四谷シリーズ 外伝 天狗になったパパ by 太朗
一、パパの大事なお仕事
「ゴホッ、ゴホッ・・・・」
「ちょっと、恵太・・・咳なんかしちゃって、カゼでもひいたの?」
「ママ、きょう、ボク、うちにいたいよ・・・ママとデパートいきたくない・・・」
「もう、この子ったら・・・デパートでお買い物のあと、大食堂でチョコレートパフェを食べるの、昨日はあんなに楽しみにしてたでしょう・・・熱でもあるのかしらこの子・・・あったらたいへん・・・・」
小5で一人息子の恵太の額に、心配そうに右手のひらをあてるママの鈴木百合子(すずき ゆりこ 39歳)。
幸い発熱はなさそうだったが、かわいい一人息子に無理はさせたくなかったし、デパートでの買い物ならば息子と一緒より自分独りの方がずっと効率的であることがわかっていたので、ママは恵太を家に置いていくことにした。
「じゃあ、家にいてゆっくり休んでなさい・・・あ、そうそう、今日はね、パパ、家で大事なお仕事があるんだって・・・だからパパの邪魔しちゃ絶対にだめだからね、わかった?」
「う、うん・・・」
恵太のその返事を聞くと、ママは、さっき鍵をかけたばかりの玄関のドアを開けて、息子を家の中に入れると、
「じゃあ、ママは行ってきます。玄関の鍵はしめておいてね。」
といって、デパートへ出かけていくのだった。
・・・・・・・・・・
「よし・・・来年の大新年会は絶対に決めてやるぞ・・・オレが司会役でもあるしな・・・こんどこそ四谷専務の目にとまるような芸を披露して次長昇進を決めてやるんだ・・・
でなければ、一生、課長どまりだからな・・・このままでいきゃ、10年後には、オレも必ず肩たたき(早期退職推奨)だ・・・イス(ポストのこと)があって、どうにか子会社にすべりこめても、給料は今の半分以下だろうからな・・・
ヘタすりゃ、本社ビル地下駐車場の守衛やらされて、毎朝、毎晩、『おはようございます!』『いってらしゃいませ!』『お仕事おつかれさまでした!』ってデカい声張り上げてバッタみたいに重役が乗る社用車にペコペコ頭下げ続けることになる・・・
いや、そんなのまだいい方かもな・・・子会社建設現場の交通整理警備員になんかになったら、毎日、息子くらい年が離れた現場監督の若造に『おい!オッサン!!しっかりダンプ誘導しろや!!』って怒鳴られながら、食いつないでいくハメになるんだろうからな・・・トホホ、情けねぇ・・・」
鈴木恵一(すずき けいいち 42歳)が、家の1階にある小さな納戸のような「書斎」に独りとじこもり、そんなことをブツクサつぶやいている。
そして、玄関のドアが閉まる音がして、妻の百合子と息子の恵太がデパートへ買い物に出かけたことを知ると、机の下に隠してあったプラスティック製の赤い「天狗のお面」を取り出すのだった。それは、先週末、会社帰りに、駅近くのディスカウントストア、ドン・キホーテで調達してきたものだった。恵一は、その真っ赤な天狗のお面を袋から取り出すと、机の上におき、今度は、
カチャカチャ・・・
と、ズボンのベルトをゆるめ、一気にズボンをおろし、それを脱ぎ捨てるのだった。
恵一の下半身は、白ブリーフ一丁、上半身は、白のランニングシャツに白のYシャツだった。
恵一が務める三丸物産・本社営業部では、伝統の不文律があった・・・「下着は部長と同じ種類のものを着用のこと」。部長が変わる毎に、次長以下に、内密の通達がでて、下着が部長と「おそろ」になるのだ!!現部長の河合は、年中、上は白のランニングシャツ、下は白ブリーフ着用のため、河合の部長着任以来、恵一も部長とお揃いで下着は白ランニングシャツに白ブリーフとなったわけだ。
恵一は、白ブリーフを足までおろしてそれを脱ぐと、右手にもった天狗の面のゴムに両足を通して、それを股間に装着するのだった!
「うわぁ、やべぇ・・・この天狗の面、思った以上にデカいな・・・それにプラスティックが腿のつけ根にあたってなんかいてぇーぞ、しっかり腰を落としてガニ股で踏ん張らないと、エロい腰振りダンスなんてできねぇーぜ・・・。」
そうつぶやきながら、腰を上下前後にフリながら、天狗の鼻が男の如意棒のようにエロくピクンピクンと動く様を再現しようする恵一。そして、まるでやんちゃ坊主に戻ったような笑みを顔に浮かべると、
「へへへ、この天狗の鼻、取れるんだよな・・・」
といいながら、天狗の面の中央からヌッと突き出た赤くたくましい鼻を、ポロリと取り外すのだった。
鼻がとれた天狗の面の中央の穴から、恵一の竿が少しだけその亀頭をのぞかせる。
「チェッ、オレのチンコじゃ、ヌッと反り返った天狗の鼻の再現は無理だよな・・・まあ、これは盛り上がらなかった時の秘密兵器にとっておくとして・・・さしあたっては、エロい腰振りの練習だ・・・」
再び、天狗の鼻をお面に取り付けると、恵一は、腰を一所懸命にフリフリしながら、時にはその様子を、書斎に置いてある姿見(全身が映るスタンドミラーのこと)で観察しながら、自分の腰の動きと連動する天狗の鼻の動きを研究するのだった。
新年会でのかくし芸の準備という「大事な仕事」に集中していた恵一は、自分の書斎のドアが少しだけ開いていることに気がつかないでいた。
・・・・・・・・・
書斎のドアの向こう側には、恵一の一人息子の恵太が、しゃがんで、ドアがちょっとだけ開いたその隙間から、部屋の中を覗いていたのだった!!恵太は、仕事が終わったら自分と遊んでほしいとパパにお願いするため、ママの注意をよそに、パパの部屋に入ろうとしていたのである。
「あっ!!!天狗さんだ・・・あっ!!天狗さんの鼻から、パパのおちんちんが・・・ガンバレ!!パパのおちんちん、天狗さんのお鼻みたいに大きくなぁーれ!!」
しかし、恵太がいくら心の中で念じて応援しても、パパのおちんちんは、天狗の面の中央に空いた穴から、ちょこんとその亀頭をのぞかせているだけだった・・・。
「あ〜あ・・・ダメか・・・でも、パパの天狗さん、ちょーかちょいい!!パパ大好き!!」
しかし、パパがあまりにも真剣に、股間に天狗の面をつけて、腰をクネクネと振っているので、恵太は、パパに声をかけずらくなり、そぉ〜とその場を離れ、自分の部屋へと行くのだった。
・・・・・・・・・
ギィ〜〜〜
「おっ!誰かいるのか?百合子?恵太?まだ出かけてなかったのか?」
書斎のドアが音をたててさらに少しだけ開いたので、恵一は思わずぎょっとして、股間に天狗の面をつけたまま、ドアが開いた隙間から廊下に顔を出すのだった。廊下には誰もいなかった。すでに恵太は、すばしこくその場を離れ、自分の部屋に戻っていたのだった。
「なんだ・・・しっかり、ドア、閉めたつもりだったけどな・・・この家、なんか立て付けわりぃ〜んだよな・・・」
そうブツクサ言いながら、恵一は、自分の書斎のドアをバタンとしっかり閉じるのだった。
二、叩かれたい課長の尻 〜児玉オサム先生著 「叩かれたい部長の尻」 に敬意を表して〜
「よし!これでまた練習に集中できるぞ・・・そうだな・・・腰振りは、改善の余地がありそうだな、もう少し研究しないと・・・さて、次は、ケツの方だな・・・ケツのゴムの部分にもしっかり仕込みが必要だ・・・」
そういいながら、やはり机の下に隠してあった「安芸の宮島杓文字」を取り出して恵一はニヤリとするのだった。それは、恵一が目をかけている部下で主任の谷山が、つい先月、広島出張の際に、お土産として買ってきてくれた杓文字だった。そのヘラの部分には、墨黒鮮やかに「必勝」と書かれていた。
「『課長!!自分、課長の次長昇進、マジで応援してますから!!ガンバです!!』だもんな・・・かわいい奴だよなアイツは・・・」
恵一は、うれしそうに目を細めて、その杓文字の柄を右手で握りしめて、眺めるのだった。次の瞬間、恵一の目は「出世欲」に満ちた獲物を狙うようなギラギラとした輝きを放ち始めるのだった。
バッチィ〜〜〜ン!!!
