目次に戻る 第二譚に進む

お仕置き記録帳 第一譚 <クリスマス・イヴ> 寝小便のお仕置き

「鞭を加えないものはその子を憎むものである。子を愛するものはつとめてこれを懲らしめる。」〜旧約聖書より〜

※警告※ 

あなたがこれから読もうとする小説は、フィクションです。

また、これらの小説は、成人向けの「大人の懐かしい思い出話」として書かれたもので、未成年者に対する体罰、暴力、虐待、性的ないたずら(大人が快楽を得る目的で未成年者の尻を叩く行為を含む)、そして、それらに関連するあらゆる行為を、支持・奨励・助長することを意図して書かれたものではありません。

私、太朗は、合法・違法を問わず、かかる未成年者に対する行為のすべてに絶対的に反対します。



 ここは本州から遠く離れた南の島。亜熱帯気候に属し元日に海開きが行われる暖かい島だ。その島で半農半漁の自給自足の生活を営む鈴木孝40歳は、島にある教会に毎日曜日に通う敬虔な信者だった。

 鈴木家には、三人の息子、孝一(小5)孝二(小4)そして、孝三(小1)がいた。三人の息子たちの母、鈴木京子は、孝三を産んでまもまく病死し、それ以来、鈴木家は女気なしの男所帯であった。

 次男の孝二にとって、イブの朝は、悲惨なものだった。

「ねぇ〜〜、お兄ィちゃん!ねぇったら・・・」

 子供部屋に川の字に布団を引いて仲良く寝ている鈴木三兄弟。その真ん中の次男が、朝、必死で長男の孝一のことを起していた・・・

 亜熱帯の暖かい夜である。息子たち三人は、ランニングシャツ、白のグンゼ・ブリーフに、タオルケットをかけて寝るのが通常だった。

 イブの朝は、敬虔な信者の父の農作業もなく、一年で唯一、朝遅くまで寝ていても「お仕置き」されない日だった。

「なんだよぉ〜〜〜今日は手伝いはないぞ〜〜〜」

と、農作業の手伝いが休みの日に弟に起されて、うるさそうに眠そうな声を出す兄の孝一だった。

「ねぇ〜〜〜、起きてよぉ〜〜〜、お兄ィちゃァ〜〜ん・・・・」

と、次第に泣きそうな声になってくる次男の孝二だった。

「お兄ちゃぁ〜〜〜ん、ボク、ボク・・・・グスン!」

「・・・・・・」

「ボ、ボク・・・おねしょしちゃったよぉ〜〜〜〜〜!ウワァ〜〜〜〜〜ン!ど〜〜〜しよ〜〜〜〜!またお仕置きだよ〜〜〜!」

と、ついに泣き出してしまう弟だった。

 三人の中では一番甘えん坊の孝二だった。特に、母親が死んでからは、孝一に甘えるようになり、いまだ寝小便のクセがなかなか直らなかった。

 ワンワン泣く弟をなぐさめようと、やっと起きだす孝一だった。

「大丈夫だよ・・・・泣くなよ・・・・」

と、そういいながら、孝二の掛け布団のタオルを捲る孝一だった。

「あ〜〜〜〜〜〜〜、でっかぁ〜〜〜〜〜い」

 シーツにはデッカク派手なオネショマップだった・・・・下の布団にも染み込んでいるに違いなかった。

「正直に父さんに謝れよ・・・クリスマスだから許してくれるかも・・・」

「え〜〜〜〜〜〜〜〜!父さん、絶対、許してなんてくれないもん・・・グスン」

 それは、長男の孝一もよく知っていた。

「なんだよ、尻たたきが怖いのか?!」

「ボ、ボク、尻たたきなんてこわくないもん!」

「尻たたき10回くらい平気だろ!」

「う、うん、平気だよ・・・でも・・・」

「でも、なんだよ・・・」

「でも・・・・グスン!」

 一時は落ち着いたが、また涙声になっていく弟だった。

「だってぇ〜〜〜、今日お仕置きされたら、お仕置き記録帳のお仕置きの回数が10回になっちゃうよぉ・・・助けテェ〜〜〜〜お兄ちゃぁ〜〜〜ん」

と、再び泣き出してしまう次男だった。

 「お仕置き記録帳」とは、鈴木家の息子躾け法の一つで、一年間、いつ、どうして、どのようにお仕置きされたかを記録し、一年間の「お仕置き」の回数が、十回以上になると、クリスマスの朝のお楽しみ!教会でのミサへ行く前の父親からのクリスマスプレゼントはなし、代わりに、父親からの一番痛い「ムチ」でのお仕置きが待っていたのだった。

「クリスマスの朝に、悪い子はプレゼントなしでお尻を叩かれる」という西洋の言い伝えは、なにも、子供を諌めるために大人が考え出した「脅し」ではなかった。18世紀以前のヨーロッパでは、貴賤の差なく広く行われていた風習だった。すなわち、父親がその一年間の子供たちの行状を記録しておき、あまりに目に余る悪さをした子供には、プレゼントは与えず、代わりに、来年はよい子になるように、鞭という子供にとっては一番苦い薬を尻に塗ってやるのだった。

 助けてといわれても、どうやったら「おねしょ」を父親に知られずに隠すことができるのか・・・パンツは手狭な子供部屋にはなく、一階の父親の部屋のタンスの中だった。

「どうしよう・・・」

「どうしよう・・・」

「あ!そうだ!オレと孝二のパンツと布団を交換しよう!オレがオネショしちゃったことにすればいいんだ!」

 弟をどうにか助けようと、ありったけの知恵を搾り出した長男だった。

「え!でも、今度はお兄ちゃんがお仕置きだよ・・・グスン」

「い、いいんだ・・・オレは慣れてるから・・・ケツたたかれるの・・・」

 父親のお尻たたきは、長男の孝一にとってもすごく痛くて、すごく恥ずかしくて、怖かった。弟の前で強がっているだけであった。

「それに、オレはまだお仕置き8回目で、クリスマスのプレゼントなしまで、まだ一回大丈夫なんだ・・・だ、だから、パンツと布団を交換しようぜ!」

 泣きべそ顔だった孝二の顔が急に明るくなったかと思うと、

「うん!交換しよう!お兄ちゃん!ありがとう!!!」

と、元気に笑って答えるのだった。

 まずは、布団の位置の交換だった。年子の孝一と孝二の布団のシーツとタオルケットはともにウルトラセブンの柄で同じだった。

 そして、グンゼ・ブリーフの交換だった。これも、サイズは全く同じだった。孝二のブリーフのフロントからバックの部分が、黄色く小便で汚れて濡れている以外はである。

 兄貴からパンツを受け取ると、孝一のパンツをはく孝二だった。同じパンツとはいえ、前が少し黄色く汚れているお兄ちゃんのパンツは、温かくて、自分に代わってお仕置きを受けてくれる兄貴の優しさを孝二が肌を以って感じるのに十分だった。

 一方、弟から少し重くなったパンツを受け取る孝一。真黄色に染まったフロント裏、そして、プゥ〜〜〜〜ンと臭うアンモニア臭・・・顔を背けてそのパンツに足を通し、思いっきりパンツを上げる孝一だった。

