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「色柄を持たないパンツはく山崎すぐると、彼の担任の中村大悟」番外07頭髪検査と懲罰床屋1980のスピンオフ

「大悟の兄貴・圭悟と県立一高の仲間たち」 パート1 1980 兄貴もつらいぜ!!オヤジ・悟の書斎 


 それは、大悟たちが住む県において、高等学校・普通科がまだ男女別学で、県下一の進学校・県立第一高等学校が、男子校だった時代のお話である。「男女七歳にして席を同じうせず」(だんじょしちさいにして せきをおなじゅうせず)という戦前の教えがその県の学校制度にもまだ残っていた時代だった。



一、圭悟のブリーフより分け


 中村家の邸宅。母屋二階にある次男・圭悟と三男・大悟の部屋。

 「離れ」では別々だった弟の大悟と、再び母屋で相部屋になったことは、兄の圭悟にとって非常に不満だった。

 圭悟にとってさらに不満だったのは、キミさんが洗濯してくれた自分の下着が、弟の大悟の下着と一緒になって戻ってくることだった。それらを自分の下着と弟の下着により分けることは、男子高校生の圭悟にとっては、ちょっと面倒なことであった。

 もちろん、そういった「雑用」は、部活同様、後輩に、すなわち、弟の大悟にやらせてもよいのだが、兄・圭悟にとって、弟・大悟の性格を知っているだけに、任せられないのであった。

「アイツに任せたら、オレのブリーフ、はき始めるからよ・・・これだけは、オレがやらないとな・・・」

 圭悟と大悟は、当時の男子では一般的だった白ブリーフをはいていた。しかも、大悟と圭悟の体格は、ほぼ同等で、ブリーフのサイズも同じだった。しかも、彼らの白ブリーフは、お手伝いさんのキミさんがイトーヨーカドーなどで一緒に調達してきてくれるので、メーカーもタイプも、グンゼYGティーンズかBVDで一緒だったのである。

 ただ、大悟の白ブリーフは、三中の校則により、氏名・クラス名が書かれているのですぐに見分けはつく。

 しかし、弟の大悟は、そこらへんがおおらかというか・・・、兄貴のパンツと自分のパンツをしばしば混ぜてしまい、兄貴のパンツに氏名・クラス名を書いて学校へ穿いて行ってしまうこともあったのだ。

 一方、兄貴の圭悟は、そこらへんが弟よりも神経質なのか、いや、むしろそれが普通なのかもしれないが、自分以外の誰かが一度はいたパンツをはくなどということは、例えそれが徹底的に洗濯してあったとしても、圭悟にとっては、絶対にありえないことなのであった。

 いやそれだけではない。大悟はやや不精なところがあって、圭悟ほどマメにパンツをとりかえず、大悟のパンツは、洗濯後でも、染みがついていることが多かったのだ。

 野球部のユニの汚れはそれほど気にならない圭悟であっても、そんなバッチィ弟のパンツと自分のパンツを混ぜこぜにするなど、絶対に許せないことだったのだ。

「チェッ!!!最近のキミさんの仕事って、なんか雑だよなぁ・・・前は、オレと大悟の下着、しっかり分別してたたんでカゴに入れておいてくれたのに・・・」

 そんなことをブツクサいいながら、部屋で一人、圭悟は、カゴに入れられた自分と弟の下着を眺めるのだった。

「さてと・・・パンツからいくか・・・ああ、面倒くさい・・・これは・・・オレの、オレの、オレの、おっと、これは名前付きで大悟のか・・・オレ、オレ、オレ、オレ、大悟・・・ったく、アイツ、もっとマメにパンツとりかえろよな・・・でないと、女の子にもてねぇーのに・・・・うわぁ・・・大悟のパンツ、染みがまだうっすらついている・・・汚ったねーな・・・」

 そんなことを言いながら、圭悟は、週末恒例のブリーフより分けをしていくのだった。


二、キミさんにお願い!!

