翔太の金サポ列伝

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一、バイト先での出来事

1、ご挨拶

 チィ〜〜〜〜〜ッス。お久しぶりッス!!オレ、東和大学付属第二高等学校・社会科教諭・フィールドホッケー部コーチの藤本翔太ッス。

 まだ皆さんに詳しくはお話してないッスけど、俺、東和二高・フィールドホッケー部の連中に「金サポ」を穿かせてるッス。

 そんな中、俺、フィルホの生徒たちに、俺の学生時代の金サポ経験をミーティングで時折話してるッス。

 もちろん、生徒に「金サポ」なんて言わないッスよ。「サポーター」「アスレティック・サポーター」って生徒の前では言ってるッス。でも、俺が教えたわけでもないのに、生徒同士では、もう「金サポ」って言い合ってるッスよ。やっぱ、男同士ッスよねぇ〜〜。

 金サポ導入前は、サッカー部や野球部の連中に押され気味で、ちょい情けなかったフィルホの連中も、金サポつけるようになってから、少しは男としての自信がでてきたみたいッス。運動部共有のロッカールームでも、フィルホの連中は金サポ一丁で堂々歩けるようになったッス。

 それはさておき、俺の学生時代の話ッス。もちろん、皆さんはすでに俺の東和大時代の話を少しは読まれてるわけッスけど、そんときの話とは、微妙に話が違ってるッス。

 エヘヘ・・・実は、生徒に話すときは、話を渋く決めるため、話にちょい尾びれと背びれをつけてるッス。これ、男子校で生徒の興味を惹くためには必須のテクニックっすよ。俺の教師の「師匠」である、東和二高・体育科主任の猿田先生(あだ名はゴリ)から盗んだテクの一つッス。

 ここだけの話ッスけど、ゴリが生徒に話す東和・応援団時代の話もかなり尾びれと背びれがついてるんスよ・・・

 おっと、ゴリの話はまたあとでするとして、俺の場合は、例えば、こんな感じッス・・・。

 ある日のフィルホのミィーティングっす。

フィルホ部員・武田:「え、先生、まさかそのサポーター、夏合宿中、ずっとはきっパだったんスか?」

俺:「まあ、そういうこったなぁ!14日間だぜ!おめえら、信じられねぇだろ!」

 そこにいた部員全員、ゴクリと生唾を飲み込み、視線は俺の学生時代のネーム入り金サポに釘づけッス。

フィルホ部員・本田主将:「でも先生、そんなことしたら、前の袋がゴワゴワにならないッスかぁ?」

 ここで、部員全員爆笑ッス。「本田のエッチ〜〜」ってヤジも飛ぶッス。でも、生徒たちは全員、話の成り行きに、恥ずかしそうに頬を赤く染めてるッス。まあ、そんなところが、男子校である東和二高の生徒たちの純でカワイイところッスよね。

 そして、俺はここぞとばかりに話を渋く決めるッス。

俺:「ゴワゴワなんて甘いな!本田!カチカチ・コチコチに固まってよぉ、まあ、なんだな、ここのネットの部分が、男のナニの型とったみたいになるんだぜ!」

フィルホ部員・本田主将:「マ、マジっすかぁ〜〜!そ、それってチン型ってことッスかぁ?」

 一同大爆笑。

フィルホ部員・山本副将:「それ、マジやばいッスよ〜〜カチカチ・コチコチはマジやばいッス・・・」

 もう部員たちは、俺の渋ぅ〜〜〜い話に興味津々・・・俺も、自分の話の渋さに思わず自己陶酔に浸るッス。

俺:「どうだぁ?お前らも、今度の夏合宿で、サポーターはきっパ挑戦してみっか?」

部員たち:「え〜〜〜〜!それ、マジやばいッスよ〜〜〜!やだぁ〜〜!」

俺:「なぁ〜〜んだ、根性ねえな!おめえら!」

 てな感じで、俺の金サポ話は展開するッス。今回は、そんな金サポ話の中で、生徒たちの受けが良かった話の一つを皆さんに披露するッス。

 

2、回転すし屋でのバイト

 それは俺が東和大一年の時、フィルホで金サポの、あのチンチンは真綿で包れた感じで、ケツといえばスースーして、ジャージのナイロン生地がサラサラふれてちょいくすぐったい感じに、やっと慣れてきた頃だったッス。

 今井主将がニヤニヤしながら、俺に近寄って来たッス。いやぁ〜〜な雰囲気を俺は感じとったッスけど、主将に肩を組まれてしまい、もう逃げることはできなかったッス。先輩の男クセェ〜〜コロンの匂いに俺はもうメロメロだったッス・・・。

