もしもし亀よ、亀さんよ  by 太朗

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一、三代目・大道寺綾乃(だいどうじ あやの)登場


ビシッ!!

「あ、あぁ・・・・」

ビシッ!!

「あっ・・・・お、お許しを・・・こ、これ以上は・・・」

 本革張りの乗馬鞭の先端が、三角木馬の上にまたがる元ラガーマンの中年男のムッチリとした尻の双丘に、容赦なく幾筋もの赤い線をこしらえていく・・・・。
 
 ほどよく空調の効いた室内にもかかわらず、その男の全身から汗がポタリ、ポタリと板張りの床に落ちていた。そして、その男の両太ももからケツの部分がかすかに震えだす。もう限界だった。三角木馬「背」は、鋭く尖り、まるで、その男のムッチリケツの谷間に狙いをすましているかのようだった・・・。

 ここは、東京・杉並・高円寺にある高級タワーマンション「グランデ・高円寺南」の最上階。22階と23階をぶち抜いてつくられたメゾネットタイプの部屋。その幾重にも防音設備が施された部屋にある「大道寺綾乃SMサロン」であった。

 そのサロンの女主人、すなわち女王様は、述べるまでもなく、大道寺綾乃(36)だ。全国のM男の間ではすでに伝説となっている初代・大道寺綾乃から、数えて、三代目。

 バブル崩壊、リーマンショックなどどこ吹く風、銭は浮世の廻りもの、現ナマがあるところにはちゃんとあるのだ!と言わんばかりに、毎晩、万札が何百枚と飛び交うこの「高級SMサロン」は、昭和〜平成と激動の世にあっても、全国のエリートM男たちに根強く支持され、しぶとく生き残ってきた。

 三代目・女王様は、帝国女子体育大出身の、元ソフトボール選手。学生時代に食らったあのおケツの奥までズシィ〜〜ンと響くケツバットの味を忘れられない野球部出身の一部のM男のケツバット・リクエストにも十分に対応可能な新時代の女王様だ。

 その日の客は、元ラガーマンにして、日本を代表する大手総合商社・三丸物産は営業推進部・部長の河合豪太であった。もうすぐ50代に手が届く河合であったが、学生時代、ラグビーで鍛えたその色黒な身体は、やや脂がのりつつも、なかなかの筋肉質で引きしまっており、チョイ強面、チョイ悪なゴリマッチョオヤジの名が相応しかった。

 男性の部下に対しては、そのS性をいかんなく発揮する、部下にとっては手ごわい上司である河合も、女性に対しては、根っからのM男。久々のオフであるその日は、女王様の三角木馬に跨って、そのケツに、ビシッ!ビシッ!と御鞭をいただき、その股間にあの重くむず痒い「絶頂感」をビンビンに感じていた。
 


二、三角木馬と男のプライド


 M男奴隷の分際であっても、男は男。イッパシの男のプライドを持っている。ケツのあのムッチリとした双丘の、奥深くにある菊門という名の秘穴は、男のプライドの最後の砦である。

「あっ・・・あぁ・・・・もうお許しを・・・・」

「なにを許してほしいんだよ!!」

ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!

 女王様の御鞭が、三角木馬に跨りピクピクと震え始めている河合のケツの双丘に、情け容赦なく炸裂する。その熱い痛みに、

「あっ、あぁ・・・」

となんともいえないよがり声を発するM男奴隷の河合。

 三角木馬の責めに屈するということは、女王様の完全服従の元に下ったことを意味する。

 なぜなら、女王様の三角木馬に跨るための鞍はない。また、己の体重を支えるための手すりもない。素っ裸で三角木馬に跨るM男奴隷が持つ、己の体重を支える唯一の術は、学生時代に鍛えたケツ筋と腿筋のみ。ケツ筋をキュッと引き締め、さらに両腿をキュッとしめて、己のケツの谷間が、三角木馬の背の頂点よりも、常に上の位置にくるようにして支えるしかないのである。

 それができないならば、己のケツの谷間は、三角木馬の鋭くとがった背を咥えこむようにして下がってしまい、やがては、その鋭く尖った三角木馬の背が、ケツの谷間の奥深くにある、男のプライドの最後の砦を、グサッと突いて、M男は陥落するわけである。

 昔、男は二十になると、徴兵検査を受けた。そこで、男は、軍隊の上官の前で素っ裸となり、四つん這いになり、両膝をスクッと限界まで伸ばし、ケツを高らかに挙げ、その菊門を晒してケツ検査を受けた。
 
 それは表面上は、衛生的理由による。しかし、その本質は、己のケツの穴を上官の前で晒し、そこにガラス棒を突きたてられて検査されることにより、上官たちへの絶対服従を約する重要な儀式でもあったのだ。

 現代社会において、その「儀式」が残っているのは、男子刑務所入所時の身体検査であろう。素っ裸になって、看守の前に立ち、看守から命令されれば、ケツを突き出し、ケツ検査を受ける。こうして、看守への絶対服従を、否が応でも誓わされるわけだ。

(参考映画:http://www.gp-museum.com/release/0903/06.html)

 話は戻って、三角木馬の責めは、まさに、男のプライドを賭けた、M男にとってのガチ勝負なわけである・・・。

 そんな河合も、痺れてきた両腿を、必死を踏ん張り、どうにか堪えようとする・・・。そんな河合を嘲笑うかのように、女王様の鞭は、河合に「早く陥ろ!!」と言わんばかりに、河合の両ケツッペタに、ビシッ!ビシッ!とうなりをあげる。

 鞭の強襲は、一発、一発きつくなってくる。思わずケツを引きたくなる河合・・・しかし、ケツを反らしたが最後、一瞬だが両腿から力が抜け、三角木馬の尖った背へと陥落する。おケツ穴に、グサリと三角木馬の背がささり、まさに屈辱の股裂き状態になるわけだ。

「ううっ・・・・もうダメだ・・・・・」

と思う河合。そんな河合は、ラグビー部の夏合宿で、先輩からのシゴキに必死で耐えた自分を思い出していた。グイグイと押してくる巨漢の先輩たちのブルドーザー・スクラム。それに、まだひ弱でか細い一年生の河合たちは、必死で踏ん張る。一年生たちのスクラムが先輩のスクラムに押し負け、白線より後ろに下がれば、一年生たちの負け。スクラム特訓よりきつい、合宿所前の石段をうさぎ跳びで上る「百段うさぎ跳び」が待っていた・・・。絶対に先輩たちには負けられねぇ!!!

「畜生・・・も少しだ・・・根性だ・・・」

と、必死に呟き、己を鼓舞する河合。

 しかし、女王様は、

「オラァ!!奴隷に根性なんていらねぇんだよ!!」

ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!

と、さらに厳しく、河合のケツを乗馬鞭で打ち据え仕置きを加える。

 そして、己の股間に重くぶら下がるタマタマ袋が三角木馬の尖った背を感知し、河合が、己の太ももの力の限界を悟った時だった。

「あっ・・・もうダメだ・・・」

と思い、俺のケツが落ち、ケツの谷間へ三角木馬がグサリと食い込むのを覚悟し、目をつむったその刹那・・・・。

「あっあぁ〜〜〜〜」

と、ケツの谷間に感じる全く違った感覚に、思わずよがり声をあげるM男奴隷の河合だった。

 綾乃女王様が、河合の限界を察知し、河合の陥落直前、間髪をいれずに、河合のケツの谷間と三角木馬の尖った背の間に、巨根男性の男根張り型を置いたのである。

 河合の体重で、男根張り型の底面に、三角木馬の尖った鋭い背がグサリと刺さり、男根張り型のカリ高亀頭部分が、河合のケツの谷間にブスリと食い込んだわけだ。

  河合は、その張り型を支点にして、三角木馬の上で、やじろべえ状態。河合のケツに、その張り型が、ゆっくりと、しかし確実に、挿入されていく。そして、その張り型には、あらかじめ女王様によって、イチジク浣腸エキスがタップリと塗られていた・・・。

 ズン!ズン!とケツの奥を突きたてられる快感が、やがて、腹の中に焼け石を放りこまれたような熱い痛みに変わっていく・・・今度は、その痛みと、あのなんともいえない排便感と戦う河合。

「ガマン・・・・ガマン・・・・ガマン・・・・」

 河合は、またも、学生時代、夏合宿の宿舎で、朝、先輩たちに大便個室を占領されてしまい、大便個室の扉の前で、ピチピチラグパンのケツの谷間を右手で押さえつつ、目には涙を浮かべながら、

「せ、先輩・・・・お、お願いします・・・」

と、悶絶しながら、耐えたことを思い出していた・・・そして、今、やじろべえ状態でウンコガマンを強いられる河合の男根は、50前の男にしては、とてつもなく元気に、ピクンピクンと己の下腹を打ちつつ、屹立していた・・・。

「じょ、女王様・・・お、お願いします・・・」

と、己のウンコガマンの限界を申告し、女王様に許しを願い出るM男奴隷の河合。

 綾乃女王様も、河合の限界を察知し、 

「さっ!いいわよ!降りなさい!!」

と、三角木馬の背の上に、鞍のようなものを置くのだった。そこに両手をつかなければ、ケツの谷間に張り型をブスッ挿入されたまま、その張り型を支点にしてやじろべえ状態の河合は、三角木馬から降りることはできないのだ。

 SMプレイは、所詮、大人の遊び。健康を害すまでのウンコガマンを、客であるM男奴隷にさせることはない。

「あっあぁ・・・も、もう・・・お、お願いします・・・」

と、三角木馬の鋭く尖った背のクサビがしっかりはいった張り型の底面を、つらそうに押さえながら、M男奴隷の河合は、女王様に、その張り型を早く抜いてほしいと懇願するのだった。

「まだ抜いちゃダメよ!!男なら、もっとガマンなさい!!」

と、綾乃女王様は、冷たく突き放すように、M男奴隷河合に言い放つ!!

 そして、河合の本当の限界がまだ来ていないと察した女王様は、河合を壁に追いたてるように、河合のケツを

ビシッ!ビシッ!

と、鞭打ちながら、

「さあ、あっちの壁に、後ろを向いて立ちなさい!!」

と、厳しく命じ、SMルームの壁に十字に設えられた磔板の上に、M男奴隷河合の両手首、両足首を縛りつけ、磔状態にするのだった。

 結局、三角木馬から降りることを許されてから後もたっぷり十五分間。M男奴隷河合は、泣きの涙のウンコガマンを強いられたのだった・・・。

 そして、やっと女王様からのお許しで、ケツの谷間に深く挿入された張り型が抜かれ、代わって、河合の股間には、パンパース・オムツが宛がわれる。ほどなく、M男奴隷河合は、無上の悦びの中、女王様のお許しを得て、そのパンパース・オムツの中で脱糞し、そして、前は前で、ドピュと一発果てたのであった。

 もちろん、河合は、追加料金5万円を払って、脱糞処理のオプションサービスも予約していた。それは、女王様の膝上で、やさしく、お尻を拭き拭きしてもらい、そのあとは、もうウンコお漏らしをしないためのおまじない!膝上お尻ペンペン赤ちゃんプレーであった・・・。

 プレー料は、消費税込の55万7千500円也!!

 上級・三角木馬・スパンキングコース、プラス、オプションで赤ちゃんお尻拭き拭きコースのSMプレーを満喫し、大満足でSMサロンを出る河合豪太なのであった。

 マンションの玄関では、三丸物産・部長クラス以上の者にのみに許されるステータス・シンボル。黒塗りの社用ベンツが待っていた。

「お疲れさまでした。」

と、恭しく礼をして、ベンツのドアを開ける部長付き運転手。

「御苦労・・・」

と、満足げに頷きながら、車に乗り込む河合部長。

 河合部長が無事乗車したことを確認すると、丁寧にドアを閉め、自分の運転席へと戻る運転手。そして、河合部長に、

「部長・・・行き先はいかがいたしましょう?」

と、恭しく尋ねるのだった。

 河合は、

「青雲寮へ行ってくれ・・・そろそろ部下たちが揃っている頃だろう・・・」

と、指示するのだった。



三、屈辱の懲罰・ライディング・スタリオン 〜青雲寮の三角木馬〜

 青雲寮の寮食堂。河合部長が久々に参加する宴会。緊張の中にも、体育会のノリでワイワイガヤガヤ、宴も盛んになりつつあった。そんな中、寮食堂の扉がガラリと開き、

「今宵の宴を盛り上げさせていただきたく!!参上いたしました!!」

と、グンゼの白ブリーフ一丁、寮食堂の入口でデカイ声で挨拶する営業若手が一人。入社5年目・営業の鈴木康太郎(28)だった。

 寮生全員から、ドッと拍手が起こる。

 そして、

「よおっ!!!鈴木先輩!待ってました!!!」

と、後輩たちからは、次々に声がかかるのだった。

 そんな中、河合部長から一番遠いところに座っている、営業第一課の若手である樋口(28)と山田(24)が、ヒソヒソ話をしていた・・・。

「あんな格好、恥ずかしくて、嫁さんには見せられねぇよな・・・新婚ボケも2か月までってことだ・・・なあ山田・・・」

と樋口がニヤニヤしながら後輩の山田に話しかける。

「そうッスよね・・・鈴木先輩も哀れッスよね・・・」

と後輩の山田。樋口先輩よりも尊敬している鈴木先輩がいよいよ懲罰を受けるのを前に複雑な気持ちの山田だったが、現在コンビを組んでいる樋口先輩の顔を立てて、そう応えるのだった。

 樋口と鈴木は同期で、樋口は、結婚で鈴木に先を越されたことが悔しくてならなかった。樋口は、三か月前、鈴木の結婚式に招かれて以来、同期に先を越された、その悔しさを吹き飛ばすかのように、猛烈に仕事に励み、ここ三カ月間、営業成績トップを維持していた。

 樋口、そして、その営業外回りコンビの山田は、二人とも、寮生が青雲寮ではくことを半ば強制されている三丸物産の社紋が入った黒ジャージの下は、今では「営業の神様」と崇められている四谷常務のご利益ありとされているグンゼ白ブリーフを穿いていた。しかも、ここ三カ月間、ゲン担ぎの穿きっぱなし、すなわち、ブリーフはきっぱ状態であった・・・。

 一方、樋口の言葉通り、新婚ボケなのだろうか、直近三カ月間の鈴木の営業成績は、ビリケツの超低空飛行であった。

 三丸物産・営業推進部では、入社三年目超の営業社員より、その営業社員が、係長クラスになるまで、個人営業成績による「営業ノルマ」が課せられていた。そして、その営業社員は、入社三年目までの後輩とコンビを組まされ、営業外回り活動にまい進する。

 数年前、永らく営業推進部・部長を務めていた四谷が、常務取締役に昇進し、四谷の後輩の河合豪太が部長になって以来、「営業成績が三か月連続でビリケツとなったものは、覚悟を決めて、青雲寮の宴会に出席すること」との「部長通達」が河合部長よりなされていた。

 すなわち、不覚にも「営業成績・三ヶ月間・連続ビリケツ」の汚名を拝することになってしまったものには、営業若手全員の前での、羞恥の懲罰が待っていたのだった。これは、四谷部長時代にはなかった若手泣かせの行事であった。

 もとより、青雲寮は、男子独身寮だ。結婚した者は、退寮しなければならない。しかし、係長クラス以下の若手営業は、たとえ妻帯者であっても、その宴会にできうる限り出席することが求められていた。