 そんなある日、圭悟は、ついつい日ごろの不満をキミさんに向かって口にしてしまうのだった。

「あの・・・キミさんにお願いなんですけど・・・手間がかかるのはわかるんですけど、オレと大悟のパンツ、別々に洗って、別々にたたんで、部屋に持ってきてもらえませんか?」

と、中村家・母屋・一階の洗濯室で、圭悟がキミさんに依頼する。

 そんな圭悟のわがままなお願いに、やさしいキミさんは、にっこり微笑んで、

「はいはい、圭悟さんがそうしてほしいなら、今度からそうしますね・・・」

と言う。

 しかし、キミさんの手助けとして中村家に通っている、もう一人のお手伝いさんの大久保佳代子は、

「まあ、圭悟さんったら、わがままなんだから!!そんな手間がかかることできるわけないですよね・・・卓君のおしめの洗濯で手一杯だっていうのに!!」

と、キミさんに同情的だ。キミさんは、昔ながらの手作り「おしめ」派で、「おむつ」派ではなかった。パンパースとかムーニーマンなど、キミさんの辞書にはないのである。

 佳代子は、まだ20歳になったばかりで、圭悟と年齢が近いだけに、圭悟にはいつも手厳しかった。そして、「圭悟君には、ちょっとお仕置きが必要なようね!!」と、佳代子は思うのだった。

 通いのお手伝いさんの佳代子も、中村家内部の人間力学はよくわかっている。現在の中村家で、オヤジの威光は絶対で、次男・圭悟が一番の苦手にする人物は、父親の悟(さとる)だということを。そして、父親・悟の、圭悟に対するお仕置き法も熟知していたのだ!!

 もちろん、大久保佳代子は、今回の圭悟のわがままを、圭悟の父親・悟に、直接いいつけたりはしない。なぜなら、お手伝いさんの大先輩であるキミさんが、それを嫌うからだ。

 その代り、中村家の主人・悟が、勤務先の一中から戻った夜遅く、一人で夕食の時に、

「あっ、いけないわ・・・圭悟さんと大悟さんの下着を別々に洗うの忘れてた・・・圭悟さんに頼まれたのに!!わたし、圭悟さんからおこられちゃう!!」

と、主人・悟にもはっきり聞こえるように、独り言をつぶやくのだった。

 もちろん、キミさんは、

「佳代ちゃん、旦那様がお食事中ですよ!!」

と、佳代子をたしなめるのだが、後の祭りだった・・・。

「キミさん、悪いなぁ・・・また、圭悟がわがまま言って・・・」

と、主人・悟は、キミに謝り、なにか決意したような顔つきをするのだった。


三、オヤジ・悟の書斎

「圭悟!!ちょっと、とうさんの部屋に来なさい!!」

 母屋二階の圭悟と大悟の部屋のドアがノックもなしに開き、オヤジ・悟の厳しい声が響く。

 圭悟は急に不安そうな顔になり、ゴクリと生唾を飲み込む。そして、大悟は、顔にニヤリとうすら笑いを浮かべる。

「は、はい・・・いま、行きます!!」と、戸惑いがちに返事をする圭悟。

「兄ちゃん、何やらかしたんだよ!!」と、大悟。

「うっせー、おまえはだまってろ!!」

 そう言い残して、県立一校の硬式野球部ジャージを着た圭悟が、部屋を出ていくのだった。


 一階。一番奥の部屋が和室で、そこがオヤジ・悟の書斎だった。

「オヤジの書斎は、いつも本当に緊張するよな・・・」と思う圭悟。

 中村家の息子たち、とくに、長男の正悟と次男の圭悟にとって、オヤジは、怖い存在以外のなにものでもなかった。ただし、末っ子の大悟には、兄貴たちには厳しいオヤジも、やや甘いところがあった。

