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「色柄を持たないパンツはく山崎すぐると、彼の担任の中村大悟」

番外編03 ちょっとワケあり!? 野球部・山本の白ブリーフと、あの日の6時間目

 

 夕方、市立第三中学・野球部の練習もやっと終わり、1年A組で野球部員の山本大輔が、重い部活バッグを持って、一人、家に帰る途中だった。

「よお!!大輔!!元気か?」

と、後ろから3年C組の岡留修一が声をかけてくる。岡留は、野球部の主将だった。

「チワッス!!」

と、野球部流のあいさつをする山本。

 岡留と山本は、同じ団地に住んでいて、小学生の頃、山本大輔は、岡留にキャッチボールをしてよく遊んでもらっていた。しかし、いまは、同じ部活の先輩と後輩の間柄だ。いままでのようにはいかなかった。

「おまえ、1Aだったよな・・・担任だれだったっけ?」と、岡留主将は山本に聞いてくるのだった。

「ィッス!!数学の中村先生です!!」と、先輩の質問に答える山本。

 その答えに、岡留先輩は、なんともいえない笑みを顔に浮かべて、

「そうか・・・あいつか・・・オレも二年生の時、アイツが担任でさぁ・・・で、もう体育の授業あった?」

「えっ?」

「あっ・・・わりぃわりぃ・・・中村の数学の授業じゃなくて・・・それとは別に、体育の授業のこと。」

「ィッス!!先週、1週間、全学年の体力測定があって、クラス毎の授業は、明日からです!!」

「そうか・・・だったら、明日は、ショーパンはいていった方がいいぜ!!」

「ィッス!!でも、なんでですか?」

「ワハハハハ!!それは明日になればわかるよ!!じゃーなっ!!明日の朝練遅刻すんなよ!!」

「ィッス!!失礼します!!」

 気がつけば、すでに山本の住む、団地の前まで来ていたのである。山本は、野球部の主将と一緒で、かなり緊張してしまっていたのだった。

「ショーパンの方がいいって、なんでなんだ?」

と考えながら、市営団地・D棟・3階にある自分の家へと階段を昇っていく山本大輔だった。

 しかし、どう考えても、なぜ、白ブリーフを穿いていった方がいいのかわからなかった。1Aのクラスメートも、部活の友達も、そんなこと誰一人として言ってなかったはずだ。

 念のため、仲のいい友達数人の家に電話をしてみたが、

「ショーパン?そんなの知んねぇよ・・・」

「バァーカ!そんなわけねぇだろ!!それに、うちの親、オレのショーパン、全部、掃除するときの雑巾にしちゃってさー、オレ、全然持ってねぇよ・・・」

「バァーカ!それは、トランクスだと、体育の短パンからハミパンするからヤバいっていう意味じゃねぇ?でも、あしたは、短パンはかねぇから、そんなの関係ねぇーだろ!!長電話すると、親がうるせぇから、もう切るぞ!!じゃーな!!」

とかいう返事ばかりだった。

 それでも、山本大輔は、悩むのだった。これはひょっとして自分への罠なのか・・・。

 その日の野球部の練習で、朝練に遅刻した2年生の森原先輩が、午後の練習で、気合入れと称して、校庭の朝礼台の上に、パンツ一丁で立って、何度も校歌斉唱の声出しのシゴキをうけていたのだった。

「もしかして・・・森原先輩はトランクスだったからまだいいけど、ショーパン一丁であれやらせられたら、超恥ずかしいじゃん・・・まさか・・・でも、朝練遅刻すんなって、わざわざ、先輩が念押ししたのも、なんかあやしいなぁ・・・」

 しかし、どう考えても、岡留先輩が自分のことを罠にかけるとは思えない。たしかに野球部では恐い先輩だけど、ガキの頃、よく一緒に遊んでもらった経験から、岡留先輩は、後輩の誰か一人をターゲットにして、ウソをついてからかったりする先輩でないことを、山本大輔はよくわかっていたのである。

 その晩の夕食の時も、風呂の時も、テレビを観ている時も、寝る時も、山本大輔は、次の日、学校にはいていくパンツのことが気になって仕方なかったのである。そして、明日提出しなければならない、数学の宿題プリントのことを、完全に忘れてしまっていたのだった!!

