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後編を読む 

「色柄を持たないパンツはく山崎すぐると、彼の担任の中村大悟」

一、時代遅れの生徒心得


 関東近郊のとある町にある市立第三中学校。その中学校の「生徒心得」の中で、「服装編 5 下着(下)」の項目は、まことにもって時代遅れの規定であった。それは、1970年代後半から80年代にかけて、中学校において管理教育が全盛の時代の産物だったのである。



 もちろん、最近では、市立第三中学校に通う生徒の誰一人として、「生徒心得 V 服装編 5 下着(下)」の各項目に従うものはいなかったし、生徒たちに従うように生活指導する教師も誰一人としていなかった。ただ一人、市立第三中学校の教師、中村大悟(なかむら だいご)を除いては・・・。

 それは、中村大悟が教師になって間もない頃だった。昭和40年生まれの中村大悟は気がついたのだった・・・自分たちの頃と違って、最近の中学生男子たちのほとんどが、白ブリーフを日常的には穿かないことを・・・。

 しかし、一方、教師用に配布された市立第三中学校の「生徒心得」をみると、自分が中学生の頃と全く同じ文言のパンツに関する規定が載っている。
 
 中村大悟は、早速、教頭の武藤先生に質問をする。なぜ、こんな時代遅れの規定がまだ残っているのかと。

 すると、武藤教頭は、

「生徒心得ってね、変えようとするとね、教育委員会の承認を得るとか、それはもういろんな手続きがあって面倒なんですよ・・・かといって、いまは、生徒心得を金科玉条のごとく掲げて、生徒を管理する時代でもないしねぇ・・・それで、まあ、そのままにしているってわけですよ・・・」

と、「ったく、この忙しいのに、この新入り教師がバカな質問しやがって・・・。」といった表情を顔にありありと浮かべながら、答えたのであった。

 中村大悟は、大人しく引き下がったものの、心の中では、

「なんだよ・・・オレらの頃と違って、最近はユルユルじゃんか・・・オレが中学生だった頃は、毎日、パンツ検で、ひっかかるとケツ竹刀だったんだぜ・・・生活指導の吉田のケツ竹刀食らうと、2〜3日は椅子にまともに座れねぇーもんな・・・オレたちの世代は叩かれ損ってわけか・・・いや・・・よし!オレが担任するクラスの男子だけでも、一丁、締めてやるか!!それに・・・アイツらのケツを観察できるってことは、いろいろ役に立ちそうなこともあるしな・・・フフフ」

と思うのだった。

 もちろん、ここで大悟の言う「パンツ検」とはパンツ検査のことではあるが、上記の「生徒心得 V 服装編 5 下着(下)のイ」に係るパンツ検査ではない。

 なぜなら、昭和40年生まれの大悟が中学生だった頃は、男子は、ほぼ100%白ブリーフ着用だったからだ。時折、クラスに1〜2名オシャレ君がいて、色つきブリーフをはいている場合や、また、これも時折、クラスに1名ほど、「魔女っ子 メグちゃん」の大ファンで、ケツにメグちゃんの絵がデカデカとプリントされた幼稚園時代の柄つきブリーフを中学生になってもまだ手放すことができず愛用している秋葉系マニア君がいる程度だったのだ。

 すなわち、大悟の中学生時代の「パンツ検」とは、白ブリーフを穿いているか否かのパンツ検査ではなく、男子全員が白ブリーフを穿いていることを前提とした上で、「生徒心得 V 服装編 5 下着(下)のロ」に係る「パンツ名前検査」や、たとえば、修学旅行の宿泊先の風呂の男子更衣室で抜き打ちで行われる、「生徒心得 V 服装編 5 下着(下)のニ」に係る「パンツ衛生検査」だったのだ。

 とはいえ、「パンツ名前検査」といえども、侮ることなかれ。洗濯の繰り返しで、名前の部分が少しでも薄くなっていれば、違反と見做され、男子ならパンイチのままでケツ竹刀の一発や二発食らうはめになることくらい、ごくごく当然の時代だったのである!!

 特に、大悟は、もともとやや不精なためか、毎日のパンツの穿き替えを怠り、パンツ衛生検査では、いつも生活指導の先生から、ケツ竹刀を頂戴していたわけである。

 そして、自ら教師になった今、大悟は、その時の仕返しにと、「パンツ検査」を実行に移そうとしているのだろうか・・・。それとも他になにか目的でもあるのだろうか・・・。

 

二、大悟(だいご)兄ちゃん


「あっ!!大悟兄ちゃんがボクのクラスの担任だ!!」

 平成5年4月。市立第三中学校に入学した山崎卓(やまざき すぐる)は、入学式で、自分が所属することになる1年A組の担任の名前を聞いて胸躍らせるのだった。

 1年A組担任の中村大悟先生は昭和40年生まれの28歳。メガネをかけてはいるが、真っ黒に日焼けし、大柄でガッチリとした体躯の、典型的なメガネマッチョな先生だった。

 一見、体操のお兄さん風の中村先生だったが、担当科目は数学。帝都理科大学・理学部・数学科出身のなかなかの秀才だった。しかし、大学時代、ラグビーをやりすぎたため、一年留年してやっと卒業はできたものの、大学院入試は、ものの見事に不合格。結局、院には進まず、オヤジさんのコネで、地元の公立中学に数学教師の職を得たのであった。

 中村家といえば、地元の名士。その当主は、代々、地域の公立学校の校長を務める由緒ある家柄だ。大悟のオヤジさんも、市立第一中学校の校長であり、市の中学校校長会の会長を務めていた。

 中村家の邸宅は広く、住込みのお手伝いさんもいる。そして、当時、中村家の住込みのお手伝いさんだった山崎キミの一人息子が、山崎卓であり、卓は、子供の頃、中村家の三男坊である大悟によく遊んでもらっていたのだった。

  しかし、中学生になった山崎卓は、大悟兄ちゃんこと担任の中村先生のいままでになかった全く別の一面を彼のケツを以って体験することになるのだった!!

