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「色柄を持たないパンツはく山崎すぐると、彼の担任の中村大悟」

 番外編01 強烈!!恥辱!!1980年のパンツ衛生検査 


 昭和55年5月。市立第三中学校の3年A組の中村大悟たちは、「平泉・仙台・松島」修学旅行に3泊4日の日程で参加していた。

 その修学旅行の最終日。宿泊先の宮城県仙台市近郊・秋保(あきう)温泉にある、修学旅行生徒を多く受け入れている、とある観光温泉ホテルの男子浴場。

 風呂場でもワイワイガヤガヤなにかと騒がしい3Aの男子生徒たち。彼らに与えられた風呂の時間は20分だが、中三の男子らしく、ほとんどが「カラスの行水」程度の短さで、どんどん風呂場から脱衣場へと上がってくるのだった。全員、タオルを丁寧に腰に巻いて、大事な前の部分は隠していた。

 風呂から上がると、彼らは、風呂に入る前に自分が脱いだ下着やスクールジャージが置いてあるカゴのところへ行き、旅館のバスタオルで身体を拭いすぐに着衣を始める者もいれば、タオルを腰に巻いたまま、脱衣場の鏡の前に行き、当時の「ツッパリ」中学生男子の象徴である、リーゼントヘアをセットし直すことに余念がない者たちもいた。

 やがて、20分のタイムリミットが近づいてくる。

「おい!!そろそろ3Bと交代だぞ!!」

 3Aの担任教師である吉田が、いつまでも脱衣場でグズグズしている3Aの生徒たちを大声で促す。右手には生活指導用の竹刀が握られていた。

 3A担任の吉田は、生活指導担当の主任。修学旅行先にも竹刀を持ってくる熱血漢だ。

 鏡の前にいたツッパリ軍団も、

「やべぇ!!吉田だ・・・」

「やべぇ!!竹刀持ってる・・・・」

と、あわてて、自分の下着とスクールジャージを入れてあるカゴの方へと戻っていくのだった。

 そんな中、中村大悟が、真っ赤な顔をして、

「やっべぇ・・・オレのパンツがねぇ・・・どこいったんだ・・・・たしかにここに脱いで置いておいたはずなんだけど・・・」

とつぶやきながら、脱衣場の衣服収納用のカゴが並べてある棚の前あたりを自分のパンツを探しながらウロウロしているのだった。上は、白のランニングシャツをすでに着ていたが、下はまだタオルを巻いたままの半フリチン状態だった。

 しばらくすると、リーゼントヘアの3Aのツッパリ軍団たちからも、

「あれ?オレのパンツがねぇ!!」

「オ、オレのもだ!!」

「あっ!!オレのも!!」

「やっべぇ・・・3Bのヤツらに隠されたんじゃねぇか・・・」

「畜生!!3Bのヤツらめ・・・あとで仕返しだ・・・」

「やべぇ・・・吉田がオレたちの方を見てる・・・」

「とりあえず、ジャージだけはいて、部屋に戻ろうぜ・・・」

との声が聞こえてくるのだった。

 それを聞いた中村大悟は少し安心して、「そうか・・・3Bの連中のいたずらだったのか・・・チェッ!!オレのパンツも隠されちまうなんて、ついてねぇーの・・・」と思いながら、ツッパリ・リーゼントヘア軍団の男子たちと同様、とりあえず、パンツをはかないまま、ジャージを直ばきし、部屋に戻ることにする。

 しかし、大悟が、ジャージに左足を通そうとしたその時だった。

 脱衣場の端、男子浴場の入り口のところに立っていた担任教師の吉田から、

「脱衣場のカゴの中に、脱いだはずのパンツがなかった者は、そのままでいい!!すぐに先生の前に来い!!」

との命令が、厳しい口調で下るのだった。

 吉田のその声に驚いて、「えっ?」と顔を上げ、吉田の方を見る大悟・・・大悟の腰に巻いてあったタオルがハラハラと床に落ち、大悟は完全フリチンの状態になってしまう。

 しかし、そんなことには気がつかぬほど、大悟は、吉田の姿を見て、焦りまくるのだった。

「やっべぇ・・・マジかぁ・・・」

 担任の吉田は、厳しい顔をして、竹刀を前にドンと構えて、仁王立ちになっている・・・それは、吉田の手に握られた生活指導の竹刀が、自分たちのケツにガツゥ〜ンと発動される直前、「鬼のオーラ」を全身から発している時の担任の姿だったのだ。