「翔太ぁ〜〜、今日はおめえに、いいバイト先紹介してやるからな!ありがたく思えよ!」

 こうなったらもう断ることは出来ないッス・・・今井主将のその語調に「翔太!断ったら、どうなるか、わかってんだろうな!」の言外の意味を汲み取ってしまった俺は、

「ウッス!よろしくお願いします!」

と、返事をするほかなかったッス。

 事情はこうッス。その時、今井先輩の就職活動は山場を迎えており、大学一年の時からのバイト先をやめることになったんスけど、そのバイト先の人から「いまやめられると人手が足りなくなるから、やめるなら後輩でもいいからだれか紹介してほしい」と懇願され、結局、俺が今井先輩の「紹介」で、そのバイト先で働くことになったってわけッス。

 で、そのバイト先というのは、大学正門前の回転すし屋「すし若」って店だったッス。そこでの俺の仕事は、開店・閉店時の掃除の他、バイトの先輩が握ったシャリにネタをのけって、それを皿に盛り、ベルトコンベアーでお客さんの方に回すだけっていう、まあ、未経験の俺でもすぐにできる仕事だったッス。でも、バイト代は、今井先輩の顔で、今井先輩と同じ経験者並みの時給を貰えたんで、結構、割のいいバイトだったッス。

 

3、老舗「すし若」とその店長

 東和大の正門前にある「すし若」って店は、もともとは回転すし屋じゃなかったッス。大学の教授や、事務方のお偉さんが接待によく使う高級寿司屋だったッス。

 けど、現在の店長である京極さんのオヤジさんが、京極さんが東和大2年生の時に、突然の心臓発作で倒れ、帰らぬ人になったッス。で、結局、京極さんは、大学も中退し、家業を継がなければならなくなったッス。

 学生時代の京極さんは、体育会・空手部に所属し、二年生ながら、かなりの選手だったって話ッス。こういう「苦労人」の仲間に対して、東和大・体育会ってところは、面倒み、メチャいいんスよね・・・

 当時の空手部OBや、他の部からも、京極さんと「すし若」に対して、多くのカンパが集まったッス。

 そんなこともあって、京極さんは、実家の寿司屋は京極さんのオヤジさんの下で働いていた板前さんに任せて、東京・築地の老舗寿司屋「寿司元」に板前修業に出ることができたッス。

 けど、数年後、修行をつんで、京極さんが「すし若」に戻ってきた時は、親父さんの時代からの客は、「味が落ちた」とみんな「すし若」から離れていってしまって、「すし若」は経営の危機に直面してたッス。

 もちろん、そんな時も頼れるのは、東和大の空手部や空手部OBの人たちだったッス。

 空手部OBの一人で、京極さんの先輩に当る人の経営アドバイスで、「すし若」は、高級路線から、学生相手、薄利多売の回転すし屋に変身することになったッス。回転すし屋って言ったって、チェーン店とは違うッス。「すし若」は安くてうまい寿司を食わせる店として、学生たちから絶大な支持を得て、どうにか経営危機を脱することができたッス。

 その時、人件費を抑えるため、空手部の一・二年生が刈り出されて、そこでバイトすることになったッス。

 その流れがいまだに続いていて、「すし若」は店員は、店長以外、全員、東和大の学生バイトっす。しかも、空手部を中心として、体育会所属の屈強な連中ばかりッス。だから、一年生なんかは、事情を知らずに初めて店に入ったとき、「恐ぇ〜〜」って逃げ帰ってきちまうヤツもいるッス。

 今井主将もフィルホ部ではあるものの、先輩の紹介で、「すし若」でバイトすることになったらしいッス。

 そして、今回、今井主将の「紹介」で、俺も、「すし若」でバイトすることになったわけッス。

 店長の京極さんって人は、三十代半ば、全身締まっていて、浅黒く、顔はちょっと恐い感じッスけど、なかなかの男前ッス。いまでも、東和の空手道場に出入りして後輩とともに稽古で汗を流しているッス。

 実は、「すし若」の経営が安定してきた後、京極さんは、東和大エクステンションセンター(いわゆる通信教育部)に復学して、無事、大学も卒業していたわけッス。てなわけで、京極さんも、れっきとした、東和大・体育会・空手部OBってわけッス。

 

4、京極さんとの金サポ談義

 今井主将に紹介されて、俺は、京極さんの面接を受けることになったッス。場所は、「すし若」二階にある事務室兼ロッカールームだったッス。

 京極さんは、寿司屋でよくみる白の板前の格好だったッス。ちょっと恐そうな人だったんで、俺、メチャクチャ緊張したッスけど、よく話してみると、意外にやさしい人だったんで、安心したッス。