 
番外編01 強烈!!恥辱!!1980年のパンツ衛生検査


三、中村先生のパンツ検査 「男子は全員、明日から白ブリーフを着用すること!!」

 「よしよし、オレのクラスの男子どもが着替えてるな・・・今年はどんなヤツが入ってきたかな・・・楽しみだぜ・・・フフフ」

 そんなことをぶつくさつぶやきながら、1年A組担任の中村大悟が、1Aの教室の扉をガラッと開けるのだった。

 ワイワイガヤガヤ騒がしかった教室が一瞬にして静まり返る。

「あっ!中村先生だ!!」

 まだ小学生らしいあどけなさの残る1Aの男子たちは、そう口々に言いながら、担任の大悟の方を向くのだった。中には、上半身裸でパンツ一丁の生徒もいた。

 もちろん、次の時間は、大悟担当の数学ではなかった。1Aの男子たちは、次の体育の時間に備え、着替えの真っ最中だったのである。

 卓は、制服のズボンを脱いで、自分がはいているパンツをクラスの連中から見られないように、体操着のジャージをサッとはき終えたところだった。

「あっ!大悟兄ちゃん・・・なんの連絡だろう?もしかして、先生の都合で体育の授業がなくなったのかな?」

と思うのだった。もちろん、卓は、学校では大悟のことを「大悟兄ちゃん!」とは呼ばないが、いつも心の中ではそう呼んでいた。

 しかし、卓の予想に反して、大悟兄ちゃんこと、中村先生は、1Aの男子たちに向かって、

「よぉ〜〜し!!おまえらA組男子は、これからパンツ検査だ!!」

と宣言するのだった。

 着替え中の男子たちが、ドッとどよめく。

「えっ〜〜!!!」

「やだぁ〜〜!!」

「恥ずかしい!!」

「体育の授業に遅れちゃいます!!」

 大悟に向かって、1Aの男子たちからさまざまな声が上がる。しかし、大悟は、

「男だろ!!パンツを見られるくらい恥ずかしくない!!体育の授業のことは心配するな!!体育の小暮先生には許可をとってある!!」

と生徒たちに向かって言うのだった。

 1A男子学級委員の木村真司(キムラ シンジ)君が、

「パンツ検査って、何を調べるんですか?」

と、疑問の声を上げる。他の男子たちも、自分たちの学級委員から発せられたその質問に騒ぐのをやめ、「そうだよ!!」と言わんばかりの表情で、大悟のことを見つめるのだった。

 大悟は、「さすが学級委員、いい質問だ!!」と言うかのように大きくうなずくと、

「おまえらが、生徒心得を精読し、学校規定のパンツをはいているかを調べるんだ!!」

「パンツのことなんて生徒心得のどこに書いてあるんですか?」

 それは、1Aのほとんどの男子が抱いた疑問だった。

「おまえら、生徒心得を読まなかったな!!始業式の日に、家に帰ったら生徒心得をよく読んでおくようにと言っただろが!!」

「え〜〜〜〜!!」

「やばぁーーい!」

「読んでなかったーー!!!」

と、再び、教室内はどよめきざわめくのだった。

 そのざわめきを制するかのように、大悟は、今まで以上の大声で、

「いいか!!パンツ検査に不合格の者には・・・・」

と言って、途中で言葉を切るのだった。

 教室内が再び静まり返る。

 いままで、顔に笑みさえ浮かべながら騒いでいた1Aの男子たちは、「不合格だったらどうなるんだ?」と、ちょっと不安な面持ちで、担任である大悟の方をみつめるのだった。

 そんな男子生徒たちのちょっと不安そうな表情を楽しむかのように、大悟はニヤッと笑って、自分のデッカい右手のひらをバッとひらいて、彼らの前に差し出すと、

「パンツ検査に不合格の者には、ケツにバチィ〜ン!!と一発、もみじスタンプだ!!」

と言うのだった。

 それを聞いた1A男子たちからは、ドッと笑いの混じったどよめきが起こる。

「もみじスタンプって、ニコニコ(^^)ドラッグのスタンプカードみたいだ!!」

と、生徒の一人から声があがり、さらに教室は、ドッとわくのだった。

 「ニコニコ(^^)ドラッグ」とは、その地域ではおなじみの大衆薬局チェーン店だった。消費税抜き300円買い上げ毎にスタンプを一個押してもらえるスタンプカードが顧客に配られ、毎週水曜日にはスタンプ2倍押しセールとなり、地域の主婦たちに人気の店だった。そして、そのスタンプカードに押される判子のデザインが「もみじ」を模ったもので、スタンプの色はまさに赤色なのであった。

 大悟もそれには思わず大笑いしそうになる。しかし、どうにか笑わないように我慢しながら、 

「コラ!!静かにしろ!!いいか、ニコニコ(^^)ドラッグのもみじスタンプは、スタンプカードに押してもらうが、オレのもみじスタンプは、おまえらのケツにバッチィーンなんだぞ!!」