・・・・・・・・・・・

 翌朝。山本大輔は、

「よし!!オレは、キャプテンのことを男して信じるぜ!!」

と、タンスの奥にしまいこんであった白ブリーフを穿いて登校するのだった。

「うわぁ・・・なんかチンチンが蒸れる感じがするよな・・・」

と、山本は、トランクスをはいたとき股間に感じる、あのスースーブラブラ感に慣れてしまい、小学校卒業以来、久々の白ブリーフの股間が窮屈に感じられて仕方なかった。

 そして、午前中の体育の授業前のパンツ検査・・・

 山本大輔は、

「やったじゃん!!やっぱ、キャプテンの言ってたことはウソじゃなかったんだ!!」

と思い、ひそかにガッツポーズをとっていた。

 そして、自分の順番を待つ間、気分はもうルンルンだった。山本大輔は、ニヤニヤほくそ笑みながら、「よし!!オレの番は、できるだけ後の方が、効果的だぞ!!みんな、びっくりするだろうな・・・エヘヘ」などと思っていたのである。

 やがて、ケツから2番目。自分の番になり、黒板に両手をついて、白ブリーフに覆われた自分のムッチリケツを、クラスの男子たちの前におしげもなく晒し、先生から「よし!!合格!!」で、おケツなでなで!!これはちょっとヤバかったが・・・それでも、自分の「どや顔」ならぬ、ムッチリ「どやケツ」で、大いにクラスの雰囲気を盛り上げられて、その日の山本大輔は、いつも以上に意気揚々としていた。

 しかし、6時間目の数学の時間。

 中村先生から「よし!!先週、出しておいた宿題プリントを、提出すること!!」と言われ、クラスの中で、自分だけが、その宿題を完全に忘れていたことに気がつくのであった。

 それでも、山本大輔は、持ち前の潔さ(いさぎよさ)で、「先生、宿題忘れました・・・」と、一人前に出てきて、申告するのだった。

 もちろん、大悟は、ニヤリと笑って、

「ダイスケ!!もちろん、約束は忘れてないだろうな・・・数学の宿題を忘れたヤツのケツには、バッチィ〜〜ン!!ってもみじスタンプだって言ったよな!!

と、山本大輔にお仕置きの宣告をするのだった。

 クラスの男子たちからは、ドッと笑いが起こり、女子たちからは、ざわめきが起こる。

 山本は、男子だけの時とは違い、さすがに恥ずかしそうに顔を赤らめながら、ちょっと口ごもりがちに、

「は、はい・・・」

と返事をするのだった。

「よし!!だったら、教壇に上がって、黒板に両手をついて、ケツを出せ!!」

と、大悟は、宿題を忘れた山本に命令するのだった。

 山本は、今度は潔く「はい!!」と返事をして、教壇に上がり、午前中にパンツ検査を受けた時のように、両手を黒板につき、両足を左右に開き、ケツを後ろにプリッと突き出すのだった。

 山本の黒の学生ズボンのケツは、まだ中学生になって1か月にもならないのに、もうテカテカに黒光りしていた。

 大悟は、午前中のパンツ検査で、大悟のブリーフ一丁のムッチリケツを、これでもかというほど、撫で回して、山本大輔のケツが、1A男子たちの中で、一番「堅い」ケツであることを知っていた。

「さすが野球で鍛えているよな・・・ダイスケのケツは、中一にしてはすげぇ堅てぇから・・・気合入れてひっぱたかないと、オレの平手の方が負けちまうからな・・・いままでよりも、ちょっと斜め後ろにさがってだな・・・」

