金サポ翔太「真夏の夜の悪夢」1

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一、シューベルト事件 後半5(ケツ竹刀敢行後、それぞれの放課後、それぞれの翌日)

<その日の6時間目1C「倫理・政経」>

 いや〜〜、次の6時間目は、実は、俺の「倫理・政経」の授業だったんスけど、なんか気まずかったッスね・・・。

 あいつらマジでケツ痛そうで、授業も聞いているんだかいないんだか・・・俺へのあてつけなのか、「ケツが痛てぇ〜〜!」って大声で叫ぶヤツもいたし・・・

 実は俺、4月の初っ端にあった1年生担任・副担任の初学年会議で、

「1Cの生徒の、時には親友になり、時には兄貴になれるようがんばります!」

なんて挨拶して、ゴリに軽く無視されてたッスけど、やっぱ、そんなこと無理なんスよね。あいつらは、生徒で、俺は教師。結局、俺は管理する側で、あいつらは、管理される側ってことッス。ゴリは、今回のことで、それを俺に教えてくれたんだと思うッス。

 けど、あいつらの男同士の絆っつか、連帯感は、今回のことでグッとアップしたみたいッスよ。同じ釜の飯を食うっつうか、一緒に、ケツ痛い思いしたってことがでっかかったみたいッス。

 今回の事件は、住谷に一番の責任があるッスけど、他のヤツらより、ケツ竹刀余分に食らって他のヤツらより倍以上ケツ痛い思いしたんだし、ブリーフ罰ランも食らって、まわりのヤツらも妙に納得しちゃって、あとは恨みっこなしッつう感じで、住谷も気が楽になったみたいッス。もしかして、住谷、心の中ではゴリに感謝しているかもしれないッスね。いや、仮に今はわからなくても、高校卒業して、何年かしたら、その時のゴリの「計らい」をきっと感謝すると思うッス。「ゴリを囲むOB会」とかで、 余興の「懐かしのケツ竹刀」を、一番最初に願い出るかもしれないッスね、きっと。

 

<その日の放課後1 体育教官室前>

 体育教官室から出てきた1A大林のことを、1C渡辺も含めた陸上部の一年生たちが、囲んでいたッス。

「おい・・・大丈夫だったか?」

「ケツ竹刀、何発だった・・・?」

「十発か?」

「い、いや、大丈夫。なんにもなかった。気持ち悪りぃくらいやさしかったよ、ゴリのやつ・・・はい!持ってけって感じですぐに返してくれた。」

「俺のケツ竹刀の写真はどうなった?」

「そ、そうだ!は、早く見せろ!」

「え・・・と・・・ダメだ、やっぱメモリーから消されてるよ・・・」

「え、ゴリって、携帯使えるんだ!けっこう、やるじゃん!」

「あ〜あ、あの写真消されちゃったのは惜しかったよなぁ・・・」

「あれがあれば、ネットに投稿できたのに・・・」(爆)

 

<その日の放課後2 校庭・朝礼台>

「オラァッ!もっとデッカイ声で歌えよ!」

「そうだよ!全然、きこえねぇ〜ぞ!」

「どうせなら、三人でハモれよ!ハモれ!」

 朝礼台に立って、校歌を歌わされている、おもらしブリーフ一丁の1C田辺、野村、南の三人を、硬式野球部の先輩たちが、朝礼台からはるか離れた校庭の端で、命令をだしているッス。

 そうッス。あの三人がトランクスを穿いていたのは、硬式野球部の先輩たちの命令だったッス。

 もちろん、先輩たちは、

「そろそろ今年もシューベルト事件勃発でしょう!」

「一年にトランクス穿かせようぜ!」

って、一年には秘密の、硬式野球部・夏休み前の恒例行事の打ち合わせをしていたッス。

 主将で3年の谷沢が、夏の大会前のミーティングで、一年生部員を前に宣言したッス。

「今年も、大会優勝、甲子園出場を祈願して、我が野球部では、大会終了まで、全員、一枚のトランクスを穿き続けることとする!いいな!ちょっと臭うが根性でガマンすること!」

「ウィ〜〜〜ス!」

「もちろん、学校ブリーフも禁止だ!心配するな!ゴリには話を通してある!違反して、トランクスをとり替えたもの、トランクス以外のパンツを穿いてきたものは、朝礼台に立って校歌斉唱だ!!!いいな!」 