と、ついこの前まで小学生だったかわいい教え子たちに警告するのだった。

「えーーーーそんなのやだーーー!!」

「えーーー、ケツ叩きなんてやだーー!!」

とのかわいい声が教室のあちこちであがるのだった。

「先生のもみじスタンプは痛いんですか?」

と、ちょっと心配そうなマジ顔で質問してくる生徒もいた。

「当たりまえだ!!痛ってぇーぞ!!それに先生のもみじスタンプは、パンツ検査の時だけじゃないぞ!!数学の宿題を忘れたヤツのケツにも、バッチィ〜〜ン!!ってもみじスタンプだ!!」

「えーーーきびしいーーー!!」

と、大悟が担任する1A男子たちは、そんなことを口々にいいながら、自分ももしかして、先生からケツを叩かれるかもしれないと悟り、なんか恥ずかしそうな気まずそうな表情を顔にうかべ、頬をやや紅潮させて、お互いに顔を見合わせ始めるのだった。
 
 そんな生徒たちの反応をよそに、大悟は、男子学級委員の木村真司に、

「シンジ!生徒手帳78ページ、生徒心得 服装編 5 下着(下)のイを読んでくれ!」

と言うのだった。大悟は、自分が担任するクラスの男子生徒を、苗字ではなく、名前で呼んでいた。

 木村は、すでに体育着に着替え終わっている。そして、元気に「はい!」と返事をすると、脱いであった黒の学ランの胸ポケットから生徒手帳を取り出し、先生から言われたところを読みだすのだった。

「イ 男子は、夏期冬期とも・・・えっ・・・」

 木村は、その次の「白ブリーフ」という文字を見て、思わず絶句するのだった。学級委員の木村でさえ、事前に「生徒心得」など読んでいなかったのである。

「や、やばい・・・も、もしかして、ボ、ボクも・・・お尻にもみじスタンプ・・・?」

 そう思った木村は、急に顔を赤らめる・・・。学級委員の木村真司は、中学生になったのを機に、他のほとんどの男子と同様に、白ブリーフからトランクスに変えたばかりだったのだ。その日も、青地に縞柄のトランクスをはいていた。

「どうした?シンジ?文字が難しくて読めないわけじゃないだろう?さあ、早く先を読むんだ!!」

と、大悟は木村真司に促すのだった。

「学級委員のボクが・・・中学生にもなって・・・お尻を叩かれるなんて・・・そ、そんな・・・ありえない・・・しかも、もみじスタンプだなんて、ボクのお尻は・・・ニコニコ(^^)ドラッグのスタンプカードじゃないよ・・・」

 男子学級委員の木村真司は、スポーツも勉強もできる優等生。性格も温厚で、男子からも女子からも人気があり、小学生の時から毎学年クラスの学級委員だ。もちろん、親からも先生からも叩かれた経験など一度もなかった。

 大悟は、木村真司のとまどったような表情としぐさをみて、

「は、はぁ〜ん・・・シンジのヤツ・・・あの様子だと、ブリーフじゃねぇらしいな・・・あいつは優等生だからな・・・親からも叩かれたことなんてねぇんだろうな・・・まあ、いい、優等生だって、男だったら、ケツの一つや二つ、時にはぶっ叩かれた方がいいんだ・・・まあ、オレのもみじスタンプでケツ叩きデビューを飾れることをありがたく思うんだな、シンジ!・・・フフフ」

と思うのだった。

「おい、木村!!早く読めよ!!」

 顔を真っ赤にして、戸惑ったような表情をうかべる木村真司に、他の男子たちからも、先を催促する声が上がる。

 その声に、ハッと我に返った木村は、思い切ったように、

「イ 男子は、夏期冬期とも、白ブリーフを着用する!!!」

と、先生から指示された「生徒心得のV服装編の5の下着(下)のイ」の規定を、いままでよりも声を張り上げて、特に「白ブリーフ」のところは強調するように、規定の最初から一気に読み上げるのだった。

 学級委員の木村の口から「白ブリーフ」という言葉が発せられると、そこにいたクラスの男子たちからは、ドッと笑いが起こり、

「先生!!中学生にもなって、ショーパンはいてるヤツなんていませーん!!」

「そうだよ!!ショーパンなんて、ダッセェ〜〜〜!!」

との声が次々とあがるのだった。

 「ショーパン」とは、当時、男子中学生たちの間でよく使われていた「白ブリーフ」に対する蔑称で、全国的に小学生男子のほとんどが、まだ白ブリーフを日常的にはいていた時代のものである。ちなみに、「白ブリーフ」が「幼稚園パンツ」「赤ちゃんパンツ」にさらなる格下げを受けるのは、まだもう少し、あとの時代になってからなのである。

 大悟は、そんな1Aの教え子たちの反応にはおかまいなく、

「よし!これから、パンツ検査の受け方を教える!!まずは学級委員からだ!!シンジ!!前に出て来い!!」

と、いまだ真っ赤な顔をしている木村真司に、いままでよりも厳しい口調で命令するのだった。

 大悟に前に出てくるように言われた木村真司は、急に緊張し始め、ゴクリと生唾を呑み込むのだった。学級委員の心臓は、バックンバックンと、もうはちきれんばかりに鼓動していた。