「圭悟です!!」

 そういって、オヤジ・悟の書斎のふすまの前の廊下に正座する圭悟。

「よし!!入れ!!」

 そういって、正座したままふすまをあけ、

「失礼いたします!!」

と言い、立ち上がって、部屋に入ると、今度はふすまの方を向いて正座し、いまあけたふすまを閉めるのだった。

 これは、中村家三兄弟が、茶道の師範でもあるオヤジ・悟に、小さいころから仕込まれた、和室に入る際の最低限の作法でった。

 もちろん、茶道における立ち居振る舞いは、さらに細かく厳密である。オヤジ・悟は、市立一中で茶道部の名誉顧問を務めており、特に男子部員にお作法をビシビシ伝授していた。

 オヤジ・悟は、黒檀の重厚な座卓の前に、濃紺の大島紬(おおしまつむぎ)の着物で、正座していた。部屋奥の庭側には、悟の勉強机である座敷机がみえる。

 そして、座卓を挟み、悟の正面には、ただ畳があるのみ、お座布団は置いてなかった。お座布団が置いてない時は、説教か叱られる時と相場は決まっていた。そして、オヤジも座布団なしで座っている・・・叱られることは確実だった・・・。

「あぁ・・・オヤジ、怒ってる・・・」

と思い、再び、ゴクリと生唾を飲み込む圭悟。

「そこに座りなさい!」

「は、はい・・・・」

 オヤジの指示通り、座卓を挟み、オヤジの正面に正座する圭悟。オヤジの前に正座させられると、いやでも背筋がピンと伸びる。そんな威圧感と雰囲気が、オヤジとオヤジの書斎にはあったのだ。

 市立一中の教頭として多忙なオヤジ・悟は、前置きなど一切なく、

「キミさんにおまえと大悟の下着を別々に洗ってほしいと言ったらしいな?」

と、単刀直入に聞いてきた。

「あ・・・そのことか・・・」と思い、

「は、はい・・・大悟って不精でパンツ毎日とりかえないから、不潔なんですよね・・・とうさんからも大悟に言ってくれませんか?」

「ばかもん!!そいういことを弟に指導するのは、兄貴のお前の役割だろ!!わたしやキミさんを巻き込むなど、見当違いもはなはだしい!!特に、キミさんは、卓君の世話でいままでより忙しくなったことを、おまえも承知しているはずだ。」

「は、はい・・・で、でも・・・」

「でも、なんだ?」

「い、いえ、なんでもありません・・・」

 圭悟は、「それがキミさんの仕事でしょ・・・」と喉元まででかかっていた言葉をグッと飲み込む。火に油を注ぐような結果になりかねないからだ。

 しかし、オヤジ・悟は、次男の気持ちを見透かしていた。オヤジは、ややいらだったような溜息を一つもらすと、

「県立一校に入って、少しは大人になったと思っていたが、おまえは、まだまだ子供だったようだな・・・。こっちへ来なさい!!」

 そいうと、オヤジ・悟は、正座したまま、両手拳を畳の上につくようにして、体重を後ろへと移動させる。

「えっ・・・・」

「えっ、ではない!!とうさんのところへ来なさいと言っているのがわからないのか!!」

 オヤジ・悟は、いつになく高圧的に、圭悟に指示を出すのだった。

 圭悟は、オヤジ・悟の揺るぎのない決意を悟ったのか、あきらめたような溜息を一つもらすと、元気なく、

「は、はい・・・・」

と返事をすると、やはり両手拳を畳の上につくようにして、体重移動を繰り返し、父親が正座している右わきへと移動するのだった。

 そして、自分の右わきに正座している次男・圭悟に、短く、

「膝上だ!!尻を出しなさい!!」

と言うと、着物の右袖をまくり上げるのだった。

 圭悟は、オヤジからお仕置きされることをさとり、あきらめたように、ガックリとうなだれて、

「膝上、失礼いたします!!」

と挨拶すると、正座の姿勢から両膝をついて立ち上がり、「県立一高 硬式野球 中村(圭)」とネームの入った黒のジャージパンツを膝まで下ろして、オヤジの正座している膝上に上体を寝かせ、ちょうど己の白ブリーフ一丁のケツがオヤジの膝上にくるように移動するのだった。