「つ、冷たい・・・」

 孝二のお漏らしパンツはヒヤッとしていて気持ち悪かった・・・・

「じゃあ・・・父さんのところにいってくるから・・・」  

「うん!お兄ちゃぁ〜〜〜ん!気をつけてね・・・・」

 いったい何に気をつけるのか・・・なぐさめにもならない言葉を兄の背中に投げかける孝二。ランシャツと自分のお漏らしグンゼ・ブリーフをつけた一つ年上の兄貴・孝一の後姿を、この日は特にデッカク頼もしく感じる弟・孝二だった。

 そんな、長男と次男の話を寝たふりをして聞いているもう一人の弟がいた。そう、三男で小1の孝三だった。

「フフフ・・・パパにばらしちゃおうかなぁ〜〜〜!お兄ちゃんたちのプレゼントは全ぇ〜〜〜〜部ボクのものになるかもしれないよなぁ・・・フフフ」

まさに、クリスマスの盗んでしまうグリンチのごとき、いたずら好きでひねくれものの三男・孝三だったのだ・・・

・・・・・・・・・・・・・
 
 農作業のない日、漁に出ない日でも、父親・孝の朝は早かった。まだ寝ている息子たちのために台所で朝飯を作っているのだった。孝は、40歳にしてはまだ若い顔つきであり、身体は赤銅色に日焼けし、農作業と漁船での作業で鍛えられ、腕は鋼の筋肉で覆われており硬く太かった。そして、畑で鍬を握リ、漁船で荒縄を握るその掌はマメの上にまたマメができるほどにゴワゴワで鋼鉄のように硬かった。

 そのデッカイ背中を畏敬の念を持って後ろから眺める長男の孝一。白のランシャツから伸びる太い上腕を見て、父親のデッカくて硬い掌を思い出し、そして、それが自分の尻のド真ん中に炸裂した時の痛さを想像し、思わず両ケツをキュッと引き締める孝一だった。

「と、父さん・・・」

 おっかなビックリ父親に声をかける孝一。驚いたように後ろを振り向く父親。

「お!孝一か・・・なんだ、今日はまだ寝ていていいんだぞ。」

「あ、あの・・・ボ、ボク・・・・」

「なんだ、孝一。いいたいことがあるならはっきりいいなさい。男の子だろ!」

 朝飯を作る手を休め完全に息子の方を向くと、腕を前に組んで、台所の入り口のところで立っている息子の目をジッと見つめる父親だった。

 孝一にとって、父親にジッと目を見つめられると、ウソをつくことがいつも後ろめたく感じられた。しかし、弟のために、思い切って一気に寝小便のことで父親にウソの告白をしようと決心をし、目をギュッとつむる孝一だった。

「ごめんなさい!もらしちゃいました・・・・寝ていて・・・布団とパンツ汚しちゃいました・・・」

 首から上がカァ〜〜〜〜ッと熱くなり、孝一は耳まで真っ赤だった。

「寝小便したのか・・・」

「は、はい・・・・」

「何で寝る前にきちんと便所にいかなかったんだ?!」

「ご、ごめんなさい・・・つ、つい・・・忘れちゃって・・・」

「兄貴のくせに恥ずかしくないのか・・・寝る前には弟をつれて便所に必ず行けっていつもいっているだろ!今日はクリスマス・イブだぞ・・・お前は、クリスマスにお仕置きされたいのか?」

「い、いえ・・・ご、ごめんなさい・・・つい面倒くさくて・・・昨日トイレに行きませんでした・・・」

 孝一の態度がいつもとは少し違っているのに気がつかない父親ではなかった。孝は、勘のいい親父だった。孝一が孝二を庇っていることもその理由もすぐに気がついた。

 しかし、そのままに気づかない振りをすることにした。孝二があと一回自分からお仕置きを受ければ、クリスマスのプレゼントがなしになることくらい父親はよくわかっていたのだ。「お仕置き記録帳」をつけている以上、お仕置きをすればそれを一回と数えなければならなかった。それを負けてやるわけにはいかなかった。しかし、その一方で、孝二だけクリスマスのプレゼントをなしにすることは、息子の躾けには厳しい父親の孝といえども、やはり忍びなかったのだ。

 孝の決断は早かった。孝一をお仕置きすることにした。

「お仕置きはどっちがいい?朝飯の前か、朝飯の後か?」

 クリスマスだからお仕置き「なし」かもしれない・・・という孝一の淡い期待は裏切られた。孝一は、首をうなだれて、

「前がいい・・・です・・・」

とつぶやくように言った。

「わかった。じゃあ、準備をしなさい。」

「は、はい・・・」

と再びつぶやくように言う孝一だった。

 鈴木家のお仕置きは、言うまでもなく「尻叩き」である。叩く道具はなんであれ、父・孝は、息子たちを素っ裸にさせて尻を叩いた。場所は子供部屋だった。しかも、兄弟の誰がお仕置きされるにせよ、三人兄弟が揃ったときにお仕置きは行われた。

 兄弟が見ている前で素っ裸でケツを叩かれる「恥ずかしさ」も、父・孝は「お仕置き」の重要な要素だと思っていた。「ケツの痛さ」と「羞恥心」が男の子を躾けるのに一番効果的だと、孝は信じていたのだ。

 ガックリと首を落としながら、「お仕置き準備」にかかる長男・孝一だった。その後ろ姿とブリーフのケツは「兄貴はつらいよなぁ・・・」とでも言いたげだった。

 まずは、風呂場の隣の洗濯場の流しのなかに「弟の」グンゼブリーフパンツを脱いで入れた。もちろん、鈴木家にも洗濯機はあったが、父親は、寝小便の時のみ、息子たちに自分たちの汚れたパンツを手洗いさせた。そして、そのパンツが乾くまで、パンツを穿くことは許さなかったのだ。

 父親の厳しい尻たたきを思い、死んだやさしい母親のことが急に思い出されてうわぁっと泣き出しそうになる孝一。しかし、弟の前で涙を見せることはできなかった。

 二階に戻ってきた孝一は、グッと涙を呑み込んで、二階の子供部屋の障子を開けた。

・・・・・・・・・・・

 長男が二階へ戻る足音を聞きながら、父親の孝は、台所の火を止めるのだった。

「さあ、そろそろ行くか・・・」

 そんなことをつぶやきながら、両掌をすり合わせる孝だった。もちろん、孝は、息子たちに怪我をさせるような「暴力」を振るう父親ではなかったが、ひとたびお仕置きとなれば、手加減することなく、息子たちのケツに愛情をふりそそぐのだった。平手叩きといえども、父・孝のお仕置きを、小学校高学年の男の子が泣かずに我慢することは至難の業だった。

「仕方のないヤツらだ・・・それにしても、孝二のヤツの寝小便クセはなおらんなぁ・・・小児科の飯野先生に相談した方がいいかなぁ・・・ああ、まいった・・・まいった・・・」