「ギャァ!!いてぇ〜〜〜!!」
恵一は、その杓文字で、己の生ケツをぶっ叩いていた。
「こ、これが根性バッタか・・・四谷専務の世代は、これが好きだからな・・・フフフ・・・ラグビー選手だった四谷専務の馬鹿力で根性バッタ食らったら、堪らんだろうな・・・」
「しかし、出世のためだ、四谷専務にケツを叩いていただけるものなら、根性バッタの1発や2発・・・いや、何十発だって、どうってことないぜ・・・」
恵一は、火照るケツをさすりながら、天狗の面のケツゴムのところに、宮島杓文字も仕込んでみる。
「前には天狗の面、ケツには宮島杓文字を仕込んでと・・・おっと、これじゃ杓文字が落ちそうだな・・・ケツゴムの調製が必要だな・・・」
天狗の面のケツゴムとケツの間に宮島杓文字を挟み込んだ恵一は、だんだん気分が乗ってきて、そのまま、書斎の畳の上に両手拳をついて四つん這いになり、ケツを後ろに突き出してみるのだった。
「よし!!天狗踊りの締めは、四谷専務の前で四つん這いになってケツを突き出し、根性バッタを志願する!!」
「根性バッタ!!お願いいたします!!バチィ〜〜ン!!バチィ〜〜ン!!バチィ〜〜〜ン!!ありがとうござましたーーー!!・・・か、四谷専務、オレのケツ叩いてくれるかな・・・あ〜あ、もし叩いてくれなかったら・・・課長止まりか・・・いや、絶対に叩いてくれる!!叩かせてみせるぜ!!四谷専務にケツを叩いていただけるように、もっと天狗踊りのエロさに磨きをかけるぞ!!」
そう言いながら、恵一は、再び、起き上がり、天狗の面を股間に仕込んだまま、腰をクネクネ、天狗踊りに磨きをかけるのだった。
三丸物産の営業部・大新年会では一つの伝説があった。新年会で、四谷にケツを叩いてもらうと、出世できると・・・。恵一はそれを本気で信じていたのだった。
三、パパの迷進学指導
「ちょっと、パパ、これみてよ・・・恵太ったら、とんでもないこと・・・」
年明けの1月4日の夕方、書斎で明日からの仕事の準備をしていた恵一のところに、妻の百合子が泣きそうな顔をして来るのだった。百合子が手に持った天狗のお面をみて、ドキリとする恵一。そのお面は、数年前、恵太がまだ小学校低学年の頃、神社の夏祭りの縁日で買ってやったお面だった。しかし、そのお面の鼻のところが、丸く切り取られていたのだった・・・。
妻の百合子は、シクシク泣きながら、話し始める。
「今朝、恵太がね、咳をしていて具合悪いって言うから、今日はお部屋でゆくっり寝てなさいって、塾の冬期講習休ませたの・・・で、ちょっと早いけど、恵太に夕食をと思って、恵太の部屋にスープを持って行ったらね・・・グスン・・・こんなこと、あなたに話しちゃっていいのかしら・・・あなた・・・あなた・・・どうしよう・・・」
「どうしたんだ・・・恵太のことは、なんでもオレに話すって約束だっただろう・・・オレはどんなことでも驚かないから、さあ、話してみろよ・・・恵太がどうしたんだ・・・」
「あのね・・・私が部屋にはいったら、恵太が、素っ裸で、このお面の穴からおチンチンだして、ベッドの上をピョンピョン飛び跳ねていたの!!『オレはテングマンだ!!ホッホッホ、ホー!!』って言いながら!!恵太、いつからあんなに変態になったのかしら・・・やっぱり、私たちの教育が悪かったんだわ!!教育心理カウンセラーの島田京子先生に相談した方がいいかしら?うちの恵太、どうなっちゃうのかしら・・・あなた!!」
恵一は、それを聞いて、思わず吹き出したくなるのを必死でこらえていた。「恵太のヤツ・・・オレの練習をみていやがったんだ・・・今日はたっぷりお仕置きしてやらないといけないな・・・」と思いながら。
「そんな、心配することないと思うぜ・・・小学校高学年の男子ってのは、女が想像もつかないようなバカなこと、やらかしてしまうもんなんだよ・・・」
「えっ、そうなの・・・あなたも・・・」
「まっ、まあな・・・それでよくお袋のこと泣かせて、オヤジにぶん殴られたもんだよ・・・」
「そうなの・・・だったら、島田京子先生に相談するより、あなたに任せた方がよさそうね・・・」
妻の百合子は、最近、いわゆる「ママ友」の誘いで、「母と息子の教育セミナー」なるところに通っているらしい。そこで、参考になることも、ならないことも・・・いろいろなことを吹き込まれて来るのだった。
「お面のことはだな・・・男の子だ・・・叱ってもどうにもならんよ・・・友達のマネでもしたんだろう・・・中学に入って、もうちょっと大人になれば、自然にやらなくなるだろ・・・」
「そうかしら・・・だといいけど・・・」
「俺が保証する!天狗のお面のことは心配するな!しかし、仮病をつかったことは、しっかりと叱っておかないとな・・・今日はアイツのこと、いつもより厳しく叱るつもりだけど、いいか?」
これも「母と息子の教育セミナー」の影響らしいのだが、「男の子のことをあまりガミガミと叱りすぎると、性格が歪んでしまう。そして、その歪みは、教育のプロである私立・中学校の先生方にはすぐにわかるから、中学入試の面接でマイナスになる」と吹き込まれたらしいのだ。妻の百合子は、恵太を、恵一と同じ中・高一貫の男子進学校・開明学園に進学させるつもりでおり、そこでの面接試験のことを気にかけているのだった。それ以来、妻の百合子からは、恵太のことを厳しく叱らないでほしい、もし叱る必要がある時は、お互い話し合ってからと釘を刺されていたのだ。
「え、ええ。今回はあなたにお願いするしかなさそうね。」
できるならば、夫の恵一に恵太のことを厳しく叱ってほしくはなかった百合子だったが、息子のあの痴態をまざまざと見せつけられ、ここは父親である恵一に任せるしかないと覚悟を決める百合子だったのである。
「恵太は今、どうしているんだ?」
「部屋にいます・・・服を着せて、夕ご飯まで部屋で勉強していなさいって言ってあるから・・・」
「そうか・・・じゃあ、夕飯前にすませちまった方がいいな・・・よしっ!これから行ってくるわ!」
だんだん厳しくなってくる夫・恵一の口調に、百合子は心配そうに、
「あなた・・・恵太のこと、あまり厳しく叱らないでやってね・・・まだ子供なんだから・・・」
と言うのだった。
「心配すんな・・・ちょっとアイツと話し合ってくるだけだ・・・」
そういうと、恵一は、書斎に百合子を残して、2階の恵太の部屋に向かうのだった。
「天狗の面のことは、オレが迂闊だったな・・・部屋の鍵、しっかりかけて練習すればよかったぜ・・・」
そう思いながら、苦笑いする恵一だった。
「けど、仮病のことは、許せん・・・アイツにしっかりお灸をすえんとな・・・」
そう思うと、恵一の心に怒りの念が沸きあがってくる。
「あーー、いかん・・・カッとなって叱るとかえって逆効果だからな・・・」
2階へ続く階段の前で上を見上げる恵一。少し心を落ちつけようと階段に座る恵一だった。
「オレも小5の頃は、よく塾サボってたよな・・・でもすぐバレちまって・・・オヤジから往復ビンタ食らって・・・」
恵一のオヤジは、いままさに恵一が勤める三丸物産の下請け会社の社長なのだ。オヤジの口癖は、
「ったく、三丸物産の課長さんともなればいいご身分だぜ・・・またオレたちに無理難題おしつけてきやがる・・・アイツら、オレたち下請けの苦労をちっともわかっちゃいねぇ!!いいか、恵一、オレが金だしてやるから心配すんな!!いい塾通って、しっかり勉強して、絶対に開明学園に合格しろよ!!開明にうかりゃ、一流大学が向こうからやってくるってもんよ・・・そうすりゃ、三丸物産にだって、楽々、就職できるってもんだ!!いいな!!」
だった。そんな教育オヤジだったから、恵一が塾をサボったのがバレると、いつも往復ビンタだった。
「バカ野郎!!とうちゃんが、しっかり勉強しろって言ってんのが、なんでわからねぇんだ!!」
バチィ〜〜〜ン!!バチィ〜〜〜ン!!