と、そんなことを考えながら、山本大輔の黒光りしている学生ズボンのケツのド真ん中に、平手打ちの狙いを定める大悟だった。

「よほど、スナップきかせねぇーとな・・・あれだけ鍛えた堅いケツだと、いい音出せねぇぞ・・・・」

 そんなことも考えながら、山本のケツに狙いを定め、大きく後ろに上げた右手のひらに、全身の力を集中させようとする大悟だった。

 大悟の「もみじスタンプ」は、たしかに多少は痛いのだが、中学生男子にとっては、「恥ずかしい罰」の意味合いの方が強かった。

 「恥ずかしい罰」の意義は、その罰を受けなければならない本人への懲戒効果もさることながら、クラス全体への見せしめ効果も大きい。その場合、ケツに「もみじスタンプ」を押す際の、「ケツ打音」は大切であった。バッチィ〜〜ンと、隣の教室まで響くくらいの音響効果が出る「もみじスタンプ」であった方が、その見せしめ効果は高いのである。

 山本のケツをひっぱたこうと、振り上げた右腕を、思い切り下ろそうとしたその時だった。

 1A男子のほぼ全員から、手拍子とともに、

「ショーパン一丁!!」「ショーパン一丁!!」「ショーパンみせろ!!」「ショーパンみせろ!!」

との声が、黒板に両手をついてケツを出している山本大輔にかかるのだった。

 これには、大悟も苦笑いする。

「ったく、今はやしたてている男子たちは、何考えているんだ・・・山本は、女子たちもいる前で俺からケツを叩かれようとしているんだぞ・・・ただでさえ恥ずかしいはずなのに・・・さらに、ズボンをおろして、パンツのケツを晒せだなんて・・・男同士、相憐れむっていうか、同情心っていうか・・・男同士でなきゃわからねぇ連帯感っていうのが、最近のガキにはないのかね・・・」

と思い、いまさかんに「ショーパン一丁!!」「ショーパンみせろ!!」コールで囃し立てている1A男子の連中を、

「やめろ!!やめんと、おまえらも山本と一緒にケツもみじだぞ!!」

と警告し、鎮めさせる決心をする。

 しかし、大悟が警告しようとする前に、山本大輔自身が、「おお!!」と男子の方に向かってガッツポーズをとると、学生ズボンのベルトを外して、ズボンを少しさげると、白ブリーフのムッチリケツを、わざと女子の方に向かって見せつけるようにして、

「お願いしまーす!!」

とおどけた調子の大声で言うと、再び、黒板に両手をついて、ケツをプリッと後ろに突き出すのだった。

 それにはさすがの大悟もやや呆れ気味。ニヤニヤしながら、

「野球部員はデカい声とノリの良さが唯一のとりえって言うのは、いつの時代も変わらんらしいな・・・まあ、いい、本人がパンツ一丁のケツを叩いて下さいってケツ出したんだからな、遠慮なく行くぜ!!」

と思うのだった。

 1A男子たちは、山本のノリの良さに大いにわき、1A女子たちは、「キャーーー!!山本君、ヤダーーー!!」と声を上げて、両手で顔を隠すのだが、女子全員、目はしっかりと見ひらいて、指の隙間から、野球部・山本のブリーフ一丁のムッチリケツを、「こんなチャンス、めったにないわ!!」と言わんばかりに、じっくりと観察することに余念がない。

 ほどなく、大悟は、

「よし!!行くぞ!!」

バッチィ〜〜〜〜ン!!

と、山本のケツに、宿題忘れのお仕置きのキツイもみじ一発を見舞うのだった。

 山本は、

「いってぇーーー!!」

とデカい声でいいながら、学生ズボンを上げることもなく、ブリーフのケツを両手で押さえながら、教壇の上で、ピョンピョンと飛び跳ねているのだった。

 これには、1Aの男子からも女子からも笑いが起こる。こうして、またもや、野球部・山本のブリーフ一丁のケツは、クラスの雰囲気を大いに盛り上げたのであった。

 一方、大悟は、生徒たちには聞こえないように、小声で、

「畜生・・・いってぇのは、オレの右手だぜ・・・アイツのケツ、どこまで堅いんだ・・・ったく・・・」

と、つぶやくことしきりだった。

 最後に後日談だが、この山本のブリーフ一丁のケツ見せ効果は、女子たちの間にかなりのインパクトを与えたらしく、2学期の始業式後に行われた学級委員選出投票では、女子票のかなりの部分が、木村真司から、山本大輔に流れ、結果は順当に木村真司が男子学級委員に選ばれたものの、木村真司と山本大輔の票差は、わずか一票だったのである。

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