合宿所全裸締め出し
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星城大学体育会庭球部の合宿所では80年代半ばになっても一年生は全員全裸で合宿生活を送る伝統が残っていた。インカレ新人個人戦に代表として出場し敗北を喫した晩、一年生代表の黒田正樹の運命は悲惨だった。寮に帰っても、テニスシューズとソックスをつけた以外は全裸にさせられ、さらに合宿所内には入れてはもらえない「全裸締め出し」の罰を食う黒田だった。
他の部の野次馬が見物する中、黒田は全裸のまま合宿所の周りを一周し玄関前で止まると、寮正面を向き両手は腰のところで組み腰をグッと前に突き出して、
「経済学部一年黒田正樹!ただいま帰寮しました!入寮許可お願いします!」
と叫ぶのだった。しかし中からはなんの音沙汰もない。やり直しだ・・・
「星城〜〜〜〜!ファイ!ファイ!」
と気合の掛け声で一人合宿所の周りを再び全裸罰走する黒田。他の一年生はやはり全裸で合宿所玄関ホールに正座させられている。連帯責任だ。それを知ってか全裸罰走中の黒田の胸は痛むのだった。
80年代半ばの大学テニス部男子部員の髪型といえば、耳に少しかかる程度の長髪を真ん中分けし、軽くパーマをかけている。テニパンとテニシャツ姿でコートに出れば、軟派成功率100%のさわやかイケメン集団だ。しかし、合宿所ではクズの一年。つらい全裸奴隷で先輩に絶対服従の毎日だ。
「経済学部一年黒田正樹!ただいま帰寮しました!入寮許可お願いします!」
と再び黒田の叫び声が合宿所の外から響き渡る。しかし、寮内からは応答なし。もう一周また一周と黒田の全裸罰走は果てしなく続き、黒田の叫びは涙声へと変わっていく。合宿所の周りを何十周させられたのだろうか。深夜12時を回った頃、合宿所内から先輩の声が響く、
「黒田!元気がねーぞー!そんなフニャチンだから試合に負けるんだ!せんずりだ!男ならチンコおっ起てて、気合があるとこ証明してみろ!」
すでに全裸奴隷が身についている黒田にとって、先輩のシカトが解けたことがなによりもうれしかった。
「はい!」
と元気よく返事をすると、黒田は腰をできるだけ前に突き出し左手は腰にあてたまま
「経済学部一年黒田正樹!せんずり失礼します!」
と挨拶するが早いか、早速右手で股間に重く垂れる己の男性自身を摩擦し始める。
しばらくすると先輩は「左!」と号令をかける。黒田は「はい!」と返事し、今度は左手に己の男竿をもちかえて摩擦を再開する。若い黒田のイチモツは、すぐに黒田の引き締まった下腹にへばりつくように反り返って屹立する。
「右!」「左!」「右!」「左!」
と先輩の号令が次々とかかる。
千擦りの気分もなにもあったものではない。しかし、若い黒田の息は、次第に激しくなり、そのイチモツの先端は真っ赤に充血している。「うぅ・・・ヤバイ・・・」と黒田がうめき声をもらしたその時だった。先輩の「発射よし!」の号令がかかる。
「発射よし!」の号令がかかったら「はい!発射失礼します!」の後「いち!に!さん!」と丁度三擦りでドピュ!といかなければならない。
しかし若い黒田は「はい!発射失礼します!いち!に!うぅ・・・・・」と早打ちマック君状態。もちろん先輩からは「バカモン!やりなおしだ!」の怒号が飛ぶ。再び「右!」「左!」「右!」「左!」と黒田の千擦りが始まる。しかし「発射よし!」の後のタイミングがどうしても合わず、何度も千擦りのやり直しを食らう黒田。その晩、何十回と千擦りのやり直しを命じられ、空打ち寸前の状態でやっと許され寮内に入ることを許可された黒田だった。
翌日、学食中に
「なにあれ・・・黒田君、ダサァ〜〜イ!!!」
の女子学生のささやきが響き渡る。
長髪の一年生に混じって、反省の意を示すため青々とした丸刈りにした黒田正樹がそこにいた。テニス部一年の寮内日常のドレスコードが全裸ならば、寮外日常のドレスコードはチノパンに無地のカラーシャツそしてセーターは肩からかけて前で結び、その結び目には「体育会バッジ」をつける。渋谷で「ねえ彼女!」と軟派すればすぐにも六本木のディスコへ直行の80年代流行「ポパイ流」テニスボーイルックも坊主頭には全く似合わず、逆に滑稽でさえある。しかし、部のドレスコードは先輩の命令同様絶対遵守。黒田はたっぷり二ヶ月間
「黒田君、ダサァ〜〜イ!!!」
の屈辱に耐え、新人戦敗北のペナルティーの悔しさを噛み締めるのだった。
終わり