オヤジの重いビンタを食らったあとの、鼻っ柱から脳天へツゥ〜ンと走る衝撃、そして、両頬から両耳にかけて、しびれたような腫れぼったくボワーンとした温かい感覚・・・。恵一は、オヤジから叱られたそのホロ苦い記憶を、今でも忘れることができなかった。
「よし・・・オレはオレだ・・・ケツでいくか・・・」
そうつぶやくと、恵一は立ち上がって、向きを変え、2階へと続く階段を一段一段踏みしめるように昇っていくのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「おい、恵太、入るぞ・・・」
「は、はい・・・」
息子のビクッとしたような反応から、息子は叱られる覚悟ができているようだった。
「ほら、お面だ・・・」
恵一が机の上に投げるように置いたそのお面をみると、恵太は、恥ずかしそうに頬を赤めるのだった。
「ママ、泣いてたぞ・・・」
「ごめんなさい・・・だって、パパが・・・」
「見たのか・・・」
「う、うん・・・」
「あれは男同士の秘密だ・・・いいな・・・。」
恵一は、下を向いたままの恵太の顔を覗き込み、顔にニヤリと笑みを浮かべてそう言うのだった。
そんな恵一の顔をみて、恵太は、パパがそれほどは怒っていないと思ったのか、
「う、うん!!」
とさっきよりは元気よく返事をする。
そして、パパ恵一から息子恵太への「名」ならぬ「迷」進学指導が始まるのだった。
「いいか、このお面はパパが預かっておく、次にお前がこのお面をチンチンにつけていいのは、大学に入ってから・・・いや、パパのように一流企業に就職してからだ!!」
「一流企業?一流企業ではみんなやってるの?テングマン!!」
「ま、まあな・・・いいか、これは男同士の秘密だぞ・・・絶対誰にもしゃべっちゃダメだ・・・特にママにはな!!」
「う、うん!!ボクもテングマンになるのは、一流企業にしゅうしょくしてからにする!!誰にも言わない!!パパとボクの秘密にするよ!!」
「よし!!いいか、でも、パパのように一流企業に就職するのはそう簡単ではないぞ!!」
「簡単じゃないの・・・」
「そうだ・・・恵太にとって、まず、やるべきは、パパも通った開明学園に入れるように、一生懸命に勉強することだ!!開明学園に入れれば、いい大学にもいけるし、そうすれば、一流企業に就職できる!!いいな!!」
「う、うん!!」
恵太は、うれしそうに顔を上げ、自分の横に立っているパパの顔を見上げるのだった。
「ところでだ・・・」
パパの顔が急に厳しくなったのに気づき、また下を向いてしまう恵太。急に落ち着かなくなり、机の下で両手のひらをさかんに閉じたり握ったりしている。
「恵太、パパの方をむいて、しっかりパパの顔をみなさい。」
「う、うん・・・」
「『うん』じゃないだろ・・・」
「は、はい・・・」
自分の勉強机の方を向いていた恵太は、パパの方を向いたのだが、急にうしろめたくなったのか、パパの顔を見ることができないでいた。
「さあ、どうした・・・パパの顔をしっかりみなさい!!」
「は、はい・・・」
「よし!!今日、ママにウソをついて塾をさぼったのは本当か?」
「う、うん・・・あっ、は、はい・・・」
そう答えると、恵太は、再び、下を向いてしまうのだった。
「よし!!ママにウソをついたり、ママに心配かけたりしたら、パパはおまえのことどうするって言った?覚えているな?」
「う、うん・・・グスン・・・」
「『うん』じゃない!!」
「は、はい・・・グスン・・・」
「なんだ、ベソかいたってダメだぞ・・・それでも男の子か・・・さあ、パパはどうするって言ったか、いいなさい!!」
「は、はい・・・グスン・・・」
恵太は椅子に座ったまま下を向き、両手拳をギュッと握っていた。恵太の両掌は汗でグッショり濡れていた。
両腕を前に組んで立ち、恵一は「今日は厳しくいくぞ!」と決意を新たにするのだった。
「パパ、ボ、ボクのお、おしりをぶつって・・・」
やっとボソボソと答える恵太。そして、「ボクのおしりをぶつ」・・・急に自分の答えたことに恥ずかしくなったのか、恵太の顔は耳まで真っ赤になるのだった。しかしパパは許さなかった。
「聞こえないぞ!!男だったら、パパの顔をみて、もっと大きい声で言うんだ!!」
パパの怒った声に、恵太は、ビクッとして、やっと上を向き、
「は、はい・・・おしりをぶつっていいました・・・」
と、さっきよりははっきりと大きな声で答えるのだった。恵太の目には、すでに涙がいっぱいたまっていて、いまにも頬に流れて落ちてきそうだった。
「よし!!だったら、準備をしなさい!!」
「は、はい・・・・」
恵太は、再び、下をむいて、自分の勉強机の椅子から立ち上がると、
カチャ、カチャ
と、ぎこちなく、デニムのハーフパンツタイプのズボンのベルトに両手をかけて、それを緩め、ズボンの前チャックを下ろし、そして、ズボンを脱ぐのだった。
パパ恵一は、そうしている間、息子のベッドに座り、両腕を前で組んで、厳しい顔をして、息子が自分の前に立つのを待っていた。
恵太の目にたまった涙をみて、恵一パパは、
「ずいぶんと反省しているみたいだな・・・ズボン下ろしだけで、パンツは許してやるか・・・」
と思うのだった。
しかし、自分の前に立った息子・恵太がはくパンツをみて、パパ恵一は絶句する・・・。
「こ、これは、オレ憧れのお洒落なブルーストライプのボクサーブリーフじゃないか・・・オレなんか白ブリだぜ・・・コイツ、オヤジよりお洒落パンツをはきやがって・・・よし!!やっぱり許さんぞ!!パンツも下ろして生ケツだ!!」
恵太は、半ズボンを下ろして、この前ママがデパートで買ってきてくれたギャップ・キッズのお洒落な青のストライプ柄ボクサーブリーフを履いたまま、パパの顔をチラリ、チラリとみるのだった。恵太の目は、「パパ、生のおしりだけは許して!!」と懇願しているようだった。
しかし、パパは、心を鬼にして、
「恵太!!パンツもだ!!パンツも下ろして、早く、こっちへきて、パパの前に立ちなさい!!」
と、息子に命令する。
「はぁ・・・は、はい・・・」
恵太は、ためいきをつきつつも、返事をして、ボクサーブリーフの腰ゴムに両手をかけると、それをグイと足元までおろして、脱ぐのであった。そして、下半身はスッポンポンで、まだかわいいお子様チンポを晒しながら、パパの前に立つのであった。
「さあ、パパの顔をみなさい!!今日のお仕置きの回数を言うぞ!!」
「は、はい・・・・」
恵太は、下半身スッポンポンのまま、両手をピシリと両脇につけて、パパのお仕置きの「判決」を待つのだった。恵太は、心臓がバクンバクンと高鳴っているのを感じた。そして生唾をゴクリと飲み込むのだった。
「今日は、ママに心配かけた分、いつもの倍で、生ケツ20発だ!!」
「えっ・・・に、20ぱつ・・・きびしい・・・」
思わず、両手でかわいいプリンとしたお尻をさするように押さえる恵太だった。
「厳しくなんかないぞ!!ママは、泣くくらいおまえのことを心配してたんだからな!!」
そんなパパの言葉に、パパは決して許してくれないと悟ったのか、肩をガクリと落とし、下を向いたまま、
「は、はい・・・」
と、元気なく返事をする。そして、両手で尻をさかんにさすりながら、恵太は、ベッドに座るパパの開いた両膝の上に乗るのだった。パパのはくズボンの生地を通して、パパの硬い膝の筋肉を、自分のチンコに感じて、ギュッと両目をつむる恵太。両手でパパの左膝のところにギュッとつかまる。パパの左手が、ギュッと自分の腰を押さえたことを感じて、
「くるよ・・・いたいよ・・・」
と身構える恵太だった。
「よし!!行くぞ!!」
「は、はい・・・・」
その日は、高速連打の平手打ち。
バチン!!べチン!!バチン!!べチン!!バッチィ〜ン!!