「は、はい・・・」

と急に元気のない声になって、学級委員の木村は、トボトボと、大悟が立つ教壇へ上がるのだった。

 1A男子たちは全員、自分たちの学級委員の急に元気がなくなった姿を、心配そうに見つめているのだった。

 大悟は、木村真司の肩に右手をかける。木村は、自分の肩におかれた大悟の右手のひらの、予想外の大きさに、思わずケツを緊張させるのだった。

「よし!シンジ!!そこで両手を黒板について、両足を開いて、しっかりグッとふんばるようにして、ケツを後ろに突き出すんだ!!」

と、大悟は、学級委員の木村に、パンツ検査の受け方を教える。

 木村は、大悟から言われた通り、黒板に両手をつき、両足をちょっと開いて、ケツを後ろに突き出すのだった。木村の心臓は、いっそうドキドキと激しく鼓動し始めるのだった。

「いいか!!パンツ検査を受けるときは、今、学級委員のシンジがしているように、黒板に両手をついて、両足を開いてしっかりふんばり、ケツを後ろに突き出すんだ!!いいな!!」

 大悟は、そう言い終わるやいなや、木村の後ろへ廻ると、いきなり木村の体操着のジャージの腰ゴムを両手でムンズとつかみ、遠慮なしに、それをガバッと木村の膝のあたりまで、一気に下ろすのだった!!

 木村のケツをつつむパンツが、1Aのクラスメートたちの前に、惜しげもなく晒される!!木村は、自分のパンツのケツが、クラスメートたちに丸出しになったことを悟り、恥ずかしさのあまり、もう顔はゆでダコのように真っ赤だった。

 もちろん、木村のパンツは、青字に縞柄のトランクス・・・大悟は、ちょっと厳しい声色で、

「シンジ!!パンツ検査!!不合格!!学級委員のくせに情けねぇぞ!!もみじスタンプ一発追加!!ケツもみじ2発だ!!行くぞ!!」

 先生のその声を後ろに聞き、木村は、いよいよもみじスタンプが来る・・・と両目をギュッとつむるのだった。

 大悟は、右手をすくっと高く上げ、手のひらで、木村のトランクスのケツの下の方に狙いを定める。そして、思い切り、右手を振り下ろすのだった!!

バチィ〜〜ン!!

バチィ〜〜ン!!

 大悟の右手のひらは、木村の右ケツを、次に、左ケツを、下から上へ連続してすくい上げるように強襲するのだった。

「い、いたい・・・・」

と、つぶやくような小声をあげると、木村は、ちょっと泣きそうな真っ赤な顔で、黒板についていた両手を、急いでケツの方へ持っていき、トランクスのパンイチ・ケツを両掌でおさえるのだった。すでに木村のケツは、ホカホカにあたたかかった。

「よし!シンジ!!ジャージを上げていいぞ!!明日からは、生徒心得通り、白ブリーフをはいてくること!!」

 大悟のその言葉に、

「は、はい・・・」

と生気なく応える木村真司。こんなに恥ずかしくて格好悪い、もみじスタンプをケツに二発も受けてしまい、学級委員の面目丸つぶれと思ったのだろうか・・・木村は、うつむいたまま教壇を降りて行くのだった。

 恥ずかしいお仕置きを終えて、きまり悪そうに教壇から降りてくる学級委員の木村に、1Aの男子たちが次々と近寄ってきて、

「だいじょうぶか?」

「いたかったか?」

と、次々と、心配そうな面持ちで、木村に聞いてくるのだった。

 木村は、

「ちょっといたかったけど、だいじょうぶ・・・おしりがホカホカする・・・。」

と、正直に言うのだった。

 木村が驚いたことには、近寄ってきたのは、木村と仲がいい友達だけではなかった。自分と仲が悪いというわけではなかったが、小学校以来、顔はお互い知っているが、まだ話したことも挨拶さえしたこともないクラスメートまでが、自分に近寄ってきて、

「だいじょうぶか?」

「気にすんなよ・・・」

「学級委員なんだから、元気だせよ・・・」

と、応援の声さえ、かけてくれるのだった。

 そんなクラスメートたちの声を聞いて、木村真司は、「いい子」「優等生」という、小学生以来知らず知らずのうちに重いと感じていた自分へのレッテルが、自分の背中からきれいにはがれ落ち、なにか気持ちが急に軽くなったよう気分だった。担任の大悟から、生まれて初めて、お仕置きとしてケツを叩かれたのに、嫌な気分はしなかった。むしろだんだん、なにか爽快な気分になってきたのであった。

 

四、破れなかった「ショーパン君」という名の殻

 中村先生のパンツ検査では、両手を黒板につき、ケツを後ろに突き出して先生の判定を待つ!!

「ボクのパンツは合格かなぁ・・・それとも、不合格でもみじスタンプ?早く結果を教えてよーー!!」

と、もうワクワク・ドキドキ待ちきれなーーい!!状態なのだ。

 てなわけはない・・・。

 すでに体育ジャージに着替え終わった者、着替えの途中で、上は制服のシャツに下はパンツだけの者、または、パンツ一丁だけの者・・・たとえ、その時の恰好がどうであれ、すべての1A男子が、学級委員の木村がそうであったように、その日の朝、家ではいてきたパンツが白ブリーフであったのか、トランクスであったのか、すでにわかっているのだった。すなわち、黒板に両手をつくまえから、パンツ検査の結果は、少なくとも本人には自明なのであった。

 市立第三中学校、1年A組、1学期最初の、すなわち、中学生になって初めての男子パンツ検査では、1A男子20名中、すでに、学級委員の木村を含めた18名の男子たちが不合格となり、大悟のもみじスタンプをバッチィ〜〜ン!!とおケツに一発(学級委員のみ二発)頂戴し、大悟から「明日からは、必ず、生徒心得通り、白ブリーフをはいて学校に来ること!!」ととのキツイお達しを受けていた。

