教育用の四つの双丘


 オシリをオヤジの方へ向けて、壁に向って立っている健太と健志だった。時々、ケツをさすろうとすると、

「コラァッ!ケツをさすっていいなんて誰が言った!手は、キチッと両脇だぁ〜〜!」

と、すぐにオヤジの怒鳴り声だった。オヤジは、きちんと反省しているか、自分たちをしっかり監視している、そう思って、健太も健志も気が抜けなかった。

 二人仲良く並んで、真っ赤な尻をオヤジに向けていた。兄貴のおさがりの長めのT−シャツが、健志の真っ赤なオシリを隠していた。健一にとっては、そんな息子たちの格好が無性にカワイかった。

「カワイイ奴らだ。オヤジのこと、今日は、本当に怖がってるな・・・」

と、椅子にすわって微笑みながら、カワイイ二人の息子が後ろを気にしながらも、真剣に反省している姿を眺めていた。

 そして、二人に向って、

「ふたりとも、しっかり反省してるか??」

と、時々、厳しく尋ねた。

オヤジが厳しい口調で聞いてくると、ふたりとも、ビクッとして、

「ハイ!」「ハイ!」

と、即座に答えた。健一は、

「よし、よし、二人とも、まだビビってるなぁ・・・オヤジの威厳に、恐れおののいているな!たまには、厳しくして、締めとかないとな・・・男の子は、図に乗るからな・・・」

などと満足げに思っていた。

 その日のお仕置きは、二人の息子にとって、男としての力の序列をはっきりと思い知らされた時だったのであろう。オヤジを本気で怒らせたら、今はまだかなわない!と。特に健志は、自らのケツで、それを学びとったばかりだったに違いない。そんなちょっと痛くて恥ずかしい代償を自らのケツで何回も払って、男の子は、成長していくのであった。

 宗教的な表現を許してもらえるのならば、まさに男の子の尻の双丘は、叩かれて成長するために、創造主がお創りになられた教育用の丘なのであった。 

「健志、T−シャツを上げて、ケツをみせてみろ!」

「はい!」

といって、兄貴のお下がりの薄黄色いシャツの裾を捲る健志。真っ赤に輝く健志のオシリが、ペロンと顔をみせた。

「お前たちのケツ、真っ赤だぞ!痛かったか??」

「はい!」

「はい!すごく・・・」

 さくらんぼのようなカワイイ真っ赤な二つの頬をした、息子たちのケツを見ながら、健一は、これもいい薬になるだろうと、二人でウソをついた罰として、もう少し二人をカラかってやろうと思っていた。

「ふたりとも、こっちを向きなさい!」

「はい!」「はい!」

「その位で痛がっていたんじゃ、困るな!まだまだ、罰は、終わってないんだからな!」

「え・・・」「え・・・また、叩くの・・・・」

 健志は、また、泣き顔になった。

「そうだ!健一は、オレに、『健志はもう遊びに行ってこの部屋にはいない』って、ウソをついただろう。」

 そう言うと、健一は立ち上がり、クローゼットの中から、洋服の埃を払うための木製で楕円型のブラシを持ち出してきた。そして、それをわざと、

バシッ!ビシッ!

と、掌に打ちつけ、音を立てながら、

「ウソをついた罰は、約束を破った罰よりも痛いんだからな!これから、ふたりのケツをこのブラシで叩く!」

と、厳しい口調で宣言した。

「え・・・」「え・・・お兄ちゃん・・・」

 ふたりとも、かなりビビっているようだった。特に健志は、兄貴の背中に、隠れてしまった。

「なんで健志もたたくの?健志に隠れろって言ったのは、ボクなんだ!だから、健志のオシリは、もう叩かないで・・・」

と、健太が必死で、健一に頼んできた。どこまでも弟には優しい兄貴の健太。健太の後ろで、健志は、再び半泣き状態であった。

「もうウソはつかないから・・・ぶたないでぇ〜〜〜・・・グスン!」

 健一は、厳しく突き放すように、二人の請願を却下した。

「ダメだ!隠れていてすぐに出てこなかった健志もウソをついたも同然だ!!ふたりとも、こっちへ来なさい!」

 そういうと、健一は、自分の右腿をそのブラシでパンパンと叩いて、そこに屈むように促した。健太も、健志につられて、半泣きの状態だった。オヤジの太腿は、息子たち二人が並んで乗っても充分に余裕があった。