と、ブツブツ言いながら、二階への階段を登り子供部屋と向かう孝だった。

・・・・・・・・・・・

 子供部屋では、すでに孝二も孝三も起きて布団をたたんで押入れにしまっているところだった。長男が戻ってくると、次男は心配そうな顔をして近寄ってきた。

「やっぱりお仕置きなの?」

 ランニングシャツ一枚で、下はパンツを穿いていない兄貴の姿を見て、孝二は確かめるように聞いてきた。

「うん・・・孝二は心配するな・・・」

 自分のために兄貴がお尻を叩かれることを改めて思い、胸がバクン・バクンと鼓動を打ち始める孝二。

 一方、孝三は、また兄貴の尻たたきを見られると、ワクワク期待に胸を膨らませるのだった・・・

「うわぁ〜〜〜、孝一兄ちゃん、またパンツなしだ!チンチン丸見えで恥ずかしいィ〜〜〜!!どうしようかなぁ〜〜〜、ばらしちゃおうかなぁ〜〜〜、でも、そうすると、孝一兄ちゃんはお尻叩かれないのか・・・それもつまらないなぁ〜〜〜〜!」

などと、とんでもない小悪魔的なことを考えている孝三だった。

 ドン・ドン・ドン・ドン・・・・

 父親が二階へ上がってくる足音が近づいてきていた。父親が部屋に入るまでにお仕置き準備ができていなければ、五回追加の15回の尻叩きだった。

「いそがなくちゃ・・・」

と、ランニングシャツを脱ぎ、それを急いでたたんで勉強机の上におき、自分の勉強机の椅子を子供部屋の真ん中において、その傍らに素っ裸で立つ孝一だった。

 一方、弟たちは、それぞれの勉強机の前に、勉強机に背を向けて、正座するのだった。孝は、教育熱心であり、部屋は少し手狭になっても、子供たち三人それぞれに勉強机を与えたのだった。

 ほどなく、父親が入ってきた。孝一はケツに鳥肌が立ち。孝二は、うそがバレないかとさらに胸がドキドキした。そして、孝三は、はやくお仕置きが始まらないかと胸がワクワク高鳴った。

「孝一!布団の準備ができてないじゃないか!5回追加だ!」

と、父親は、さっきよりも厳しい口調で孝一を嗜めた。

 孝一は思わずハッとした。寝小便など、5歳の時以来しでかしたことがないので、すっかり忘れていたのだった。

 寝小便のお仕置きの時は、寝小便でつくった染みの部分を上にして、その部分が高くなるようにして布団をたたみ、椅子の傍らにたたんでおかなければならなかったのだ。

「は、はい!」

と、素っ裸であわてて弟のオネショ染みつき布団の準備する孝一だった。

 お仕置き準備が整うと、父親の孝は、長男の勉強机の椅子に股をガバっと豪快に開いて座り、左腿を指差すと、

「なにグズグズしてるんだ!こっちへきて、ケツをだせ!!」

と、さらに厳しい口調で孝一に命令した。

「はい・・・」

と返事をして、丁度尻が斜め上にプリッと突き出すような格好になるよう、自分の位置を調節しながら、父親の孝の左腿の上に乗るのだった。そして、さっき自分でたたんだ布団の上に両手をついた。

 父親は、この前のお仕置きよりも少し重くなったような小5の息子の体重を左腿に感じていた。そして、ブリーフに覆われてブリーフの日焼け跡がクッキリと残る白いプリッとした長男のケツを眺めるのだった。長男は、また少し色が黒くなり、逞しくなったようだった。長男が、腕白ながら、スクスクと順調に成長していることを再確認する父・孝だった。

 そして、いつものお仕置き前の質問をする孝。
 
「父さんがなぜお前のお尻を叩くかわかるな?」

「はい・・・」

「じゃあ、言ってみなさい。」

「はい、寝小便をしたからです。」

「寝小便は悪いことか?」

「は、はい・・・そう思います・・・・」
 
「違うだろ!寝小便そのものは悪いことではないんだぞ!寝小便は結果にすぎないんだ。父さんの言いつけを守らずに、寝る前にきちんと便所にいって小便を済ませなかったその怠け心が悪いんだぞ!」

「は、はい・・・」

「よし!」

「じゃあ、その布団の染みの上に鼻をつけなさい!」

「は、はい・・・」

 ちょっと強いアンモニア臭が孝一の鼻をついた・・・

「臭いか?」

「は、はい・・・少し・・・」

「寝る前にはきちんと便所にいって、もう二度と寝小便なんてするんじゃないぞ!いいな!」

「はい・・・・」

「よし!お前の心が今よりもっと強くなるように、お前のケツをこれから15回叩く!布団の染みに鼻をつけたまましっかり歯をくいしばってろ!」

「は、はい・・・」

 いよいよお仕置きだと思い、少し泣きそうになる孝一だった。尻には鳥肌がたっていた。

「いくぞ!」

というと、孝は、右手を大きく高く振り上げ、それを孝一の白いケツに思い切り振り下ろした。

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

と、兄の孝一の尻を眺めていた二人の弟が思わず身をすくめるほどその音が、子供部屋に鳴り響いた。

 尻から頭に響く衝撃に、孝一は思わず、弟・孝二が作った布団の染みに顔をうずめた。もう、臭いのなんのと言っている場合ではなかった。それは、いつものようにズシンと重い、オヤジのケツ・平手打ちだった。

 その後は、連打だった。

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

 あっという間の15発だった。右ケツ、左ケツ、中央と、父・孝の右掌は、孝一の尻を満遍なく自分の掌マークで覆っていったのだった。 父親の厳しい尻叩きに真っ赤な顔をして目をグッと閉じて必死で我慢する孝一だった。弟たち前では、泣くこともわめくこともできない。それが兄貴としてのプライドだった。

 お仕置きが終わると、父・孝は、少しやさしい口調になって、

「さあ、お仕置きは終わりだ。立ちなさい。」

と、長男を促した。

 立った孝一は、尻をさすりながら、

「ごめんなさい・・・もう寝小便なんてしません。寝る前にきちんとトイレにも行きます・・・」

と素直に謝るのだった。

「よし!さあ、早く下ヘ行って、パンツを洗濯しなさい。パンツは乾くまではいちゃダメだぞ。パンツが乾くまで物干し竿のところで立って反省するんだ!いいな!」

「はい・・・・」

 また、ガックリしたように首を垂れ、返事をする孝一だった。

 小5の孝一にとっては、平手で仕置をされるよりも、洗濯が終わったあと、物干し竿に吊るされたパンツの脇に下半身丸出しで立って、ジッと反省タイムをすごすことの方が、はるかに苦痛なのであった。

 綿製のブリーフはなかなか乾かないのであった。温暖な南の島の太陽の下でも、乾くのには、二時間程度かかった。その間、たっぷりと真っ赤なケツを晒しての反省タイムが待っていたのだった・・・

 椅子から立ち上がると、父親の孝は、孝一の勉強机の脇に掛けてある「孝一・心の成長記録」と書かれた大学ノートを手に取るのだった。それが、長男・孝一専用の「お仕置き記録帳」だった。

 孝一の「お仕置き記録帳」を開くと、孝はボールペンで、「19××年12月24日 9回目 平手 十回+おまけの五回 寝小便、お仕置き準備遅延」と、お仕置きの記録を書き加えたのだった。そして、その下には、父親からのメッセージとして、「よく泣かずに頑張った、えらいぞ!しかし、あと一回のお仕置きで、クリスマスプレゼントはなしだぞ!ガンバレ!孝一!」と書いたのだった。

 お仕置きを受けた夜、そのノートを開いて父親からの愛のメッセージを読むのが鈴木家の息子たちのアフター・スパンクの慣わしだった。「お仕置き記録帳」とは、父と息子の連絡帳でもあったのだ。

・・・・・・・・・・

 記録が終わると、孝は再びその記録帳を長男の机の脇に掛けて、子供部屋を出ようとした。
 
 その時だった!!!!