 京極さんと俺は、テーブルを挟んで一対一、さしで向かい合ったッス。俺は、

「よろしくお願いします!」

って挨拶したッス。

 そうしたら、京極さんったら、怖い顔して、ドスの効いた低音ボイスで、

「この店で俺に挨拶する時は、ちぃッス!か、オッス!だ!」

って、いきなりッス。俺、ちょっとビビったッス。

「オッス!よろしくお願いしますっ!」

って、俺は言い直し、今井主将からの推薦状ならぬ推薦メモを京極さんに渡したッス。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

京極店長殿

  俺んとこの新入りホープの藤本翔太ッス。まじめで責任感の強いヤツっす。かわいがってやってください。

フィルホ・主将・今井

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 今井主将、推薦メモん中で、俺のことちゃんと誉めていてくれたッス・・・エヘヘ・・・こういうとこ、今井主将、うまいッスよね〜〜。

 京極店長は、それを読みながら、

「おめえ、東和大の一年かぁ!しかも、体育会所属だと・・・俺はまた、高校生のガキかと思ったぜ!」

とか言っちゃって・・・ったく、失礼ッスよね・・・いっくら俺が童顔だからって、俺のこと「高校生のガキ」とか呼ぶなんて・・・。

 俺は、ちょっとむかいつて、

「ちぃッス!」

とだけ返事しておいたッス。

 こうしている間にも、上下ジャージのイカツイ野郎どもが次々入ってきて、 京極さんがそこにいることに気がつくと、

「オッス!」

とか、

「ちぃッス!」

とか挨拶して、奥のほうにあるロッカーのところで、バイトが着る、白の板前服みたいなズボン とTシャツに着替えていくッス。

 俺は、京極さんの肩越しにチラッチラッて、それを見てたッス。みんな、俺より背のデカイ、イカツイ人たちばっかだったッス。

 その人たちは、全員、例外なく、ジャージ上着とジャージ・トレパンを脱いで、それから、Tシャツ、白ズボンって着替えるッス。だから、俺には、その人たちがどんな下着を穿いているか一目瞭然だったッス。

 なんと、その人たち、全員、金サポだったッス。しかも、全員、金吊り袋には、黒マジックでオンネームされてったッス!

  正直、ホッとしたッスよ・・・バイト先に金サポはきっぱで来るなんて、俺だけだと思ってましたから。

 俺があんまし京極さんの後方をチラチラながめるもんだから、京極さんも、それに気づいちゃって・・・

「なんだ・・・あいつらのことが気になるらしいな・・・」

って、俺のことをギロっと睨んだッス。

 俺、怒鳴られるんじゃないかって、もう冷や汗もんだったッス・・・。けど、俺が正直に、

「オッス!す、すいません・・・京極先輩のはなし、あんまし聞いてませんでした・・・」

って正直に返事をすると、京極さん、ニヤリと笑って、

「アイツらは、全員、俺の後輩で空手部の野郎たちなんだぜ!この店のバイトは、おめえ以外は、全員、空手部のヤツらなんだ。」

って説明してくれたッス。

 京極さんは続けて、

「よし!おめえの、そのバカ正直そうなところが気に入ったぜ!本音を言うとな・・・今井にバイト誰か紹介しろって言ってはみたもんの、今井の引退した後は、やっぱ、バイト全員、空手部の野郎たちで固めようと 思いなおしていたんだ・・・けどだ!おめえのこと気に入ったぜ!採用だ!早速、一番向こうのロッカーにある白いズボンとTシャツに着替えて、今日から働いてもらうぜ!」

って言ってくれたッス。

 俺は、

「オッス!ありがとうございます!一生懸命、働かせていただきます!」

って優等生な返事をして、早速、ロッカーの方に行って着替えを始めたッス。

 もちろん、空手部の人たちがやっていたように、まずはジャージ上下をスパッと脱いで、金サポ一丁ッス。それから、おもむろに、Tシャツ、白ズボンを穿くッス!

 そんな感じで俺が着替えていると、京極店長がいきなり近寄ってきて、  

「お〜〜、おめえも、金サポかぁ?罰はきっぱ何日目だ?」

って聞くんスよ。俺は、もうビックリしたッス。

「な、なんで知ってんスかぁ?」

って、思わず俺は京極店長に聞いちまったッス。

「空手部と違って、おめえらは、金サポはきっぱ日常茶飯じゃねぇだろ?今井もよく、下級生の頃は、先輩から罰はきっぱ食らって、俺に泣き言いってたからな!だから知ってんだよ!」

 「へぇ〜〜」って俺は思ったッス。俺がいま一番尊敬してる男である、俺たちの主将の今井さんも、下級生の時は、よく罰はきっぱ食らってたなんて・・・なんか、俺、ますます今井主将に 親近感おぼえてきちまったッス。