 その晩の宴会は、「宴会の盛り上げ役」、すなわち、「営業成績・三ヶ月間・連続ビリケツ」の懲罰対象者が出席するとあって、宴会の出席者は、いつにも増して多く、青雲寮・寮食堂は、異様な熱気と盛り上がりを呈していた。

 そんな中、宴会の盛り上がりに乗り切れていない若手営業が一人いた。懲罰対象者・鈴木の後輩であり、鈴木とコンビを組む、入社2年目の黒沢孝太郎だった。鈴木、黒沢とも、四谷や河合と同じ、星城大学のラグビー部出身。ガッチリ体型のゴリ・マッチョだった。鈴木・黒沢ともに、下の名前の読みが同じで「コータロー」。営業一課では、コータローコンビの名で、先輩たちから、そして、後輩たちからも、親しまれていた。

 そんな黒沢孝太郎が浮かない顔をしている理由は、「営業成績・三ヶ月間・連続ビリケツ」の責任の張本人は、鈴木先輩ではなく自分にあるということを重々承知していたからだ。そう、後輩・黒沢は、鈴木先輩の足を引っ張りまくっていたのである。

 特に、「営業成績・三ヶ月間・連続ビリケツ」だけはヤバイと、営業活動・猛ダッシュを決めていた鈴木先輩が先月とってきた某駅前ビルのテナント契約。成約が決まりかかっていた交渉の席上。そのビルのオーナーが、

「ワハハハ!!昨日は思っていたより豪快に一発!!スッポ〜〜〜ンと抜けたよ!!」

とたまたま話したのを聞いて、いつも青雲寮の先輩たちの風俗豪遊談を聞かされている黒沢は、その「一発抜いた」を思わず勘違いしてしまい、

「社長さんも見かけによらずお若いですね〜!どこのソープでお抜きになったんですか?」

などとを口走ってしまったのである。鈴木先輩が、あわてて、目で「バカヤロー!すぐに土下座だ!!謝れ!!」と訴えかけている空気も読めず、

「社長!!教えてくださいよ!!どこのソープなんですか?僕も連れて行ってくださいよ!!」

などと飛んでもないことを言い放ったのである。

 そんな黒沢の言葉に、

「なに〜〜〜!!なにを言ってるんだね!!!わしの右頬が腫れているのが見えんのかね!!昨日、大学病院で、親知らずを抜いた話をしていたんだ!!失敬な!!!」

と、ブチ切れのビルオーナー。

 鈴木先輩に腕を掴まれ、強引に椅子から引きずりおろされ、鈴木先輩とともに、土下座する黒沢。

「しゃ、社長!!申し訳ありません!!ご無礼の段は、ど、どうか・・・平にお許しください!!!」

と、床に額をこすりつけて平謝りの鈴木と黒沢。しかし、そのビルオーナーの怒りは鎮まらず、結局、契約は成立しなかったのであった・・・。

 かくして、コータローコンビの「営業成績・三ヶ月間・連続ビリケツ」が確定したわけである。泣いて謝るKY黒沢に、鈴木先輩は、「気にすんな・・・営業やってりゃ、こういうことはしょっちゅうさ・・・」とやさしかった。そのやさしさが、黒沢の胸をさらにグッと締めつける。

 しかし、鈴木先輩のようにやさしい先輩ばかりではなかった。鈴木と同期の先輩の中には、鈴木に同情して、

「え!鈴木だけ懲罰?責任のないヤツって、楽でいいよな!!」

と、黒沢の胸にグサリと刺さる一言を投げかけてくる先輩も多かった。

 もちろん、その晩の宴会を、黒沢が欠席することは許されず、己が足を引っ張って、懲罰を受ける羽目になってしまった先輩の恥ずかし姿を、先輩たちの冷たい視線の中で、ジッと耐えて直視しなければならない黒沢だったのだ・・・。

「鈴木だけ懲罰かよ・・・黒沢はどうしたんだよ?責任のないヤツって、本当に楽でいいよな!!」

と、今晩もまた、黒沢の後ろで、先輩たちが、黒沢に聞こえるようにヒソヒソ話をしているのだった・・・。黒沢は、もう目と耳をふさぎたい思いでいっぱいだった・・・。

 そして、いよいよ、懲罰が始まるのであった。

 鈴木先輩は、ブリーフ一丁、寮食堂の正面に立つと、深々と礼をして、両腕を後ろに組み、上体をのけ反るようにして、デカイ声を張り上げるのだった。

「今宵は、私、不肖、鈴木康太郎が!!!!」

と、鈴木先輩。

 それに対して、宴会場から、

「よぉ!!!鈴木!!!いいぞ!!」

と声がかかる。

「社長賞をめざし!!!」

「よし!!それでこそ男だ!!!」

「スタリオン号に跨らせていたきまーーーーーーーーーす!!!!!」

「よっしゃ!!行け!!!」

と、宴会場からの野太い声とともに、拍手が宴会場に響き渡るのだった。

 その野太い声にのせられるかのように、鈴木康太郎は、男らしくキュッと口を結び、覚悟を決めた面持ちで、宴会場である寮食堂中央へと進む。そして、そこに設えられた三角木馬に跨るのだった。

 その三角木馬は、数時間前、河合部長が跨っていた三角木馬と同型の、背が鋭く尖った三角木馬だった。いよいよライディング・スタリオンの始まりだった!


 

四、権藤先輩の理性 

 鈴木先輩のケツの谷間に向かって、まるで狙いをすましたかのように、とがっている三角木馬の背・・・その上にストイックに跨る鈴木先輩。色黒の鈴木先輩の全身の筋肉は、小刻みに震え、すでに幾筋かの汗の線が、その腹筋の割れ目に光っていた・・・

 三角木馬の鋭いとんがりを見て、数時間前、先輩の命令で、それを寮食堂のセンターにしつらえる手伝いをした入社3年目・25歳の橋本の股間は、ビンビンに怒張していた・・・

「ああ・・・俺も来年からは、営業ノルマか・・・・成績あげられなきゃ、俺も、ああなるのかなぁ・・・・」

とそんなことを思う橋本。しかし、橋本のそんな心配とは裏腹に、橋本の心臓はバクバクと鼓動を打ち、それと共鳴するかのように、ジャージの股間に異様なほどのテントを張る橋本のジュニアは、ドクッ、ドクッと熱く脈を打っていた。

・・・・・・・・・・・・

 宴会が始まる数時間前・・・寮の中庭にある物置プレハブの中で、橋本は、仕事でコンビを組み、お世話になっている先輩、入社6年目・29歳の権藤先輩と、宴会に必要な備品の持ち運びを手伝っていた。

 物置プレハブの隅に、ひときわ大事そうに、布切れをかぶせられて保管されている「三角木馬」。先輩がいるにもかかわらず、橋本は、大胆にも、それに跨って、遊び始める。

「コラァ!遊びじゃねぇ〜んだぞ・・・寮の行事は、仕事だと思え!」

と権藤先輩。

 しかし、橋本は、少し甘えて、

「いいじゃないッスか・・・・ちょっとくらい・・・・」

と、三角木馬から降りようとしない。

 まだ十分に足の高さを調整しておらず、三角木馬に跨っても、後輩・橋本は、楽勝でつま先だちをすることができた。 

「これって、案外、楽勝じゃないッスかぁ?先輩!」

「おまえなぁ・・・こんなところで、三角木馬にまたがんなよ・・・」

と、仕方ねぇヤツだなと思いながら、苦笑いの権藤先輩。

 橋本は、なにげに、つま先立ちの自分のかかとを微妙に下げてみるのだった。そして、三角木馬の三角形の頂点、すなわち、三角木馬のとんがりが、自分のジャージのケツの谷間へ微妙に喰い込んくることに気がついてしまう橋本だった・・・それは、なんともいえない、微妙な快感だった!!それは、昔、大学野球部の先輩からいたずらでやられた「かんちょーーーー!!」に似た感覚だったが、それほどきつくはなく、痛くはなく、しかし、弱すぎず・・なんとも微妙な感覚だった・・・。

「あぁ・・・・」

と、思わず、声にもならない低いため息をもらしてしまう橋本。

「やばい・・・今の、先輩に聞こえちまったかな・・・」

と思いながらも、も少し、己のかかとを下げてみて、三角木馬の背を、己のジャージのケツの谷間に誘い入れたい衝動に駆られてしまう橋本・・・

 先輩の前といえども、橋本は、三角木馬のとんがりを己のケツの谷間に喰い込ませたい、その衝動に抗することはできなかった・・・己のかかとをも少し下げて・・・「あっあぁ・・・ヤバァ・・・かなり喰い込んできやがった・・・」

 そして、橋本は、権藤に言うのだった。

「で、でも、せ、先輩・・・これって・・・ある意味・・・やばいッスよね〜・・・あっあぁ・・・・」

 入社6年目にしていまだ独身の権藤・・・宴会の準備といえば、進んで有志に名乗り出て、われ先に、この物置プレハブに入って、備品運び出しをしてきた。宴会の盛り上げでもかなりの自信がある、自称「宴会部長」の権藤は、橋本のあやしげな行動の意味を、即座に察知し、ニヤニヤ笑いをしながら、

「ある意味って、どういう意味だよ?えっ?」

と、後輩・橋本に聞くのだった。後輩のジャージの股間が、異様に盛り上がっているを、権藤は、見逃さなかった・・・。

 突然、橋本のジャージの股間の盛り上がりをギュッとつかむ権藤。

「せ、先輩・・・・オ、オレ、マジで、やばいッスよ・・・。」と後輩・橋本。特に腰を引いたりしての、抵抗はしなかった。

「なにがヤバいんだぁ・・・橋本・・・」と、権藤先輩。

 もう我慢できず、さきほどよりやや激しく、腰を前後に、卑猥に、動かし始める後輩・橋本。にもかかわらず、権藤先輩は、橋本の股間をギュっと握りしめたままだった。

スリスリ!スリスリ!「あっあぁ・・・・」

 腰を前後に動かせば動かすほど、三角木馬のとんがりと、ジャージのケツの谷間は、摩擦しあう。なんともいえない微妙な圧迫感をジャージのケツの谷間に感じ、思わず、よがり声をあげてしまう後輩・橋本。そして、橋本のジュニアは、権藤先輩のたくましい右手にギュッと握られて、先輩の手の中で、シコシコ!シコシコ!と、あやしげに摩擦され続けるのだった・・・

「な、なにげに・・・エ、エロいッスよね〜〜〜〜、こ、この感覚・・・」

と、権藤先輩の問いかけに、そう答えるのがやっとの後輩・橋本。

スリスリ!シコシコ!スリスリ!シコシコ!「あっあぁ・・・・」

 声をうわずらせながら、三角木馬の上で、腰を前後に卑猥に動かし続けている後輩・橋本に、権藤は、

「この感覚って、どんな感覚だぁ?」

「えっ・・・なんつぅかぁ・・・そ、その・・・ケツに微妙に喰い込むっつうかぁ・・・・」

「そうだろ・・・思わず、ムフフだろ・・・その喰い込み感・・・」

「えっ・・・せ、先輩も・・・ご存じなんですか・・・」

 その橋本の問いかけに、思わずハッとして、後輩のジュニアをジャージの上からギュッと握りしめていた右手を離してしまう権藤先輩。

 橋本は、少しさびしそうな顔をしながらも、己のかかとを微妙に上下させ、三角木馬のとんがりのケツの谷間への喰い込みを微妙に調整しつつ、

スリスリ!スリスリ!

と、腰を前後に動かし続けるのだった・・・

「あっあぁ・・・せ、先輩・・・・も、もう、自分、クセになりそうッスよ・・・・」

スリスリ!スリスリ!

 三角木馬のとんがりが股間に喰い込む、なんともいえない、この快感・・・さっき権藤先輩に握られていた時よりも、橋本のジュニアはさらにビンビンに怒張し、ブリーフとジャージの生地を突き破りそうなくらい元気になっていた。

つま先立ちで、スリスリ!スリスリ!

も少しかかとを下げて・・・スリスリ!スリスリ!

さらに下げて・・・スリスリ!スリスリ!

「橋本・・・もうお前、十分、クセになってんじゃねぇかぁ・・・・」

と、権藤先輩は、橋本の後ろで、ニヤニヤ顔で、後輩の卑猥な腰の動きを見つめている・・・

 もちろん、橋本も、権藤先輩の命令で、営業・ゲン担ぎのブリーフ・はきっぱだ・・・あたりになんともいえない野郎臭がただよいはじめる・・・

スリスリ!スリスリ!

 後輩・橋本のその腰フリは、その野郎臭とあいまって、まるで、「この三角木馬は、ボクのものだぞ!」となわばり主張の臭いつけ行為のようにも見えた・・・。

「なんだぁ・・・橋本・・・その腰つきは・・・・三角木馬の上で腰をフリフリかぁ・・・裸踊りの特訓じゃねぇんだぞ・・・・」

 そういいながらも、今度は、権藤自身が、三角木馬の上に跨って、スリスリ・・・スリスリ・・・をしたい衝動にかられてしまうのだった・・・そして、かわいい後輩の後ろに回って、三角木馬の上で二人、後輩をギュッと抱きしめてやりたい衝動にかられるのだった・・・権藤の股間のイチモツも、もうはちきれんばかりにビンビンに怒張していた・・・なんで、さっき、後輩のジュニアを握っていた右手を離してしまったのか・・・社会人、そして、会社人としての己の「理性」をうらめしく思う権藤だった・・・。

 そんな「理性」を保ち続けるのに、まだチト若すぎたのは、後輩・橋本の方だった。

スリスリ!スリスリ!「あっあぁ・・・・」

スリスリ!スリスリ!「あぁぁぁぁぁ・・・・」

 後輩・橋本の腰振りは、次第にあやしさを増していき、そのよがり声は、次第に悩ましさを増していく・・・そして、三角木馬のとんがりは、後輩・橋本のジャージのケツの谷間へと、その喰い込みの深さを徐徐に増していくのだった・・・後輩・橋本のブリーフのケツの部分に、茶色いウン筋の直線が、一本、また一本と、まるで定規で引くように、引かれていった・・・

ビシッ!

「い、痛てぇーーーーー!!!」

 ケツに、突然襲ってきた熱い衝撃に、思わず、のけ反り、ケツを押さえる後輩・橋本。

 権藤先輩の右手には、河合部長の「女王様の鞭」が握られていた。その鞭で、権藤は、橋本のジャージのケツを、思い切り打ち据えたのだった。それは、まるで、橋本の白昼夢を打ち破るかのようだった。

「さあ、仕事に戻るぞ!橋本!」

と権藤先輩。その声は、冷静・沈着。やさしい中にも、厳とした響きがあり、いつもの仕事場での、権藤先輩の声だった。

 思わず、先輩の目をみつめる後輩・橋本・・・それは、やさしいなかにも仕事への厳しさが見て取れる、先輩の目であった。そして、その目は、

「もう遊びはおしまいだ!いいな!」

と、後輩・橋本に、言い聞かせていた。

 もう一度、権藤先輩の目を、ジッと見つめ直す後輩・橋本・・・それをまっすぐ見つめ返してくる権藤先輩の目。そして、後輩・橋本を安心させるかのように、権藤先輩は、やさしく、うなずくのだった。それは、まるで、

「心配すんな・・・・おまえのこと、嫌いになんかなりゃしねぇよ・・・もちろん、誰にもしゃべりゃしねぇ・・・ここでのことは、オレとおまえだけの秘密さ・・・」

と、語りかけているようだった。

 そして、橋本は、ケツをさすりながら、三角木馬から降りると、ちょっと気まり悪そうに、しかし、なにか安心したような口調で、

「はい・・・」

とだけ返事をし、宴会準備の手伝いへと戻っていくのだった。

 

五、走れ!コウタロー

 

★太朗からのお願い:「走れコウタロー」という歌を知らない方は、是非、

http://www.youtube.com/watch?v=rtXyggWHNpI

をご覧になり、会場のノリを充分に感じた上で、本節を読んでいただければと思います。★

 

 そして、宴会・・・橋本と権藤がしつらえた三角木馬に跨った鈴木康太郎。ケツと腿にギュッと力を込めて踏ん張り覚悟を決める。両腕は、嫌味なまでに高く刈り上げられた「三丸式営業マンカット」で青々とした後頭部で組む。

「よし!鈴木と同期の樋口!!鈴木にムチを入れてやれ!!」

と、河合部長が命令する。

 鈴木と同期、しかも現在のところ、営業成績トップの樋口に、「ムチ入れ役」を命ずる。「鈴木よ!ガンバレ!この悔しさをバネにするのだ!」との河合部長の親心だ!