バチン!!べチン!!バチン!!べチン!!バッチィ〜ン!!
通常は、「右!左!右!左!ど真ん中!!」を1セットとし、5発毎に小休止を入れるのだが、今日は、厳しく、小休止なしの10連打を2セットだった。
10発目が終わると、パパは、恵太の火照った尻を軽くポンポンとタップしながら、息子のケツの様子をみる。
「ごめんなさい・・・グスン・・・もうしません・・・グスン・・・おしりがいたいよ・・・グスン」
と自分の膝上でベソをかきながら、甘えた声を出していくる息子の恵太に、パパは、
「痛くてあたりまえだ!!ママを泣かせるようなことをしたんだからな!!あと10回はもっと痛いぞ!!ハァ――ハァ―――」
と、右手のひらに息を吹きかけると、天井を突くかのように、右腕を高く上げ、それを思い切り、息子のすでにピンク色に染まった生ケツに容赦なく振り下ろすのだった。
バチン!!べチン!!バチン!!べチン!!バッチィ〜ン!!
「うわぁ〜〜ん、ごめんなさい・・・いたいよぉ・・・・」
「甘えてもだめだぞ!!もう二度と仮病なんか使わないように、仕上げの5回はもっと痛くする!!!」
そう厳しく宣言すると、パパは、さっきよりも高く右腕を上げて、さっきよりも赤く染まった息子のケツに、バチンと容赦なくそれを振り下ろすのだった。
バチン!!べチン!!バチン!!べチン!!バッチィ〜ン!!
「うわぁ〜〜〜ん!!ごめんなさい・・・もうウソつかないよーーー、塾、休まないよーーー」
そして、パパの左手の腰グリップがとれたことを感じると、恵太は、パパのお仕置きの膝上から起き上がって、ベッドに座ったパパにしがみつき、パパの胸に顔を押しあてて、泣きじゃくるのだった。
「よし・・・よし・・・痛かったか・・・さあ、男の子だったら、いつまでも泣いてないで、立ちあがるんだ!!」
その日のパパは、ケツ叩き後も厳しかった。
「は、はい・・・」
恵太はそう返事をすると、パパのデカい胸から離れて立ち上がり、右手ではさかんに尻をさすり、左腕では両目からこぼれ落ちる涙を拭くのだった。
「いいか、今日はこれから夕飯までたっぷりと反省してもらうぞ!!そのまま、机の前に立って、机の方を向いて、目をつむって反省するんだ!!ズボンとパンツは脱いだままだ!!両手はピシッと両脇につける!!」
「は、はい・・・」
「パパが後ろで見張っているからな!!ちょっとでも動いたり、後ろを振り向いたりしたら、尻叩き10発追加だ!!」
「えっ・・・10発追加・・・」
ちょっとビクッとなりながらも、自分の言いつけ通り、気をつけの姿勢で机の方を向き、反省タイムに入る恵太。そんな息子・恵太の、自分の右手のひらの痕が赤くベトリとついた両ケツを、ベッドに座ったまま眺めながら、
「ふぅ・・・疲れた・・・こいつのケツ叩くの何年ぶりだったかな・・・百合子がコイツを叱ることに神経質になってから、本気で叱ってなかったからな・・・それにしても、恵太のケツもずいぶん逞しいケツになったもんだ・・・」
と思う恵一であった。
その日の机の前での反省タイムは、恵太にとっては、すごく長く感じられたが、10分もしないうちに、ママが下から、
「あなた!!恵太!!夕ご飯の準備ができましたよ!!降りてきてください!!」
と呼んでいる声が聞こえてくるのだった。
「さあ、恵太!!ママが呼んでいるぞ!!パパもお腹ペコペコだ!!下にいって飯にしよう!!」
「う、うん!!」
「さあ、パンツとズボンをはきなさい!!」
「うん!!」
部屋をでるとき、恵太が心配そうにパパに話しかけるのだった。
「ねえ、パパ・・・ボクがパパにおしりぶたれて、ないちゃったこと、ママには内緒にしてね・・・」
「ああ、心配するな!!!誰にも言わないぞ!!パパとおまえの男の同士の秘密だからな!!」
「うん!!」
恵太は、そう返事をすると、部屋を飛び出て、パパよりも早く、一階への階段を駆け降りていくのだった。
「ったく、恵太のヤツめ・・・ママには内緒にしてね、か・・・ママにケツ叩かれたことバレるのが恥ずかしいんだな・・・アイツもだんだん成長していくんだな・・・」
そんなことを思って苦笑いしながら、恵一は、息子の部屋を出て、一階へと降りていくのだった。
四、次長の椅子に座るケツ
三丸物産営業部恒例の「三丸物産・営業部・大新年会」が、その年も、成人の日の翌日の午後に、東京都内のホテル「ミツマル・カッツ・リールトン・インターナショナルホテル」の3F大宴会場・鳳凰の間で盛大に催されていた。
その年の新年会は、本社営業部・課長・鈴木恵一の名司会もあってか、大いに盛り上がり、檀下、最前列にドカンと座る四谷専務(60歳)も満足げだ。
四谷が上機嫌なのは、それだけではない。新年会の冒頭、四谷の還暦のお祝いにと、本社営業部の部下たちからイタリアの高級ファッションブランド、ジョルジオ・オマルーニ製の真っ赤なジャケットをプレゼントされたからだった。ジョルジオ・オマルーニの日本子会社は、三丸物産とも少なからず縁があって、四谷もその契約を結ぶのに東奔西走した想い出があり、四谷にとっては最高のプレゼントだったのである。
いよいよ新年会も佳境に入る。司会が一時的に鈴木課長から、石井係長に交代となった。次は、鈴木課長のかくし芸の番なのであった。
「さあ、いよいよ我らが本社営業部一番の働き者、頼れる先輩でもある鈴木恵一課長が、並み居る先輩方をさしおき、僭越ながらご覧に入れたい秘芸があるそうでございます!!本日、初公開!!天狗の舞でございまーす!!さあ、みなさま、盛大なる拍手をよろしくお願い申し上げます!!」
会場から割れんばかりの拍手が沸き起こり、本社営業の同僚たちからは野太い声援が飛ぶ。
「よぉ!!鈴木課長!!ガンバレよ!!」
会場の照明が一斉に消え、新年会に集まった野郎たちの多くがガキの頃に聞いたことがある、あの懐かしいサウンドがあやしくエロく流れ始めるのだった。
流れる曲は、もちろん、キューバのマルガリータ・レクォーナが1934年に作曲した「タブー」だ。この曲は、日本において、昭和の古き良き時代、「8時だヨ!全員集合」で演奏され、コメディアン・加藤茶の「ちょっとだけよ」「あんたも好きね〜」で大人気を博し、当時の少年たちなら誰でもが知っている曲になったのである。(この曲を知らない方は、脚注を参考にしてください。)
そして、壇上・中央に現れた鈴木課長に、ピンク色のスポットライトがあたる。