 俺は、京極さんに、

「オッス!10日間はきっぱの罰食らって、いまは3日目ッス!チンチンがかなり蒸れてつらいッス・・・」

って、男らしく正直に打ち明けたッス。もともと通気性がいいはずの金サポっすけど、はきっぱすると、やっぱしちょっとまずいッス。

 俺のその告白に、京極店長は、

「10日じゃ甘いな!」

っていきなりッス・・・

「10日じゃ、甘いッスかぁ・・・」

「あったりめえだろ! 金サポはなぁ、ブリーフと違ってクソで汚れることはねえからよぉ。まあ、3ヶ月はきッパできて、一人前だな!」

「えっ!さ、3ヶ月ッスかぁ・・・」

「ああ、空手部じゃ、一年坊主は、パンツ没収の上、金サポ一丁しか与えられないからよぉ。」

「えっ!マジッスかぁ?」

「ああ、もちろん、稽古を励んで、先輩に認められれば、金サポをもう一丁もらえるから、はっきぱからは解放だ。でも、そうなるのは、まあ早くても、夏合宿後の新人戦で勝ってからだな。新人戦で負けを喫すれば、秋合宿での演芸大会で一発ネタ披露して先輩方の笑いをとってからだ。それでもダメなら、秋の昇段審査に受かった後になるな・・・こうなると、もう、はきっぱも半年だからよぉ・・・ワンターム・ハッキッパだな!ワハハハ!」

「ひぇ〜〜!一学期間(ワンターム)ッスかぁ!?」

「まあ、一年坊主はどこの部でもつれぇもんよ・・・まあ、三年になっても、金サポ一丁はきっぱ食らってるヤツもいるけどよぉ〜〜〜なぁ!亮太!!!」

って、京極さんは、いきなり、俺たちの傍で着替えていた空手部のバイトの人に声をかけたッス。

「え、えっ・・・・ウ、ウッス・・・」

って、その人は真っ赤な顔で、すごくあわてた様子だったッス。

 実は、その人、俺と京極さんが話している間に、ロッカールームに入ってきたッス。すげぇイケメンだったんで、俺、チラチラ気にしていたッス。

 けど、その人、俺と京極さんの話が進むにつれて、なんかスゲェやばいような、泣きそうな顔になっちゃって・・・俺、ますます気になっていたッス。

「オ、オレ・・・もう出番ッスから・・・」

って、その人は、その場から逃げようとしたッスけど、

「オラァ!なに逃げてんだよ!ちょっとこっちへ来いよ!!」

って、その人、京極さんに強引にこっちへ連れてこられたッス。

「亮太!おめえ、5月のインカレで予選落ちした罰として、金サポ一丁残して、あとは没収になったそうだな・・・一年のときみてぇに・・・」

「な、なんで・・・京極さん、それ知ってんスかぁ・・・」

「バカ野郎!ここでバイトする空手部の野郎のことで、オレのしらねぇことはねぇんだよ!」

「オ、オッス・・・す、すいません・・・」

「すいませんじゃねぇ〜よ・・・そんな大切なこと、オレに秘密にしやがって・・・水くせぇじゃねぇかぁ・・・」

「オ、オッス・・・」

「どうせ、ゴールデン・ウィークに稽古もせずに遊びまくっていたんだろう?」

「オ、オッス・・・」

「図星か・・・情けねぇ・・・女でもできたのかぁ?」

「オ、オッス・・・」

 その人ったら、もう茹で上がったタコみたいに真っ赤になっちまったッス。

「バカ野郎・・・おめえに女はまだ早すぎたようだな・・・・」

「えっ・・・そんなぁ・・・」

「髪もチャラチャラ、染めやがって・・・三年になって、頭髪が自由になったからってなぁ、節度ってもんがあんだろう・・・節度ってもんが・・・」

 ちなみに、最近の東和大・体育会では、部にもよるッスけど、三年生になると普通は頭髪自由になるッス。ただし、茶髪に染めるには、応援団に「頭髪パーマネント・頭髪 カラーダイイング許可願い」を出して、応援団の審査を受けないといけないッス。審査に受かれば、闘魂棒一発ケツに食らった上で、めでたく、パーマや茶髪が許可されるッス。