 しかし、クラスの雰囲気は明るかった。

 お互い仲のいい者同士、ちょっと照れくさそうな笑みを浮かべながら、己のケツに真っ赤についた大悟の右掌の「もみじスタンプ」を、パンツをペロリと少し下ろして、相手のケツについたもみじスタンプと見比べつつ、

「うわぁ!デッケェー手形!!」

「うわぁ!おまえのうすいなぁ・・・オレのは、ずっと真っ赤だぞ!」

「バァーカ!!それは、おまえのケツがオレより白いからだろ!!」

と、相手のケツについたもみじ印の「批評」に余念がなかった。

「さあ、まだパンツを先生に見せてないヤツは、早くこっちへ上がって来い!!」

と、パンツ検査も終盤、大悟のやけに気合の入った指示が1A男子たちに飛ぶ。

 担任している男子生徒20名のうち18名のケツに力いっぱいのもみじスタンプを押しまくり、さすがの大悟の右手のひらも、久々に真っ赤になり熱っていた。そして、残るは二人だった。

「はい!!」

 大悟の指示に、まず元気に返事をしたのは、野球部の山本大輔だった。山本は、やけにニヤニヤして、他の1A男子たちにピースしながら、教壇に上ってくる。

 1Aの教室が、にわかに盛り上がり始め、

「大輔だー!!ヒュー!!ヒュー!!」

「大輔!!早くパンツみせろー!!」

と、1A男子たちからさかん声がかかり、笑い声も聞こえてくる。

 すでに体操着に着替え終わり、上下、体育ジャージ姿の山本大輔は、1Aの中で一番大柄、身長も175cm近くあり、大悟と同じ背の高さだった。

 そんな山本は、「お願いしまーす!」とでっかい声で挨拶すると、再び、1A男子たちにピースサインを出して、「楽勝!楽勝!」とつぶやきながらすでにガッツポーズをとっている。

「ほら!!いいから、早くケツを出せ!!」

と、大悟から促され、野球部の山本は、黒板に両手をつき、大股を開いて、体育ジャージのケツを後ろへプリッと突き出すのだった。

 大悟は、そんな山本の後ろへ廻り、 

「どれどれ、ダイスケのパンツもみせてもらうかな!」

と言いながら、山本の体育ジャージをガバッと下ろすのだった。

「おおっ!!」

と、クラスから驚きの声が上がり、同時に、拍手がわきおこるのだった。

「えっ?ダイスケがショーパンなの?」

「ちがうよ・・・アイツ、昨日はトランクスだったぜ・・・」

「あいつ、パンツ検査のこと、知ってたのかな?」

との声が、クラスのあちこちからあがってくるのだった。

 大悟は、それを見て、ニヤリとすると同時に、目をキラリと光らせる。

「よぉ〜〜し!!ダイスケ!!合格だ!!」

と、山本に言ったかと思うと、山本の白ブリーフに覆われたケツを、右手のひらでなめるように、さすり始めるのだった!!

 さすが、小学校時代からずっとリトルリーグで野球をやっていたことだけはある。山本のケツは、中一とは思えぬほど、デカくて肉厚で、穿いている白ブリーフからはちきれんばかりだった。小学生の頃からはき古したパンツなのだろうか、やや小さめの白ブリーフからはケツがはみ出ていて、いかにも窮屈そうだった。

 そんな山本の中一とは思えぬ逞しいケツを、大悟は、「まだまだ!」といわんばかりに、執拗にさすりながら、

「ダイスケ、おまえ、いいケツしてんなぁ・・・野球部なんてやめて、オレとラグビーやんねぇか?」

と、なんとラグビーの勧誘を始めるのだった。

 市立第三中学校の数学教諭・中村大悟には野望があった。それは、市立第三中学校にラグビー部をつくり、その顧問兼監督になること・・・。

 ラガーマンはケツが命。大悟は、教え子たちの中から、ラグビー・プレイアブルなケツを持った男子生徒を見つけ出すため、彼らのケツを観察するための口実として、「パンツ検査」を、毎年、担任を持ったクラスの男子にのみ実施していたのである!!これが中村先生の男子パンツ検査の真の目的だったのだ。

 いまどきの中学生男子は、いかに強制されようとも、白ブリーフなど穿きたがらないことなど大悟は百も承知。「母を訪ねて三千里」ならぬ「いいケツ探して三千発!!」が、大悟の掲げる目標だった。

 黒板に両手をついて、白ブリーフに覆われたケツを後ろへ突き出している山本大輔は、あまりにもしつこく自分のケツをなでなでしてくる大悟に、

「せ、先生・・・もういいッスか・・・?」

と、真っ赤な恥ずかしそうな顔で聞いてくるのだった。

 大悟の「ケツ撫で」のタッチがあまりにも絶妙だったのだろうか、山本のただでさえ窮屈そうな白ブリーフのフロント部分は、もうはちきれんばかりに、異様に盛り上がってしまっていた・・・。

 大悟は、山本の真っ赤な顔と、白ブリーフのフロントの盛り上がりをチラッと見て、ラグビーの誘いに対する山本の返事を待つことなく、

「おっおぉ・・・悪かったな・・・ジャージをあげていいぞ!!オレとラグビーやりたくなったら、いつでも遠慮なく言ってこい!!」

と言うのだった。

 山本大輔は、あわててジャージを上げると、「ラグビーっすか?ちょっとピンとこないッス・・・」とでも言いたげに何度も首をかしげながら、教壇に上ってきた時とは正反対の、真っ赤な恥ずかしそうな顔で、教壇を降りていくのだった。体育ジャージの股間の部分は、いまだ異様に盛り上がり、テントを張っていた・・・。 