鈴木は、入社当時、「三丸物産・営業部の若衆宿」と呼ばれた青雲寮に入寮したのだが、オフ日に先輩から「お前を男にしてやる!」と東京・新宿のストリップ劇場に連れて行ってもらったことがある。3000円ポッキリだったが、金髪ストリップ嬢の豊満なバディを拝むことができ、運がよければ、舞台に上がり、その金髪嬢と一発やらせてもらえるというコスパのいい風俗だった。もちろん、その先輩が劇場のボーイさんにチップを渡しており、鈴木はその日のラッキーボーイとなり、見事、「風俗童貞」を捨てることができたわけだ。
鈴木は、その時のストリップ嬢の妖艶な動きを思い出しながら、「タブー」の曲にあわせながら、クネクネと腰をエロく動かし踊っていく。
鈴木の白Yシャツの襟元には、小型マイクがつけられている。そのマイクに、鈴木は悩ましく息をハァハァ吹きかけながら、決め台詞
「ちょっとだけよ・・・あんたも好きね〜」
と言い放つ。そして、濃紺のスラックスの社会の窓のチャックをゆっくりと下ろしていくのだった。
「お〜〜〜!!待ってました!!」
すでにはちきれんばかりに怒張している鈴木のスラックスの股間。しかし、そのチャックを下ろすと、あにはからんや、真っ赤な天狗の鼻がヌッと飛び出してきたのだ!!
それには、会場から、ドッと、大爆笑と拍手がわき起こる。
「おっ!!鈴木先輩!!巨根課長!!!」
と、部下で主任の谷山から応援のヤジが飛ぶ。再び、会場からはドッと爆笑が起こるのだった。
会場がわいているのに勇気を得た恵一は、再び、「ハァ・・・」と悩まし気な吐息を襟元の小型マイクに吹きかけると、
「おまたせしました〜〜、ちょっとだけよ・・・ムフ」
と言いつつ、右脚、左脚と、スラックスをめくっていくのだった。
恵一の毛深く野郎臭い左右の脛が、交互にさらされる。お世辞にも美しいとはいえない鈴木の両脚。いやその毛深さは、「汚い」という形容詞がピッタリかもしれなかった。
「オラ!!キタネェーぞ〜〜〜、おめえは、オカマか!!」
のヤジが飛ぶ。再び、会場内からは、 大爆笑。
恵一は、待ってましたとばかりに、思いっきりオカマ嬢らしく、
「フフフ、そこの社長さん、そんなにわたしの脚をみたいの?あんたも好きねぇ〜」
と、妖艶に言うと、ベルト、そして、前ホックをまるでじらすかのようにゆっくりと外していく、そのたびに、会場からは、
「おお!!じらすんじゃねー!!このオカマ野郎!!トットと脱いじまえーーー!!」
と、ヤジが飛ぶ。
そのヤジにのせられるかのように、恵一は、腰をクネクネ動かしつつ、スラックスを膝あたりまでおろすのだった。恵一の股間にはめられた真っ赤な天狗の面がヌッと顔をのぞかせる。
会場は大いに沸き。大爆笑とヤジで盛り上がるのだった。
「おお!!!待ってました!!この天狗野郎!!」
恵一は、スラックスを脱ぎ捨てると、会場に流れる「タブー」の音量は、一気に大きくなり、ピンク色のエロいスポットライトは、恵一の股間にはめられ、白Yシャツの裾からヌッと顔をのぞかせる天狗の面に当てられるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・
恵一は、この役目を任せられるのは、係長の石井しかいないと思っていた。年末、仕事が一段落したあと、石井を会議室に呼び、新年会で自分が披露しようと思っているかくし芸のことを打ち明けるのだった。
ドンキで買ってきたというプラスティック天狗の面をみせられた石井は、恵一に遠慮することなく大笑いし、
「マジっスか、先輩・・・すべったら、命とりッスよ・・・」
「ああ、それはわかっている。しかし、オレは、オレが司会をやる来年の新年会に勝負をかけてぇーんだ・・・」
「先輩、勇気あるなぁ・・・いいッスよ・・・それで、自分は舞台の上で何すればいいんスか?」
男同士とはいえ、いや、男同士だからこそ、それを頼むのには勇気がいると恵一は思っていた。
「もし拒否られれば、ヤツとの人間関係はおしまいだ・・・しかし、オレの後輩の中で、ヤツなら引き受けてくれそうな気がする・・・いや、引き受けてくれるに違いない・・・・」
それは青雲寮時代から、後輩たちを観察してきた恵一のカンであった。
恵一は、しばしの沈黙のあと、思い切って、石井に新年会の壇上でやってほしいことを伝え、そして、
「頼む!!」
といって、深く頭を下げるのだった。
石井は、ちょっと驚いたようだったが、
「いいッスよ・・・そんなのお安い御用です。任せといてください!!」
と快諾したのだった。
・・・・・・・・・・・・・・
恵一は、「タブー」の曲にあわせながら、クネクネと腰を動かし、檀下前方に陣取る役員たちに、己の股間にはめた天狗の面を見せつけるように、檀の端を移動していく。恵一の腰の動きと連動して、その屹立した鼻がなんともエロく動く股間の天狗を、ピンク色のスポットライトは追いかけていく。
恵一の股間に填められた天狗は、檀下からみて右手にあたる、壇上手からゆっくりと檀下手へと移動し、司会が立つ石井の横へ来るのだった。その時、いままで大音量で流れていた「タブー」の曲が急にとまり、ピンク色のスポットライトが、今度は、恵一と石井にあたる。
いままでザワザワとしていた新年会場がシィ〜ンと静まり返る。
恵一は、石井を自分の方へ振り向かせるかのように、無言で石井の左肩を、右手人差し指の先でチョンチョンと叩くのだった。
恵一のひょうきんなしぐさに、静かな会場からは笑いが起こり、これから何が始まるのだろうかと、壇下の視線が、恵一と石井に一斉に集まる。
恵一の方を振り向いた石井に、恵一は、まるでパントマイムをするかのように、無言で、恵一の股間からヌッと突き出た天狗の面の鼻を、指で盛んに指し示すのだった。
石井係長もなかなかの役者だった。やはり無言であるが、「あ!わかりました!」とでも言いたげにうなずくと、天狗の面の鼻を、右手のひらで軽く握るのだった。
再び、会場に、「タブー」の曲が流れ始め、恵一は、その曲にあわせて、股間を前後に振り始める。舞台からみていると、石井が握った右手の中で、天狗の面の鼻がピストン運動しているようにみえるのだった。
これをみて、いままで静かだった会場からは、大爆笑が起こり、待ってましたとばかりに、ヤジが飛ぶのだった。
「オラ!!おまえら、あやしいぞ!!」
「このホモ野郎!!おめえら、できてたのか!!」
「もっと早く、腰を振れぇ!!!」
そのヤジに乗せられるかのように、恵一は、腰を全速力で前後に振り始める。そして、石井に目で「今だ!」と合図するのだった。石井は、その合図にあわせ、恵一の天狗の鼻をギュッと握りしめる。
「あっ!!!」
会場のあちこちから声があがる!!