 思わずケツをさすりたくなる衝動にかられる大悟。しかし、やけに股間がスースーすることに気がつくと、

「や、やべぇ・・・」

と、あわててジャージを直ばきし、吉田の方へ小走りで行き、すでに担任の前に並んでいるツッパリ軍団の谷山、岡部、北本の3人の隣に並ぶのだった。

 吉田は、自分の前に並んだ、上は白のランニングシャツ、下はスクールジャージ(直ばき)姿の大悟を含めた4人の男子生徒たちを睨みつけて、

「遅い!!そのままで来いと言っただろうが!!ジャージをおろす!!」

と、命令するのだった!!

 その命令に、まだ脱衣場にいた3Aの男子たちからはざわめきが起こる。

 一方、担任の前に立たされている4人は、戸惑ったような表情で、ジャージを下ろさないままでいた。4人とも、背中にひんやりとした汗がつたうのを感じていた・・・。

 そんな4人をにらみつけながら、吉田は、前に構えていた竹刀で、「ドン!!」と床を一突きすると、

「ジャージをおろす!!」

と、再度、4人に厳しい命令を下すのだった。

 仕方なくジャージをおずおずと膝くらいまで下ろす4人。4人とも恥ずかしいのか、すぐにランニングシャツの裾をグイと両手で伸ばし、前を隠すのだった。

 そのちょっと情けのない姿を見て、サディスティックな笑みを浮かべる担任の吉田。30代半ばの社会科教師・吉田は、市立第三中学で、一番、陰険な教師として、生徒たちから嫌われていた。

 一方、後ろから4人のことを見ている3Aの男子たちの間には、緊張感とともに、気まずい雰囲気が流れていた。

 ランニングシャツの裾から顔をのぞかせるプリッと盛り上がった大悟たち4人の尻の双丘は、後ろにいるクラスメートたちには丸見えだったが、彼らは、意識的に、大悟たちのケツから視線を逸らそうとしているのだった。

 担任の吉田は、勝ち誇ったように、竹刀とともに手に持っていたスーパーのレジ袋のようなビニール袋から、白い布束のようなものをわしづかみにして取り出すと、脱衣場にいた3A男子全員にみせつけるように、それを右手で高く掲げるのだった。

「あっ!オレのパンツだ!!」

 一番左に並んでいたツッパリ・リーゼントヘアの北本が思わず大声を上げるのだった。

 その声を無視するかのように、担任の吉田は、

「さきほど、おまえらが入浴中に、3A男子全員の下着検査を実施した!!そして、検査不合格者のブリーフパンツは、一時、没収とし、俺がここに預かっている!!」

と、男子生徒たちに言うのだった。

 3Aの男子たちからは、驚きの声とともに、

「ったく、修学旅行先でもパンツ検かよ!!」

「抜き打ちなんて、きたねぇーよー!!」

と、不満の声もあがる。

 それに対して、吉田は、

「当たり前だ!!修学旅行というのは、おまえらの日ごろの生活態度を、24時間監視し、正すべきところがあれば、即座に指導する絶好の機会でもあるからな!!学級委員!!今、おまらの前にいる、ケツ丸出しのバカもんどもに、『生徒心得 V 服装編 5 下着(下)のニ』を読んでやってくれ!!」

と言い、着ている教員用白ポロシャツの胸ポケットにしまってあった教員生活指導用「生徒心得」を取り出すのだった。

 3A男子学級委員の村田が、「はい!」と返事をして、吉田の前に出てくると、その生徒心得を受け取り、読み始める。

「ニ 男女とも、下着(下)は、常に清潔を保つよう心がける!!」

「そうだ!!修学旅行前におまえらに言ったはずだぞ!!修学旅行は3泊4日だから、パンツは必ず3枚持参し、毎日、新しいパンツにはきかえるように、とな!!」

と、村田の生徒心得朗読を受けて、吉田が言う。

 しかし、大悟たち4人も言われてばかりではなかった。ツッパリ・リーゼントヘアだが、今はフリチンでちょっと情けない姿の北本が、

「俺たちだって、先生の言ったとおり、パンツ3枚持ってきました!!なのに、なんでオレたちだけ不合格で、パンツ没収なんですか?」

と言って、担任の吉田にくってかかるのだった。「結局のところ、俺たちは不良だから、あんたたち先公の目の敵にされるんだろう?」という気持ちを、北本はいつも抱いていたのだった。