「おまえがいくつになっても、子供と同等の振る舞いをしたとき、わたしはおまえのことを子供と同様に扱う!!いいな!!」

「は、はい・・・」

 圭悟は、屈辱と悔しさで唇をグッと噛みしめ、白ブリーフの綿生地でつつまれた己のケツに、間もなく打ち下ろされるであろうオヤジの平手打ちの衝撃に備えるのだった。

バチン!!バチン!!

 圭悟は、オヤジの平手打ちで、己のケツから発せられた打音の大きさに、ハッとして目をつむる。いつの頃からか、オヤジの書斎でのケツ叩きは、圭悟にとって、痛い罰から恥ずかしい罰へと変質していた。

「うわぁ・・・すげぇ・・・でけぇ音だ・・・これじゃ、家中に丸聞こえだな・・・」

 圭悟は、そう思うと、恥ずかしさで、カァ〜っと後頭部が熱くなる。オヤジの平手打ちを食らってボワァ〜ンと温かくなってきたケツとは対照的だった。

「よく反省するんだ!!」

バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!

 小気味よくリズミカルに、オヤジ・悟は、自分の膝上にのった高2の息子・圭悟の白ブリーフのケツを打ち据えていく。

「もう高2なんだ、キミさんのやり方に不満があるのなら、自分の下着くらい自分で洗濯しろ!!」

バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!

「は、はい・・・」

 その音は、二階の大悟の耳にも届いていた。

「フフフ・・・圭悟兄ちゃん、とうさんからケツ叩かれやんの・・・いつもオレには威張ってるクセに、ダッセーよな・・・でも、すげぇーいい音出してんなぁ・・・兄ちゃんのケツ・・・俺も叩いてみてぇーー」

と思う大悟。大悟の逸物は、ジャージパンツの中で、猛々しくテントならぬピラミッドを張っていた・・・。

バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!

「よし!!仕上げだ!!パンツを下ろす!!」

「は、はい・・・」

 圭悟は、一度、上体を起こすと、さらに顔を真っ赤に染めて、白ブリーフの腰ゴムに両手の親指をかけて、それを自分の腿のあたりまで下げて、再び、オヤジの膝上に己のケツを戻すのだった。

「わたしの膝上で、尻丸出しの恥ずかしい恰好をするのは、もうこれが最後になるよう、しっかり精進するんだ!!」

「はい!!」 

バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!バチン!!

「よし!!起きて、パンツとズボンを上げなさい。」

「は、はい・・・ご指導、ありがとうございました!!」

「よし!!部屋にもどっていいぞ!!それから・・・あとは言わなくてもわかっているな!!」

「は、はい・・・わかってます・・・失礼します・・・」

 圭悟は、情けなさと恥ずかしさに耐えながら、オヤジから教わった通りの作法で、オヤジの書斎から退出していくのだった。

 廊下に出た圭悟は、ボワァと生温かくて、すこし痒くなってきたケツを、ジャージの上から両手でさかんにさすりながら、

「あぁーあ、オヤジのケツ叩き、久々だったよな・・・やっぱ、オヤジの膝上でケツ丸出しは恥ずかしいぜ・・・でも、オレも悪かったんだし、オヤジが言ってることも一理あるし・・・さあ、キミさんに謝りに行こう・・・でも、恥ずかしいよなぁ・・・キミさんにも、さっきの音、聞こえてるよな・・・」

 そんなことをつぶやきながら、やけに神妙な面持ちの圭悟は、台所にいるキミさんのところへと向かうのだった。しかし、台所で待っていたのは、ニヤニヤ笑みを満面に浮かべた大久保佳代子だったことは、もう述べるまでもないだろう・・・。

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