「ちょっと待ったぁ〜〜〜〜〜〜!」

といわんばかりに、孝三が叫んだのだった。

「違うよ!!!オネショしたのは孝一兄ちゃんじゃないもん!孝二兄ちゃんがオネショしたんだ!ボク、聞いちゃったもん!お兄ちゃんたちが、パンツとフトンを交換しようって、相談しているの!!!!」

 弟のそのぶっ飛び告発を聞いて、簡単に引き下がるわけにはいかないのは、孝一と孝二だった。

「うそだ!」

「うそ!孝三!いいかげんなこというなよ!」

と、末っ子の弟を睨みつける二人の兄貴だった。

「違うもん、うそをついているのはお兄ちゃんたちだ!」

と、孝三も負けてはいない。それは小1にしては末恐ろしいほどの冷静さだった。

「孝三のうそつき!うそつきはお仕置きだぞ!!グスン・グスン!」

 最初に崩れるのはやはり孝二だった。もう泣きべそをかき始めてしまったのだ。

「・・・・・」

 孝二の泣きべそを聞き、長男は、孝三にやられたぁ〜〜〜〜とばかりに声もでず、父親のカミナリを覚悟して、ただ下をうつむくばかりだった。

「あ〜〜〜〜〜〜〜!これで今年のクリスマスは、『また』プレゼントなしだぁ〜〜〜〜!今年こそ新しい野球のグローブ買ってもらうはずだったのニィ〜〜〜!!!!」

と、泣きたくなるのを必死で堪えていた。

 三男の告発に一番驚いたのは、ほかならぬ父親だったのかもしれない。しばらくは、頭が真っ白になり言葉がでないようだった。まだまだ幼い子供だと思っていた三男。しかし、小学生に入ってからの成長の速さは、二人の兄貴をはるかにしのぐものだったことを、父親は実感したのだった。

「孝一、孝二!本当なのか!」

と、やっと声を搾り出す父・孝だった。

「・・・・・」

 下を向いたまま言葉もだせない長男。尊敬する父親にうそをついてしまったことがいまさらながら恥ずかしかった。

 そして、

「うわぁ〜〜〜〜〜〜、ごめんなさぁ〜〜〜〜〜〜い。おねしょしたのはボクでぇ〜〜す・・・お兄ちゃんじゃありませぇ〜〜ん!!」

と、父親の腰のところに飛び込むように抱きつき、ワンワン泣き始める孝二だった。

「フフフ・・・やったね!正義はいつも勝つんだ!」

としたり顔の孝三だった・・・

 仕方ない兄貴たちだ・・・そういう相談はだなぁ・・・二人だけであることを確認してからするもんだよ・・・

と、やっと落ち着いてきた父・孝は、内心、少々あきれ気味だった。そして、

 仕方ない・・・かわいそうだが、ここは、孝三の手前、二人には厳しくするか・・・

と、決心するのだった。

「孝一!孝二!ふたりとも父さんの前に立って父さんの目を見なさい!!!」

と、腰のところに腕を回して抱きついている孝二には離れるように促し、厳しい口調で二人の息子に命令する父・孝だった。

 ランニングシャツは着て、下はスッポンポンで真っ赤なお尻を丸出しの孝一は、

「はい・・・」

と返事をして首をうなだれたまま父親の前に立った。

「孝一!父さんの目を見ろといったのが聞こえなかったのか!!!?」

と、父親の厳しい一喝が孝一に飛んだ。

 父親の声の真剣さが伝わりビクっとし、

「は、はい!」

と思わず返事をする孝一だった。

 孝二にもその真剣さはビンビンに伝わっていた。

「父さん、本当に怒ってるよぉ〜〜〜、どうしよう・・・ママ・・・助けてぇ・・・・」

と、ますます困って悲しくなってくる孝二だった。

「うわぁ〜〜〜〜〜〜〜ん、ごめんなさぁ〜〜〜〜い!!!!」

と再び泣いて、父親に甘えてしがみつこうとする甘えん坊の孝二だった。

 しかし、今度は次男の甘えを許さない孝だった。

「いつまでも泣いているんじゃない!」

と、ピシッと次男を叱りつけると、

「さあ、シッカリ、父さんの前に立って、父さんの目をみなさい!!」

と抱きついてこようとする次男の両上腕をグッと握って、無理やり自分の前に立たせようとする父親だった。

 孝は、二人の息子の目を交互にしっかりと見つめて、息子に問いかけた。その父親の視線からは、孝一も孝二も逃れることはできなかった。観念するしかなかった。

「孝三の言っていたことは本当か?」

「・・・・はい・・・・」と孝一。

「は、はい・・・グスン・・・ご、ごめんなさい・・・」と孝二。

「いいか!たとえ、兄弟のパンツでも、人のはいたブリーフを洗濯もせずにはくなんて、すごく不潔なことなんだぞ!!」

「はい!」

「はい!」

「二人とも、もう二度とパンツの交換は許さないぞ!今日からはお前たち二人のパンツには、お尻のところにマジックでデッカク、『一』、『二』と書くからな!『一』のパンツは孝一のパンツ。『二』のパンツは、孝二のパンツだ!」

「はい!」(格好悪いよぉ〜〜〜)(汗)

「はい!」(格好悪いよぉ〜〜〜)(汗)

 このブリーフのバックに『一』『二』と書く鈴木家のブリーフ躾け法は、長男が高校を卒業し都会で就職して家を出るまで続いたいう。もちろん、その日以来、小・中・高と、その「ケツ背番号」入りブリーフは、体育の着替えの時にクラスの関心を一点に集めたことは語るまでもない・・・

「よし!これから父さんは、お前たちの心の中の弱い部分を補強するために、お前たちのケツを叩く!!いいな!」

「はい!」

「はい!」

「孝一のおねしょをした罰は取り消すことにする!ただし、ブリーフを交換した罰で、記録帳のお仕置きの回数は同じだ!」

「は、はい・・・え・・・・じゃあ・・・・」

「なにブツブツ言ってるんだ!!わかってるのか?」

と、父・孝の口調がまた少し厳しくなった。

「は、はい!わかってます!」

と慌てて答える孝一だった。

「それから父さんにウソをついた罰として木の定規で尻叩き10回だ!」

「は、はい・・・」

と返事をしてうなだれてしまう孝一。楽しみにしていたクリスマスのプレゼントはこれでなしだった・・・

「次に、孝二!!」

「は、はい・・・グスン・・・ごめんなさい・・・」

「お前は、おねしょの罰に加えて、ブリーフをお兄ちゃんと交換した罰として手のひらでお仕置き20回だ!」

「え・・・・そんなに・・・グスン・・・・」

「わかったのか?男の子なら、いつまでもメソメソしていないで、もっとはきはき返事をしなさい!」

「は、はい・・・グスン・・・ごめんなさい・・・」

「それから、そのあと、父さんにウソをついた罰としてお兄ちゃんといっしょに木の定規で尻叩き10回だ!」

 うそをついた罰には、おねしょをしでかした罰、洗濯しないで一度はいたブリーフを交換した罰よりもワンランク上のお仕置きが待っていた。素っ裸になり、自分の勉強机の上に両ひじをついて、むき出しの尻を、裁縫用の1.5メートルほどの木の定規で叩かれるのだった。