 健太も健志もベソを掻きながらも、オヤジの命令通り、並んでオヤジの右ひざの上に屈んで、上半身を下げて、床に両手をついた。

 健一の右ひざに、息子たちのカワイイ四つの尻の丘が、Tシャツに半分隠れて、チョコン、チョコンと乗っていた。息子たちの教育用丘は、すでに健一の平手によって赤く染められていたが、健一は息子たちのことを真剣に思うオヤジとして、心を鬼にして、息子たちのTシャツを遠慮なく捲って、ペロンとおケツをむき出しにする。

 ペロリと左後方やや上へ、オヤジの方へ向けて顔を出す、健志の小さくカワイイ真っ赤な双丘。同じく、プリンと顔を出す、少し逞しさはあるが、やはりオヤジにとってはカワイく見える、健太の真っ赤な双丘。四つの丘が、仲良くオヤジの膝の上で、オヤジからの厳しい教育を待つのだった。

「いいか!行くぞ!ウソをついた罰だ!」

 そういうと、健一は、右手で二人の腰を押さえつけると、ブラシを持った左手を、思い切り振り上げた。

 手加減はしたものの、充分な迫力で、そのブラシの楕円型の背の部分で、左、右、左、右と、息子たちの両ケツを一発ずつ、ひとり二発づつ叩いていった。

バチィ!バチィ!バシッ!バシッ!

「痛てぇ〜〜〜ッ!ごめんなさい・・・・」

「うわぁ!ごめんなさい・・・・ぶたないでぇ〜〜〜」

 木製ブラシでむき出しのケツを叩かれた健太と健志は、ケツに初めてのジンジンと焼けるような熱い感触を感じた。それは、オヤジの掌で、バシっとやられる時よりも、何十倍も痛かった。

 そして、ふたりもオヤジの膝から逃げるようにして立ち上がると、オヤジの胸に飛び込んで、ウワァ!っと、二人一緒に泣き出した。オヤジのイタリア製の高級シャツは、息子たちの涙と鼻水でもうグチャグチャで手遅れの状態だった・・・

 健一は、ふたりの頭を撫でながら、

「よしよし、もうウソなんて、つくんじゃないぞ!」

と言った。

 健太・健志にとって、いままでで、一番厳しくて痛かったお仕置きが終わったのだった。


八、ノーサイドの精神??仲直りは風呂で・・・


 お仕置きのあとは、父と息子たちの間といえども、やはり、気まずい雰囲気が流れるものだった。しかし、健一は、その気まずさを、即座に打ち消すのが得意だった。

 お仕置きは、容赦なく厳しい。小学生の息子たちが間違いなく泣き出すほど、手加減なしの尻叩きだった。ただ、お仕置きが終わったら、あとはネチネチと説教を続けることなど健一はしなかった。まるで、いままでの厳しさがウソだったように、満面の笑みを浮かべて、

「さあ、いつまでも泣いてるな、男だろ!一緒に、風呂入るか?」

と、息子たちに聞いてくるのであった。そして、フックに掛けてあった半ズボンとパンツを二人に返してやった。

 もうケツを叩かれてはかなわないと、それを大急ぎで穿く二人だった。パンツがケツに触れたからか、顔を少ししかめる健太と健志だった。その表情に、思わず、吹き出す健一だった。健一もケツ叩きの後のケツの痛みを経験済みだったのだ。

 お仕置きの後のオヤジの「一緒に、風呂入るか?」は、二人の息子たちにとっては、「これで、お仕置きは終わりだ!仲直りしようぜ。」といわれることを意味していた。

 健太と健志には、大好きなオヤジから嫌われることが、一番、悲しいことだった。そして、お仕置きの後のオヤジの笑顔と、「一緒に、風呂入るか?」と声をかけてくれることで、息子たちは、オヤジは決して自分たちのことを嫌いになって叩いたのではないとわかり、ホッと一安心するのであった。