「はい!!光栄であります!!」

と返事をすると、樋口は、待ってましたとばかりに、椅子から立ち上がり、河合部長から「女王様の鞭」を受け取ると、鈴木の後ろへと行き、鈴木のブリーフ一丁のケツに狙いを定めるのだった。

 ブリーフ一丁、三角木馬に跨る鈴木の「なにくそ魂」に火がつけられる!

「よ、よろしくお願いしまーーーーーす!!」

と、鈴木は怒鳴るように言うと、悔しそうにくちびるをキュッと結ぶのだった。そして、悔しくて、いまにも泣きそうになるのをグッと我慢するかのように、目ん玉をギュッと閉じるのであった。 

 寮食堂の異様な熱気の中、やがて、三丸物産が誇る福利厚生活動!三丸物産男子合唱部の有志四人が、「走れコウタロー」のメロディーにのせて替え歌を歌い始める。そして、寮生たちは、手拍子でそれを盛り上げるのだった。

 そして、歌の一節一節の、まさにその節目で、樋口の右手に握られた乗馬鞭が、ビシッ!ビシッ!と容赦なく、鈴木のケツを打ち据えるのであった・・・

♪これから始まる 大レース ビシッ!!

(ハッハッ)

鈴木のケツに決まる同期・樋口の「友情のムチ」一発目!!「うぅっ・・・」と顔をしかめる鈴木だった。


♪ひしめきあって いななくは ビシッ!!

(ハッハッ)

♪天下のミツマル 営業若手 ビシッ!!

(あ、どした!)

♪今日はめでたい 給料日 ビシビシビシ!!!

(それいけ!)

 容赦ない樋口のムチの連打に鈴木は「あぁ・・・」と声にもならない嘆息をもらし、苦痛の表情を浮かべる。もちろん、ケツはヒリヒリ・ジリジリ焼けるようだ!

 宴会場の寮生たちは、「ひぇ〜〜、半端じゃねぇ〜〜〜、樋口さん、全然、手加減してねぇ・・・」と固唾をのんで、「ライディング・スタリオン」の懲罰を見守るのだった。

 シ〜ンとしてしまった宴会場に、喝を入れるかのように、河合部長が、「おめえら!!手拍子はどうした!!手拍子だ!!!」と怒鳴る。

 歌は続き、宴会場は、寮生たちの手拍子で、再び、盛り上がっていく。


♪走れ走れ コウタロー ビシビシビシ!!!と強烈なケツ鞭・連打!!


♪ヨツビシ ゼニトモ かきわけて ビシビシビシ!!!

(太朗注:日本の財閥系・三大総合商社とは、三丸物産、四菱商事、銭友商事である。それぞれの営業若手同士のライバル心はビンビンに強い!!)

♪走れ走れ コウタロー ビシビシビシ!!!

♪追いつけ追いこせ 引っこぬけ ビシッ!!

と、歌詞一番の締めを飾るかのように、さらに強烈な一発が、鈴木のブリーフ一丁のケツに入れられる。鈴木は、顔をしかめ、上体をのけぞるようにしながらも、デカイ声で、

「ありがとうございましたーーー!!」

と叫ぶのだった。

 歌は間奏に入り、河合部長が、

「次!鈴木と同期の石井!!!鈴木にムチを入れてやれ!!」

と、またしても、鈴木と同期の石井を指名する。

 すでに酔って顔をあからめた石井は、「はい!!光栄であります!!」と席を立って、宴会場、中央へと出てくる。石井の周りからは、ドッと拍手が起こる。そして、スタリオン号に鞭を入れる二番目の騎手として、樋口から鞭を受け取るのだった。

 石井と鈴木は、星城・ラグビー部時代からのライバル。四年間、同じポジションを競い合った仲だ!鈴木は、樋口指名の時よりも、さらに悔しそうに、口びるをギュとかみしめるも、声を絞り出すかのように、

「よ、よろしくお願いしまーーーーーす!!」

と叫ぶ。

 拍手と声援の中、歌は、まだまだ続き、ビシッ!ビシッ!とケツ鞭も続く。


♪スタートダッシュで出遅れる ビシッ!

(こりゃ、ヤバ)

 石井の繰り出すケツ鞭の強烈さに、再び、会場は息をのむ。石井は、右手に持った鞭を、大きく後方へと振り上げると、スイングして、全身のちからをその鞭先にかけるようにして、鈴木のブリーフ一丁のケツを打ち据えるのだった!!

「い、痛ちぃ〜〜〜〜」

と思わず叫び、上体をのけぞらせて、顔をしかめる鈴木だった。しかし、三角木馬のとんがりへの「陥落」だけは、男の意地で避けたかった。股ぐらあたりにさらに力を込めて、ケツと腿をギュッと締めて、三角木馬を己の両足で挟み込むようにするのだった。

「へへへ・・・どうだ・・・鈴木・・・・俺の鞭の味は一味も二味も違うだろう・・・」

と、にやける石井。

 一方、「オラァ!!手拍子はどうした!!手拍子は!」と河合部長の喝が、再び、ケツ鞭の迫力に圧倒されまくっている宴会場の寮生たちに向けられる。


♪どこまでいっても はなされる ビシッ!

(ホレ、ガンバレ!)

♪ここでおまえが 負けたなら ビシッ!

(あ、どした!)

♪おいらのボーナス ゼロ査定 ビシビシビシ!!!

(なにィ〜!)


♪走れ走れ 走れコウタロー ビシビシビシ!!!と強烈なケツ鞭・連打!!

♪ヨツビシ ゼニトモ かきわけて ビシビシビシ!!!

♪走れ走れ 走れコウタロー ビシビシビシ!!! 

♪追いつけ追いこせ 引っこぬけ ビシッ!!


 そして、「走れ走れコウタロー」のバックコーラスが続く中、宴会部長の誉れ高い、入社6年目の権藤主任が、三丸物産・人事部・如月部長のモノマネでセリフを決めるのだった。もちろん、このモノマネは、三丸物産内部でのみ通用する、社内お笑いネタである。

「エー、今年の夏のボーナス支給額をいかほどにするかという問題に関しましては、慎重に検討を重ねてまいりました結果、営業推進部第一課のホープ・鈴木康太郎君のがんばり次第という結論に達したのであります・・・」

 河合部長は、権藤のセリフの間、一服ついた感がある鈴木のケツに、さらなる羞恥責めを加える!

「鈴木!ブリーフをケツに喰い込ませろ!!Tバックだ!!」

と、命令する。

「えっ!!」

と、思わず、宴会場から声が漏れる・・・しかし、寮生たちは、たっぷりと鞭を入れられた鈴木のケツが、いまどんな状態にあるのかに興味津々・・・その視線は、鈴木のケツに釘付けだった。

「はい!」

と、河合部長の意地悪な命令にも、凛々しく返事をし、ブリーフの腰ゴムをつらそうにそぉっと引っ張り上げる鈴木。ブリーフが鈴木のムッチリとしたケツの谷間に喰い込んでいき、やがて、真っ赤な筋が何本も焼き付けられた痛々しいケツが、寮生たちの前に晒される・・・鈴木の顔は、恥ずかしさで、もうケツ以上に、真っ赤だった!

 その間にも、権藤の桜テレビ・伝説の名アナウンサー・御手洗一郎のモノマネによるセリフが続く。権藤のモノマネのうまさに、寮生たちは、爆笑するのだった。

「本日の第四レース、本命は、ヨツビシ・ヤマノ、穴馬は、ゼニトモ・カトウ。各馬ゲートインから、一斉にスタート。第二コーナーを回ったところで、先頭は予想通り、ヨツビシ・ヤマノ、ヨツビシ・ヤマノ。さらに各馬一団となって、ミツマル・ヒグチ、ゼニトモ・サイトウ、ヨツビシ・コウノ、ゼニトモ・カトウ、ミツマル・オカダ、そして、大きく遅れて、ミツマル・コウタローと続いております。さて、今、第三コーナーをまわって、第四コーナーにかかったところ。先頭は、予想どおりヨツビシ・ヤマノ、ヨツビシ・ヤマノ。奮起を期待したい我らがミツマル・コウタローは、依然、ビリケツ、第十位というところであります。さあ、最後の直線コースに入った!各馬一斉にムチが入る!!」

 一休みついていた鈴木のブリーフTバック状態の半生ケツにも、ビシビシビシ!!!と、同期・石井の鞭が再び飛ぶのだった!!

 生ケツへの鞭入れは、痛さも一塩だ・・・思わず、腰を引きそうになる鈴木。しかし痛がってばかりはいられない。ケツに鞭を入れられた鈴木は、お約束通り、どこか悲しげに、そして、つらそうに、「ヒヒィ〜〜〜〜〜ン!!!」と馬のマネをして叫ぶのだった!!宴会場からは、爆笑が起こる!

 三角木馬に跨った鈴木は、あくまで宴会の盛り上げ役だ!男のプライドをグッとのみ込み、真っ赤なケツを衆目に晒し、その場を盛り上げる道化師役に徹しなければならない。寮での宴会は、時にはやりきれない思いでいっぱいになる、男のつれえ仕事なのだ!!

「あっ!我らがミツマル・コウタローが出てきた!コウタロー速い!コウタロー速い!トップのヨツビシ・ヤマノけんめいのしっ走!これをコウタローがひっ死に追っかける。コウタローが追いつくか、ヨツビシ・ヤマノが逃げ切るか。コウタローか、ヨツビシ・ヤマノか。ヨツビシ・ヤマノか、コウタローか。両馬、懸命のラストスパート!こ、これは、わからなくなってきたーーーーー!!!」

ビシビシビシ!!!

と、同期・石井の締めの鞭入れに、

「ありがとうございましたーーー!!」

と、デカイ声で挨拶する鈴木。

 そして、間髪を入れずに、河合部長は、次の「騎手」を指名する。

「次!鈴木と同期の近藤!!!鈴木にムチを入れてやれ!!」

 宴会場の寮生たちの目が、一斉に、近藤に注がれる。近藤と鈴木は、学生時代からの大の親友であることを、寮生のほとんどが知っていた・・・。

「陰険な河合部長のことだ・・・俺もきっと指名されるに違いない・・・・」と思い、いつもの宴会と違って酒をセーブしてきた近藤・・・指名された時は、すでに覚悟を決めていた。

「はい!!光栄であります!!」

と、近藤は、ひときわ気合いの入った返事をすると、三番の歌詞に間に合うように、宴会場の中央、ブリーフTバック状態で、真っ赤な半生ケツを晒している鈴木の後ろにきて、石井から鞭を受け取るのだった。

 親友といえども、部長からのムチ入れ役の指名を断ることなどできない。もちろん、鞭に手加減をくわえるなど、もっての他だ!

 三角木馬に跨った鈴木は、ケツ筋をピクピクと動かしている。まるで、親友の近藤に、

「近藤よ!ぶったるんだ俺の、このケツに存分に気合いを入れてやってくれ!!」

と、懇願しているかのようだった。

 近藤は、無表情ながらも、鞭を高からかに後方、頭の上まで振り上げ、鈴木のケツに狙いを定める格好をとる。その大げさな動作に、

「お〜〜〜〜!!めちゃくちゃ気合いが入っている!!」

と、宴会場の酔った寮生からは、野太い歓声があがる。

「すまん!鈴木!覚悟してくれ!手加減はできねぇんだ!!」

と、心を鬼にして、鞭を右手でギュと握りしめ、親友の痛々しいケツに狙いを定める近藤だった。

 そして、第三番が始まる!

♪ところが奇跡か 神がかり ビシッ!

(あ、どした!)

♪ヨツビシ ゼニトモ ごぼう抜き ビシッ!

(ハッ!ハッ!)

♪いつしかトップに おどり出て  ビシッ!

(よっしゃ!!)

♪ついにゲットだ!社長賞!! ビシビシビシ!!!

(よくやったーーー!!)

 鈴木の親友・近藤のムチは、樋口、石井のムチをはるかに上回る、一発、一発、気合いの籠った強襲打だった!ビシッ!ビシッ!と一発毎に一本の赤い線が、鈴木の左右の両ケツペタに焼き付けられていく・・・両手はあげて後頭部で組んだまま、苦しそうに踏ん張る鈴木・・・ケツ筋をキュッと締めて、焼けつくような親友からの「友情のムチ」を、一発、一発、しっかりと味わいつくすかのように、己のケツで受け止める鈴木だった。しかし、腿の震えは、さきほどよりも、強くなってきていた・・・鈴木の両足の間では、三角木馬のとんがりが、いまは遅しと、鈴木の「陥落」の時を待ち受けていた・・・。

 河合部長は、黒田課長に酌させながら、その様を満足そうに眺めている。そして、寮生たちは、手拍子を打ちならし、場を盛り上げながらも、ライディング・スタリオンの懲罰の半端じゃないキツさを目の当たりにし、「三か月連続・ビリケツは、マジ、ヤバイ・・・来月は、根性入れて、営業に励むぞ!!」と、内心、決意をあらたにする。

 鈴木へのケツ鞭は、まさに「一鞭百戒」。営業若手の寮生全員は、まさに己のケツに「貴様!来月も仕事サボんなよ!」と、ビシッ!ビシッ!とムチが入った様な気分になり、いつしか、ピシッと気持ちも引き締まり、酔いから覚めて真剣な営業マンの顔つきになっていた。

 歌も終盤、合唱団の歌のペースが速くなってくる。それに合わせて、鈴木の親友、近藤が振るうムチのペースも加速度的に速くなり、鈴木のケツの熱い痛みは、頂点に達しつつあった・・・。

♪走れ走れ 走れコウタロー ビシビシビシ!!!

♪ヨツビシ ゼニトモ かきわけて ビシビシビシ!!! 

♪走れ走れ 走れコウタロー ビシビシビシ!!!

♪追いつけ追いこせ 引っこぬけ ビシッ!!!


♪走れ走れ走れ走れ走れコウタロー ビシビシビシ!!!

♪ヨツビシ ゼニトモ かきわけて ビシビシビシ!!!

♪走れ走れ走れ走れ走れコウタロー ビシビシビシ!!!

♪追いつけ追いこせ 引っこぬけ  ビシッ!!!