「え・・・・」

 また何か泣き言を言おうとする孝二をジッと睨む父・孝。なにかヤバイ雰囲気を感じたのか、孝一が、ランニングシャツと自分のブリーフを穿いて、隣に立っている弟の脇を指でツンツンとつついたのだった。

「は、はい・・・」

と、やっと父のお仕置き宣言に応える甘えん坊の孝二だった。しかし、その時の父の態度には、甘えを一切許さない厳しいものがあった。

「さあ、孝二、パンツを脱いでお兄ちゃんに返すんだ!」

「は、はい・・・」

と弱々しげに答えると、甘えん坊・孝二は、ブリーフの腰ゴムに手をかけてそれを脱ぎ、裏返しになったまま、兄の孝一にパンツを返すのだった。

 それを受け取った孝一は、フロント裏の黄色染みが朝よりも濃くなっていることに気がついていた・・・

「あ、コイツ・・・」

と思ったが知らない振りをすることにした。もちろん、厳しい父の態度にビビりが入り、孝二が小便をチビってしまったことをである。

「さあ、早く、ランニングを脱ぎなさい!」

「は、はい・・・・」

 父親の命令で、いつものお仕置き前の作法通りに、ランニングシャツを脱ぎ、それをきちんとたたんで、部屋に三つ並んだ机の真ん中の自分の机の上に置く、孝二だった。

「さあ、こっちへ早くきなさい。」

 すでに父親・孝は、自分で部屋の真ん中にしつらえた孝二の机の椅子に座っていた。そして、股をガバッと豪快に開いて、左腿を指差すのだった。そこが、「おねしょの罰」「ブリーフ交換の罰」の仕置台だった。

「は・・・・グスン、グスン・・・ご、ごめんな・・・・痛いよ・・・」

「痛くなんかない!いつまでも甘えてないで、早く膝の上にのってケツを出すんだ!!!」
 
 孝二は、父がお仕置きのとき、「お尻」と言わずに「ケツ」というのを聞くと、いつも男親の厳しさを感じて思わずビクッとしてしまうのだった。特に、その日の父親は、いつものお仕置きの時より数倍怖くて、妥協を許さないスパルタ父さんの感じだった。

「は、はい・・・」

と、蚊の鳴くような微かな声をやっと出して、父親の方へ近づいていくのだった。

 父親・孝は、膝に乗るために次男が近づいてくると、まるで次男を勇気づけるかのように、右手で次男のスポーツ刈りの頭を少し乱暴に撫でるのだった。そうして、孝二は、鋼のように硬い父親の掌を感じつつ、覚悟を決めて、孝一の時と同様に、父親の左腿の上に乗るのだった。

 目にいっぱい涙をためている次男である。また何か厳しいことを言ったりすれば、わぁ〜〜〜と泣き崩れてしまうことは確実だった。

 孝は、自分のフトンの上に両手をつき、孝二が自分でつくった寝小便マップに鼻をつけたのを見届けると、

「いくぞ!」

とだけ言って、右手を思い切り振り上げ、右掌を開かずに指をとじ、それを一気に、孝二のブリーフの日焼け跡が白く残る尻のど真ん中へと振り下ろした。

パッチィ〜〜〜〜〜〜ン! 

 尻たたき一発目は、腕白坊主にとっても、スパルタオヤジにとっても、印象的なものとなる。

 ドシ〜〜〜〜ンと尻に衝撃を受けた孝二は、泣き崩れそうになるのを必死で堪えていた。孝二は真っ赤な顔をして、フトンのシーツを握りながら、

「い、いたい・・・うぅ・・・・でも、ボク、泣かない・・・泣かない・・・」

と、心の中で何度もつぶやいていた。目をグッと閉じて、次の一発が来るのを身構えて待つのだった。

 父・孝は、お仕置きといえばいつも一発目から大泣きする次男の心の成長を見て取っていた。スポーツ刈りのバリカン刈り上げ後頭部を真っ赤にしながらも、「痛い」と悲鳴を上げない次男を少し見直していた。
 
 ひとたび息子たちの尻ををひっぱたくと決心すれば、絶対に妥協を許さない孝である。次男の涙に負けて手加減などする孝ではなかった。そのことを次男の白いケツの中央からやや右ケツよりに淡くピンク色についた自分の指先の痕をみながら確認するのだった。そして、次男が悲鳴をあげなかったことに満足しつつ、これならいけると思い、残りの19発は連打に決めた。右・左・中央とリズミカルに行くことにした。

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

パチィ〜〜〜〜〜〜ン!

と、炎の連打だった。回数が増すにつれて、連打の間隙を縫うように次男から聞こえてくる微かなうめき声がだんだんと大きくなり、やがて悲鳴に近いものとなってきた。それが頂点に達しようとした時、最後の一発が次男のケツに炸裂した。

パッ〜〜〜〜〜チィ〜〜〜〜〜〜ン!

「ぎゃぁ〜〜〜〜〜〜!!!!!痛ぁ〜〜〜〜〜〜いい!」

 次男の腰を固定するように腰の上においていた自分の左手を離してやる父・孝だった。

 すぐに飛び上がるようにして起きると、両手で必死にケツをさする孝二。甘えん坊らしく、素っ裸の孝二は、孝二の椅子に座っている父親の胸に飛び込み、その胸に顔を埋めて泣くのだった。

「ごめんなさあ〜〜〜〜〜〜い!!もうおねしょなんてしませぇ〜〜〜ん!わぁ〜〜〜〜〜〜〜ん!」

「よし、よし・・・」

と、孝二を愛情を持ってギュッと抱きしめてやる父・孝だった。

 しかし、やさしいのはそこまで、まだお仕置きは終わっていなかった。孝二の頭をなぜてやりながら、孝二が落ち着いてくると、

「さあ、お仕置きはまだ終わってないぞ!少し痛いけど、孝二は男の子だから、我慢できるよな・・・強い男の子になりたいだろ?」

「う、うん・・・」

 また少し不安げな声になる孝二だった。しかし父・孝に促され、父の胸元を離れる孝二だった。

「さあ、孝一、孝二、ふたりとも父さんにうそをついた罰だ!今度は木の定規でお仕置きだぞ!準備をしなさい!」

 再び、厳しい口調にもどる父・孝だった。

「はい!」

と返事をして、自分の机の前に机に背を向け、素っ裸で正座していた長男の孝一は立ち上がった。鈴木家では、お仕置きの順番を待つ時は、素っ裸で自分の机の前に机に背を向けて正座して待つのがルールだった。

 そしてお仕置きの準備を始めた。頬の涙を腕でふきながら、長男の後に続くように、次男・孝二も、

「はい!」

と返事をして、お仕置き準備を始めた。

 木の定規で尻を叩かれる時の準備とは、椅子を机から出し、その椅子の上に両膝をつき、そして、両ひじを机の上について上体を倒し、尻を後ろへ突き出すことだった。そして、両掌を教会で祈る時のようにあわせて、「神」に祈りながら、お仕置きを待つのであった。