恵一の天狗の面の鼻は、お面から外れて、石井の右手に握られていたのだった!!!
会場からは再び大爆笑が起こり、
「オラオラ!!鼻がもげたか!!この梅毒野郎!!遊びすぎだ!!」
「奥さんに隠れて、ソープ通いしてんじゃねーぞ!!」
「百合子ちゃんが泣いちゃうぞーーーー!!」
とヤジが飛ぶのだった。
しかし、青雲寮時代から恵一のチンコがやや小ぶりであることを知っている同僚たちからは、
「元気がねーぞ!!」
「天狗の鼻はどうした!!」
「ちっちぇーーーぞーーーー!!」
とヤジが飛び、さらに大爆笑が起きるのだった。
司会の石井係長が、恵一の指示通りに、マイクを持ち、
「おやおや、鼻が見えなくなってしまいましたね・・・課長、ちょっと失礼して・・・・」
と言うと、右手の親指と人差し指を、まるではさみのようにみせながら、恵一の股間に填められた鼻のない天狗の面の、鼻が填まっていた穴に、遠慮なく突っ込むのだった。
恵一は、石井の指と、己の竿の亀頭が触れたことを感じて、思わず、目をギュッとつむる・・・。
「石井・・・無理いってすまなかった・・・気持ち悪いだろうが仕事だと思ってやってくれ!!百合子!!これも仕事だ!!許してくれ!!」
と心の中で叫ぶのだった。
石井は、恵一の表情をみて、
「課長・・・なんでそんな顔するんですか・・・全然、悪くなんかないッスよ・・・飲み会のあと、居酒屋の向いの壁にむかって立小便する時、オレ、いつも先輩の隣でションベンしてたんですよね・・・それで、先輩のチンコ、いつもガン見してました・・・先輩のチンコ、ちょっとちっちゃいけど、かわいいなぁと思って・・・さわりてぇーなぁっていつも思ってました・・・だから、今日は遠慮なくお触りさせてもらいます!!」
と思いながら、恵一の股間に填められた天狗の鼻の穴に突っ込んだ右手の親指と人差し指で、恵一のチンコをさがし、それを両指でつまみ、まさぐるのだった。
「フフフ・・・・こうしてシコシコすると少し元気になりますかね・・・課長・・・」
「お、おい、石井、軽く触るだけでいいからな・・・摩擦しなくていいぞ・・・これはあくまでもかくし芸だからな・・・」
そして、石井は、恵一のチンコの先をつまんで、天狗の鼻の穴から引っ張り出そうとするのだった。石井があまりにもグイグイと引っ張るものだから、恵一は、
「いてててて・・・」
と思わず悲鳴を上げる。会場からは大爆笑。石井は、新年早々、念願だった課長のチンコを触ることができ、ノリノリで、
「おやおや、なかなかでてきませんね〜。天狗さんのお鼻はどこにいってしまったのでしょう!!」
といって、再び、会場から大爆笑をとるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
檀下、最前列に座っている四谷専務(60歳)は、目をギラギラ光らせながら、鈴木恵一課長のかくし芸をみていた。四谷専務のとなりにかしかこまって座っている河合部長は、四谷の表情をみて、四谷が今回の新年会に大満足していることを確信し、胸をなでおろすのだった。
「鈴木のかくし芸は大成功だな・・・今年すべって、四谷専務のご機嫌を損ねたら、オレの取締役昇格の話も消えちまうからな・・・やれやれだ・・・」
そう思っていると、四谷が河合に話しかけてくるのだった。
「おい、あの課長・・・経歴は?」
「はい、鈴木恵一42歳、私立・開明学園、星城大学・経営学部・経営学科卒業、青雲寮・入寮は、平成××年で、入社と同時期です。」
「なんだ・・・俺たちと同じ、星城の出身か・・・ラグビーやってたのか?」
「いいえ、一般エントリーでの入社ですが、本人の強い希望で、営業に配属され、青雲寮の門をくぐった男でございます。」
「そうか・・・竿丈(さおたけ)は?あれをみていると、あまりデカくはなさそうだな・・・フフフ」
四谷は河合の話に耳を傾けながらも、壇上の恵一の股間に填められた天狗の面の鼻の穴からちょこんとその亀頭をのぞかせる恵一の竿をじっとみつめていた。四谷の顔が少し緩んだのを河合は見逃さなかった。
「記録によりますと、青雲寮での竿丈測定を経験した最後の世代でして、6回中、5回は失敗・・・」
(太朗注)竿丈測定・・・陰茎の裏筋にメジャーをあてて、陰茎の長さを測定する野郎たちの儀式。射精直前にまで怒張し屹立した陰茎の長さを測定しなければならないため、早漏野郎にとってはガマンガマンのつらい試練となる。
「早漏か・・・フフフ」
「ええ・・・そのようで、たっぷりと先輩から鍛えられたようです・・・6回目でやっと測定となり、10.9cmです。」
「そうか・・・まあ、男はイチモツのデカさだけじゃねーからな・・・それで、寮での評判は?」
「一般エントリーで入寮のわりには、先輩、後輩どちらからも受けがよく、結婚で退寮する前の4年間は、青雲寮の寮長を務めました。営業の先輩から随分と『竿丈測定』の儀式復活を迫られたらしいですが、断固拒否した、ちょっと変わったところもある男でございます。」
「そうか・・・で、係累は?」
「妻・百合子39歳・・・」
「フフフ、さっき、百合子ちゃんってヤジを飛ばされていたな・・・」
「はい、息子・恵太11歳、恵太の両親は二人とも70代になりますが、健在で別居です。」
「そうか・・・その他、閨閥はあるのか?」
「そうですね・・・これといって・・・父親はわが社の下請け・鈴木興産の社長で経営者ではありますが・・・妻・百合子の父親は、大手ゼネコン北村建設の部長だとか、ただ、あそこは四菱商事系ですし、現在うちとは直接取引がありません。」
「そうか・・・父親が下請けの社長ってとこが少し気になるな・・・で、仕事の方は?」
「今日の司会・かくし芸でも御覧の通り、なかなかできる男です・・・ただ、なんでも完璧にこなそうとするところがやや気になりますが・・・」
「そうか・・・意欲は・・・上にいきたいと思っているのか?」
「はい、そうれはもう・・・隠してはおりますが、出世欲は、相当なものかと・・・」
「イスはあるのか?」
「えっ?」
「次長のイスのことだ。」
話の展開が早く、河合はとまどうのだった。「鈴木の昇進よりも、私の取締役・昇進の方をなんとか・・・」と思いつつ、河合は、
「昨年、佐藤次長が、ドイツのフランクフルト支店長に転出となりましたので、次長の椅子は一席開いております。」
と答える。
「よし・・・アイツなら、上げてやってもいいぞ・・・まあ、人事は最後の詰めが肝心だからな・・・まだなんとも言えんが・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうこうしているうちに、檀上の恵一と石井係長の掛け合いは終わり、いままで、天狗の面をずっと檀下にみせていた恵一が、初めて後ろを向き、Yシャツの裾を、ペロンとめくるのだった。