  歌のラストに合わせるかのように、鈴木のケツに、近藤のムチの締めの一発が、ビシリと入る!!天井を仰ぐようにして、ケツの熱い痛みに耐える鈴木。もう我慢の限界だった・・・

「ありがとうございましたーーーーー。」

と、近藤に挨拶するが早いか、ドスゥ〜〜〜〜〜ン!!!と、三角木馬の鋭いとんがりの真上へと陥落してしまう鈴木・・・・。寮生たちから、「あっ!!!」と驚きの声が、口ぐちに漏れてくる。

「す、鈴木・・・・だ、大丈夫か・・・・」

と、鞭を放り投げて、鈴木を助けようとする近藤。他の寮生たちも思わず立ち上がり、三角木馬の上で「股裂き」状態の鈴木を助け出そうとする。

 その様子を見ていた河合部長は、

「ちっ!元ラグビー選手が、あの程度で陥落か・・・情けない・・・近藤!助けてやれ!」

と、舌打ちしながら、苦々しげに言うのだった。

 鈴木が三角木馬に跨る時の「足踏み台」が、再び、鈴木の足元に置かれ、どうにか、「股裂き状態」から解放される鈴木。

 しかし、三角木馬のとんがりがケツの谷間にグサリとささるその衝撃は、鈴木のケツには相当に響いたらしく、ケツの部分がTバック状態になったブリーフを直そうともせず、痛そうにケツのど真ん中を手で押さえながら、近藤の肩を借りて、どうにか三角木馬から降りるのであった。

 そして、鈴木は、きまり悪そうに、右手でケツのど真ん中を押さえながら、やや苦しそうな顔をして足を引きずりながら、ジャージの着替えが置いてある控室へと向かうのだった。

「鈴木先輩・・・マジ、格好、悪りぃなぁ・・・」

と思いつつも、後輩たちは、口々に、

「よぉ!!鈴木先輩!日本一!」

と声援を投げかけながら、盛大なる拍手でその晩の「宴会の盛り上げ役」鈴木を送り出すのだった。

 そんな中、そんな寮生たちのノリについていけず、心配そうに、そして、申し訳なさそうに、鈴木先輩の痛々しい後ろ姿を見つめる一人の寮生がいた・・・鈴木と営業でコンビを組み、先輩の足を引っ張り続けて迷惑ばかりかけている、もう一人のコータロー、入社2年目の黒沢孝太郎だった・・・。

 

六、コータローの裸踊り志願 〜先輩!俺も男になります!あっ!違った・・・亀になります(^^;〜

 鈴木のケツをさんざん痛めつけた「ライディング・スタリオン」の儀式は、河合部長の訓示で終わりを告げる。

「今晩、鈴木の尻に飛んだムチを、君たち一人一人の尻に飛んだムチだと思い、今後も、気を緩めることなく、営業活動にまい進してほしい!!」

との部長訓示に、

「はい!!」

と、一糸乱れることなく、気合いのこもった返事で応える営業若手たち。

 さすが、「体育会系営業」の誉れ高い三丸の営業だ。若手たちは、酔って顔を赤らめながらも、部長訓示が始まると背筋をピシと伸ばし、手に持ったビールグラスは卓上に置き、両手は腿の付け根あたりに拳を軽く握って置き、部長の訓示を一言も聞き逃すまいと、真剣な顔つきになっていた。

 寮の飲み会は無礼講。

 部長の前でも、ジャージに、学生時代鍛えた胸板を誇るかのようにピチピチTシャツの若手が多かった。そして、そのピチピチTシャツの超短い両半袖からは、筋肉の盛り上がりも誇らしげな上腕が逞しげにでている。寮生のその逞しい上腕の下半分から指先までは、真っ黒に営業焼けしており、外回り中はYシャツの袖の陰に隠れて日焼けしない上腕の上半分の白さとのコントラストが、男らしさと逞しさを際立たせていた。

 もちろん、首から上もこんがりと営業焼けで、(クールビズの影響で)最近流行りのVネック・Tシャツの胸の切れ目からチラリとのぞかせるV字の赤銅色の日焼けあとがついた分厚い胸板の白さも、上腕同様に、かえって営業若手たちの精悍さを際立たせていた。

 部長訓示が終わると、儀式は終了し、余興へと入る。寮食堂中央に設えられた三角木馬が片づけられると、寮生たちは、食卓をさらに食堂端の方へ寄せて、さっきよりも、広い空間を、寮食堂中央につくるのだった。

 そして、宴会場に、寮内放送室からつながるスピーカーを通じて音楽が流される。河合の世代にとっては懐かしい、南佳孝の「モンローウォーク」であった。

(太朗注:南佳孝の「モンローウォーク」を知らない方は、http://www.youtube.com/watch?v=dmA5CYyZ-14&feature=related などを参考にして下さい。)

 余興のトップを飾るのは、もちろん、入社一年目の新参者たち。先輩たちから、たっぷりと特訓を受けた裸踊り「モンローウォーク」を披露する。

 三丸営業で、新人が仕事をおぼえる前に、まずおぼえなければならないことは、酒、タバコ、マージャン、そして、裸踊りだ。

 については、いまさら述べるまでもないだろう。先輩とのノミュニケーション、そして、将来は接待でも必要になる。

 次に、タバコ。昨今の「健康増進」の流れに反するようだが、三丸営業では、まだまだ、喫煙者が主流派だ。もちろん、法律の規制により、分煙化は進んでいる。しかし、分煙化が進めば進むほど、タバコは仕事上、必須となる。なぜなら、タバコを吸う先輩たちが、喫煙室で仕事の打ち合わせ、根回しをしてしまうためだ。タバコを嗜まないと、とんだ除けものにされてしまう可能性が大なのである。

 そして、マージャン。青雲寮での「賭けマージャン」は、一緒に仕事をする先輩の人柄・性格を知り、本性を見抜くために、必須のことである。先輩の本性を見抜きその心を先読みすることは、これすなわち、出世への第一歩になる。

 もちろん、青雲寮では、金は賭けずに、ケツ叩きを賭ける。マージャンも、金を賭ければ犯罪だが、ケツ叩きを賭ければ、野郎同士の楽しくスリリングなゲームとなる。

「メンタンピンツモドラ一丁!!さあ、先輩、もう観念して、ケツを出して下さいよ!!」

「ま、待った・・・い、いまのは、なかったことにしてくれ!!」

と、寮一階の娯楽室の雀卓を囲んで、週末の夜には、野郎同士、大いに盛り上がる。

 もちろん、後輩にケツを叩かれてしまう情けない先輩も多いらしい。先輩といえども、ジャージとパンツをおろして生ケツを晒し、後輩の膝上にのらなければならない。そう、負けがこんでしまった時の罰ゲームは、大の男にとっては超恥ずかしい、平手打ちによる膝上お尻ペンペンなのだ!!まさに先輩・後輩入り乱れての仁義無き「賭けマージャン」が繰り広げられるわけである!

 一つだけ付け加えておこう。青雲寮・娯楽室には、卓球台もあるので、ケツ叩き回避を賭けて、卓球で再勝負を挑むこともできる。勝てば、すべてがチャラのケツ叩きなしだ。もちろん、卓球ガチ勝負に負ければ、ケツ叩きの回数は、倍になるリスクもある。卓球部出身の後輩には要注意である!!

 しかし、より大きなベネフィットを希求して、リスクを積極的にとっていくのが、野武士集団・三丸流営業の真髄だ。四菱商事の「石橋を叩きすぎて壊してしまうような」お公家様営業とは違うのである!!「卓球再勝負」は、そんな真髄を体得するための場でもあるのだ。 

 さて、話は本筋に戻って、最後は、裸踊りだ。もちろん、宴会を盛り上げ、新人にとっては、先輩にケツを・・・いや違う!顔を覚えてもらうまたとないチャンスになる。先輩に顔を覚えてもらい、目をかけてもらえれば、おいしい仕事も回してもらえるかもしれない。将来、接待で役立つこともあるらしい・・・。

 さて、この「モンローウォーク」にあわせて、さっきまで三角木馬のあった、寮食堂中央にでてくる約十人の入社一年目の新人たち。

 彼ら営業新人野郎が身につけているのは、女性用超セクシー・Tバック・ビキニのみだ。前は、かなりド派手なハミチンで、毛深いヤツはチン毛のはみ出しも半端じゃない。

 後ろは、言わずと知れたTバック。もちろん、ケツは丸出しだ。

 ノンケ野郎が、宴会の裸踊りで野郎のケツにコメントをくわえるときの表現はたった二つだ。その中間はない。

 一つは、

「いいケツしてるじゃん!」

である。

 これは、男の嫉妬心がややこもった褒め言葉で、学生時代にスポーツでしっかり鍛えプリッと盛り上がった弾力性のあるケツであることを称賛しているのである。

 そして、もう一つは、

「汚ねぇ〜〜〜!!酒がまずくなるぞーーー!!引っ込めーーーーー!!!おめえのケツなんて、もう二度と見たくねぇ〜〜!!」

である。

 もちろん、これは、ケツ毛が濃いケツをけなしているわけだが、それを額面通りに受け取ってへこんだりしてはいけない。

 むしろ、

「俺のケツが、先輩の注目を浴びてるぜ!!」

と、内心、ガッツポーズをとらなければいけないのだ。

 なぜなら、

「汚ねぇ〜〜〜!!酒がまずくなるぞーーー!!引っ込めーーーーー!!!おえめのケツなんて、もう二度と見たくねぇ〜〜!!」

の本意は、

「おまえのケツ、めちゃくちゃ気にいったぜ!宴会の時、また見せてくれよ!けちょん、けちょんに、けなしてやっからな!!」

であり、実は、先輩から気に入られてしまった証拠なのである。先輩の人気を獲得すればもう、明日からの仕事は社内的にも部内的にも課内的にもスムーズに運ぶこと請け合いなのである。そう、ケツ毛の濃い汚ねぇケツは、超ウケる一発芸、百発分くらいの価値があるのだ!!自信を持っていいのである。

 女性用超セクシー・Tバック・ビキニをつけて、寮食堂中央で裸踊りをする新人君たち。気合いをいれてモンロー・ウォーク、すなわち、ケツをフリフリする。ケツの振り方は、大日本除虫菊株式会社のあのCMをビデオにとって、何度も見て、特訓を重ねたのである。

(太朗注:大日本除虫菊株式会社のあのCMを知らない方は、http://www.youtube.com/watch?v=TJ8asRrYobM&feature=related などを参考にして下さい。)

 ケツの振り方に気合いが入っていないと、先輩の鞭がビシっとケツに飛んでくる。ケツにうっすら赤い線の入った新人もいた。

 そして、この新人君たちは、特訓の過程で、もう一つの辛い試練を乗り越えていた。

 それは、女性用超セクシー・Tバック・ビキニである。想像してほしい。20代前半の血気盛んなノンケの青年が、前を反応させることなく、このセクシービキニを穿くことなど到底不可能なのである。

 なかには、そのセクシービキニがちょっと股間に触れただけで、不覚にも、前が大爆発してしまうヤツも例年、何人かはいるらしい。もちろん、それも、先輩のケツ鞭指導で、しっかり、矯正され、四谷常務の、「一人前の営業マンは、己の竿をも、自由自在にコントロールできなくてはならない。己の竿を如意棒のごとくあやつれ!」の金の格言を体得するのである。

 さらに、もう少し濃い、少し紫がかった赤い線が何本もケツについた新人もチラホラ。これは、先輩から 「営業日誌」の書き方の特訓を受けている証拠だ。毎夕、営業日誌の不備を先輩から指摘され、青雲寮に帰っては、コンビを組む先輩から、私的ケツ鞭を食らった痕だった。

 もちろん、河合部長は、新人君たちのケツに何本も焼けつけられたそのムチ痕をみて、満足そうに何度もうなずくのだった。

「ヒューヒュー!!いいぞーーー!!もっとケツを振れーーーーー!!」

「山本!!!!ケツ汚なすぎーーーーー!!!!」

と、酔った先輩たちから、次々とヤジが、いや声援が飛ぶ。もちろん、その先輩たちも、入社一年目の時は、先輩から裸踊りの特訓を受けたのである。そんな先輩たちの声援を受け、新人たちは、ますます卑猥にケツを振り始めるのだった。

 新人たちの裸踊りがまさにクライマックスに達しようとしている時、Tシャツとジャージに着替えた鈴木康太郎が、ケツが疼くのか、足を引きずりながら、そぉっと宴会場に戻ってくるのだった。そして、営業でコンビを組む、黒沢孝太郎の隣に座るのだった・・・。

 自分のミスでせっかく決まりかけていた契約がご破算となり三角木馬にまたがってケツ鞭を食らう羽目になった先輩、しかも、自分はお咎めなし。もう申し訳なくて、後輩・黒沢は、鈴木先輩と顔を合わせることができなかった・・・。

パコォ〜〜〜〜ン!

「えっ!」

と、いきなり後頭部を叩かれた後輩・黒沢は、思わず後ろを振り向く。鈴木先輩と同期、鈴木先輩のケツに締めの鞭入れをした近藤先輩が、後輩・黒沢をにらんでいる。

「こ、ころされる・・・」

と、覚悟を決める後輩・黒沢。

 しかし、近藤先輩は、

「コラァ!!黒沢!!!先輩に酌をせんか!!なにボケーとしとるんじゃ!!」

と叱りつけてくるのだった。

 見ると鈴木先輩の前におかれたビールグラスは空だった。ハッとして、あわてて、鈴木先輩のグラスにビールを注ぐ黒沢。ビール瓶を持った手は震えていた。もちろん、鈴木先輩と目をあわせることはできなかった。

 しかし、鈴木先輩は、

「気にすんな・・・・おまえのせいじゃねぇから・・・・」

とやさしく後輩・黒沢に声をかけてくれるのだった・・・。

 思わず先輩の顔を見る黒沢。鈴木先輩のやさしい目に、思わずホッとする後輩・黒沢だった・・・。

 その時だった、宴会場に流れる「モンロー・ウォーク」を打ち消すかのように、

「あんあんあん、とっても大好き!!!ドラえーもん!!」

の電子メロディーが、食堂内に響き渡るのだった!!!