 それに対して、吉田は、

「おまえら4人のパンツが、特に汚れていたからだ!!これを見ろ!!」

と言って、担任の吉田は、北本の白ブリーフを裏に返して高く掲げると、そのフロント部分を脱衣場にいる3Aの男子全員に見せつけるようにするのだった。北本のブリーフのフロントの裏地は、たしかに、やや濃く黄色く汚れていた。

 これには、3Aで一番のツッパリ野郎の北本も、自分のパンツのフロント染みを、男同士とはいえ、クラスの前にみせつけられて、恥ずかしさに顔をゆでダコのように真っ赤に染めると、

「や、やめてくださいよ!!」

と、泣きそうな声で、訴えるのだった。

 ツッパリ仲間の北本のその姿を見て、隣に並んでいた、岡部が、

「ほんとうですよ!!オレたちだって、パンツくらい毎日とりかえてます!!」

と、強い調子で言うのだった。

 しかし、担任の吉田は、

「ウソつけ!!オレのことをごまかそうとしても無駄だぞ!!いいか、おまえら4人だけ、カゴの中に、着替え用の新しいパンツが入っていなかった!!風呂入った後に新しいパンツをはきかえなくて、いつ新しいパンツにはきかえるつもりなんだ!!」

と、北本たちを追い詰める。

 岡部が、負けずに、

「朝です!!俺たち、朝、パンツをとりかえてます!!」

と言い返すのだった。

 これには、さすがの吉田も、一理あると思ったのか、「本当か?本当だろうな?」と、自分の前に並んだ4人の男子生徒に、聞き質していくのだった。 

「北本?本当だろうな?」

「はい!!本当ですよ!!なんで信じてくれないんですか!!」

「岡部?本当か?」

「はい!!絶対に本当です!!」

「谷山?本当か?」

「えっ・・・ほ、ほんとうで・・す・・」

「中村?おまえはどうなんだ?」

「えっ・・・ボ、ボクは・・・・」

 結局、ウソのつけない大悟は、「本当です」とは言えずに、沈黙してしまうのだった。

 吉田も、もう十年以上、中学教師で飯を食っている男だった。ほとんどの場合、生徒の言っていることの真偽を見抜くことなど朝飯前だった。

 吉田の「心証」では、北本と岡部はシロ、谷山と中村がクロであり、そして、それはズバリご名答だったのである。

 北本と岡部は、80年代にしては先進的な朝シャワー派の中学生。シャワーの後、新しい白ブリーフにはきかえ、己に気合を入れると、風呂場の鏡の前で、髪の毛がウルトラ・ハードに固まるヘアムースをタップリ髪の毛にぬりたくり、リーゼントの鶏冠(とさか)を限界まで高くオっ立たせるのだった!!!それが昭和40年生まれのツッパリ男のプライドなのである!!

 一方、谷山と中村は、己のブリーフから発せられるかぐわしき臭いに、己自身が気がつくまでパンツを穿き続けてしまう不精者。修学旅行中も、初日2日は普通にはき、後半2日は裏に返して、白ブリ穿きっパを決め込んでいた。 

「どうやら、北本と岡部は本当のことを言っているらしいな・・・それにしても、せっかく風呂に入ったんだから、パンツくらいすぐに取り替えろよな・・・気持ち悪くねぇーのかね・・・オレは絶対耐えられんな・・・それから、谷山と中村は、旅行中、パンツ穿きっぱなしを決め込んでいるクチだな・・・こいつら二人はタップリとお仕置きだ・・・さてさて、北本と岡部は今回は許してやっかな・・・」

 そんなことを吉田が思い、北本と岡部にはパンツを返してやり無罪放免にしてやろうかと心が傾きかけた、その矢先だった。

 北本が、

「チェッ!どうせ、あんたたち先公は、オレたちの言うことなんか、ひとことだって信じてくんねぇーんだろ!!叩くんだったら、早く叩けよ!!」

と、担任の吉田に向かって言い放つのだった。

 その言葉に、吉田は、ニヤリとして、

「そう焦るな・・・お仕置きの順番はオレが決める!!」

と言うのだった。

「あぁ・・・やっぱり許してもらえねぇんだ・・・またケツ竹刀か・・・」

と、岡部は思うのだった。

 ケツ竹刀を食らう覚悟を決めたはずの北本も、担任吉田の竹刀がズシンとケツに着地するときの衝撃を思い出し、思わず、ブルッと震え、ケツをキュッと引き締めるのだった。ツッパリ・リーゼント野郎も、吉田のケツ竹刀は恐いのだった。