「オ、オッス・・・」

「どうだぁ?一年の頃を思い出して、五厘刈りにスっかぁ?」

「え、えっ・・・ご、五厘は・・・ちょっと、勘弁してください!ス、スポ刈りにしますから!スポ刈りに!」

「まあ、いいだろ・・・次の公式戦はいつだ?」

「夏合宿後の8月下旬に明和大とです・・」

「よし!稽古しっかり積んで、絶対に勝てよ!それまで、『五厘』は待ってやる!」

「オ、オッス!ごっつあんです!がんばります!!!」

「ところでよぉ、コイツ、今井のところの一年生の藤本ってんだ!今日から、ここで働いてもらうことになった。まあ、面倒みてやってくれよ!」

「オ、オッス。今井さんのところの後輩だったら、喜んで!」

「おっと、コイツの紹介忘れてたな・・・藤本!こいつは空手部三年の川下亮太(かわしも りょうた)だ。いま話してたように、三年にもなって、試合で惨敗して、金サポはきっぱ食らってる、ちょっと情けないヤツだけどよ・・・まあ、金サポはきっぱ同士、 お互い気が合うだろう・・・いろいろ教えてもらってくれ!」

「ちょ、ちょっとぉ・・・き、京極先輩ったら・・・・もう勘弁してくださいよぉ・・・」

 再び、真っ赤な顔になった川下先輩を、京極さんは豪快に笑い飛ばして、向こうへ戻っていったッス。

 川下先輩は、やっと、オレの方を向いて、

「藤本かぁ!よろしくな!」

って、ニッと笑って、右手を差し出し、握手をもとめてきてくれたッス。

 オレも右手を出して、

「よ、よろしくお願いします!」

って元気よく挨拶したッス。

 川下先輩と握手して、オレ、思わず、「いてぇ!」って叫びそうになったッス・・・。ものすごい握力・・・やっぱ空手部の人ってすごいって思ったッス。

「よし!もう着替えたんだったら、店に行こうぜ!」

「オッス!」

「おっと、忘れたぜ・・・藤本!いいかぁ、金サポはきっぱの時はだな、店に出る前に必ず、このSP消臭コロンをシュッとひとふきだな・・・金吊り袋のところにするんだぜ!」

 そういうと、川下先輩は、ズボンを下ろして、金サポだして、その金吊り袋のところに、そのコロンのスプレーをひとふきしたッス。

 先輩の金吊り袋には、「亮太」ってオンネームされてたッス・・・。

「あ、空手部でもオンネームするっスね!」

と、俺が言おうとした時ッス・・・俺は、今井先輩のあのコロンの匂いを再び感じて、クラクラになりそうだったッス・・・

「あ!今井先輩の使っているコロンって、このSP消臭コロンだったんだ!」

って、俺は思ったッス。

 もちろん、俺も、金サポ出して、シュッとひとふきSP消臭コロンを俺の金吊り袋の上にふりかけたッス。

 店に出る時、川下先輩、いきなり今井先輩みたいに肩組んできて、京極店長に聞こえないように、

「あのなぁ・・・店長には秘密だけどさぁ・・・このコロンの匂いかぐと、女の子ってすぐにメロメロになるらしいぜ・・・実はなぁ・・・俺のいまの彼女も、この店の客だったんだぜ!このコロンつけて軟派したら、一発でOKだったぜ!」

って、俺に耳打ちするッス・・・。

「俺、男ッスけど、俺も先輩のコロンの匂いにもうメロメロッス・・・」

って、俺は言いたかったっすけど・・・もちろん、言わなかったッス・・・。

 

五、新入り歓迎!激痛??ジャンケン・ケツキック!!

 俺のバイト初日は、川下先輩の指導もあり、バイトの先輩方の足を引っ張ることもなく、どうにか無事に終ったッス。

 午後11時30分。店じまいが終ると、京極さんが、残っていたバイトの先輩たちに、

「今夜は、新人を一人紹介したいから、ちょっと残ってくれ!おめえらの持ち場が終ったら、待合ホールに集合!!」

って集合をかけたッス!

「ウィ〜〜〜ス!!」

って返事をするバイトの先輩たち全員の顔に不吉な笑みが浮かんでいるのを俺は見逃さなかったッス・・・。俺は、ちょっと胸騒ぎを覚えつつ、川下先輩から命令された後片付けを終えて、待合ホールへ向かったッス。

・・・・・・・・・・・

 「すし若」の待合ホールは、人気の店だけあって、多くのお客さんを収容できるように、かなり広いッス。それで、窓際には順番を待つお客さんが座れるようにソファが設えてあるッス。