「ウィ〜〜〜ス!」

 そして、その日の放課後、ゴリに穿かされた「おもらしブリーフ」の1C三人組は、その罰を受けたッス。

 かわいそうに、先輩の「わな」にまんまと引っ掛かったあいつら、不平一つ言わずに、おもらしブリーフ一丁で、日が暮れるまで、朝礼台に立って、校歌を何度も何度も歌わされていたッス・・・。泣きてぇ気持ちをグッと堪えて、あいつら、一年生の試練に耐えているんスよね〜〜。

 

<その日の放課後3 フィルホ部室 告白タイム>

 1Cのヤツら、その日の放課後は、もう俺のこと避けるようにして挨拶もろくにしてくれなかったッス。

 その日は、フィルホの練習は休みだったッスけど、俺、なにかにすがる思いで、フィルホの部室へいったッス。ちょうどそこには、1Cの5人と、1Aのフィルホの柳田がいたッス。

 俺の耳に、

「もう、金サポはきっぱなんてやめよーぜー」

「ゴリのケツ竹刀、生で食らったんじゃ、割りにあわねぇ〜よ!」

「そうだよ!俺、ゆうべとかもうチンチン、痒くてさぁ・・・」

「藤本との男の約束だろ!黙って耐えろ!」

「もともとアイツと約束なんてしてねーよ!榎(えの)は、アイツのお気に入りだからな!」

(「えの」とは1C榎本のあだ名)

「なんだと!もう一度言ってみろ!」

「おい!けんかはやめろよ!」

「だいたい、コーチ自身、金サポはいてんのかよ?」

「どうせ口だけだろ!」

って会話が飛び込んできたッス。

 俺が咳払いすると、あいつらハッとしたように振り返ったんで、俺、

「よぉ!ケツ痛かったか?」

って、とりあえず声をかけたッス。

 1Cの連中は、待ってましたとばかりに口をそろえて、

「もう痛かったッスよ〜〜!見てくださいよ!コレ!痣がクッキリ!」

って、5人そろって、俺の前で黒の夏季用ガクズ下ろして、ケツをペロンとしてみせたッス。

 俺は、あいつらの反応にホッとして、

「こんくらい、ケツ殴られたうちにははいらん!」

って、渋く決め、あいつらの金サポ・腰ゴムを一人ずつポンポンって軽く平手で叩いてやったッス。

 そして、ズボンのポケットに入れてあった「SP軟膏Jr(ジュニア)」を出して、

「ケツが痛いときは、これぬっとけ!少しは楽になるぞ!」

て、「男子高校生のケツの必需品」を紹介しておいたッス。

 そしたら、榎(えの)こと榎本が、俺に、聞きにくそうな口調で、

「質問なんスけど・・・こ、コーチも、今、俺らと同じく、金サポはきっぱなんスよね?」

って、念を押すかのように、聞いてきたッス。

 俺は、もちろん、

「あったりめえだろ!おめえたち、俺のこと、信用してねぇーのか?これを見ろ!」

って言って、ズボンを下ろして、金サポを見せてやったッス。

「いつから、金サポなんスかぁ?」

って、柳田が鋭いとこついてきたッス。

 もちろん、俺は、

「おめえらと同じ、三日前からだ!あったりめえだろ!」

って、言ってやったッス!!!まあ、ウソも方便ってやつッス・・・エヘヘ。

「やっぱ、俺の言ったとうりじゃん!」と榎(えの)ッス。

 他のヤツらも、

「お〜〜〜〜〜!」

って、感動していたみたいッス。

 ただ一つ失敗は、学生時代から穿きとおしてる、今井主将直筆の「翔太」の文字が入っている金サポではなくて、その日、俺が穿いていた金サポは、買ったばっかし、オニューの金サポだったことッス。

 鈴木が、

「先生の金サポすげぇあたらしいッスね・・・先輩の金サポ、もっと年季入ってるッスよ・・・」

って言うんで、

「この前も話したように、今年は俺が担任を持つ初めての年だから、俺はお前らと同じ一年生だ!だから、この新金サポで、はきっパ決めて、気合入れなおしてるんだぜ!」

って、渋く決めといたッス。

 榎(えの)ったら、俺が金サポ穿いていたことを知って、本当にうれしそうな顔して、

「先生!俺、根性で、合宿終るまで、はっきッパ通します!」

って、ガッツポーズ決めてくれたッス。

 榎(えの)のガッツポーズを見て、俺、金サポのことアイツらにコクって本当によかったと思ったッス。で、俺も、

「あいつらのことは裏切れねぇ!久々、金サポはきっぱ決めるかぁ!」

って、決意したッス!