 宴会場に殺気が走る!!特に、宴会幹事の先輩たちは、血の気がスぅ〜〜〜と引く思いだった。河合部長にお見せする裸踊りの余興の最中、携帯の着信音を鳴らすとは、しかも大の男が「ドラえもん」のテーマ曲とはなにごとか。これほど、河合部長を小バカにすることはない。

「あ〜〜〜、俺のサラリーマン人生もこれでおしまいか・・・」

と、宴会幹事の先輩たちは絶望の表情を浮かべるのだった。

 しかし、携帯をマナーモードにしておかなかった犯人探しが始まる前に、

「わ、悪いな・・・・ちょっと失敬させてもらう・・・」

と言って立ち上がったのは、なんと河合部長だったのだ。

 呆気にとられる営業若手たち・・・あの強面・河合部長の携帯・着信音が、「ドラえもん」だったなんて!!そして、その滑稽さに気がつき、大爆笑したいのを、必死で堪える営業若手たちだった・・・

 廊下に出て行った河合部長はなかなか宴会場に戻ってこなかった。そして、裸踊り「モンローウォーク」が、中途半端な幕切れとなり、なんとなく宴会場がシラァ〜〜〜となりかけてきた頃、やっと戻ってきた河合部長は、営業若手たちも容易に見て取れるほど、緊張していた。

 そして、裸踊りを再開しようとする権藤主任を制するかのように、部長の席のところに立つと、

「えーーー、諸君に聞いてもらいたい!!」

と切り出す。

 まださわがしい宴会場を鎮めるかのように、宴会幹事の先輩たちが、

「コラァ!おまえたち!静かにしろ!!」

と、後輩たちに静粛をうながす。

 ほどなく水を打ったようにシ〜〜〜ンとなる宴会場。河合部長は続けるのだった。

「えーーー、実は、君たちの助けを借りたい!!さきほど、四谷常務から電話があり、四谷常務と昔からつきあいのある顧客を接待することになった。たいへん重要な顧客であり、我らが営業推進部始まって以来の、伸るか反るかの大勝負になる可能性もある。その重要な接待の席で、君たちの中から有志4人に踊ってほしいのだ!!これも四谷常務からの指定で、『うさぎと亀』を踊ってもらいたいとのことだ。うさぎ2名、亀2名!!だれか君たちの中で、有志はおらんかな?」

と河合部長。

 部長の話が終わるや否や、

「はい!!」

と、手を挙げた者がいた。黒沢の隣に座っている鈴木康太郎だった。

「ほお、鈴木君・・・」

「はい!!先日の仕事でのしくじりを挽回したく存じます!!『亀』をやさせていただきたく存じます!!よろしくお願い申し上げます!!」

と、挨拶すると、部長に深々と頭を下げるのだった。

「よし!亀の一人目は、鈴木君に決定だ!!他にはいないかな・・・」

と部長。しかし、なかなか手を挙げるものは、いなかった。

 鈴木先輩の背中をジッと見ている後輩・黒沢。ドキドキ・・・ドキドキ・・・心臓がはちきれんばかりに鼓動する。

「て、手を挙げないと・・・俺が、鈴木先輩を助けたい・・・・」

 しかし、手を挙げる勇気が出せない黒沢。

 他の連中も、部長と目が合わないように、下を向いていた。

 業を煮やしたように、黒田正樹課長が、

「おめえら、それでも男かよ!! 鈴木は、今夜、鞭で打たれたケツを、会社のために、客の前で晒す覚悟なんだぞ!鈴木と一緒に、恥をかいてやろうって、気概のあるヤツはいねぇのかよ!?」

と、後輩の若手たちを一喝する。 営業推進部で「万年青年」と言われている黒田課長。さすが、言うことが青かった・・・。

 それでも、若手たちは、

「い、いくら会社のためとはいえ・・・そんな重要な席での裸踊りは・・・責任が・・・」

と、躊躇している様子だった。

 いやな雰囲気が宴会場を包み始める。しかし、そんな雰囲気を打ち消すかのように、 

「はい!!」

と手を挙げ、スクと立ち上がる若手が一人いた。宴会部長と営業推進部では一目置かれている権藤主任だった。

「ほお、権藤君か。これは頼もしい。」

「ありがとう存じます!隣に座っております、後輩の橋本とともに、『うさぎ』を躍らせていただきたく存じます。部長のありがたいお褒めの言葉に恥じぬよう精進させていただきます!」

と挨拶し、深々と頭を下げるのだった。

 一方、先輩からご指名の後輩・橋本は、「えっ!そんなの聞いてないッスよ、先輩!」といった顔つきをしながらも、橋本と同期の野郎たちの拍手・歓声に押されるかのように立ち上がり、部長に向かって、ペコリと頭を下げ、

「不束ものでございますが、精一杯、躍らせていただきます!!!どうぞよろしくお願い申し上げます!!!」

と挨拶するのだった。

「これで『うさぎ』役は決まったな・・・だれか、あと一名『亀』をやってくるものはおらんかな・・・」

と部長は、宴会場をながめわたす。

「さあ、だれかおらんのか?」

と、黒田課長も、最近の後輩若手たちの大人しさに、いらだたしげに催促する。

 そんな中、ついに一人の若手が遠慮がちに手を挙げるのだった。

「は、はい!!」

 しかし、手を挙げて立ち上がったその若手を見て、宴会場がシラァ〜〜となるのだった・・・それは、黒沢孝太郎だった。 

「えっ!あいつで大丈夫かよ・・・」

と、寮食堂から、次々にヒソヒソ声が上がる。さらに、

「なんだよ・・・あいつ・・・先輩からの指名を待つべきだろ・・・根回ししたのかよ・・・根回し・・・」

とのヒソヒソ声も上がる・・・。

 しかし、そんなざわめきを打ち消すかのように、鈴木先輩が、

「俺も、黒沢と踊りたいと存じます!!!部長!どうかお願いします!!」

と、再び立って、部長の方へ深々と頭を下げるのだった。

 河合部長は、渋い顔をしながらも、

「鈴木君がそこまで言うなら仕方ないだろう・・・それに、黒沢君にも、名誉挽回のチャンスを与えてやらないといけないからな・・・。」

と、つぶやくように言うのだった。

「ありがとうございます!!」

と、鈴木先輩。

 他の先輩寮生たちの「おまえ、大丈夫なの?責任重大だぜ・・・」との鋭い視線に、あわてて、

「あ、ありがとうございます!!」

と言って、ペコリと頭を下げる後輩・黒沢だった。黒沢は、鈴木先輩が一緒に裸踊りを踊りたいと部長たちの前で言ってくれたことがうれしくて仕方なかった。

 そして、河合部長が、釘をさすように言うのだった。

「君たち四人には、来週末、赤坂の料亭『鶴丸』で踊ってもらう!それまで、しっかり裸踊りの練習に励んでもらいたい!特に、黒沢君には特訓が必要なようだ。近藤君!!君に黒沢君の特訓を任せる!亀役としての心得をしっかりと叩きこんでやってくれ!!」

 部長のご指名に、近藤は、飛び上がるかのように立ち上がると、

「はい!!」

と気合いのこもった返事をするのだった。

 近藤のなんともうれしそうなリアクションに、寮生たちの間からドッと爆笑が起こる。

「よぉっ!!師匠!!!」

「よぉっ!!キング・オブ・ネイキッド・ダンス!!!」

 その声にのせられる様に、近藤は立ち上がり、腰をクネクネと卑猥に振り動かすのだった・・・。

 入社5年目・近藤や鈴木の世代は、四谷から裸踊りの薫陶を直接に受けた最後の世代だった。特に、近藤は、「四谷常務の申し子」「第二の四谷」と言われるほど、その裸踊りはエロく、「うさぎと亀」の亀役での、その腰振りのエロさは、四谷をも凌ぐほどだった。

 こうして黒沢への裸踊り特訓が始まるのだった。

 

七、特訓!!裸踊り「うさぎと亀」〜速やかに亀サポを装着せよ!〜

 

 裸踊り「うさぎと亀」は、数年前、四谷の常務昇格、及び、河合の部長昇格を祝うため、青雲寮で創作された裸踊りだ。

 青雲寮の営業若手が、二手に分かれ、一方は、うさぎ役、もう一方は、亀役となり、童謡「うさぎとかめ」を歌いつつ、「もしもしかめよ、かめさんよ」と踊るわけである。

 その後、青雲寮では、若手のテンションが下がり気味の時、気合い入れの裸踊りとして、宴会時、この「うさぎと亀」がよく踊られる。すなわち、営業成績下位半分のものが亀となり、上位半分のものがうさぎとなって、裸踊るのだ。

 もちろん、成績下位のものだけでなく、成績上位のものも一緒になって裸踊りで恥をかき、もって営業若手全員の連帯感をビンビンに高め、テンション・アップを目指すのである。

 ところで、四谷・前部長の裸踊りの真髄は、その単純さにある。マッパ・フリチンになって、己の身体だけを使ってエロさを追求する。

 一方、河合・現部長は、小道具を好む。乗馬鞭に三角木馬を使った若手イビリにもそのことが端的に表れていた。

 そんな四谷と河合の好みを折衷させた裸踊りが「うさぎと亀」なのだ。

 すなわち、うさぎ役の野郎は、上はバニースーツに、下は黒網タイツ黒スキャンティーを着こみ、当然、ケツにはふんわりかわいいうさぎのしっぽをつけ、決めは、頭に装着する、かわいいうさみみバンドだ!まさに、小道具のオンパレードである。

 一方、役の野郎は、マッパ・フリチンになった後は、金的サポーターに色を塗ってケツ・ストラップをくっつけた亀の子、通称「亀サポ」を、股間にあてがえばよろしい。至極、単純である。

 それでも、四谷・前部長は当初、「裸踊りに小道具はいらねえ」と、この「亀サポ」作成を相当ごねたらしい。しかし、かわいい後輩・河合の部長昇格祝にと説得され、やっとのことで、「亀サポ」を発案・作成したという逸話も残っている。

 そして月曜日の夜。黒沢への裸踊り特訓が始まろうとしていた・・・。

 時刻は午後11時を回ろうとしていた。近藤と鈴木が、黒沢の裸踊り「特訓会場」である寮一階の娯楽室へと向かっている。そう、黒沢への特訓は、次の週末までの約一週間、仕事が終わった後、午後11時から、寮娯楽室での超恥ずかしい公開裸踊り特訓だったのだ。

ヒュッ!ヒュッ!

と右手にもった「はたきの柄」を威勢よく振りながら、近藤は、

「あいつのこと、徹底的に鍛えてやらないとな・・・」

とつぶやくように言うのだった。

 近藤がやけにはりきっているのを見て、鈴木は、不安な表情を浮かべる。妻帯者である鈴木も、一週間、寮に泊り込んで、黒沢の特訓につきあうことにした。妻は、不満顔だったが、仕事だといって説得した。本音を言えば、鈴木自身も、一週間独身に戻れることに、なんとなく、胸の高鳴りを覚えていた。

「お手柔らかに頼むぜ・・・あいつ、ケツなんか叩かれたら、ショックで会社辞めちゃうんじゃないかな・・・」

 そうなのである。青雲寮のケツ鞭は、就活学生必見の携帯サイト「絶対に就職してはいけない企業トップテン」にある名物掲示板「先輩たちからの裏情報」で、毎年、「某大手総合商社・独身寮での信じられない蛮行」と題する「情報通さん」からの糾弾書き込みのやり玉にあがっていた。そして、その「情報通さん」こそ、黒沢孝太郎だという噂が青雲寮ではささやかれていた・・・。

 しかし、近藤は、自分のケツムチは、河合部長のケツ鞭とは異質のものであることを力説したいようだった。

「だから、おめえは、後輩に甘いっつうんだよ・・・男はこうしてだな・・・ビシッビシッとケツの一発や二発叩かれた方がいいんだぜ!」

と返す近藤。

「最近は、体育会でも体罰は一切なしだもんなぁ・・・・」

と鈴木。

「まあな・・・でも、俺は、後輩のことビシビシ鍛える主義だから・・・」

と近藤だった。

 近藤は、愛のムチとしてのケツ叩きに賛成だった。これは恥ずかしくて同僚には絶対秘密なのだが、近藤自身も、高校三年まで、すなわち、星城大学・ラグビー部寮に入寮するまで、オヤジさんの膝上での「お尻ぺんぺん」を甘んじて受けてきた野郎だった。

 弟との喧嘩から、学校や家でやんちゃをはたらいた時、さらには、勉強をさぼって成績が振るわなかった時まで、ありとあらゆる理由でオヤジさんからケツを叩かれてきた。もちろん、高校三年になっても、ケツを叩かれるときは、オヤジさんの膝上にのって生ケツ丸出しでの平手打ちだった。

 しかし、今、社会人になってあらためて考えてみると、そんなオヤジのことを恨むというより、いつも自分が一線を越えそうになった時、怠けた時、弟との喧嘩でむきになりガキ丸出しだった時、いつもケツを叩いて諌めてくれたオヤジに、言葉にこそ出さないが、心の中では感謝している近藤だった。

「俺さぁ、男って、やっぱ、ビシッと厳しくしてくれる誰かがいねぇとダメだと思うんだ・・・康太郎・・・おまえもそう思うだろ?」

と近藤。

「ま、まあな・・・」

と鈴木。鈴木は、両手で、なにげに己のケツをさするのだった。週末に食らった「ライディング・スタリオン」のムチ痕が、ジャージのケツの部分にすれるとまだ痛かった。

 もちろん、近藤も、河合が部長になってから青雲寮で始められた「ライディング・スタリオン」のケツ鞭が、「愛のムチ」だとは思っていなかった。

 むしろ、男の教育としてのケツ叩きを信奉する近藤だからこそ、河合部長のケツ鞭が、教育ではなく、若手イビリにすぎないことを知っていた。もちろん、表立って部長にたてつくほど近藤も愚かではなかった。会社で部長のちょっと困った趣味につきあわなければならないのも、男の仕事のうちだと割り切っていた。

 一方、近藤と鈴木が向かっていた娯楽室では、黒沢孝太郎が、浮かない不安げな表情で突っ立ていた。

 リラックスできるソファは、すべて先輩たちや同期の連中に占領されていて、黒沢は、娯楽室の隅っこで、ただ突っ立っているしかなかった。入社一年目の後輩でさえ、このちょっと情けない、入社二年目の先輩にソファを譲ろうとはしなかった。そんな中、黒沢は、ますます、顔が真っ赤になり、全身から汗が吹き出してきていた・・・

「なんで、みんな、部屋にもどらないんだよぉ・・・仕事で疲れてるんだから・・・早く部屋に戻って寝ればいいのにィ・・・」

と黒沢が思っても、そこにいる寮生たちは、一向に部屋へ戻ろうとはしなった。

 そして、黒沢が「みんな早く部屋へ戻らないかなぁ・・・」と願えば願うほど、黒沢の顔は真っ赤になってしまうのだった。

「アイツ・・・もう泣きそうじゃん・・・」

「みろよ・・・アイツ、顔が真っ赤だぜ・・・」

とヒソヒソ話をする先輩たち。同期や後輩たちも、見て見ぬ振りをしつつ、チラリチラリと黒沢のことを観察していた。

 午後10時45分に娯楽室に来た黒沢。そんな寮生たちのチラリ視線を15分間近くも全身に感じて、黒沢の顔は、もうゆでダコのように真っ赤だった。

 述べるまでもなく、「午後10時45分」に黒沢が娯楽室に来たことは、何事も十五分前教育を徹底されている三丸の若手営業サラリーマンとして、当然のことだった。しかし、その晩の黒沢の「何事も十五分前」行動は、画竜点睛に欠くものだった・・・。

 寮・娯楽室の扉をガラリと開けて入ってきた近藤と鈴木の両先輩。

 真っ赤な顔で娯楽室の隅に突っ立っている黒沢を、近藤先輩が一喝する!

「コラァッ!!!黒沢!!!そんなところにボケぇッと突っ立てないでこっちへ来い!!」

 娯楽室内にいた寮生全員の視線が、「待ってました!」とばかりに黒沢の方へ向く。黒沢は、そんな寮生たちの視線を全身に感じながら、近藤先輩の方へと進む。そして、

「よ、よろしくお願いします・・・」

と元気なく言い、ペコリと頭を下げるのだった。

「よろしくじゃねぇよ!先輩になにかを教わろうって時に、準備はまだなのかよ!!!脱げ!!!さっさと脱ぐんだ!!!」

と、いらだたしげに黒沢に命令するのだった。

 黒沢は、耳まで真っ赤な顔をして、伏し目がちに恥ずかしそうにTシャツそしてジャージを脱げ捨てるのだった。その隣では、鈴木先輩が、黒沢を心配そうに見ながら、まるで黒沢一人には恥をかかせまいとするかのように、Tシャツ、ジャージを脱ぎ捨てるのだった。

 黒沢と近藤、そして室内にいる寮生の前に立った鈴木の姿は、亀サポ一丁・・・鈴木の股間前面に装着された亀サポ、それは、ラグビー部出身で大柄の鈴木がつけると、かわいいくらいに小さいものだった。

 亀サポに納まりきれず、はみ出る鈴木のチン毛と金玉。そのハミ毛とハミ玉が、亀サポを装着した股間のエロさを際立たせていた。もちろん、竿はすでに上向きにして、亀頭裏側が、亀サポの上端からはみ出し、見事な「亀の鎌首」になっていた。さすが、鈴木先輩、準備万端、すぐにでも亀を舞うことができていた。

「さすが鈴木先輩・・・チンチン、デッけえなぁ・・・」

と、寮生たちはうらやむようなコメントを口ぐちにつぶやくのだった。寮生たちの一点をさすような視線を、亀サポを装着した股間に感じ、顔を赤らめる鈴木先輩。

 それに対して、後輩黒沢は、トランクス一丁のまま、 鈴木先輩の横に突っ立っていた。再び、近藤先輩が、黒沢を怒鳴りつける!