 バイト全員がそのホールに集合すると、店長の京極さんも二階から降りてきて、

「おつかれ!」

って挨拶したっす。

「お疲れ様でしたぁっ!」

って、俺たちも挨拶したッス。

 そこに集まった学生バイトは、俺も含めて12人で、俺以外は、東和の空手部所属の屈強でイカツイ人たちばかりだったッス。

 髪型から、三年生が5人、二年生が6人ってことが予想できたッス。五厘のヤツはいなかったんで、一年生は、俺一人ってことがすぐわかったッス。

「ここにいるのが、今日からおめえらのバイト仲間になった、フィルホ一年の藤本だ!バイト引退した今井の後輩だ!よろしく頼むぜ!」

って、京極さんは俺のこと紹介してくれたッス。

 そして、バイトの先輩たちは、一人一人、俺に自己紹介してくれて、俺も、最後に自己紹介したッス。

 でも、それで終わりではなかったッス・・・さっき、先輩たちが浮かべた不吉な笑みの意味がやっとわかったッス。

 自己紹介が一通り終ると、京極さんは、ニタァ〜〜っとして、

「よし!これから、藤本の歓迎会を行う!全員!金サポ一丁!!」

って、命令したッス。

 先輩たちは、待ってましたとばかりに、拍手しながら、

「よぉ〜〜〜!!!」

とか、

「よしっ!」

とか、言いはじめたッス。

 俺は、ますます不安になってきたッス・・・だいたい体育会における「歓迎会」っつうのは、「新入りシゴキ」と同義だからッス・・・。

 俺が不安そうな顔して突っ立てると、京極さんが、

「オラァッ!藤本も遠慮しないで脱げ脱げ!金サポ一丁になっちゃえ!」

って言って、

「おめぇら!藤本は、いきなり初日から、金サポ穿いてきたぜ!」

って、バイトの先輩たちに言ってくれたッス。

 先輩たちは、

「おぉ〜〜〜〜!!気合はいってんじゃん!!」

って、それに応えてくれたッス。

 俺は、ちょっとうれしくなって、もちろん、バイトの服を脱いで、金サポ一丁になったッス。

 そして、京極さんも、金サポ一丁になったッス。京極さんの金サポは、俺たちの中では、一番、年季が入ってたッス。もちろん、オンネームされていて、「京極」ってあったッス。

 これは後で聞いたことなんスけど、空手部ではオンネームにも格があって、

一年坊主は、下の名前だけの、「ファースト・オンネーム」

二年・三年は、苗字と名前両方の、「フル・オンネーム」

そして、四年は、苗字のみの、「ファミリー・オンネーム」

となるらしいッス。上級生は下級生のことをファーストネームで呼び捨てにし、下級生は上級生を苗字に「先輩」をつけて呼ぶっていう空手部の伝統から来ているらしいッス。

 ちなみに、川下先輩は、現在、一年待遇の金サポ一丁はきっぱの罰を食らっている最中なので、オンネームも「亮太」と「ファースト・オンネーム」に格下げ中らしいッス。

 で、京極さんも含め、俺たち全員が、金サポ一丁になったッス。

 川下さんは、格下げ中ってことを隠すかのように、金吊り袋の前に自信なさげに両手をやって、ちょっと恥ずかしそうだったッス。

 他の先輩は、全員、フルオンネームの金サポだったッス。

 もちろん、俺は、「翔太」ってファースト・オンネームのみッス・・・。

 俺のオンネームをみて、京極さんが、いきなり、

「藤本!おめえのオンネーム、文字がかなり乱れてねぇ〜〜かぁ!?」

って、つっこみ入れてきたッス。

 そのつっこみ聞いて、先輩たちは大爆笑・・・俺は、もう恥ずかしくて、なにも答えられなかったッス。もちろん、文字の乱れは、オンネームの最中、チンチンが反応しちまった証拠ッス・・・恥。

 京極さんたら、

「♪文字の乱れはぁ〜〜線路の軋み♪ってかぁ!」

って、俺の知らない歌を唄いはじめちゃって・・・!!(俺は、あとから、その歌が、八代亜紀の「愛の終着駅」の一部ってことがわかったッス。)先輩たちも、今度は、なにやら気まずい作り笑いッス・・・・。

「まあ、いい、そこがおめえのかわいいところだ!さあ、おめえを歓迎するため、これから、じゃんけん勝負を行う!」

「よぉっ!待ってました!」と先輩たちの拍手!