 

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<翌日の朝 ゴリには負けねぇ!>

 俺は、あとから聞いたことなんスけど、翌日、前日のケツ竹刀が原因で、学校を休むヤツがでたら、

「ゴリに負けたことになる!」

っつうわけで、学級委員長の高山は、携帯連絡網を駆使し、前日の5時間目、ゴリにとっちめられて、かなり凹んだ様子のヤツのところへ、1Cのご近所さんが迎えに行くように、電話伝令を出したッス。

 例えば、相原のところへは、テッシーがチャリでお出迎えッス。

「よぉ!相原!偶然だな!」

「て、勅使河原君・・・どうしたの・・・僕んちの玄関の前で・・・・」

「い、いや、ちょっと通りかかっただけ・・・せっかくだからさぁ、いっしょに学校へいこうぜ!駅まで俺のチャリの後ろに乗れよ!」

「えっ、い、いいよ・・・」

「遠慮すんなよ!それとも、おまえ、ケツまだ痛むのか?」

 もちろん、三発食らった住谷以外は、薄いピンク色の痣をケツにのこしただけで、痛みは完全になくなっていたッス。やっぱ、みんな若いッスよね。

 テッシーが「ケツがまだ痛むのか?」って、ばかデカイ声で言うもんだから、相原はあわてて、

「ちょ、ちょっと・・・親に聞こえるからさぁ・・・」

って、テッシーの口をおさえるようにしてきたッス。

 もちろん、相原は、ケツ竹刀食らったなんて、親には言えなかったッス。他の1Cの連中のほとんども、ブリーフ一丁にされ、ケツ竹刀食らったことは、親には秘密だったらしいッス。

「あ、そうか・・・悪かったな・・・エヘヘ・・・俺も親には秘密なんだよな!さあ、早く後ろに乗れよ!」

「本当にいいの?二人乗り警察にみつかったらヤバイじゃん」

「大丈夫!駅前の交番の手前で、おまえのこと降ろすからさ!そうしたら、俺が駐輪場にチャリおいてくるまで改札の前で待ってろよ!」

「うん!それなら!じゃあ・・・」

って言って、相原は、テッシーのチャリの後ろに乗ったッス。そして、テッシーは、早速、自転車をこぎ出すとともに、携帯で高山に、

「おっ!高山か?俺、勅使河原。相原はOKだから!」

って、連絡を入れたッス。

 後ろで、相原が、

「どうしたの?僕のことで、なんか連絡してたみたいだけど・・・」

って聞くので、テッシーは、

「お前は気にしなくていいの!こっちの話!」

って言って、相原と仲良く、安全運転で駅へと向かったらしいッス。

(警告:テッシーのような、自転車二人乗りや自転車に乗りながらの携帯通話は、たいへん危険ですので、絶対に、まねしないで下さいね!)

 もちろん、1Cは全員出席。欠席者はなしでした!

 

<翌日の朝 始業前 校庭隅の洗い場>

「やっべぇ〜〜、この黄色い染み、どうにか落ちねぇかなぁ・・・」

「おまえ、もう染みつくったのかよ!」

「根性で落とせ!」

って、ゴシゴシ、ゴシゴシ、1C田辺、野村、南の硬式野球部三人組が、朝練の後、急いで、「おもらしブリーフ」を手もみ洗濯中ッス。

 もちろん、「おもらしブリーフ」返却の期限は、一週間以内ッスけど、当然親には秘密の、こんなダサいブリーフとは、一刻も早くおさらばしたいと、翌日の昼休みに、ゴリに返却すべく、せっせ、せっせと手もみ洗いッス。

 あいつら、洗った「おもらしブリーフ」を教室内にかけて、乾かしていたらしく、職員室で話題になっていたッス。ったく、あいつら、始末に負えないッスよ!あとで注意しとかないと・・・。

 