「黒沢!!パンツを速く脱げ!!」

と厳しく命じるのだった。

 しかし、黒沢は、モジモジしたまま、

「ま、まだ・・・つけてません・・・・か、亀サポ・・・・どうやってつければいいか・・・・」

とだけ答えて、トランクスを脱ごうとはしなかった。

 鈴木は、ハッとして、

「そうだ・・・黒沢に教えといてやればよかった・・・」

と後悔するのだった。

 入社以来、鈴木と営業でコンビを組む黒沢。鈴木と黒沢のコータローコンビは、今回初めて「三か月連続営業成績ビリケツ」に陥落する前は、つねに、営業成績上位に名を連ねてきた。すなわち、黒沢は、まだ「うさぎと亀」で亀役になったことがないのだった。

 鈴木がそれを説明しようとする間もなく、近藤が、再び、黒沢を怒鳴りつける。

「バカ野郎!!先輩はもう亀サポ一丁なんだぞ!!なんでおめえがまだなんだよ!!!だからおめえは、先輩の足ばかりひっぱってる言われるんだよ!!!トットと亀サポをつけろ!!!」

「は、はい・・・」

と、もう泣きそうな声でやっと返事をする黒沢。

 そんな黒沢も、男のはしくれ。まだ皮被りの己のチンコを、衆目に晒したくはなかった。トランクスの腰ゴムに両手をかける、その直前、素早く右手をパンツの中にすべりこませ、チンコの皮を剥こうとする黒沢。いわゆる見栄剥きだ。

 しかし、近藤先輩は、それをも黒沢に許さなかった!!

「見栄剥きなんてしてんじゃねぇ!!!俺も鈴木も仕事で疲れてんのに、おめえのために時間つくってやってんだ!!速(すみ)やかに亀サポを装着せよ!!!」

と、まるで鬼軍曹のように黒沢に厳しい口調で命令するのだった。

 あわててトランクスを下す黒沢。ああ、哀れかな・・・黒沢の皮被り童貞チンコが、寮生たちの面前で、晒しものにされるのであった。自然、黒沢のチンチンに、寮生たちのギラギラした視線が注がれる。

 もちろん、体育会系野郎が多い寮生たちは、風呂でわざわざ己の前を隠したりはしない。一方で、風呂でフリチンになっている野郎の股間など、特に、マジマジと見たりはしないのである。

 しかし、今の黒沢は、風呂で裸になっているのとは違った。娯楽室のド真ん中。近藤先輩の命令で、見栄剥きも許されず、フリチンで晒しものになっている状態だ。黒沢のチンコに、寮生たちの視線が注がれないわけがなかった。

 黒沢の皮被り童貞チンコをまじまじと見据える寮生たち・・・

「意外にあいつのチンチン、でっけえな・・・」

と、多くのものが思うのだった。

 黒沢のチンコは、必ずしも短小ではなかった。しかし、その皮被りはいかんともし難く。ガキのくせに図体だけはデカくなった、まだまだ皮の剥けきれない乳臭さだけが残る、中学生男子を彷彿とさせるものだった。

 そんな中、鈴木が助け舟を出すように、

「亀サポつけんの、オレが手伝う・・・」

と言って、黒沢から亀サポを受け取ると、黒沢のケツの方へ回って手伝ってやろうとする。

 しかし、近藤は、それを許さなかった。

「黒沢!!甘えるな!!自分でやれ!!」

の厳しい一言。

 鈴木は、スパルタ「裸踊りインストラクター」の近藤に、

「こいつ、まだ亀サポつけたことねぇんだ・・・だから、今回だけは、おおめにみてやってくれ・・・」

と、頼むのだった。

 鈴木のその言葉に、近藤は、

「チェッ!仕方ねぇな!!じゃあ、オレが手伝ってやる!!」

と言うと、鈴木から奪うようにして亀サポをとると、黒沢の横にきて、

「さあ、つけろ!!チンチンは上向きにして、チンチンの先っぽがちょっと顔を出すようにして、亀サポをあてろ!!」

と指示を出す。

「は、はい・・・・」

と、それに従う鈴木。

「よし!!次に、亀サポをギュッと腹に押しつけるようにして、タマを少しはみ出させる!!」

と、近藤は言うや否や、黒沢の股間にあてがわれた亀サポを、右てのひらでギュッと黒沢の腹の方に押しつけるのだった。

「い、痛てぇ・・・」

と、思わず声をあげる黒沢・・・。娯楽室にいた寮生たちは、その痛みを知ってか知らずか、思わずニヤニヤした顔つきをするのだった。 

「よし!この位置で亀サポ固定だ!!しっかりと亀サポを押さえてろ!!」

と、近藤は、黒沢に命令し、黒沢の後ろへと回る。

 そして、近藤は、黒沢の亀サポのケツ・ストラップを、グイィィと黒沢のケツの谷間へと喰い込ませ、締め上げるのだった!!

「あっあぁ・・・・・」

と、なんともいえないため息をもらす、黒沢だった。

 近藤は、ニヤリとして、

「おめえも、一丁前に、ケツの谷間が感じるようだな・・・」

と言うのだった・・・。黒沢は、その言葉に、無言でうなずく。言葉は出なかった・・・もう顔から火がでそうなくらい恥ずかしかった・・・。

 これでやっと、二人の「亀」の準備が整う。あとは、踊りの特訓だ。

 裸踊り「うさぎと亀」では、うさぎ役の若手と、亀役の若手が、向き合って対峙し、お互いを挑発するかのようににらみ合う。「うさぎとかめ」ののどかな歌詞とは、うらはらだ。

 すなわち、なにごとにも勝負好きな、血気盛んな営業若手だ。「うさぎと亀」は、お互いのエロさを競う勝負の場でもあるのだ。

 両腕を胸のところで組んで、仁王立ちになり、うさぎと亀がお互いに向き合い、相手を睨みつける。

「もしもしかめよ、かめさんよ せかいのうちに おまえほど あゆみの のろい ものはない どうして そんなにのろいのか」

と、うさぎが歌いながら、両足を交互にあげつつ、腰をエロくふりながら、亀の方に近づいていく。その間、亀は、仁王立ちになり、両腕を前に組んだままで、正面をジッと見据えたままである。

 そして、二番。今度は、亀が、

「なんと おっしゃる うさぎさん そんなら おまえと かけくらべ むこうの 小山(こやま)の ふもとまで どちらが さきに かけつくか」

と歌いながら、腰をエロく振りながら、その腰の振りでうさぎを押し返すようにして、前に進んでいく。もちろん、うさぎは、亀にあわせて、後ずさりするが、目は、亀から離すことはせず、ジッとみつめたままである。

 これを三番、四番と繰り返す。三番は再び、うさぎが歌って前進し、亀はそれに合わせて後進する。そして、四番の歌は、前半がうさぎで、後半が亀だが、亀がつねに前進で、うさぎがそれにあわせて後進となる。

 すなわち、亀役は、うさぎを押し返すような、エロい腰振りができるか否かがポイントになる。

「コラァ!!もっと、腰をエロく振れ!!気合いを入れろ!!」 

ピチッ!!

「は、はい・・・」

「コラァ!!腰の動きがぎこちない!!」

ピチッ!!

「い、痛っ・・・は、はい!!」

 娯楽室内にいる寮生たちが、声をそろえて、野太い声で、

「なんと おっしゃる うさぎさん・・・・」

と黒沢を応援するように歌うなか、亀・黒沢の腰フリ特訓が行われる。となりでは、鈴木先輩も、腰をフリフリ。できは悪いが、かわいくて憎めない、後輩黒沢につきあってやる。 

 鈴木とならんで、腰を振る黒沢のムッチリケツには、ビシビシと、随所で、近藤先輩の「はたきの柄」でできたムチが飛ぶのだった。

 寮の物置に常備されている乗馬鞭を使わずに、はたきの柄で、後輩のケツを叩くのは、近藤先輩のこだわりであり、「河合部長のケツ鞭は、教育ではなく若手イビリである」と信じる近藤の意思表示だった。事実、近藤は、コンビを組む後輩が注意散漫で凡ミスを犯したときは、後輩のスーツのケツを、仕事場でビシっとやることもあったが、その時も、オフィスの隅の掃除用具入れロッカーの中にあるはたきの柄を使っていた。

ピチッ!!

 近藤先輩の右手に握られたはたきの柄が、再び、黒沢のケツに飛ぶ!!

「い、痛っ・・・」

 熱く焼けるような痛みをケツに感じ、思わずケツを両手で押さえる黒沢だった。ラグビー部出身の黒沢のケツは、ムチっとでかく、肉厚だった。しかし、入社以来、仕事の忙しさからか、寮で先輩に勧められるビールのためか、食生活の不摂生のためか、腹まわりとケツに、やや余分な脂がついてきていた。そんな黒沢のケツに、ピチッ!!とムチが飛ぶたびに、ケツッペタが、ブルッ、ブルッと、ちょっと情けなく、哀しげに揺れるのだった。

 ケツを痛そうに押さえる黒沢の表情は、悔しそうで、いまにも泣きそうだった。そして、黒沢の「亀の鎌首」は、すでに萎えに萎えきって、亀サポの中に隠れてしまっていた・・・。

「コラァ!!黒沢!!おまえ、それでも男か!!ちょっとケツ叩かれたくらいでフニャチンか!!情けねぇ!さあ、気合い入れて、竿、起こせィ!!」

と、喝を入れる。

 その晩は、特訓には参加せずにギャラリーでいた、うさぎ役の橋本(入社3年目、25歳)は、

「ヒェ〜〜〜・・・・近藤先輩のケツムチって、強烈だな・・・・いや、なんとなくエロいよな・・・あんな風にケツ、ビシビシ叩かれたら、俺、ビンビンになっちまうよなぁ・・・」

と思いながら、ジャージの股間にビンビンとテントを張っていた。

 そんな後輩・橋本の後頭部を、パカァ〜〜ン!!と平手で叩く、権藤主任。裸踊り本番では、橋本と同じく、うさぎを舞う。

 権藤主任は、橋本にもわかるように、橋本のテント張った股間をジッと睨みつけた後、目線を上の方へと移し、橋本を見つめて、ニヤリと笑うのだった・・・その目は、まるで、

「おまえのケツは、このオレ様が、オレの膝上に乗せて、たっぷり叩いてやる!!あとで、オレの部屋へ来いや・・・」

と言っているようだった。先輩からのその合図に、真っ赤な顔になってうなずく後輩・橋本・・・

 うさぎ役の権藤・橋本とも、お互い、うさぎ役が穿かなければならないエロエロ・黒スキャンティーを穿いても、お互いのナニがまったく反応しないことを知っていた。他の若い寮生たちは、必ずと言っていいほど、ビンビンにおっ勃起ってしまうのにである・・・。

 権藤・橋本ペアの妖しげな雰囲気に気づくことなく、他の寮生たちの目は、はたきの柄でケツを何度も打たれ、赤い線が何本もついた黒沢のケツに注がれていた。

 スパルタ・ダンス・インストラクターの近藤は、さかんに首をかしげながら、

「おめえの腰の振り方は、なんかぎこちねぇんだよな・・・」

と言うのだった。そして、自ら、黒沢に手本を示すように、ジャージの腰をエロく前後にフリフリする・・・そして、

「そんな腰の振りかたじゃ、女の子が痛がるだろ・・・なあ・・・おめえも男ならわかるだろ・・・女の子がよぉ・・・あっああんって、よがり声あげ始めるときだよ・・・男がなぁ・・・腰ピストンに潤滑油をささにゃならん時だよ・・・なあ、わかるだろ・・・」

と言って、黒沢の後ろにまわって、黒沢の耳元で囁き始める。その腰フリは、ますますエロさを増し、黒沢のケツを突くような激しさも増してくる。

 それを見ていた寮生たちの目は、再び、ギラギラと妖しげに輝きだす。娯楽室全体に、エロい雰囲気が漂いだす・・・娯楽室にいた独身寮生たち全員が、自室に戻って、本日の「ひとりH」に励みたい気分になってくるのだった・・・。

 橋本は、

「えっ!まさか、近藤先輩・・・その気あったんスか?」

と思うのだった。しかし、再び、橋本の後頭部に、権藤主任の平手打ちが、パカァ〜〜ンと飛ぶ!!

「痛てぇ!!」

と思わず、権藤主任の方を見る橋本。おもむろに、首を横に振る権藤。権藤先輩の目は、

「バァ〜〜カ!誤解すんじゃねぇの!近藤は200%ノンケだよ!!あきらめるんだな!!」

と、橋本に言っているようだった・・・。

 そんなエロい雰囲気を悟ってか、独身連中の中で、唯一の妻帯者・鈴木先輩が、近藤に、

「今夜はもうこのへんでおひらきにしないか・・・」

と提案する。

「今夜はもう黒沢のケツを休めてやってくれ」とでもいいたげな、懇願するような同期・鈴木の目に、

「おめえは、後輩に甘すぎんだよな・・・」

と思いながらも、近藤も、うなずき、

「よしっ!今日はこれまでだ!明日からは、四人、通しで練習だ!!!気合い入れて腰振れよ!!権藤先輩もお願いします!!」

と、裸踊り特訓の終了を宣言するのだった。

 黒沢は、ホッとしたような表情になり、少しは元気を取り戻し、ケツを両手でさすりつつも、

「ありがとうございました!明日もがんばります!!」

と若手らしく挨拶するのだった。

(ここで 閑話休題 太朗のコラム ファイル 0002 オヤジの裸踊りを目撃してしまった少年のやりきれなさ )

 

八、独身寮のエロい夜

〜「先輩!放送室でのスパって最高ッスね・・・」

 「ああ、でも、マイクのスイッチはオフにしろよ・・・」〜 

 

 裸踊りの特訓が終わり、自室に戻る黒沢、鈴木、近藤、橋本、権藤の5人。それぞれの夜を過ごすのだった・・・。

<黒沢孝太郎の部屋>

「あ〜〜、ケツがかゆいよ〜〜〜」

と言って、ジャージをわずかにおろして、自室にある鏡に己のケツをうつし、観察する黒沢だった。

「あ〜〜〜、真っ赤な線が何本も入ってるよ〜〜。近藤先輩、マジでオレのケツ叩くんだもんな・・・。近藤先輩、本当は、自分が裸踊りやりたかったんだぜ・・・でも、俺に先を越されて・・・だから、その腹いせに、オレのケツ、あんなに何回もバシバシ叩いたんだ・・・もう、鈴木先輩も、全然、助けてくれないんだから!!近藤先輩も鈴木先輩も、大嫌いだ!!」