「このゲームは、店がいまの体制になってからの伝統で、ジャンケン勝負で一番負けたヤツは、勝ったヤツ全員からケツ蹴りを受け、余った寿司を一握り食べられる!ってゲームだ。まあ、お互いの裸のケツを蹴りあって、仲間同士、スキンシップをはかろうって寸法だ!」

「え!ジャンケン・ケツキックっすかぁ・・・しかも、空手部の人たちと・・・」

って、俺はますます、不安になったッス・・・そして、絶対に、負けられないと思ったッス。

 俺の不安そうな顔をみて、京極さんは、

「まあ、最初の一・二回キツイかもしれねえが、慣れてくれば、どうってことないぜ!藤本、おめえの歓迎会だからよ!せいぜい楽しんでくれや!」

って言って、俺の生ケツを平手でポンポンって叩いたッス・・・

「ゲゲ・・・スゲェ堅い手だ・・・・」

って俺は思い、思わず、ケツを引かずにはいられなかったッス。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 で、ゲームの方はっていうとですね〜〜、もう、スゲェ〜〜怖かったッスよ・・・

 勝った時は、勝った時で、俺も空手部の人のケツけらないといけないスけど、空手部の人のケツって、ものすごく堅くて、蹴るともう俺の足が痺れるくらい痛かったッス。

 先輩たちの蹴りをみてると、全員、一応、効き足とは逆の足で、裸足で、ジャンケンで負けた人のケツ蹴るんスけど、バチッとかベチっの世界じゃなくて・・・

ズッバァ〜〜〜〜〜ン!!!!

って、すごい轟音たてて、敗者のケツに蹴りが炸裂するわけッス。で、蹴られた人は、ものすごい気合で、

「ごっつあんでした!」

って挨拶するわけッス。

 俺を除けば、京極さんも入れて11人の空手部の勝者が、蹴り入れるわけッスから、11回、その

ズッバァ〜〜〜〜〜ン!!!!

「ごっつあんでした!」

が繰り返されるわけッス。もう俺は絶対にじゃんけんだけは負けられねぇって思ったッス・・・。

 けど、何回か目に、ついに俺も負けてしまったッス・・・トホホ。

 そんで俺は覚悟を決めて、金サポ一丁、生ケツ後ろに突き出したッス・・・。

 ドッキン!ドッキン!

 もう蹴られるまでの時間がすげぇ〜〜長く感じたッス。

 空手部の人って、蹴る前に、ものすごい大声だして気合入れるし、狙いを定めるため、足の甲を俺のケツに合わせて来るッスよ〜〜〜〜!

「もう蹴るなら早く蹴ってくれ!」

って叫びたかったッス。

 俺のケツを最初に蹴ることになったのは、川下先輩でした。川下先輩ったら、

「よっしゃ!!」

とか、俺の後ろですごい気合入れて、それで、左足の甲を俺のケツに軽く触れて、狙いを定めてきたッス。

「すげぇ〜〜堅い足だぁ〜〜〜来るぅ〜〜〜〜」

って、俺は歯を喰いしばったッス。

 けど、けどッス、ズバァ〜〜〜ンと俺のケツに入るはずのキックは、いつまでたってもこなかったッス。俺は、

「まだッスかぁ・・・」

って、後ろを振り向いてみたッス。

 すると、川下先輩は、

「悪いな・・・藤本・・・おめえのケツは蹴れねぇ・・・」

って、言うんですよ。そして、川下先輩は、京極さんに、

「京極先輩・・・こいつのケツ、柔らかすぎて危ないッスよ・・・これだと尾てい骨にモロっすよ・・・俺たち空手部員の蹴り受けるのは、こいつのケツにはちょっと無理ですよ!」

って、まじめな顔して言うんスよ・・・

 俺は、ホッと安心したって言うより、なんかすごく屈辱的だったッス・・・。

 それを聞いて、京極さんは、「どれ、どれ・・・」とか言って、俺の後ろに来たッス。そして、いきなり、京極さんは両手で、俺の左右のケツ、ギュッとつねるようにつかんだッス。

「いやぁ〜〜〜ん!」

なんて、俺は言わなかったッスよ、もちろん。でも、ちょっと、くすぐったいやら気持ち良いやらでした・・・エヘヘ。

 で、京極さん、なんて言ったと思います?もう、それがものすごく屈辱的で、俺のプライドずだずだだったッス。俺、かなりへこみました、ペコっ凹。

「藤本!おめえのそのガキのようなぷよぷよした桃尻じゃぁ、俺たちの蹴りを受けんのは、チト無理だな!ケツ筋、しっかり鍛え直してくるまで、おめえは、オミソだ!ミソっかすだ!」

ッスよ!ったく・・・。

 俺、本当に、顔も幼顔なら、ケツも童顔ッス・・・そこんところは、京極さんもしっかり観察していてくれて・・・エヘヘ・・・なんて、喜んでる場合じゃないッス!これは、俺の男の沽券にかかわる一大事ッス!

 俺は、必死で、ケツ蹴り入れてくださいって、京極さんに直訴したッス・・・けど、すべて却下ッス。

 それどころか、

「よし!おめえは、ミソっかすだからな!負けたらミソッかす扱いにするから悪く思うなよ!」

ッスよ!