「うん!」

「うん!」

「あ、はい!」

「あ、はい!」

と、涙をふいて元気よく返事をすると、健一の両腕にぶら下がるように、大好きなオヤジの両脇にピッタリとくっ付いて、一階の風呂へと降りていく、健太と健志だった。

「かあさん!風呂わかしてくれ!」

「おかあさん!フロわかして!」

「おかあさん!フロわかして!」

と、由子にとっては「腕白坊主」の三人が騒がしく降りてきた。

 由子は、その声を聞き、急いで風呂の準備をするのだった。やはり、男の子の扱いは、おとうさんじゃないとダメねと、思いながら・・・

「お風呂がわきましたよ〜!」

と、母親の声が台所の方から聞こえてくると、プロレスごっこで居間で騒がしくジャレ合っていた三人の「腕白坊主」たちは、騒がしく風呂へと向うのだった。

 ラグビーでは、試合終了のことをノーサイドといい、試合終了後は、ノーサイド、すなわち、敵・味方に別れていた両チームも、もう敵・味方ではなく、仲間として一緒に風呂に入り、シャワーを浴びる習慣があるそうだ。

 小五から大学四年までラグビーをやってきた健一には、そのノーサイドの精神が染み込んでいるのだろうか、息子たちと「仲直り」する場所は、いつも決まって風呂場だった。

 いつものように、

「わたしも一緒に入りたぁ〜〜〜い!」

と、三人の後を、少し遅れて追いかけてくる末娘の真由。

 しかし、これもいつものように、

「女はダメぇ〜〜!」

と、健志がやんちゃぶりを発揮して、脱衣所の扉の閉め、鍵をかけてしまうのだった。

「ずる〜〜〜い!私も入れて!」

と、扉をトントンと叩く真由だった。

 いつもは、息子が妹のことを「仲間はずれ」にすると怒る健一も、

「ほら、くだらんことやってないで、早く風呂に入れ!」

と、見て見ぬふりをして、風呂場の方へ来てしまった。

 お仕置きのすぐ後で、健太と健一が、真っ赤な尻を、オマセな真由に見られて、

「お兄ちゃんたちのオシリ、なんでそんなに赤いの??」

と、グサリと鋭い質問をされるのでは、男のプライドが傷つき、かわいそうだと思ったからだった。

 小学生の二人の息子たちにも、男としてのプライドが芽生えてきたと、その日のお仕置きで、気づかされた健一だった。真由は、二人が風呂から上がってから、呼んでやろうと思っていた。

 案の定、健一よりも一足早く風呂からあがっていく息子たちは、いつもは、

「おかあさん!パンツ!」

と、真っ裸で風呂場から飛び出していくのだが、その日は、由子によって脱衣所に用意されていたパンツをしっかりと穿いてから、脱衣所から出て行く健太と健志であった。

「オレのカミさんもなかなか手回しがいい!」

と、湯船につかりながら感心する健一であった。


九、解けない謎


 その後、健太も健志も順調に成長していった。しかし、息子たちにとって、不思議だったのは、何度オヤジにラグビーの話を持ちかけても、オヤジは、いつも機嫌が悪くなるばかりで、虫の居所が悪いと怒鳴られることもあることだった。

 ラグビーをやりたから教えてくれと相談をしても、

「お前たちには、まだ早すぎる。」

などと一蹴されたり、

「スポーツをしたいのなら、中学・高校のうちは、陸上をやって、足腰をしっかり鍛えておきなさい!」

と、はぐらかされたりするばかりだった。

 中学・高校では、健太は、オヤジの言葉を忠実に守り陸上をやり続け、健志は、「オレは、サッカーがいい」と、サッカー部に入っていた。表面的には、ラグビーのことなどもう興味がないといった感じの二人の息子たちであった。

 健一にしても、息子たちのラグビー熱もそのうち醒めるだろうと高を括っていたのだった。しかし、特に、長男・健太は、中学・高校と成長するにつれ、ラグビーへの関心が高まるばかりだったのだ。そして、いつか機会をみては、自分のラグビーへの関心を、オヤジに話してみようと思っていた。

 一方、高野健一には、三十代半ばを過ぎ、四十を過ぎても、いまだ拘って、思い出したくないと思っている学生時代に経験したほろ苦いラグビーの思い出があるのだった。

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