<翌日の昼休み 体育教官室 ブリーフ再検査!!>

「やっべえぇ〜〜〜、俺のブリーフの染み、どうしても落ちなかった・・・」

と、つぶやきながら、1C南が、同じく1C田辺、1C野村の後について、体育教官室に入っていったッス。

 三人は、ゴリの教務机の前に立つと、

「オッス!1C田辺、昨日お借りしたブリーフを返しに来ました!」

「オッス!1C野村、昨日お借りしたブリーフを返しに来ました!」

「オッス!1C南、昨日お借りしたブリーフを返しに来ました!」

と言って、「おもらしブリーフ」を両手で拡げるようにしてゴリの前に差し出したッス。

 ゴリは、うんと頷きながらも、すでにユニフォーム姿の三人に、

「今日も先輩の応援か?」

って、聞いたッス。

「オッス!」

と答える三人に、ゴリは、

「クソ暑い中、ご苦労なこったな・・・」

と言ったッス。

 そして、

「よし!おめえらが、きちんとブリーフをはいていたかどうか、ブリーフをきちんと洗濯したどうか検査だ!ブリーフを裏返せ!」

と、三人に命令したッス。

 三人は、保健室の「おもらしブリーフ」を裏返しにすると、やはり両手で拡げるようにして、ゴリの前に差し出したッス。 

 ゴリは、三組のブリーフを一組ずつたんねんにみながら、満足そうに、何度も頷いていたッス。

「おめえらも、少しは反省して、まじめにブリーフをはいていたようだな!男子高校生は白ブリーフ穿くのか一番だ!トランクスなど大学生になれば、飽きるほど穿ける!」

なんて、いいながら、三人目の南の穿いていた「おもらしブリーフ」に目をやったッス。

「なんだ・・・南、おめえ、染みが残ってるじゃねぇ〜か・・・」

「オッス!何度も手で揉んで洗ったんスけど・・・ダメでした・・・」

「おめえ、染み濃ィいなぁ・・・こういう濃厚な染みにはだ!漂白剤のワイドハイターの原液に30分つけておくのが一番だぜ!」

 さすが、独身生活が長いゴリは、こういうことにも詳しいッス!!

「オ、オッス!」

「なんだぁ・・・おふくろさんに聞かなかったのかぁ?」

「オ、オッス!自分たち、学校で手洗いしました・・・」

「そうかぁ・・・まあ、恥ずかしくて言えねぇ〜よな・・・まあ、いい、おふくろさんに頼るより、己で己のパンツを手洗いしたっつう、おめえらの、その独立独歩の精神に免じて、今回はこれで合格だ!このパンツは、あとで俺が、養護の川村先生に再洗濯と消毒を頼んでおく!」

「オッス!ありがとうございました!」

「よし!だが、まだ検査は終っとらんぞ!ズボンをおろせ!」

「えっ・・・ユニのズボンっすかぁ?」

「そうだ!どしたぁ?!きちんと、規定の学校ブリーフを穿いているかの再検査だ!まさか、おめえら、あれだけケツ痛い思いして、懲りずに、もうトランクスじゃあるまいな?!」

「い、いえ。でも、俺たち今はユニなんでスラパンなんです。練習、試合がないときも、ユニズの下はいつもスラパンって、野球部の規則なんで・・・」

「でも、俺たち、ブリーフ持って来ました!」

 そういうと、三人は、ユニフォームのケツ・ポケットに丸めて放り込んであった各自のブリーフを取り出し、ゴリに差し出たッス。

 ゴリは、感動したように、

「お〜〜、昨日の俺の竹刀の効果は、なかなかのもんだったようだな!よし!検査だ!表はいい、きちんと穿いていたかどうかは、裏をみれば、一発だからな!裏に返して見せろ!」

って、三人に命令したッス。

 三人は、各自のブリーフを裏返しにして、両手で拡げて、ゴリの前に差し出したッス。

 ゴリは、三人のブリーフについた、「自然」な染み、ちょっと仮性包茎気味の高校生・男子ならば、誰でもこしらえてしまう、ブリーフ・フロント裏の小便の黄色い染みを見て、満足そうに何度も頷いたッス。

 ただ、ゴリは、南の染みが、ちょい濃い目なのを見て、

「おめえ、まさか、ビタミン・サプリメント使ってんのか?」

って、聞いてきたッス。

「オッス!いつもスポーツ・ドリンクに入れてます!」

と答える南に、ゴリは、

「そうか・・・まあ、ほどほどにしとけよ・・・あれも、使いすぎると、肝臓に悪いからな!」

って、アドバイスしたッス。

「よし!三人、全員、合格だ!これからは、まじめに学校ブリーフを穿くように!いいな!」

って、ゴリは、三人に、ブリーフ再検査の合格を言い渡したッス。

 三人は、再び、午前中はいていたブリーフを、ユニのケツ・ポケットに丸めて放り込んだッス。その様子を見ていたゴリは、

「おめえら、早稲田のハンカチ王子みたいに、それをケツから出して、汗を拭いたりすんなよ!ブリーフ王子とか、マスコミに書かれるからよ!ガハハハ!!」

って、機嫌よさそうにジョークを飛ばしていたッス。 

「オ、オッス!失礼します!」

と返事をして、教官室から出て行こうとする三人に、ゴリは、

「おえめら、ケツ、もう痛くねぇ〜だろうな?」

って聞いてきたッス。

 野村が、

「昨日は少しケツが痛んで、座るたびに反省できました!けど、今朝、起きたら、全然、痛くありませんでした!」

と、「優等生」の返答をし、他の二人も、

「ボクのケツも、野村君と同じです!」

「ボクのケツも同じです!」

と答えたッス。

 ゴリは、まるで準備してきたようなその返答に、苦笑いしながらも、

「よし!引き止めて悪かったな・・・しっかり、先輩たちのこと応援して来い!」

と言って、ペコリと頭を下げて教官室から出て行く三人を見送ったッス。

 