 そして、1A男子でパンツ検査をまだ受けていない最後の一人は、山崎卓であった。

 すでにパンツ検査を終え、やや興奮気味の1A男子たちの中で、卓は、一人、真っ赤な顔で立ちすくしていた・・・。

「さあ、もう全員、先生にパンツみせたか?まだのヤツは、はやく教壇に上がって来い!」

と、大悟の指示が飛ぶ。

 しかし、卓は、山本大輔と違って、「はい!」と返事をして教壇に上がることができなかった。

 しばし1Aのクラスが沈黙につつまれる。そして、大悟は、しばらく待っても教え子たちから返事がないので、

「そうか・・・もう全員すんだようなだな・・・それでは・・・」

と、パンツ検査の終了を告げようとする。

 だが、その時、卓のすぐ後ろにいた井上君が、「山崎!!お前、まだだろう?」と、卓の背中を小突いたのだった。大悟のいる黒板の方をみていた1Aの男子たちが、一斉に、卓と井上君の方を振り向くのだった。そして、井上君は、すくと手を挙げると、

「先生!!山崎君がまだです!!」

と、大きな声で、大悟に向かって言うのだった。

 大悟は、真っ赤な顔で立っている卓の方を見ると、

「なんだ、すぐるがまだか・・・だったら早くこっちへ来い!!おまえのパンツも調べてやる!!」

と言うのだった。

「は、はい・・・」

 蚊の鳴くような小さな声で返事をし、やや困ったような顔つきで、大悟のいる教壇の上へと向かう卓。

 そんな卓に、

「なにグズグズしてんだよ・・・早く行けよ!」

「一人だけ、もみじスタンプなしだなんて、ずるいぞ!!」

との声がかかるのだった。

 卓は、自分の前に立っている、子供の頃によく遊んでもらった大悟兄ちゃんの顔をみる。しかし、そこに立っている大悟は、あのやさしい、自分だけの大悟兄ちゃんではなかった・・・。それは、「早く黒板に両手をついてケツを出せ!」と催促している、担任の中村先生の顔だったのである。

 卓は、仕方なさそうに、両手を黒板について、両足を少し左右に開いて、後ろにケツを出す。そして、「もうどうにでもなれ!」といった風にギュッと目をつむるのだった。

「よし!!おまえのパンツもみせてもらうぞ!!」

と、後ろから大悟兄ちゃんの声が聞こえてくる。

 すると、太ももとお尻が、急にスゥ〜〜とした寒々しい感覚にとらわれる。

 それと同時に、後ろから、1Aのクラスメートたちのドッ笑いにわく声が飛び込んでくる・・・。

「あぁ・・・やっぱり・・・」

と思い、卓は、悔しそうにさらに強くギュッと目をつむるのだった。ケツと太もものスゥ〜〜とする寒々しさとは、好対照に、卓は、後頭部が、恥ずかしさでカァッと熱くなるのを感じるのだった。

「山崎、中学にもなって、ショーパンはいてんだ!!」

「ダッセェーーー!!」

と、後ろで卓の白ブリーフのケツを見ている1A男子たちからは、卓への嘲りの声が次々とあがるのだった。

 山本大輔の時とは全く正反対の反応を示す1A男子たちを、特段、注意することもなく、大悟は、

「よぉ〜〜し!!すぐるも合格だ!!」

と言うと、山本大輔にやったのと全く同じく、卓の白ブリーフに覆われたケツを、撫で始めるのだった。

 大悟の右手のひらは、卓の白ブリーフのケツを、右ケツ、そして、左ケツと、舐めるように撫で始める。そして、ケツペタを、撫でたかと思うと、ギュッとつかみ、また、ギュッとつかんで揉み揉みしたかと思えば、またやさしく撫で始めるのだった。

 卓は、気持ちいいと思った。それは、後ろで自分のことを馬鹿にしているクラスメートたちの嘲りを、一時的ではあるが、完全に忘れさせるほどの気持ちよさだった。

 大悟によってジャージをガバと下ろされ、白ブリーフのパンイチになり、スゥ〜〜と冷気を感じていたケツが、大悟の右手のひらによる「なでなで」で、ちょうどいい塩梅(あんばい)に温められる。そんな気持ちよさだったのである。

 卓は、己のケツに、大悟の右手のひらの「熱」を感じとっていた。それは、1Aのクラスメートたち18人のケツを叩いたために生じた「熱」であった。

「大悟兄ちゃんの手のひら、石みたいに堅いや・・・それに、ホッカホカに温かい・・・。みんなは、この手でバッチィ〜〜ンって叩かれたんだ・・・痛いんだろうな・・・」

 卓は、子供の頃、大悟兄ちゃんとよく腕相撲をした。もちろん、いつも負けてはいたが、大悟の手のひらの大きさは、十分に知っていた。

「あのデッカイ手が・・・ボクのお尻をさわっている・・・」

 そんなことを考えているうちに、卓の白ブリーフの中で縮こまっていた、卓のリトルウィニーが、ムクムクと鎌首をもたげ始めるのだった。

「や、やばいかも・・・」

と思い始める卓。そして、卓は、チラッチラッと、大悟の方に目をやるのだった。

 その視線に気がついたのか、大悟は、やっと、卓のケツを撫でるのをやめ、

「よし!!ジャージをあげていいぞ!!」

と言うのだった。

 大悟の許可を得て、ジャージをサッと上にあげ、教壇から降りる卓。そんな卓に、1A男子たちからは、

「ダッセェー!」

「おまえ、今日、パンツ検査あるって知ってたのか?ズルいぞ!」

「ちがうよ!こいつ、中学生にもなって、まだショーパンはきつづけてるんだぜ!!」

と、次々、辛辣な言葉が浴びせられるのだった。

 野球部の山本大輔と、囲碁・将棋部の山崎卓の、キャラクターの違いといってしまえば、それまでなのだが、自分にあびせかけられるクラスメートの心無い言葉に、卓の心は大いに傷つくのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・ 