 もちろん、北本は、吉田同様、谷山のウソを見抜いていた・・・。「谷山のヤツ、不精だからな・・・今回も、新しいパンツ一枚も持ってきてねぇーんだろうな・・・」と思った。

 そして、「中村のことはよくわかんねぇけど、谷山一人がケツ竹刀じゃ、かわいそうだしな・・・つきあってやるか・・・」と思い、担任の吉田をさらに怒らせるようなことをわざと言ったのである。

 世間、教師たち、そして、クラスの連中からも「不良、不良」と呼ばれてはいるが、案外、友情には厚い3Aのツッパリ・リーゼントヘア軍団だったのである。

 担任の吉田の口から「お仕置き」の言葉が発せられたと同時に、吉田の前に並んでいる4人のケツが、一斉に、ピクピクと痙攣するかのように動いたのを、後ろにいた3Aの男子たちは、いやが上にも、目撃してしまう。そして、吉田のケツ竹刀を経験済みの3A男子は、己のケツも、思わずキュッと引き締めてしまうのだった・・・。

 ざわめき始めた3A男子たちを鎮めるかのように、担任の吉田は、手に持っていた竹刀で、再び、「ドン!!」と床を一突きすると、 

「よし!岡部からだ!!ホレ!お前のパンツ返してやる受け取れ!!」

と言って、岡部のちょっと染みつき恥ずかしブリーフを、岡部に投げ返してやるのだった。

 岡部は、それを両手でキャッチすると、急いでそのパンツを穿こうとする。しかし、それは許されなかった。

「ダメだ!!誰がパンツをはいていいと言った?お仕置きが終わるまで、パンツは手に持ったままだ!!」

と、岡部に、無情のフリチン・ケツ竹刀を宣告する吉田だった。

 後ろでみている3A男子たちが、再び、ざわめき始める。

「むき出しのケツに竹刀食らうのか・・・吉田は、マジで鬼だ・・・」

と、お互い顔を見合わせながら、ヒソヒソ話をしている。

「チェッ!!マジかよ・・・」

と、不満そうにプッと頬をふくらます岡部。

 しかし、そんな岡部にはおかまいなく、吉田は、

「岡部!!一歩前にでて回れ右だ!!ケツをこっちに向けろ!!」

と、命令する。

 岡部は、回れ右し、お仕置きのギャラリーである3A男子たちとご対面!!いつも、「なめんじゃねーぞ!!」とクラスメートに虚勢をはっている岡部。岡部は両手で、ランニングシャツの裾をグイと伸ばして、己の前の部分を隠しながらも、「ニヤニヤ笑ってみてんじゃねーよ!!みせもんじゃねーぞ!!」と、3A男子たちに低い声ですごんでみせる。

 もちろん、3A男子たちで、ニヤニヤ笑って岡部のことを見ている者など一人もいるはずがない。

 3A男子のギャラリーたちは、

「やべぇ・・・目があったら、あとで殺される・・・」

と思い、お仕置きを受けるに際し、担任・吉田にケツを出すためにこちらを向いている岡部の視線から、必死で目を逸らそうとしていたのである。

 岡部に対する辱めは、それだけではすまなかった。パンツ衛生検査不合格のペナルティーをより効果的にするため、吉田は、岡部に、

「パンツは裏返しにしろ!!パンツを両手で持って、おまえがこしらえたパンツの染みを、クラスのみんなに見せてやれ!!」

と命令するのだった。

 岡部は真っ赤な顔になりつつも、必死で平然を装おうとしていた。ツッパリが、いつも威張っているクラスの前で、恥ずかしくて泣きべそかいたら、サマにならないからだ。

 岡部は悔しそうにギュッと目をつむり、担任・吉田の言う通りにする。己の染みつきパンツを両手で持ったことで、岡部のランニングシャツの裾は、無情にも、へその方にサッと上がってしまい、まるで舞台の幕が上がるように、3A男子たちの前に岡部の股間の大事なイチモツは、「ご開チ〜〜〜ン!!」となった・・・。