 もう、先輩たちは大爆笑だし・・・仕方なく俺は、口とんがらせて、

「ミ、ミソっかす扱いって、なんスかぁ?蹴りなしッスかぁ?」

って京極さんに聞いたッス。

 そうしたら、京極さん、

「バカ野郎!そんなに甘くねぇえんだよ!さあ、こっち来い!」

って言って、いきなり俺の腕をグッとつかんで俺を自分の方へ引き寄せたッス。

 俺は、「あっ!」って、バランス崩しちゃって・・・こけそうになりながら、京極さんに引っ張られてソファの方へつれていかれたッス。

 ソファに座った京極さんは、今度はもう片方の手で俺の頭をグッと押さえて、俺は、そのまま、京極さんの左太腿の上に、ベンド・オーバーさせられちまったッス。

 そして、

「あ〜〜〜、な、なにすんスかぁ?」

って、もがいてバタバタしている俺の両足を、京極さんは、右足でグっとロックして、それで、

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!!

って、上向いている俺の生ケツに右手で平手打ちッス。

 俺は、予想外の痛さに、思わず、

「いってぇ〜〜〜〜!!!」

ってさけんじまったッス。もう先輩たちは、大爆笑ッス!

「藤本!おめえにはこれがお似合いだろ!お尻ペンペンだ!ミソっかすでも仲間に入れてやってんだ!礼をいわんか!礼を!」

って京極さん。

 もう、俺は悔しくて恥ずかしくて、でも、なんかうれしくて・・・(爆)、気合入れて、

「ごっつあんでした!」

って叫んだッス。

 結局、11人の先輩からも、それぞれの膝の上に乗って、生ケツ平手打ちを一発ずつ食らったッス・・・・トホホ。

・・・・・・・・・・・・・・・・

 もちろん、こんなことでめげてたら男がすたるッス。俺は、次の日も、きちんとバイトに「すし若」に行ったッスよ。そうしたら、俺のロッカーの扉のところに・・・

こんな張り紙がしてあったッス。俺はもう悔しくて、「なんだよこれ!ったくやってられねぇよ!」って怒鳴っちまったッス。

 でも、それを川下先輩に聞かれちまったッス。川下先輩ったら、

「まあ、そう怒るな!おめえのこと、それだけアイツら歓迎してるってことだぜ!」

って言ってくれたッス。

 もちろん、その日から、先輩たちは俺のこと、「翔太!」ってファーストネーム呼び捨てッス。ジャンケン・ケツキックの「おミソ扱い」はマジやばいッスけど、まあ、先輩たちはみんなやさしくしてくれるんで、結構「すし若」のバイトにはまってる俺でした。

 

六、東和二高・フィルホ部室にて・・・

フィルホ部員・武田「で、先生、その11人の空手部の人たちから、ケツキック、マジで食らったンスかぁ?」

俺 「あったりめえだろ!ズバァ〜〜〜〜ン!ってケツに入るからよ!マジやばかったぜ!それに、最初のころは、ケツキック食らうと三日くらい椅子に座れなったぜ!」

フィルホ部員・山本副将「ま、マジっすかぁ!それ、ヤバイっすよ〜〜!」

フィルホ部員・本田主将「渋ぃ〜〜〜!!三日ッスかぁ!俺たち、サッカー部の先輩からケツキック食らった時でも、帰りの電車の中で座れましたよ!」

俺 「あったりめえだろ!二高のサッカー部と大学の空手部じゃ、威力が段ちなんだよ!」

フィルホ部員・武田「先生!ぶっ飛ばされたんじゃないですか?」

俺 「バカ野郎!グッとふんばって持ちこたえぜ!ケツキックくれえでぶっ飛ばされているようじゃ、男じゃねぇ〜な!」 

 エヘヘ。もちろん、あの「お尻ペンペン」はなかったことにして、教え子たちには、渋ぅ〜〜く決めといたッス。

 生徒たちの間では、「藤本!マジ、すげぇ〜〜よ!あなどれねぇ〜〜!」って、その後、噂になったらしいッス。

 その噂は、もちろん、ゴリの耳にも達し・・・

「藤本先生!!学生時代、空手部のケツ蹴り、マジで食らって平気だったって本当かぁ?」

「もちろんッスよ!自分、生徒にウソはつかないッスよ!」

 ゴリは、俺のことジロリと睨むと、大笑いはじめて、

「ワハハハ!藤本先生が、空手部のケツ蹴り、マジで食らって平気だったなんてねぇ〜〜!まあ、そういうことにしとくかぁ!ワハハハ!」

て言われちまったッス・・・やっぱ、ゴリことプロ教師・猿田先生には、まだまだかなわないと思ったッス・・・。

おわり

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