と、甘えたことをぶつくさ言いながら、ジャージを上げて、ベッドにもぐりこむ黒沢。

 黒沢の言っていることは、半分は当たっていた。黒田課長が、誰か鈴木と一緒に恥をかいてやろうという気概のあるヤツはいないのかと、若手たちに檄を飛ばした時、近藤は、まさに手を挙げようとしていたのだった。しかし、権藤主任、そして、ちょっとKYな黒沢の手が、ほんのわずかに速く挙がってしまったわけだったのである。

 もちろん、その腹いせに黒沢のケツを叩くような近藤ではない。特訓でのケツムチは、近藤の先輩としてのまさに愛のムチだった。

 特訓のために疲れがでたのか、黒沢は、独身男の毎晩の日課である「ひとりH」をすることもなく、眠りについたのであった。黒沢の男性自身は萎えに萎えていた。黒沢は、その時はまだ、M男ではなかったのである・・・。

 

<近藤の部屋>

「あ〜〜、ヤバ・・・エロい気分になってきちまったぜ・・・鈴木のヤツ、早く寝ねぇかな・・・」

と、ベッドに横たわり、ブリーフの中で石のように硬くなった己の愚息をなぐさめることができず、ムラっ気がつのる近藤。

 近藤のベッドの横の床の上には、鈴木が臨時宿泊用の布団を持ち込んで寝ていた。狭い部屋である。いくら親友とはいえ、鈴木の寝ているすぐ横で己の愚息を堂々と慰めるほど、近藤も大胆にはなれないでいた。

 しかし、若い近藤の性欲は、そんな近藤の理性をも、突き破らせるくらいに強かった。毎晩一発ではたりないほどの近藤の性欲だ。どんなに仕事で、そして、仕事の後のつきあいで疲れていても、「ひとりH」なしでは、どうにも股間が重すぎて、寝つくことのできない近藤だったのである。

「康太郎!オレの部屋で寝ろよ!」

と、鈴木に言ったことをいまさらながらに後悔している近藤だった。

 一方、鈴木も、親友・近藤の親切に甘えたことを、後悔しつつあった。横で寝ているベッドの上の近藤のエロい気分が、鈴木にも伝わってくるのだった。

「近藤に悪いことしたな・・・空き部屋に泊るべきだった・・」

と、布団の中で思う鈴木。妻帯者とはいえ、同じ年の近藤と鈴木である。鈴木の性欲も、近藤のそれに勝るとも劣らない強さだった。もちろん、いつもは激しく抱擁するはずの自分の新妻は、隣にはいなかった。

 そんなエロい雰囲気が充満した近藤の部屋で、二人の健康な20代の男児は、一時間近く、お互いを意識しながら、無言のまま、眠れない夜を過ごしていた・・・。

 やがて、

「俺が先に寝たふりするしかないでしょ・・・こういう場合・・・」

と、寝息をたてはじめる鈴木。スぅーーーースぅーーーースヤスヤと、寝たふりをはじめる鈴木だったのである。

 近藤は、ある意味、単純な男だった。鈴木が寝息をたてはじめたのを聞くと、それを狸寝入りだと疑うこともせず、これ幸いに、ブリーフの中に、速効、右手を突っ込み、ビンビンに怒張した己の愚息をムンズと掴むが早いか、

シコッシコッシコッ!シコッシコッシコッ!

と、あやしげに手首を動かし始めたのであった。準備のよいことに、近藤の愚息には、すでにティッシュが巻きつけられていた・・・。

シコッシコッ!ハァハァ・・・

シコッシコッ!ハァハァ・・・

シコッシコッ!ハァハァ・・・

と、近藤が己の竿を扱きあげるあやしげな律動と、押し殺したような喘ぎが、隣で寝たふりをしている鈴木に伝わってくる。

「鈴木のヤツ・・・始めたな・・・」

と思い、いままで以上に規則正しく、寝息をたてるふりをする鈴木。

 もちろん、そんな鈴木も、だんだんとエロい気分になってきてしまう・・・しかし、ここは我慢のしどころ、

「俺は、明日の朝、便所で抜こう・・・」

と思い、近藤のように、ジャージの股間に右手を突っ込みたい衝動を必死で抑えるべく、なにか別をことを必死で考えようとするのだった。

 しかし、ベッドの上の親友・近藤のあやしげな律動と、エロい喘ぎは、いやでも鈴木の耳に入ってきてしまう・・・鈴木は、もう耳をふさぎたい気分だった。

 そうしているうちに、

シコッシコッ!ハァハァ・・・シコッシコッ!ハァハァ・・・シコッ!ハァ、シコッ!ハァ、シコッ!ハァ・・・

と、近藤のベッドの中から伝わり聞こえてくる律動と喘ぎは、だんだんとその速さを増してくるのだった。やがて、押し殺したような近藤に低い呻きが、鈴木の耳にも聞こえてくる・・・

「うっ・・・イ、イクぅ〜〜〜〜!!」

ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!

ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・

 律動はとまり、そして、無事、ティッシュに愚息を包まれつつ果てた近藤の、深呼吸をするようなゆっくりとした吐息だけが、ベッドの上から聞こえてくるのだった。

 近藤のベッドの横下で寝ていた鈴木も、なぜか、ほっと一息・・・

「ご苦労さん・・・さあ、やっと眠れるぜ・・・・」

と思い、寝返りを打つように、横を向いて寝るのだった。

 しかし、その晩の近藤の「ひとりH」は、まだ終わりではなかった。一発目で鈴木が目を覚まさなかったと思いこみ、大胆になった近藤は、

「鈴木は毎晩、奥さんとやってるんだろうな・・・畜生!!!鈴木!!!うらやましいぞーーーーーー!!!!オレも、早く、結婚してぇーーーー!!」

と、かなり大きな声を出すと、再び、右手をジャージの股間に突っ込み、一発目よりも、大胆に激しく、

シコッシコッシコッ!シコッシコッシコッ!

と、再び、ビンビンに屹立している愚息を扱き始めたのであった。

 これには、鈴木も、畏れ入谷の鬼子母神、びっくり下谷の広徳寺・・・状態。

「さすが学生時代から精力絶倫と評判の近藤だ・・・早速、二発目をこいてやがる・・・もう俺はつきあえねぇぜ・・・勝手に何発でもいってくれ!」

と、横向きのまま、うその寝息をたてるのをやめるのだった・・・。

 そんな鈴木の変化に気がつくことなく、

シコッシコッ!ハァハァ・・・シコッシコッ!ハァハァ・・・

と、その晩、二回目の自家発電に励む近藤。

 そして、あろうことか、近藤は、己がいま妄想しているオナペットを、鈴木が聞いているとも知らず、口に出してしまうのだった。

「あっあぁ・・・こ、康太郎・・・つ、つぎはオレの番だぜ・・・お、奥さん、早く、オレに廻せや・・・ハァハァ・・・」

 なんと、近藤は、親友・鈴木の美人妻を夫の鈴木とともに輪姦している妄想をオカズに、二発目を扱いていのであった!!!

 そんな近藤の、思わず口から出てきてしまったひとりごとに、鈴木は、

「なにぃ〜〜〜〜!!!!なんだと!!!!勝手にやらせておけば・・・・・いい気になりやがって!!!!」

と怒り心頭。スクと布団から起き上がると、壁の方を向いてさかんにシコッている近藤の背後に忍び寄るが早いか、親友のジャージの中で、盛んにあやしげに律動する親友の右手首を、ムンズと掴み上げるのだった!!!

「ぎゃぁ!!!!」

と、悲鳴にも似た声を上げ、飛び起きる近藤。まさに「いまのセンズリ、ちょっと待ったーーー!!!!!」状態だった。

 部屋の明かりは消されたまま真っ暗な中でも、すでに目はその暗さに慣れていた。近藤は、自分の右手をギュッと掴んで離さない、親友・鈴木の顔に、激怒の表情を見てとるのだった。

 ワナワナと全身から力が抜けて、近藤は鈴木に抵抗することはできなかった・・・そして、背中に冷や汗がスゥ〜〜〜と流れていくのを感じる近藤だった。

 グッと右手首を掴まれ、それを捻られるように、背中を方へ強引にもっていかれる近藤。思わず、

「いっ、痛てぇ・・・」

と声を上げてしまう近藤。しかし、鈴木は無言のままだった。その沈黙は、近藤を心底、打ちのめすのだった・・・。

「じょ、冗談だよ・・・・か、軽いジョークだよ・・・こんくらいのことで、オ、オレとおまえの男同士の友情に、ヒ、ヒビが入ったりしてないよな?なっ?」

と言いたいのだが、近藤は、それを言葉に出すことはできなかった。

 鈴木は、無言のまま、近藤の右手首を、さらにグッと掴み上げると、合気道よろしく、近藤をベッドから立ち上がらせる。そして、今度は、鈴木が近藤のベッドにドカンと腰を下ろすのだった。

 そして、鈴木は、近藤をグイッと引き寄せると、左手で近藤の頭をグッと押さえつけ、自分の膝上に近藤をのせるが早いか、左手で近藤の首根っこをギュッと押さえつけ、右足で、近藤の両足をガチっとロックするのだった。

「近藤・・・いいかげんにせいよ・・・おまえのそのエロエロのヤバイ妄想を、おまえの中から叩きだしてやる!!」

と、怒りを抑えた低い声で言うのだった。

 鈴木の膝上の近藤は、

「なっ!なっ!オ、オレとおまえの男同士の友情は、永遠だよなっ!!」

と、この期に及んでも、鈴木の友情にすがろうとしていた。

 鈴木は、

「ああ・・・だが、オレの妻とやりやがった仕置きが先だ!!ケジメはつけてもらう!!」

と言うと、おもむろに、膝の上に乗っている近藤のジャージとブリーフをガバッとおろし、近藤のムッチリとしたラガーマンのケツを丸裸にするのだった。近藤の竿に巻かれていたティッシュが、近藤の一発目の男汁を虚しく包んだまま、床にボトッと落ちるのだった。

 親友・鈴木の膝上で、ケツを丸出しにされた近藤。「あぁ・・・来る・・・」と本能的に身構える近藤だった。これは親友の鈴木にも絶対に秘密だったが、高校三年生までオヤジの膝上でケツを丸出しにされ、お尻ペンペンされてきた近藤の脳髄には、「膝上でおケツ丸出し」=「ケツ叩き」のスパンキング方程式が刻み込まれていた。

 もちろん、近藤のその期待は、裏切られなかった・・・鈴木は、無言のまま、右掌を高く上げると、それを、思い切り、自分の妻を妄想の中で強姦した極悪人、親友・近藤の丸出しのケツに、

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

と正義の鉄槌を振り下ろすのだった。

 脳天までズシィ〜〜〜ンと響く、親友・鈴木からの怒りの生ケツ平手打ちに、思わず、

「ヒィィ・・・」

と悲鳴を上げ、鈴木の左太ももをギュッと掴んでしまう近藤だった。

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

と、無言のまま、何度も何度も、渾身の力を込めて、己の膝上にのった親友の生ケツを打ち据える鈴木。

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

 そのケツ打音は、寮内に響き渡るほど、強烈であった。案の定、しばらくすると、近藤の部屋のドアが、廊下側から、ドンドンドン!!ドンドンドン!!と叩かれ、

「うるせぇ!!!何時だと思ってんだ!!!!」

「こんな夜中になにやってんだ!!早く寝ろ!!!」

と、両隣りの部屋の寮生から苦情が入るのだった。

 しかし、鈴木のケツ叩きは止むことはなかった。

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

と遠慮なく、親友・近藤の生ケツに、怒りの平手打ちを食らわし続ける鈴木。それにグッと歯を食いしばり、黙って耐える近藤。もうケツに火がついたように熱かった・・・。そして、その尻叩きは、近藤と鈴木の男同士の友情が永遠なように、一晩中、いつ終わるかもわからぬまま永遠に続いたのであった。

 

<寮一階○○室の権藤と橋本>

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

 鈴木が親友・近藤を膝上にのせてお尻ペンペンのお仕置きをしている時、二人の寮生が、寮一階のとある部屋の中で、全く同じ態勢をとって、お尻ペンペン・プレーに興じていた・・・。

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!「あっあぁ・・・先輩・・・いいッス・・・・」

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!「あっあぁ・・・そ、そこッス・・・・」

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!「あっあぁ・・・も、もっと強く・・・・・」

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!「あっあぁ・・・せ、先輩・・・・最高ッス・・・・も、もっと・・・・」

 それは、権藤主任と橋本の裸踊りにおけるうさぎさんペアであった。

 権藤と橋本。お互い自分たちが、あのエロエロ黒スキャンティーを股間に押しつけてもその竿はピクリともしない性癖であることを見抜いていた。

 黒沢の特訓が終わって自室に戻りしばらくたってから、権藤主任の部屋のドアをノックする橋本。

 ドアが開き、

「やっぱりおまえは来ると思ってたぜ!入れ!」

と、目で合図する権藤主任。

 そして、二人は、お互いカミングアウトする・・・。橋本は、近藤が黒沢のケツを叩いたように、権藤にも自分のケツを叩いてほしいと懇願するのだった。

「主任!オレのケツを思い切り叩いて下さい!!」

「スパかぁ・・・実は、俺も、嫌いじゃねえんだ・・・・特に、おまえのように野球部出身のプリッと張りのあるケツを叩きたいと思ってたぜ!!」

と応じる権藤主任だった。橋本は、ラグビー部出身者が多数を占める三丸・営業ではめずらしい野球部出身者だった。

「よし!オレについてこい!!」

と言って、権藤主任は、橋本を寮・一階へと連れ出す。そして、向かった先は、なんと、寮の放送室だった!!

 放送室に入り、放送室のドアの錠をかける権藤主任。

「ここなら、音は、ぜってえ外にもれねぇからな・・・おっと、忘れてたぜ・・・橋本・・・マイクがオフになっているかチェックしてくれ!!」

「は、はい!!!大丈夫です!!オフになってます!」

「放送マイクがオンになってちゃ、洒落になんねえからな・・・」

「オ、オレ的にはそういうのも好きなんスけど・・・」

「そうか・・・だったら、今度連れてってやるよ・・・知ってっか?・・・スパの殿堂!!横浜の459(シゴク)会館を?」

459会館?知らないッス・・・どこッスか・・・そこ?」

「横浜にある地下1階から地上10階まで全部スパな夢のようなテンバ(発展場)だぜ・・・知らねえなんて、モグリだぜ・・・そこではな、5階から上が、すべてスパ用の個室なんだ。もちろん、完璧な防音設備が整えられている。けどよ・・・ケツ叩かれてる音を他人に聞かれた方が興奮するってヤツのために、各部屋にマイクが設えてあって、そのマイクをオンにしとけば、自分のケツが叩かれてる音を、ビル全体に実況放送できるってわけよ・・・どうだ?行ってみてえかぁ?」

「い、行ってみたいッス!絶対、行きたいッス!」

「よし!来月、俺たちコンビが、営業成績トップとったら、ご褒美に連れて行ってやる!」

「え、マジっすかぁ!!オレ、絶対に、がんばっちゃいます!!先輩!!二人で、てっぺん目指しましょう!!ノンケの奴らなんかに負けちゃいられませんよ!!」

「よしよし!!まあ、そう興奮するな・・・だが、ここ青雲寮では、マイクのスイッチはオフだ!いいな!」

「はい・・・そ、そうですよね・・・・先輩・・・・」

「よし!準備は完了だ!!橋本!!オレにどうしてほしいか、遠慮なく言ってみろ!!」

「は、はい・・・・えぇと・・・お、OTKがいいッス・・・」

 そう言って、ポッと顔を赤らめる橋本。顔に似合わず初心な後輩に、「かわいいヤツだ・・・」と、ニヤリとする権藤主任。同時に、

「野球部出身だから、ケツバットがいいとか言われたらヤバイと思ってたぜ・・・」

と、内心、ホッとする権藤だった・・・。

 放送室の椅子に座って、膝の上を右手の親指でさしながら、その上にのるように指示する権藤主任。それに、うれしそうに従う橋本だった。

 膝上にのった橋本のジャージを、一気に、ガバァッと下す権藤。もちろん、スパの前には、お約束のブリーフ・チェックだ!!しかし、橋本は、あろうことか、トランクスだった。

「コラァッ!四谷常務の魂が宿る白ブリーフを穿いてないじゃねぇか!!」

「す、すいません!!寝るときは、蒸れるもんで・・・トランクスに穿きかえてます・・・・」

「バカ野郎!!三丸の営業若手は、オンでもオフでも、常に、白ブリだ!!!」

「す、すいません!!」

「よし!オレのいいつけを守らなかった罰だ!!!今夜はたっぷりお仕置きだからな!!!」

 そういうと、権藤は、橋本のトランクスをガバァッと一気に膝まで下ろすと、橋本のプリッと瑞々しい肉厚のケツを、生のむき出しにする。そして、おもむろに、右手を高く上げると、それを一気に、

ベッチィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!