 しかし、吉田は、さらに手厳しかった。

「ほら!!それじゃ、みんながみえねぇーだろ!!両手をしっかり顔を高さまで上げて、お前のパンツをしっかり前に差し出せ!!そして、ケツは後ろに突き出すんだ!!パンツは前!!ケツは後ろだ!!」

 岡部は、もうやけになったかのように、

「わかったよ!!やってやるよ!!」

と言うと、両手に持った裏に返した己のブリーフの真っ黄色なフロント部分を3A男子にみせつけるように前へ突き出すと同時に、ケツをプリッと後ろに突出し、奥歯をグッと喰いしばるのだった。

「いくぞ!!覚悟しろ!!」

 岡部のケツに鳥肌が立つ。担任の両手に握られた竹刀が己の両ケツペタに狙いをすましている殺気を、むき出しのケツにビンビンに感じるのであった。

 そして、

ベッチィ〜〜ン!!

と、鈍い音が、男子浴場の脱衣所に響き渡る・・・。

 その音を聞いた3A男子たち。あるものは顔をしかめ、あるものは思わず身をすくめ、あるものは目をギュッと閉じる・・・。

 竹刀がケツを打つ音は、それが重ければ重いほど、鈍いものになる。岡部の生ケツへの打擲は、吉田が思い切り腰を入れてフルスイングした強烈なものだったのである。

「うっ・・・・」

 竹刀を生のおケツで受け止め、思わず、うめき声を上げて、そこに座り込む岡部。恥ずかしがる余裕も、パンツをはく余裕もなかった。本当に息が止まりそうだった・・・。

 しかし、そんな岡部にも、吉田は手厳しい、

「岡部!!邪魔なんだよ!!さっさとそこをどけ!!痛がるなら、向こうで痛がってろ!!」

と、言い放つのであった。

「よし!次!!北本!!ホレ!お前のパンツだ!!」

と、吉田は、北本にパンツを投げ返す。

 岡部より威勢はいいが、ちょっと気が弱い北本は、岡部のケツへの「お仕置き」を間近にみて、すでにブルブル震えている。パンツもしっかりキャッチできず、床に落としてしまうのだった。

 しかし、そんな北本にも、

「早くひろえ!!ひろったら、岡部と同じく、パンツは前!!ケツは後ろだ!!」

と、吉田は容赦なかった。もちろん、北本も、岡部と同じく、パンツは前に、ケツは後ろに差し出す、あの恥辱の恰好をさせられ、ケツを竹刀でガツンとしこたま打たれるお仕置きを食らったのであった。ケツを竹刀で打たれた北本は、岡部と同様、その場にしゃがみ込み、ツッパリのプライドズタズタに、目には涙をいっぱいためていた・・・。

 そして、三人目。それは、3A男子の大方の予想に反して、谷山飛ばしの、中村大悟だった。

「よし!次!!中村!!ホレ!お前のパンツだ!!」

 そういって、担任の吉田は、乱暴に、大悟のパンツを投げつけてくる。

 大悟は、どうにか己のパンツを両手でキャッチし、

「あぁ・・・オレも、パンツは前・・・ケツは後ろか・・・」

と覚悟を決めるのだった。

 しかし、吉田は、大悟に、すぐに回れ右の指示を出さなかった。吉田は、大悟の方に近づいてくると、

「どした・・・おまえらしくないな・・・おまえのパンツは、いつもそんなにきたねーのか?」

と、聞いてくるのだった。

「・・・・・」

 大悟は、下を向いたまま、無言だった。そんな大悟の沈黙を自分に対する「反抗」と受け取ったのか、吉田は、大悟の胸を小突くと、声を荒げ、

「おまえのオヤジさんは、市立一中の教頭先生だろうが!!そんな生活態度でオヤジさんに恥ずかしいと思わねぇーのか!!」

と言うのだった。

「・・・・・」

 大悟は、無言のままだったが、心の中では、「結局、またそこかよ・・・教頭の息子、教頭の息子って、うぜぇんだよ!!」と思うのだった。

 中村家は地元の名士。その当主は代々、地元の公立学校の校長を務めていた。大悟の父親も、市立第一中学校の教頭にまでなり、ご先祖様と同じ道を順調に歩んでいたのだった。

 担任の吉田は、そんな大悟が市立三中に入学当初、自分が顧問を務めるサッカー部に盛んに勧誘をしかけてきたのだった。しかし、大悟は、一貫してそれを断りつづけ、中学では「囲碁・将棋部」に、そして、スポーツは、小学生の頃から通っていた地元のラグビークラブに通い続けたのであった。