「おぉ!!」
と、新年会場に、どよめきが起こる。
天狗の面のうしろのゴムと、恵一のケツの間には、谷山主任の広島土産である「安芸の宮島杓文字」が挟まれていたのだった。
それをみて、会場の後方端にいた谷山は、感激し、
「せ、先輩、この大事な時に、自分が買ってきたお土産を使ってくれるんですね!!感激です!!オレ、一生、先輩についてきます!!ワンワン!!」
と思い、
「よぉ!!鈴木課長!!日本一!!」
と、声援を送るのだった。
「オラオラ!!鈴木!!ケツがきたねーぞ!!」
とのヤジも飛ぶ。そして、大爆笑が起き、いよいよ新年会の締めが近づいてきたことを感じた会場からは大拍手が怒る。
檀下にケツを見せたまま、恵一は、檀中央、まさに四谷専務の真ん前に中腰ガニ股で立つと、
「新年早々、汚いケツで失礼いたします。新年会最後のおなぐさみ、どうかこの鈴木めの汚い尻に、どなたか、このお杓文字で、気合を入れてやってくださいませ!!お願いいたしまーーーす!!」
と口上を述べると、中腰のまま、壇上に両拳をつけ、ケツを後ろへ突き出し、根性バッタ受けの姿勢をとるのだった。
会場から大拍手が起こる。しかし、檀下の参加者たちは、お互いに顔を見合わせて、なかなか壇上に昇ってはこなかった。
四谷のギラギラした視線が、鈴木のケツと、その上にのった木製杓文字に注がれるのだった。
「よし!!オレに昇ってこいっていうことらしいな・・・」
四谷専務は、そうつぶやくように言うと、椅子のところにかけてあった、部下たちからの還暦祝いであるイタリア製のド派手な赤いジャケットを着て、立ちあがるのだった。
「おぉ!!四谷専務!!そうこなくっちゃ!!」
と、ドッと歓声が上がる。
檀下から聞こえてくる歓声に、鈴木恵一はホッとするのだった。これで誰も檀にあがらず、最後の最後で会が盛り下がったら、もう自分のサラリーマン人生は終わりだと思っていたのだ。
「よっしゃ!!四谷専務・・・感謝します・・・オレのケツにバチっと根性バッタをお願いします!!」
と心の中で懇願するのだった。
四谷は、60歳とは思えぬ、軽いフットワークで、中央から壇上に飛び昇ると、鈴木課長のケツに置かれた宮島杓文字を右手で取り、ニヤニヤしながら、そのヘラで、四谷の左手のひらをポンポンと軽くたたきながら、
「よぉ〜し!お前のケツが次長の椅子に座る資格のあるケツかどうか、オレがこの杓文字で、しっかりと見極めてやる!!」
と宣言するのだった。
会場から、「おぉ〜〜!」と、どよめきが起こる。専務の口から、「次長」というポストの名が出されたからだ。
檀下でそれを聞いていた河合は、冷や汗かきまくりだった。
「せ、専務・・・今それをおっしゃってしまってはマズイのでは・・・さっきは、『人事は最後の詰めが肝心だからな』とかなんとかおっしゃってたクセに・・・それよりも、私の取締役昇任のこと、なんとかお考えいただけないでしょうかね・・・」
一方、壇上、四つん這いでケツを会場の方へ突き出していた恵一は、
「よぉっしゃ!!根性バッタ、何発でもどんと来いだ!!百合子、恵太、こんな姿、お前らには見せられねぇけど、パパがんばってるからな!!家で応援していてくれよ!!」
と思って、奥歯をグイとかみしめ、根性バッタの強襲に覚悟を決めるのだった。恵太のケツは、すでに鳥肌がたっていた。
「四谷専務・・・あの杓文字で、鈴木課長のケツ、何発叩くつもりかな・・・・」
「根性バッタはだな・・・チンコに結んだ『断煩鈴』を不覚にも鳴らした時は、煩悩を断つために15本、入学式の挨拶代わり、娑婆っ気を抜くために30本、寮を脱走して、校則150条違反の罰として100本だ・・・」
「はぁ?おまえ、なに言ってんだ?」
「バカ野郎・・・少しは『男塾』読めよ、いまの次長以上の世代のオッサン連中は、『男塾』ファンが多いんだぜ・・・」
「『男塾』か・・・しまった、読んだことなかったぜ・・・」
そんな会話が檀下の若手たちからは聞こえてくるのだった。
恵一は、ギュッと両目を閉じて、その瞬間を待っていた。
「何発だって耐えてやる!!それで次長になれるんなら、根性バッタ、上々だ!!」
四谷は、ニヤニヤと不敵な笑みをその精悍な顔に浮かべながら、宮島杓文字を右手で握りしめる。そして、よく磨かれたイタリア製の高級革靴を履いた左足を、まるで恵一を踏みつけるかのように、ドカンと恵一の背中の上に置くのだった。
「うぅ・・・」
四谷が恵一のケツを杓文字で撫でる。その何とも言えない感覚に恵一はゾクッとするのだった。谷山主任の広島土産のお杓文字のヘラは、ちょうど恵一のケツの左右に盛り上がったケツッペタと同じ大きさだった。
「よし!!鈴木!!次長になりてぇーか!!」
「はい!!なりたいです!!」
「よし、行くぞ!!しっかり数を数えろ!!」
「はい!!」
そういうと、四谷は、右手に握った杓文字を高く掲げて、それを思い切り、恵一のケツめがけて振り下ろすのだった!!
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「いち!に!さん!し!ご!ありがとうございます!!」
「まだまだ!!!」
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「うぅ・・・・ろく!なな!はち!く!じゅう!!ありがとうございます!!」
それは5発ずつの連打であり、右ケツペタ、左ケツペタ、右ケツペタ、左ケツペタ、そして、中央ド真ん中!!であった。
「あっ・・・オレが恵太のケツを叩くときと同じ要領だ・・・」
叩かれているときは、痛みがケツから脳天へカミナリのように突き抜け、つむっている目の奥で火花が散る。そして、小休止となると、ケツがジリジリと焼けるように痛くなってくる。恵一は、檀の床についた握りこぶしをギュッと握り直し、頭をグイと下げ、さっきよりもケツを上に突き出し、「さあ、来い!」と言わんばかりにケツを振るのだった。
恵一のケツの動きをみて、最初の十発を固唾を飲んで見守っていた会場から爆笑が起こる。まだまだ恵一のケツには余裕があることがわかるのだった。
「課長!!がんばれ!!」
と、若手たちからは声援も飛ぶ。
「絶対に次長になりたいです!!まだまだお願いします!!」
「よぉ〜〜し!!いい根性だ!!」
そういうが早いか、四谷は、情け容赦なく、恵一のケツに杓文字のヘラを振り下ろす!!