 孝一も孝二もお仕置きの準備を済ませ、目を瞑って「神様」に祈りを捧げるのだった・・・

「二人とも、今よりも強い心を持てるように、神様にお祈りしたか?」

「はい・・・」

「はい・・・」

「よし!そのまま、お祈りを続けなさい!」

 そういうと、父・孝は、孝一の左側やや斜め後ろに少し離れて立ち、子供部屋の長男の机の脇に立てて置いてある裁縫用の木の定規を取り出し右手に握った。そして、その1.5メートルの木の定規を、斜め横上に振り上げ、少し高めに突き出された二人の息子の尻に振り下ろす準備をするのだった。

 まずは、孝一の尻からだった。

「孝一!いくぞ!」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

 一発目が祈りを捧げる孝一の尻に振り下ろされた!瞑っていた目をさらにギュッと閉じて、口をキュッと結んで、木の定規で尻を打たれる熱い痛みを我慢する孝一だった。

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

と、つぶやくように言う孝一だった。

 父が再び木の定規を振り上げた。

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

 回数はやはり10回であった・・・

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

 長男の孝一は、父親からの厳しい尻叩きに悲鳴一つあげずに、神に祈りを捧げるのであった。孝一へのお仕置きは、リズミカルに進行していった。

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

 長男の孝一は顔を真っ赤にしてお仕置きの痛みに耐えていた。すでに、幅3cmほどの定規の赤い痕が、孝一の白い尻に幾筋もついていた。

 父は、息子と約束した所定の回数が終わるまで、息子の神への祈りを聞き終わる度に、木の定規を振り上げ、そして、手加減することなく、その定規を、長男の尻に振り下ろすのだった。

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

 最初はそれほどでもなかった定規で打たれる痛みは、数を増すごとにその強さを増してゆき、それが頂点に達した頃、最後の十発目を迎えるのだった。

 もちろん、お祈りに集中しなければならないため、数など数えてはいられない。お祈りが終わったあと、あの「ビュン!」と、木の定規が空を切る音が聞こえれば、両掌にギュッと力を込めて身構え、木の定規が尻に炸裂する瞬間を待つだけだった。

「いま何発目なんだろう・・・」

と孝一が思ったとき、またあの音が聞こえた。

ビュン!

「あ、来る・・・」

 全身に力を入れて身を縮めるようにして木の定規で打たれる瞬間に備える孝一・・・

パッ〜〜〜チィ〜〜〜〜ン!!!!

 それはいままでの中で一番痛い一発だった。思わず、

「い、いた・・・・」

と声を上げてしまう孝一。しかし、すぐに、両掌をギュッと合わせて、

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

と、祈るのだった。

 また、あの音が耳に飛び込んでくるのではと身をすくめる孝一。しかし、孝一の耳に飛び込んできたのは、あの忌まわしい「ムチ」の音ではなく、

「よし!お仕置きは終わりだ!立って、こっちに記録帳を持ってきなさい!」

という父親の声だった。

 いままでの緊張が一気に解け、ホッと安心する孝一。尻出しの姿勢から立ち上がると、机の脇に賭けられているお仕置き記録帳をとり、父に渡すのであった。

 おねしょを仕出かした罰の記録は消されたが、代わりに、「ブリーフを交換した罰」「うそをついた罰」が加えられてしまった。

「19××年12月24日  9回目 平手 十回 弟とブリーフを交換(不衛生行為)」

「19××年12月24日 10回目 ものさし 十回 親にうそをつく」

 そして、孝は、

「孝一へ、残念ながら今年もお仕置き回数が10回になってしまったぞ!来年はもっと心を鍛えて、クリスマスには、ムチではなく、プレゼントをもらえるようにがんばろう!孝一ならきっとできる!父さんは期待してるぞ!」

と、「父のコメント」を書き加え孝一にそのノートを返すのだった。

 ちらりとそのノートに目をやる孝一。落胆の表情は隠せなかった。ガックリと肩を落とし、その記録帳を元あったところに掛けると、孝二のお仕置きが終わるまで、再び、机の前に正座をして待つのであった。

・・・・・・・・・・・

 兄貴と同じ格好で素っ裸のまま尻を後ろへ突き出し、自分のお仕置きの番がやってくるのを待つ次男の孝二。それは孝二にとって恐怖の時間であった。

「ビュン!」という音が聞こえてくる度に、あの木の定規の痛さを思い出し、オヤジから平手で叩かれてまだホカホカと熱っているむき出しのケツに鳥肌を立てるのであった。

 孝一のお仕置きが5発目を越える頃から、もう堪えきれず、グスン!グスン!と鼻汁を盛んに吸い上げながら、泣き始める甘えん坊の孝二であった。そして、神に祈るためにあわせている孝二の両手は、ガタガタとかすかに震えているのだった。

「神様・・・どうかお尻叩きが痛くありませんように・・・どうか、ボクの泣き声が、天国のお母さんに届きませんように・・・」

と、必死でお祈りを捧げる孝二であった。

 そして、長いようで短い兄貴のお仕置きも終わり、今度はいよいよ孝二の番だった・・・・

「ああ・・・・いよいよ叩かれるよぉ〜〜〜〜〜!」

と思って、グッと目を閉じる孝二だった。

 後ろで父親の声がした。

「さあ、今度は孝二の番だぞ。もっと強い心を持った子になれるようにしっかりお祈りをしなさい!」

 父の口調は厳しかった。

「は、はい・・・グスン・・・」

 そう返事をすると、孝二は目をさっきよりもギュッと閉じて、全身に力を入れて身構え、父の木の定規が自分の尻に振り下ろされるのを待つのだった。

 孝一の時と同様、今度は孝二の尻の左側やや斜め後ろに立って、木の定規を振り上げる父・孝であった。

ビュン!

と、父親の振り上げた木の定規が空を切る音が孝二の耳に入った。孝二はさらに身をすくめるように、掌を合わせて組んだ両手の指先のところに額を押し付けるのだった。

「あ、来る・・・」

パチィ〜〜〜〜ン!!!!

と、ついにその木の定規は、孝二のプリッと突き出たかわいい尻に着地するのだった。

「い、いたい・・・・」

と、思わずお祈りをするためにあわせている両手を離し、右手を尻の方へ持っていく孝二だった。

「コラ!ケツをさするのはまだ早いぞ!お祈りが先だぞ!」

と、父親が後ろから厳しく嗜めるのだった。

「は、はい・・・グスン・・・」

 涙があふれ出そうになるのを必死で堪えながら、

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

と、神様に尻叩き一回目後の祈りを捧げる孝二だった。

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「神様・・・ボクは父さんにうそをつきました・・・お許しください・・・自分をもっと強い子にしてください・・・」

と、二回目から五回目まではなんとか持ちこたえた孝二だった。

 しかし、木の定規で尻を打たれた後の痛みもだんだん強くなってきたのか、

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

と、六回目の尻打ちが入ると、孝二は、

「い、いたい・・・ごめんなさい・・・グスン、グスン、・・・ママ・・・助けてぇ〜〜〜もううそはつきませぇ〜〜〜ん!」

と、天国の神様の元で幸せに暮らしていると、神父様から教えられまだそう信じている、母親に助けを求めて泣きべそをかき始めてしまうのだった。

 さすがの父・孝も、次男の

「ママ・・・助けてぇ〜〜〜」

には、いつも弱いのだった。

 母親の代わりを完璧にはすることができない父親の後ろめたさもあった。孝は、これ以上、次男に、お祈りをと厳しく促すことはできなかった。かといって、お仕置きの回数や強さをおまけすることは、長男そして三男の手前できなかった。