と、橋本のケツのド真ん中に振り下ろすのだった。

「あっあぁ・・・・・・・せ、先輩・・・・・・最高ッス!!!」

 権藤の平手打ちにのけ反りながらも、うれしそうによがる後輩の橋本・・・・そして、二発目以降は、

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

ベッチィ〜〜〜〜ン!!!!

と、連打の嵐。鈴木・近藤コンビ顔負けに、こちらのスパも、一晩中、いつ終わるともなくエンドレスに続いて行く。

 こうして、独身寮の夜は、あやしくエロい空気につつまれながら更けていくのであった・・・。

 

九、ご披露!!裸踊り「うさぎと亀」 〜ああ悶絶の鎌首つまみ〜

「もしもしかめよ、かめさんよ せかいのうちに おまえほど あゆみの のろい ものはない どうして そんなにのろいのか」

と、野太い声で歌いながら、三丸物産・男子独身寮・青雲寮名物の裸踊り「うさぎと亀」を披露する四人の営業若手社員。

 場所は、東京・赤坂の高級料亭「鶴丸」の離れの座敷。上座の中心には、その晩、四谷常務が自ら接待する鈴木老人。その右には、四谷常務が、そして、左には、河合部長が座り、四人の若者の裸踊りをながめていた。

 四谷がまだ課長だった頃、この鈴木老人の前で「たんたんたぬきの金玉は・・・」と己の竿と玉を揺らしながら、フリチンで踊り、鈴木ビル一階のテナント契約をライバルの四菱商事より奪取して以来(四谷シリーズ「禁欲のGW合宿」 第二節 参照)二十年近く、毎年、契約更新のたびに鈴木老人にゴネられ、四谷常務自らがフリチン踊りを披露し、契約更新を得てきた。

 営業推進部全体からみれば、さほど重要ではない契約であったが、「あの契約は、俺のこの竿一本で、四菱の海から釣り上げた金の魚だ!」と、四谷常務が酒の席で部下を前に必ず自慢する、四谷常務にしてみれば、こだわりの一件であった。すなわち、営業推進部にしてみれば、なにがなんでも契約更新を勝ち取らなければならない一件であったのだ。

 しかし、この鈴木老人、なかなかしたたかで、毎年、四谷常務へのオネダリをエスカレートしてくるのだった。そして、その年、四谷常務のそろそろ白い毛がまじり始めたロマンスグレーの珍毛に飽き足らなくなったのか・・・80才を過ぎてますますお盛んに、若手のフリチン踊りをオネダリしてきたのだった。

 そして、その晩、権藤、橋本、鈴木、黒沢の四人が、「うさぎと亀」を鈴木老人の前で披露したのである。

 鈴木老人は、目をらんらんと輝かせて、四人の若者の裸踊りをながめている。特に、黒沢のケツについた何本もの赤いムチ痕を見ると、鈴木老人の目は、それに釘付けとなる。そして、黒沢が、ケツを鈴木老人の方へ向けるたびに、身を乗り出しては、目を凝らして黒沢のケツをジッと観察し、何度も何度も頷くのだった・・・。

「社長・・・いかがだったでしょうか・・・わたくしども三丸が誇る若手営業マンらの踊りは・・・?」

と、四谷が右から鈴木老人に耳打ちするように話しかけ、左からは、河合が、用意周到、契約書をサッと差し出す。四谷は自信満々だった。

 しかし、

「うん・・・悪くはなかったな・・・・」

とそっけない鈴木老人。そして、印鑑の入った鈴木老人自慢の豪州名産カンガルーのタマタマ袋を干してなめしてつくられた印鑑入れの巾着の口は、キュッと紐でとじられたまま、鈴木老人には、印鑑を取り出そうとするそぶりさえなかった・・・。

 予想外の鈴木老人の態度に焦る四谷と河合・・・。そんな二人の焦りを、見透かしたかのように、ゆったりとタバコをふかしながら、鈴木老人は、

「ちょっと元気がないな・・・特に、亀を踊っていた一番右の若者がいかん!!亀の鎌首がずっと引っ込んだままでしたよ・・・あれでは、ぜんぜん、いけません!!」

と、言い放つのだった。

「ちっ!黒沢の根性なしが・・・踊りの最中はつねに竿はおっ勃起てておけと、あれほど、口をすっぱくして・・・」

と、河合部長。

 一方、四谷は、焦りを必死で押さえながら、頭をフル回転させていた・・・

「これはヤバイぞ・・・この分だと契約更新はしてもらえないかもしれない・・・畜生・・・このエロ・ジジイをどうにか満足させる手立てはないものか・・・」

 しかし、四谷は、その焦りを見事克服し、一発逆転をかけて、ある奇策に打って出るのだった。さすが、就職活動生・必・受講の「問題解決能力発掘セミナー」の特別講師として引っ張りだこの、優れた地頭力を持つ四谷常務であった。 

 四谷は、河合になにやら耳打ちし、河合が次の間に引っ込む。

 そして、四谷は、

「社長!も少し、私どもにおつきあい願えませんか?社長のおメガネにかなうような元気で活きのよい若者をおめにかけてみせたいのですが・・・」

と、鈴木老人の顔色をうかがうように、鈴木老人の顔をジッとのぞきこむのだった。

 四谷と鈴木老人の目があう・・・鈴木老人の目の奥には、ギラギラと、エロい炎が燃えていた・・・。

「ほぉ・・・君がそこまでいうのであれば、見せてもらいましょうか・・・その元気で活きのよい若者とやらを・・・」

と、鈴木老人は、己の興奮を押し隠すような声で、恩着せがましく、四谷に承諾の意を伝えるのだった。

 四谷は、

「ありがとうございます!!!さ、さ、もう一杯・・・」

と、如才なく、隣に座る鼈甲メガネで成金趣味の鈴木老人に、酌をするのだった・・・。

・・・・・・・・・・・・・

 それから、約15分・・・そろそろねむくなってきたのか、何度もあくびをする鈴木老人。時間を気にしながらも、必死で、鈴木をこの場に留めようと酌をする四谷常務。やがて、河合部長が、次の間から戻ってくる。

 そしてほどなく、料亭の若手板前たちによって、高級座卓が運ばれてくる・・・

「お〜〜〜、これは・・・・・」

と、思わず身を乗り出して、鈴木エロ爺さんが感嘆の声を漏らす。さっきまでの眠そうな目はウソのように、ギラギラとエロく輝きだす鈴木老人の目。

 それもそのはず、鈴木老人の前に運ばれてきた座卓の上には、亀サポ一丁つけたままの黒沢孝太郎が、両手両足をおっぴろげられて、座卓の四隅に縛り付けられていたのだ。

 そして、黒沢の若い身体の上には、新鮮な刺身が、ところ狭しと豪華に盛り付けられていたのだ!!もちろん、黒沢のへそのくぼみには、たまり醤油が満たされ、そして、両乳首には、わさびが大盛りにされていた。

 目隠しをされた黒沢。その目隠しの下で、黒沢は、つらそうに両目をギュッとつぶって耐えている。

「さすが・・・おつなことをするね〜〜」

と、感激しきりの鈴木老人。

 しかし、鈴木老人の興味は、黒沢の身体の上に、男体盛りされた最高級刺身にはなく、亀サポの下に隠れてしまっている黒沢の男性自身に集中するのだった。

 なんとあろうことか、鈴木老人は、割りばしをおもむろに持つと、身を乗り出して、

「コラコラ!!亀よ!!自分の殻にばかり閉じこもっていないで、いいかげん、顔を出しなさい!!」

と言い、その割りばしで、ツンツン、ツンツンと、黒沢の股間を包む亀サポをつつき始めるのだった。道端ウンコをうれしそうに棒でつつくドクタースランプ・アラレちゃんよろしく、鈴木老人の目は、らんらんとその輝きを増してくるのだった!!

 そして、その箸を、黒沢の股間に装着された亀サポの中にグッと突っ込むと、黒沢の竿をムンズとつまみ、それをギュ〜〜と亀サポから引っ張りだそうとするのだった。それにはたまらず、黒沢も、

「あっあぁ・・・・」

と、なんともいえない切ない喘ぎ声を出してしまう。

 しかし、哀しいかな・・・黒沢のフニャチンは、鈴木老人につつかれればつつかれるほど、そして、つままれればつままれるほど、亀サポの中で、縮んでしまう・・・不満そうに、タバコをふかしはじめる鈴木老人。両脇で、焦りの色を隠せない、四谷と河合・・・。

「どうにも元気がないね〜〜、最近の若者は・・・・四谷君、これが、わしに見せたかった『元気で活きのよい若者』なのかね?」

と、不満げな鈴木老人・・・。

  返答に困っている四谷を無視するかのように、鈴木老人は、「チッ!」と舌打ちしたかと思うと、なんとあろうことか、さっきまでふかしていた火のついたタバコを、黒沢のケツッペタに、ジュゥ〜〜〜〜〜と押しつけるのでった!!

「ぎゃぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!」

と、悲鳴をあげる黒沢。両手・両足を縛られながらも、ケツに感じた焼けるような耐えがたい痛みに、大きく身もだえする黒沢。黒沢の腹の上にのせられた刺身は、座敷の上に落ちてちらばり、乳首の上にのせられた大盛りのわさびも、ボト、ボトンと物悲しげな音を立てて、畳の上に落ちるのであった。

 後輩・黒沢の悲鳴を聞いて、次の間から思わず飛び出してくる権藤、橋本、鈴木の三人。すでに三人とも、スーツに着替え終わっていた。

 目の前に飛び出してきた三人に、

「コラァ!!おまえら、お客様の前で、無礼だぞ!!引っ込め!!!」

と、河合部長のカミナリが落ちる。

 あわてて、三人は、

「申し訳ございません!!!」

と、土下座するのだった。

 そんな騒ぎをも無視するかのように、鈴木老人の関心は、黒沢の股間にあてがわれた亀サポの中の、黒沢の竿、一点に集中していた。黒沢の悲鳴など聞こえなかったかのように、黒沢のつけた亀サポを、なんどもツンツン、ツンツンと、割りばしでつつきながら、黒沢の亀頭が、ムックリと鎌首をもたげ、亀サポから顔を出すのではないかと、ジッと観察しているのであった。とんだS爺さんではある・・・。

 しかし、もちろん、黒沢の竿は、ますますフニャフニャになってしまい、亀サポはおろか、包皮の中に完全にかくれてしまっていた・・・。

 鈴木老人は、再び、「チッ!」と舌打ちすると、

「こりゃダメだ・・・完全なフニャチンだね・・・四谷君!!裸踊りは楽しませてもらったよ・・・だが、今夜のは、画竜点睛に欠けとるな。契約期限は、来月だったね。来月また会えるのを楽しみにしてるよ・・・」

と吐き捨てるように言うと、四谷の顔も見ずに、席を立つのだった。

「しゃ、社長!!!今夜はわざわざ御足労願いまして・・・・」

と、四谷は媚びるように鈴木老人に挨拶しながら、「くたばりやがれ!このエロジジイ!!」の気持ちはグッと抑えて滅私奉公・・・あわてて、席を立ち、鈴木老人を見送るべく、座敷を出て行くのだった。

 後に残された河合部長は、その怒りを、四人に部下たちに爆発させる。

「バカ野郎!!!オレに恥をかかせやがって!!!」

といいながら、土下座したままでじっとしている、権藤、橋本、鈴木のわき腹を次々と足蹴にしていく。

 そして、亀サポ一丁でしばられたまま、目隠しの下で両目にはいっぱい涙をためている黒沢に、河合部長は、

「黒沢!!泣くほど悔しいか?悔しいなら、男を魅せてみろ!!来月までに、おめえのそのフニャチンを、いつでもどこでもビンビンにおっ勃起つ野郎の竿にシゴキあげてみろ!!」

と、吐き捨てるように言うと、苦々しい顔をして、四谷の後を追うように座敷を出ていくのだった・・・。

・・・・・・・・・・・

「まあ!坊やったら・・・そんなに緊張しなくていいの・・・お姉さんが、やさしく教えてあげますからね・・・」

と、壁に後ろ向けに縛り付けられ磔にされた黒沢孝太郎に、タバコをふかしながら、三代目・大道寺綾乃がニヤニヤしながら近づいてくる・・・。

 ムッチリしたケツをピクッピクッと痙攣させるように小刻みに震わせながら、あの焼けるような熱い瞬間を覚悟し、身構える黒沢。丸出しのケツに鳥肌を立てるM奴隷黒沢の、男性自身は、もう立派に屹立し、その筒先から我慢汁をほとばしらせていた・・・。

 赤坂の高級料亭での大失態の翌日から、河合部長の特命で、大道寺綾乃SMサロンで、一か月間みっちりのビジネス・スキルアップ特別研修を命じられた黒沢孝太郎。その成果が、黒沢の若い男性自身に、如実に表れてきつつあった・・・。

 SMサロンのおしゃれなガラス・テーブルの上に、無造作に開いて置いてあるメニュー。そのメニューには、

「ヤンキーのお約束!!ジュッとお尻に根性焼きコース」 

ヤンキー風味が苦手な方は、当SMサロン、タバコ押しつけの定番コース

「女王様!!わたくしめの汚い尻を灰皿としてお使いくださいませコース」


もございます。両コースともSMベーシックコースの追加オプションとして、1コースにつき2万5千円で承っております。おタバコの銘柄にご希望があれば、あらかじめお伝えください。お伝えなき場合は、メントールがお尻にさわやか、綾乃オススメ「クール・エース・ボックス」を使用させていただきます。

とあった・・・。

 そして、女王様のおタバコの火が、M奴隷・黒沢のケツ灰皿に、ジュゥ〜〜〜〜と一閃、熱くギュゥ〜〜〜っと押しつけられるのであった。

「あっあぁ・・・・・・女王様・・・・ありがとうございます・・・・」

と、なんともいえない苦しげな、しかし、どこかうれしげにも聞こえる声を絞り出すM奴隷・黒沢。その股間の筒先からは、クリーム色の濃い雄汁が、ドピュドピュッと噴き出していた・・・。

おわり

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