 そんな大悟に、吉田は気分を害したのか、それ以来、吉田の生活指導の竹刀は、大悟のケツにすっかり照準を合わせてしまったかのように、大悟は吉田から度々ケツ竹刀の「お仕置き」を受けていたのであった。もちろん、大悟は、オヤジさんにそんなことは一切話さず、吉田の仕打ちに耐えていたのだった。

 無言の大悟に、吉田は、チッ!と舌打ちすると、

「お前は、竹刀二発だ!!一発は、オヤジさんからの拳骨だと思え!!」

と言う。再び、大悟のクラスメートたちの間からざわめきが起きる。

 大悟は、「はい!お願いします!!」とデカイ声で返事をすると、潔く、己の染みつきブリーフを裏に返し、それを両手でひろげて持って、「さあ!オレのパンツの染みをみてくれ!!」と言わんばかりに、そのフロント部分を3A男子たちの前にしっかりと突き出すのだった。

 たしかに、岡部、北本のパンツに比べて、大悟のパンツの染みは派手であった。黄色い小便染みは述べるに及ばず、思春期男子特有のゴワゴワの染みまで、まるで世界地図のように、いくつかの染みの大陸が、ブリーフのフロント部分に描き出されていたのだった。

 大悟は、3Aのクラスメートたちと思わず目があってしまい、後頭部がカァッーと急に熱くなる。大悟の顔も、もうゆでダコのように、恥ずかしさで真っ赤だった。

 もちろん、パンツの染みだけではない、大悟の大切な部分も、当然、「ご開チ〜〜ン!!」状態だ!!男同士とはいえ、3A男子の視線を己の男子自身にビンビンに感じてしまい、羞恥心にさいなまれる大悟だった。

 しかし、前ばかり気にしてはいられない。当然、「パンツは前!!ケツは後ろ!!」だ。まだまだお仕置きは終わっていない。

 「よし!!中村!!ケツをしっかり出せ!!奥歯はしっかりくいしばってろ!!今日のはちょっと痛てーぞ!!」

と、後ろで担任の吉田が言っているのが、大悟の耳に飛び込んでくる。

「畜生!!絶対に負けねぇ!!」

と思い、ラグビークラブで鍛えた肉厚のムッチリケツをプリッと後ろへ突き出すのだった。

 大悟が、ケツを後ろに思い切り突き出すと、思わず、ブルッと身震いするほど、大悟は己のケツに鳥肌が立つのを感じるのだった。今日は、むき出しケツでフルスイングの竹刀を受ける・・・己のケツをこれほどまでに意識を集中したことなどいままでになかった大悟・・・しかし、竹刀に打ちのめされるであろう己のケツを意識すれば意識するほど、3Aのクラスメートの視線にさらされている己の男性自身に、うずくような熱を感じてしまう・・・大悟の男竿は、もう半勃起ちの状態だった。

「や、やばい・・・・」

 3Aの連中にそれがバレれてはまずいと、できるだけ上体を屈めて、染みつきパンツはグーーと前に突出し、ケツも後ろにグィーーと突き出すのだった。そんな大悟の滑稽な恰好に、3Aの連中から笑いがもれる・・・。

 その笑いに、恥ずかしさがさらに増し、堪えきれずに目ん玉をギュッとつぶったその時だった。

己のケツの方で、ベチ〜〜ン!!ベチ〜〜ン!!と鈍い音がしたかと思った瞬間、

ガツ〜〜ン!!

ガツ〜〜ン!!

と連続して、ケツから脳天へ突き抜ける激痛を感じるとともに、目の奥の方でまるで火花が散ったような感覚に見舞われるのだった。吉田の竹刀が、大悟のケツを二発連続で、強襲したのであった。

「うぅっ・・・」

 大悟は、うめき声をあげながらも、北本や岡部のようにしゃがみ込むことはなかった。上体を起こすと同時に、サッとパンツで半勃起状態の肉棒を隠す余裕もあった。

 ギャラリーの3A男子たちからは、思わず、「スッゲェ〜〜」の声が洩れてくるのだった。

 大悟は右手に持ったパンツで前を隠し、左手で、ジンジン熱く感じるケツをさすろうとする。しかし、竹刀が直撃した場所に、指一本でも触れようとすれば、まるでケツに電気が走ったような激痛が大悟を襲うのだった。