 仕方なく、お祈りを促すことなく、

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

と、七発目を次男の尻に与える孝だった。

「い、いたいよぉ〜〜〜〜、ママぁ〜〜〜〜たすけてぇ〜〜〜!」

と、次男はすっかりもとの甘えん坊に戻っていた。

 長男の孝一は、

「なんだよぉ〜〜!孝二!負けるなよぉ〜〜!泣くなよぉ〜〜!」

と、孝二を心の中で応援していた。それは、孝二の母親に助けを求める泣きべそにつられて、つい泣きたくなってしまう自分自身に対する応援でもあった。

 一方、三男の孝三は、自分は叩かれないことがわかっていて緊張感もなく、そろそろ兄貴たちのお仕置き見学も飽きてきて、時々あくびをしながら、

「あ!パパと孝二兄ちゃん、ずるぅ〜〜〜い!お祈り省略している!そうか・・・お祈りしたくない時は、ウソ泣きして『ママ・・・助けてぇ〜〜〜』って言えばいいんだ・・・便利なキーワードだね!フフフ」

と、心の中でほくそえんでいるのだった・・・末恐ろしき三男ではある。

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「いたぁ〜〜〜い・・・グスン、グスン、グスグス、もうぶたないでぇ〜〜〜!」

ビュン!パチィ〜〜〜〜ン!!!!

「ごめんなさぁ〜〜〜い!!!」

 そして、孝一の時と同じ、少し強めの十発目だった。

ビュン!パッ〜〜〜チィ〜〜〜〜ン!!!!

「ぎゃぁ〜〜〜〜〜〜!!いたぁ〜〜〜いぃ〜〜〜〜〜〜〜!」

と、ついに椅子から立ち上がり、ピョンピョン飛び跳ねながら、両手で必死に尻をさする孝二だった。

 「まったくいつまでも甘えて、情けないヤツだ」と少し呆れ顔の父親だったが、同時に、そういう甘ったれの孝二を、なんとも愛らしく思う父・孝だった。真っ赤になって木の定規の線が何本も入っているお尻をさすりながら、それでも父親の傍に寄り添ってくる孝二だった。どんなにお仕置きされても、父親が大好きなのだった。

 孝は、次男をギュッと抱きしめてやりたいそんな気持ちをグッと抑えて、次男の頭を少し乱暴に力強くなでながら、

「あのくらい痛くないぞ!男の子だろ!さあ、お仕置き記録帳を持ってきなさい!」

と、厳しく命令するのだった。

「は、はぁ〜〜〜〜〜い・・・グスン」

と、頼りなげに答える孝二。

 孝二は、自分の机の脇に掛けてある「孝二・心の成長記録」と書かれた大学ノートを父親に渡すのだった。

 孝は、それを開いて、

「19××年12月24日  10回目 平手 十回 寝小便」

「19××年12月24日  11回目 平手 十回 兄とブリーフを交換(不衛生行為)」

「19××年12月24日  12回目 ものさし 十回 親にウソをつく」

と孝二のお仕置き記録を三行も付け加えるのだった。

 そして、

「孝二へ、お仕置きがどんなに痛くても、男の子は泣くもんじゃないぞ!天国の母さんもきっと笑っているぞ!来年は泣かないようにガンバろう!孝二ならきっとできるぞ!」

「孝二へ、残念ながら今年はお仕置き回数が10回を超えてしまったぞ!約束通りクリスマスのプレゼントはなしだ!来年はもっと心を鍛えて、クリスマスには、ムチではなく、プレゼントをもらえるようにがんばろう!孝二ならきっとできる!父さんは期待してるぞ!」

と、コメントを書き加えて、孝二に返すのだった。

 孝二も、孝一同様、「プレゼントなし」「ムチ」という字をみて、肩をガックリと落とすのだった・・・

 その光景をみて、

「やったぁ〜〜〜!今年はプレゼントひとり占めだ!」

と、密かにガッツポーズをとるのは、末恐ろしき三男の孝三だった・・・

・・・・・・・・・

 尻叩きが終わっても、まだ孝一・孝二のお仕置きは終わっていなかった。朝ごはんもまだまだお預けだった。

 寝小便をしでかした孝二だけでなく、孝二に自分のパンツを貸した孝一にも、パンツ手洗い洗濯、そして、自分のパンツが乾くまで物干し竿にかかったパンツの脇での反省タイムが命じられたのである。

 家の裏手、風呂場の脇の洗濯場で、二人並んで真っ赤なかわいいお尻を晒して、自分のグンゼ・ブリーフを手洗いする孝一と孝二だった。よく見ると、父親から叩かれた木の定規の赤紫の筋痕が何本も尻に残っていた。

「お兄ちゃぁ〜〜〜ん、黄色い染みがなかなかとれないよぉ〜〜〜〜〜!!」

と、ここでも兄貴に甘える孝二。寝小便をしばしばしでかす孝二のブリーフの裏フロントの黄色い染みはなかなかとれないことは確かだった。

「ほら、もっと、こうやって力を入れてもみ洗いしないとダメだろぉ〜〜〜〜!」

と、実は少し腕が疲れてきてしっかりと手もみ洗いできないでいる弟のブリーフを替わりに洗ってやるやさしい孝一だった。

ギュギュ!ゴシゴシ!ギュギュ!ゴシゴシ!

「ほら、落ちるだろ!お前は力を入れてないんだよ!」

「うん!落ちたね!お兄ちゃんありがとう!!」

と、孝一と孝二は、二人仲良く、お仕置きであるブリーフ手もみ洗濯をするのであった。

 その兄貴たちの仲のよい光景を影で隠れてみて、独り、ひがんでいるグリンチ・孝三がいた。

「チェッ!つまんないの!お仕置きされているのに、なんであんなに楽しいそうなんだろう??よし、地獄に落としてやる!!!!」

とニヤリと笑うと、去年のクリスマスにプレゼントされた孝三自慢の補助輪なし!自転車に飛び乗って、どこかへ行くのだった。

・・・・・・・・・

 島の教会の脇にある広場は、島の子供たちの遊び場だった。

 その広場のど真ん中には、亜熱帯特有のガジュマルの木が立っていた。その木は、島民たちが大切に守っている父なる木、島のシンボルでもあった。

 腕白坊主たちのいたずらを避けるため、大人たちは、「その木に近づくと、木の枝がヌッと伸びてきて腕白坊主のお尻をピシッと叩いてお仕置きするんだぞ!」と、生まれた時から子供たち特に男の子にはそう言い聞かせているのだった。

 当時、男の子にも結構人気があったアニメ「魔法使いサリー」で、サリーが弟のカブをお仕置きするため、木に魔法をかけ、木に自分の「枝」でカブのお尻をピシッ!ピシッ!と叩かせるシーンがあった。鈴木家の長男たちと同世代の腕白坊主たちはみんなテレビでそのシーンを見て、特に、ますます、その大人たちの「脅し」がウソとは思えなくなってきていたのだった。