 このパンツ検査をきっかけに、山崎卓は、1Aクラスメートから、「ショーパン君」という、あまりうれしくないあだ名をいただいてしまう。そして、ことあるごとに、卓は、男子のクラスメートから、からかわれてしまうのだった。

 もちろん、最初は、卓も、自分のことをからかうクラスメートを見返してやろうと、トランクスをはいて登校することもあった。しかし、体育前の着替えの時間に、

「おい!!見ろよ!!ショーパン君が、トランクスはいてるぜ!!」

「生意気だよ!!脱がしちゃおうぜ!!」

と、卓に対する、新たな「からかい」が始まってしまうのだった。

 それ以来、卓は、「トランクスはいてもからかわれるんだったら、白ブリーフの方がいいや!!」と、再び、白ブリーフを穿くようになり、もう二度と、スーパーで買ってきたトランクスの袋を開けることはなかったのだ。 このまま「ショーパン君」でいた方がむしろ楽なような気がしたのであった。

 一回目のパンツ検査以来、しばらくは、男子の体育の着替え中に中村先生が教室に入ってきて「男子パンツ検査」を宣言することはなかった。

 もちろん、1Aの男子たちは、卓を除いて全員、

「ダッセーショーパンはくくらいだったら、ケツもみじの方がずっといいよな!!」

と言って、「男子は全員白ブリーフ着用!!」との大悟の言いつけを守る者などいなかったのである。それは、もちろん、学級委員の木村真司もそうである。

 そして、パンツ検査がしばらくなかったことで、1A男子たちは、パンツ検査のことさえ忘れかけていた・・・

 しかし!!「男子パンツ検査は忘れたころにやってくる!!」格言通り、一学期最後の体育の授業の前、それは水泳の授業だったのだが、スクール水着に着替え中で、いつもの通りワイワイガヤガヤ騒がしい1Aの教室の扉をガラッと開けて中村先生が入ってきたのであった!!

 そして、あの一学期の最初のパンツ検査の時のように、

よぉ〜〜し!!おまえらA組男子は、これからパンツ検査だ!!」

と、宣言したのであった。

 もちろん、結果は、記念すべき第一回1年A組男子パンツ検査とほぼ同じだった。

 まずは、学級委員の木村真司のケツにバチィ〜〜ン!!バチィ〜〜ン!!と二発連続もみじで露払い!!

 運動部連中が多数を占める後半は、まさに三役相撲ならぬ、プリケツ、ムッチリケツ揃いの「三役ケツもみじ」で多いに盛り上がり、大関級のケツを持つ、野球部の山本大輔の「ムッチリケツ」へのもみじで、その盛り上がりは頂点となる。

 しかし、 最後にひけぇ〜し!!東の横綱・山崎卓が、あっさり「合格!!」白ブリーフのおケツ撫で撫で!!で、教室はなぜか急に盛り下がり・・・「ったく、まだアイツ、ショーパンだったのかよ?」のヤジが飛ぶ中、パンツ検査は終了するのだった。

 ただし、今回は、スクール水着への着替えの最中だったので、すでに着替えが終わった者は、先生にはいていたパンツをみせ、スクール水着のケツに、もみじスタンプ、バッチィ〜〜ンであった。

 今回も、 大悟兄ちゃんの右手のひらにこもった、クラスメート19人のケツの熱気を、己のケツに感じることができるという「特権」を思う存分エンジョイ、すなわち、享受した卓・・・しかし、後悔する気持ちもまた半分だった・・・。

「ボ、ボクだって、トランクスはいて、最後を盛り上げたかったんだ・・・けど、ボクのトランクス姿のお尻を見た時の、みんなの反応を想像すると・・・なんか不安でなんか急に恐くなって・・・だから、ダメだったんだ・・・あぁ・・・ボクも大悟兄ちゃんからお尻にもみじスタンプ押してもらいたかったなぁ・・・」

 そして、卓のこの思いは、プールサイドに出て行って、ますます強まっていく。

 水泳の授業前、まだ体育の小暮先生は、プールサイドに出てきてなった。そんな中、1A男子の木村真司(学級委員)、高山将太、秋田博史の1Aテニス部三人組が、なにやらワイワイと騒いでいる。そして、それを、近くで、山崎卓がさりげなくながめていたのだった。

「シンジは男子学級委員なんだからさー、二学期のパンツ検では、ショーパンはいて、先生のこと、喜ばしてやれよ!!」

「よし!!合格!!お尻、なでなで!!」

「ワハハハ!!あのケツを撫でるときの先生の手、なんかエロいよなぁ・・・って、井川先輩が言っていた。」

「ワハハハ!!」

「えーー、いまさらショーパンなんて、やだよ・・・恥ずかしいし・・・」

と、木村真司は、顔を少し赤らめて言う。

 しかし、木村は、そう言ったすぐあと、高山と秋田が、近くにいた山崎卓のことに気がつき、いつものように「ショーパン君」ってからかう雰囲気を察知するのだった。卓へのクラスメートからの「ショーパン君」からかいは、パンツ検査がなかったことで、しばらくは下火になっていたのだった。 