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「あぁ・・・い、いまのは、た、たまに響き・・・じゅういち!じゅうに!じゅうさん!じゅうし!じゅうご!!ありがとうございます!!」
毎セット5発目は、なかなかのくせ者だ。ケツのど真ん中に振り下ろされるだけに、金玉への衝撃も半端ない。
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「うぅ・・・・じゅうろく!じゅうしち!じゅうはち!じゅうく!にじゅう!!ありがとうございます!!」
「まだまだ!!根性バッタ!!お願いします!!」
「おぉ〜〜〜すげぇ〜〜〜!!」
恵一の気合のこもった言いように、会場からは、どよめきが起きる。
恵一は、ジリジリと焼けつくように痛いケツから意識をそらすように、
「心頭滅却すれば火もまた涼し、心頭滅却すれば火もまた涼し・・・」
と、念じるのだった。無念無想の境地に入ることは無理だったが、恵一は、恵太のこと、妻の百合子のこと、そして、両親のことを考えながら、まさに自分自身が己のケツに課した根性バッタの試練に耐え抜こうとしていた。
「オヤジ・・・大企業の課長ってのも、そう楽なもんじゃねぇーんだぜ・・・」
と、父親のあの口癖を思い出しながら、恵一はつぶやくのであった。
「なにブツブツ言ってるんだ!!行くぞ!!」
「はい!!お願いします!!」
四谷は、ニヤニヤとサディスティックな笑みを浮かべながら、恵一の赤く染まったケツペタに狙いを定める。
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「うぅ・・・・にじゅういち!にじゅうに!にじゅうさん!にじゅうし!にじゅうご!!ありがとうございます!!」
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「にじゅうろく!にじゅうしち!にじゅうはち!にじゅうく!さんじゅう!!くぅ・・・・あ、ありがとうございます・・・」
恵一はさすがにつらそうなうめき声をあげる。ケツの焼けるような痛みが1セット毎に蓄積し、ジリジリとその頂点に達していたのだった。恵一の両ケツペタは、真っ赤に火照り、腫れていた。いま、恵一のケツは、指先で軽く触れただけで、激痛が走るに違いない。
それを知ってか知らずか、四谷が恵一のケツを試すかのように、持っている杓文字でツンツンと恵一のケツをつつくのだった。
「ぎゃぁ!!!いてぇ〜〜〜!!!」
「おぉ〜〜〜すげぇ〜〜〜」
恵一の苦しそうな悲鳴に、会場からどよめきが起きる。
「課長!!負けるな!!」
の声援が、会場後方から飛ぶ。主任の谷山だった。
「た、たにやまか・・・おまえが買ってきてくれた杓文字・・・最高だぜ・・・」
「何ブツブツ言ってんだ!!どうだ?ギブアップか?」
「まだまだ!!根性バッタ、お願いします!!」
「フフフ・・・久しぶりに根性のあるヤツがでてきたみたいだな・・・よし!行くぞ!!」
「はい!!お願いします!!」
恵一は、下がってきた己のケツに今一度、喝を入れ直すかのように、己のケツをプリっと後ろに突き出すように上げるのだった。
もちろん、四谷の叩きは、情け容赦なく続く。
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「うぅ・・・・さんじゅういち!さんじゅうに!さんじゅうさん!さんじゅうし!さんじゅうご!!ありがとうございます!!まだまだお願いします!!」
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「さんじゅうろく!さんじゅうしち!さんじゅうはち!さんじゅうく!しじゅう!!くぅ・・・・あ、ありがとうございます・・・」
すでにケツの感覚はなくなり、ケツになにか温かくて重い餅のようなものが張り付いた感覚だけが残っていた。恵一の体は、小刻みに震えていた。しかし、気力をふりしぼって、
「まだまだ!!根性バッタ、お願いします!!」
と、自分の背中を踏みつけて構えている四谷専務に願い出るのだった。
「チッ!!しぶといヤツだ・・・そろそろオレもつかれてきたぜ・・・よし!!行くぞ!!」
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「うぅ・・・・しじゅういち!しじゅうに!しじゅうさん!しじゅうし!しじゅうご!!ありがとうございます!!まだまだ!!」
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「しじゅうろく!しじゅうしち!しじゅうはち!しじゅうく!ごじゅう!!くぅ・・・・あ、ありがとうございます・・・まだまだ・・・」
「おぉ〜〜〜!!」
恵一の50発のカウントを聞いて、会場が再びどよめく。ケツに手加減なしの杓文字50発を食らっても、床に崩れ倒れることのなくケツを後ろに突き出し続けている恵一の根性に、会場の誰もが驚きをもって眺めていた。
「ハァハァ・・・コイツ、まだ倒れねぇな・・・普通だったら、ゆであがったカエルみてぇーに、ガニ股ひらいて、床の上にヘタレ込むんだがな・・・」
さすがの四谷も、一発一発、手加減なしのフルスイングで恵一のケツを叩きのめし、額から汗が流れ落ちていた。
いくら根性試しとはいえ、これ以上の叩きは危険が伴うことを、会場の参加者たちの誰もが知っていた。もちろん、四谷専務もだ。こういった場合、どちらかが折れるしかないのであるが、次長昇進への思いが強い恵一である。一歩も引く気配はなかった。
四谷は、さっき檀下できいた、河合の鈴木についての評価を思い出していた・・・「なかなかできる男です・・・ただ、なんでも完璧にこなそうとするところがやや気になりますが・・・」
「ったく、意地っ張りなヤツだ・・・百叩きでも食らいたいのか、コイツ・・・」
そうつぶやくと四谷は、杓文字を恵一の背中にのせておき、部下たちからのプレゼントであるイタリア製の赤の高級ジャケットを脱ぎ、それを檀下の河合めがけて、投げ渡すのだった。
「おぉ〜〜〜!!四谷専務、かっちょいい!!」
ジャケットの下の四谷の白のワイシャツには、すでに汗が染みてきており、下に着ている白のランニングシャツのラインがくっきりと浮かび上がっていた。
「よぉ〜し!!あと十発耐えられたら、お前の根性をみとめてやる!!」
「はい!!ありがとうございます!!」
会場の誰もが、四谷専務が折れたことを悟るのだった。
会場で年配の者は、「さすが四谷さんだ・・・若い者に負けてやった」と思い、若い連中は「四谷専務の根負けだな・・・さすが、オレたちの鈴木課長だ!!」と思うのだった。
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「うぅ・・・・ごじゅういち!ごじゅうに!ごじゅうさん!ごじゅうし!ごじゅうご!!ありがとうございます!!」
恵一のケツの感覚は、もう完全にマヒしていた。温かく腫れぼったいケツを何か重いもので押されている感覚があるのみだった。
パチン!!パチン!!パチン!!パチン!!ベチィ〜〜〜ン!!
「ごじゅうろく!ごじゅうしち!ごしじゅうはち!ごじゅうく!ろくじゅう!!くぅ・・・・あ、ありがとうございました!!!」
そう全身から絞り出すように言って、壇上の床にへたれ込む恵一。ケツは紫色に腫れ上がり、ガニ股開いて床にうつぶせに倒れ込む恵一だった。そして、股間に装着した天狗の鼻は、はずれて、恵一の脇腹のそばにころがっているのであった。
「よっ!!鈴木!!よくがんばった!!」
「鈴木課長!!日本一!!」
会場から割れんばかりの大喝采が沸き起こる。恵一の次長昇格をそこにいる誰もが認めた瞬間だった。四谷は、満足げにうなずきながら、壇からぴょんと飛び降りると、自分の席に戻るのだった。
「恵太、百合子、オヤジ、お袋・・・やったぞ・・・これで次長に昇格できる・・・ありがとう・・・」
前年の秋、河合部長から「鈴木!!来年の新年会の司会はお前に任せたぞ!!」と言われて以来、ずっと張りつめていた緊張に糸がプツンと途切れたのか、恵一の目からは涙があふれ落ちていた・・・。
おわり
太朗脚注:「タブー」を知らない方は、こちらをどうぞ → https://www.youtube.com/watch?v=Tz8L1k93hFg
「8時だヨ!全員集合」の該当場面は、https://youtu.be/jm7QeDOR-58?t=72 https://youtu.be/jm7QeDOR-58?t=184 本文に戻る