 だから、広場のド真ん中には、近寄らないで遊ぶのが、腕白坊主たちの不文律であった。

 その年のクリスマスイブはちょうど日曜日だった。親たちが教会の信者であってもなくても、朝早くから、朝ごはんを食べ終えたばかりの多くの子供たちが広場に集まって、今晩、または、明日の朝、枕元においてあるプレゼントを楽しみにしながら、元気に遊んいた。

 そんななか、そんなのどかなほのぼのした光景には似合わない、小悪魔、グリンチ・孝三が、自転車でやってきた。

 グリンチ・孝三は、小1のくせに、高学年の子供たちが全然恐くなかった。図々しくも、孝一・孝二の腕白仲間が缶ケリをしているそのど真ん中に、自転車をでつっこみ、

「お兄ちゃんが家にきてって!めずらしいかぶと虫を見つけたからいますぐ家に遊びにきてって、呼んでたよ!」

と、ウソを言うのだった。

「え!めずらしいかぶと虫だって!みんな鈴木んちへ行こうぜ!」

と、孝一の親友のガキ大将格の少年が、一緒に遊んでいた数人の腕白坊主たちを誘った。

「面白そうだ!行こう!」

「行こう!」

と、広場の脇に乗り捨ててあった自転車に乗り、鈴木家へ向かう、孝一・孝二の腕白仲間たちだった。

「フフフ・・・うまくいったなぁ〜〜!さあ、ボクも急いで家にもどらなきゃ!」

と、憎々しげな不敵な笑みを顔に浮かべて、グリンチ・孝三も、遅れまいと自転車に飛び乗り、家へ戻るのだった。

・・・・・・・・・

「お兄ちゃぁ〜〜〜〜ん!早くパンツ乾かないかなぁ〜〜〜〜?」

グゥ〜〜〜〜〜〜!孝二のおなかが鳴る。

「ねえ、お兄ちゃぁ〜〜〜ん!朝ごはん、パンツが乾いたら食べさせてもらえるよね??」

「シッ!お仕置きの最中だぞ!父さんに見つかったらまたお尻打たれるぞ!強い男の子になれるように神様に祈るんだ・・・」

「フぁ〜〜〜〜〜い!」

と、孝一にたしなめられ、大きなあくびをする孝二だった。

 パンツを乾し始めてからまだ15分とたっていなかったが、裏庭の物干し竿に掛かったパンツの横で、家に向かって下半身スッポンポンで立つ孝一と孝二には、とてつもなく長い時間に感じられた。

 腕白盛りの男の子にとって、パンツが乾くまでのパンツ脇に立っての「反省タイム」は、尻叩き以上に苦痛な時間だった。「反省タイム」の最中は、生垣の方へ真っ赤な尻を向け、家の方を向いて手を合わせ、神様に祈らなければならなかった。裏庭からだと、家の方角に教会があるからだった。

 鈴木家の裏庭を囲む生垣は、大人の目の高さまであり、外の道を歩く大人には、この二人の恥ずかしい格好は見えなかった。しかし、小学生の目線のところは、ちょうど生垣がところどころで崩れなくなっているのだった。その「穴」を腕白坊主の孝一・孝二がくぐりぬけるからだった。

 しばらくすると、孝一・孝二の腕白仲間たちがガヤガヤ騒ぐ声と、自転車を止める音が生垣の外から聞こえてくるのだった。

 それは、もちろん、「反省タイム」中の二人の耳にも入った。

「あ、ヤバイ・・・」

と、孝一は自分を腕白仲間が遊びの誘いに来るタイミングの悪さを恨めしく思うのだった。

「山田君たちだよ・・・お兄ちゃん・・・どうしよぉ〜〜〜〜!オネショしたことがバレちゃうよぉ〜〜〜!恥ずかしいよぉ〜〜〜〜!グスン!」

と、また涙ぐんでしまう孝二だった。

「黙れ!泣くな!」

と、甘えん坊の弟をたしなめつつ、泣きたいのはこっちの方だとも思う、ツライ長男の孝一だった。

「ママぁ〜〜〜〜〜、助けてください!もう、オネショなんてしませぇ〜〜〜ん!グス、グスン」

 もうだめだ・・・この恥ずかしいお仕置きの光景を仲間に見られてしまうと、二人とも真っ赤な顔になり、目をギュッと閉じるのだった・・・

・・・・・・・

 生垣の外で自転車を止め、孝一たちの腕白仲間が、

「す・ず・き・くぅ〜〜〜〜〜〜ん!」

と、声を掛けようとするその時だった。

 ガキ大将格の山田信二が、いち早く、その二人の恥ずかしい光景を生垣からチラリと見てしまったのだ。

「あ!鈴木のピンチだ!」

と思う山田だった。

 孝三はまだ幼くて仲間はずれだったので知らなかったが、島の腕白坊主たちの間では、それぞれの家庭で受けるお仕置きのことは、「見ざる聞きざる言わざる」が不文律だった。

 腕白坊主たちである。家に帰れば、やんちゃがすぎて、父親から、尻の一つや二つ叩かれているのは当然だった。特に、亜熱帯の南の島である、素っ裸で反省タイムなど、鈴木家でなくとも、島の男の子なら、一度や二度経験しているのだった。

 そして、そういった場面に出くわしてしまった時は、見なかったこと聞かなかったにするのが腕白坊主同士の礼儀なのであった。もちろん、面白がってみたり、いいふらしたりしたら、ソイツが逆に仲間はずれにされてしうほどだった。

 山田は、とっさに生垣の前に立ちはだかって、仲間と「子分」に、

「あ!思い出した!鈴木は、今日、家にはいないんだ!帰ろうぜ!」

と言ったのだった。

 ガキ大将格の少年の言葉は絶対である。怪訝な顔をしつつも、少年たちのなかから、疑問を発する声はあがらなかった。

 孝二の親友の小4の田所俊平も裏庭での「反省タイム」のことに気がついていた。そして、山田を補助するように、

「広場に戻ろうぜ!」

と真っ先に言うのだった。それが呼び水となり、次々に

「広場に戻ろうぜ!」

「広場に戻ろうぜ!」

と言いながら、少年たちは、自転車に乗り、今来た道を逆戻りするのだった。

 高学年の少年たちにやっと追いついて、自分の家の裏庭前の生垣についたグリンチ・孝三。しかし、兄貴の友達たちが、次々帰っていくのにあわてて、

「もう、帰っちゃうの?お兄ちゃんたち、庭にいるよ!」

と声を掛けるのだった。

 しかし、それに気がついた山田と田所は、

「お前、本当に、鈴木の弟なのか??」

「そうだよ!それに、ウソつくなよな!鈴木が俺たちのこと呼んでいるはずないだろ!」

と孝三に軽蔑の視線を送りながら、自転車に乗って広場に戻っていくのだった。

 他の少年も、山田と田所の後について、次々と去っていくのだった。

「なんだよ!みんな帰っちゃうのか・・・つまんないの!」

と、グリンチ・孝三はすごくがっかりするのだった。孝三には、まだ、山田と田所の軽蔑の視線を理解することができなかった。

 一方、庭の中で、ホッと胸をなでおろす二人の兄貴たち。

「山田・・・助かった・・・ありがとう・・・」と、孝一。

「ママぁ〜〜〜、ありがとう」と、甘えん坊の孝二だった。

目次に戻る 第二譚に進む