 木村は、「や、やばい、すぐるがピンチだ!!」と思うと、高山と秋田の注意を、自分の方へ向けさせようとして、

「奥様、水曜日は、お得なスタンプ2倍押しデーですよ!!」

と冗談めかして言うと、クルリと後ろを向き、スクール水着を少し下ろして、己の左右のケツにベッタリとついた大悟の右手新作:「学級委員のケツに押された、二つの真っ赤なもみじスタンプ」を高山と秋田にみせつけるようにして、ケツをフリフリするのだった。

 思えば、ほんの2か月半ほど前、あの第一回男子パンツ検査で不合格となり、華々しくケツもみじデビューを果たして以来、木村真司は、そのやさしくて温厚な性格はそのままに、同じ部活の連中と一緒のときは、そんなおふざけもできる硬軟併せ持つ中学男子に成長していたのである。

「うわぁ!!シンジのケツもみじ、すっげぇー!!オレのも見てみ・・・そんなに濃くないぜ!!」

と、高山君が、やはりスクール水着をペロリとめくって、己の左ケツについたもみじスタンプを披露する。

「おお、結構、クッキリでてるじゃん・・・」と木村君。

 そして、秋田君も、負けじと、

「オレのもみてみろよ・・・今日は、ケツのド真ん中にバッチィ〜〜ンだったんだぜ!!」

と、やはり水着をペロリめくって、自慢する。

「おお、もみじが真ん中から真っ二つに割れている!!」と、木村君の名・迷コメント。さすが学級委員だ。 

 もみじ模様は、それぞれ違っても、1Aテニス部三人組のケツは、「テニス焼け」した他の体の部分と違って、妙にべローンと白かった。

 そんな三人の背後から、ちょっと遅れて、プールサイドに出てきた体育担当の小暮先生がしのびよる。そして、いきなり、

「コラ!!そこでなにケツを見せ合っているんだ!!整列して待つようにいっただろうが!!」

と、一喝。 

 三人は、びっくりして、小暮先生の方を見る。

 A組男子の「ケツもみじ」のことは、先刻ご承知の小暮先生は、

「早く整列しろ!!でないと、俺からも、おまえらのケツに記念のスタンプを押してやるぞ!!」

と、中村先生よりもデッカイ、右手のひらをバッとひらいて、ケツを叩くしぐさをするのだった。

「う、うわぁ!!い、いいです・・・・」

「え、遠慮しときます・・・」

と言って、そそくさと小暮先生の前から退散する三人だったのである。

 小暮先生は、ニヤニヤ笑いながら、「ったく、しよーがねーなー」とコメディアンで俳優の伊東四朗の真似をしてつぶやくのであった。

 小暮先生は、ジョークを解する先生だ。実は、市立第三中学校では、大悟と並ぶ、「ケツもみじ」の名手。三中男子の多くが、小暮先生の右掌でベッチ〜〜ンと強烈にスタンプされる「ケツもみじ」を経験済みだった。

 そう、三中において、男子の尻を一発ないしは二発、生活指導、懲戒のために平手打ちすることを「もみじスタンプ」と名付けたのは、他ならぬ小暮先生だったのである。 

 そんな木村真司たちを、じっとうらやましそうにいつまでも見つめ続ける山崎卓。

「シンジ君たちに混じって・・・ボクも、お尻のもみじスタンプ、お互いに見せっこしたかったなぁ・・・でも、そのためには・・・」

 そんなことを繰り返し思う卓。

 1Aの男子連中が、卓のことを「ショーパン君」と侮蔑するなか、学級委員の木村真司だけは、卓のことをからかったりはせず、「すぐる」と呼んでくれた。そして、時には、

「すぐる!!元気か?あいつらの言っていることなんて気にすんな!!」

と声をかけてくれたり、お互い部活のない時は、「すぐる!!一緒に帰ろうぜ!!」と誘ってくれたりもした。それが卓の唯一の救いだった。

 きっと、木村真司は、卓が入ってきさえすれば、卓のことを、喜んで仲間として受け入れたであろう。

「おまえのケツもみせてみ・・・」

と言ってくれたに違いない。

 しかし、卓は、その一歩を踏み出すことができなかった。

「よし!!二学期こそはトランクスをはくぞ!!」

と、夏休み前には決意するのだが、いざ、二学期になると、やはり白ブリーフをはいて登校してしまう。結局、卓は、「ショーパン君」の殻を破ることができなかったのである。

 二年生なると、中村大悟も、卓たちの学年の担任からは外れ、「男子パンツ検査」を受けることもなくなった。また、市立第三中学校では、毎年クラス変更があるため、木村真司とも別々のクラスになった。

 三年生の時も状況は同じで、結局、卓が夢見た、プールサイドでの木村真司との「ケツもみじ」の見せ合いっこは、実現することなく、卓の中学時代は終わりを告げたのであった。

 ただ、一年生の時はイマイチ、イケてなかった山崎卓も、二年生、三年生と一生懸命勉強をがんばり次第に自分に自信をつけていく。そして、優等生の木村真司と同じ、県下一番の進学校である、県立第一高等学校へ進学することができたのであった。

 このことは、卓にとっては、「ショーパン君」の汚名を十二分に払しょくできたと自負できるほど、喜ばしく名誉なことだったのである。

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