 そして、

「い、痛てぇ!!あーあ、これでまたケツのあざが二週間くらい消えねぇよな・・・ぜってぇ、あざ2本、こしらえちまってるよな・・・ラグビークラブの風呂でまた高校生の先輩からカラかわれちまうよな・・・教頭の息子ってやっぱ損だよな・・・」

と思いながら、足を引きずり、引きずり、3A男子たちの中に戻り、パンツとジャージをケツに触れないようにそっとはくのだった。

 そして、最後まで残された、ツッパリ・リーゼントヘアの谷山君は、一人、フリチンのまま残されて、いよいよ自分のお仕置きの番だと、ブルブル震えながら立っていた。大悟のケツに炸裂した竹刀の風圧と音圧の迫力に圧倒されてしまったのだ。 

「よ〜〜〜し!!名無しのごんべい!!おまえが何で最後まで残されたかわかってんな!!」

「い、いえ・・・わかりません・・・それに、オレの名前、谷山です・・・」

「そうか、お前の名前は谷山だったな・・・だったら、パンツに、しっかり、極太マジックで、3−A 谷山って書いておけ!!おまえのパンツは、汚い上に臭い!!さらに、名前が書いてねーんだよ!!竹刀3発だ!!!いいな!!」

 むき出しのケツに竹刀3発!!そのお仕置き宣告に、3A男子たちが再びざわめく・・・。

 谷山はガクッとうなだれつつも、覚悟を決めたのか、ツッパリのプライドを半分かけて、そして、ツッパリのプライドを半分すてて、あの超はずかしい、「パンツは前!!ケツは後ろ!!」のポーズをとるのだった。

 もちろん、谷山に対しても、吉田は容赦なかった。これでもかというほど腰をいれて、

ベッチィ〜〜ン!!

ベッチィ〜〜ン!!

と、谷山のケツを連続二発打ち据える。

 そして、三発目・・・吉田渾身のフルスイング竹刀が、谷山のケツを強襲する!!

ベッチィ〜〜ン!!

「あっあぁ〜〜〜〜!!!!」

 三発目についに耐えられなくなったのか、谷山は、なんともいえない哀しげな声を上げながら、ブリーフを両手に持って前に掲げたまま、ザァザァッーと前方に倒れ込むのだった・・・。

 倒れ込んだ谷山のケツは、ランニングシャツの裾に隠れることもなく、情けなく丸出しままだった。そして、そのケツには、ピンク色にクッキリと三本の線が焼き付けられていたのであった。もちろん、谷山自慢のリーゼントヘアーの「鶏冠」は、グシャリとつぶれてしまっていたのだった。

 

・・・・・・・・・

 翌日。

「コラ!!そこ!!列を乱すな!!」

 そんな吉田先生の怒鳴り声が、国鉄・仙台駅、1番線ホームに響いていた。

 市立第三中学校の修学旅行生たちが、いよいよ学校に戻る日がやってきた。

 帰りに利用するのは、仙台発15:58発 エル特急「ひばり24号」上野行きだ。

 昭和55年といえば、東北新幹線開業前、仙台から関東地方へは、鉄道では、東北本線(在来線)の特急電車「ひばり号」がよく利用されていた。

 「ひばり24号」は、仙台を出ると、福島16時54分、郡山17時29分、須賀川17時39分、黒磯18時14分、宇都宮18時50分、大宮19時46分、終点上野には19時13分、午後7時13分に到着する。

 しかし、関東近郊の市立第三中学校の生徒たちは、大宮までの利用。仙台からは、3時間48分の旅となる。

 実は、この「ひばり号」、東北本線(在来線)を最高速度・時速120キロの猛スピードで一気に駆け抜けるため、上下左右と本当によく揺れる電車として有名であった。

 そう、前日、吉田先生の抜き打ちパンツ衛生検査にひっかかり、吉田先生の竹刀で、たっぷりとケツに気合入れられた岡部、北本、谷山のツッパリ軍団3人と、ちょっと不精な中村大悟には、3時間48分の「ケツ責め我慢」というもう一つの試練が待っていたのである。

 中村大悟は、後に、中三の修学旅行の思い出を聞かれて、

「そうですね・・・帰りの電車の中で、やたらケツが痛かったことかなぁ〜、ワハハハ!!」

と、懐かしそうに答えていたという話ではある。

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