<翌日の午前 1C四時間目の体育 試練の振り替え授業>

 1C三時間目終了後、四時間目の体育に備えて、1Cの連中は、ワイワイガヤガヤ着替え中ッス。

 住谷は、生ケツをペロリと晒して、自慢げに昨日ゴリからいただいた「勲章」自慢ッス。

「ここらへんがよぉ〜〜〜、まだ押すと少し痛てぇ〜んだよな・・・ゴリったら、俺には全く容赦なしだもんな・・・い、いってぇ!そこは押すなっていっただろ!!」

 そこへ、学級委員長の高山が、あわてた表情で教室に入ってきて、クラス伝令ッス。

「おい、着替えは中止だ!」

「え!また?!まさかケツ竹刀?」

「ちょっとぉ〜〜、勘弁してよ〜〜〜!」

「い、いや、次の時間の体育は、音楽に振り替えだ!みんな、急いで、音楽室へ行ってくれ!」

 高山のその伝令を聞いて、クラス全員から、

「え〜〜〜〜!!!」

って、悲鳴にも似た声が上ったッス。

・・・・・・・・・・・

 音楽室には、谷岡先生が、DVDを準備して、1Cの連中が来るのをいまや遅しと待っていたッス。

 谷岡先生は、1C全員が集まって席に着いたのを見ると、満足そうに頷きながら、

「猿田先生から、みなさんが、心を入れ替えて下さったとうかがいました。昨日のことはたいへん悲しい出来事でしたが、今は、先生、とてもうれしく思います。さあ、みなさんで、心を新たにして、シューベルトの歌曲『鱒』(マス)を鑑賞しましょう!!」

って、言ったッス。

 再び、「鱒(マス)」と聞いて、クラスからは、プッと吹き出す声が上ったッス。もちろん、またケツ竹刀はまっぴら御免なんで、クラスの連中、今度は笑いを必死で堪えていたッス。

 知ってたッスかぁ?笑いを堪えるって、痛みを堪えるより何十倍も何百倍もつれぇ〜〜ってことを・・・

「や、やめてくれ〜〜、やっぱ俺、笑っちまうよぉ〜〜!」

って、笑いを堪えながら、誰に言うともなく、つぶやきを発する1Cのやんちゃ坊主たち。

 特に、住谷は、

「お、お願いだから、俺の前で、もう鱒(マス)って言わないでくれぇ〜〜〜!お、おかしくて、ケ、ケツにひびくぅ〜〜〜!」

って、目には、笑いを堪える涙をいっぱい溜めて、心の中で叫んでいたッス!!

 まあ、あいつらには、いい薬になったでしょうね・・・。

 

<翌日の午後 1A五時間目の体育 俺はおめえらのことが心配でならねぇ!>

 その日の1Aの五時間目の体育は、たいへんなことになっていたッス。俺は、1Bで倫理・政経の授業だったんスけど、開け放たれた1A教室の窓とドアからゴリの怒鳴る声が聞こえてきて、俺はもう、授業どころじゃなかったッス・・・。

 1Aのヤツらは、全員、昨日の1Cの連中のように、椅子の上に正座させられていたッス。昨日と違うのは、もうすでに全員がパンツ一丁になっていたってことッス・・・。俺は、1Aでフィルホの柳田のことが心配になったッス。

 そして、ゴリの説教は、ブリーフ一丁ケツ竹刀の「前奏曲」だったッス。

「おめえらの昨日の態度はなんだ!おめえらの同期である1Cの連中が、ケツを痛い思いしいてる時に、それを笑って見物するとは何事か!あの態度をみて、俺はおめえらのことが心配になった!なにが心配かと言うとだ!あのようなブッたるんだ態度のまま 、おめえらが夏休みを迎えたならば、おめえら全員、夏休み中に不良になり下がり、夏休みが終って二学期になっても、全員、学校には出てこないんじゃないかということをだ! よってこれから、夏休み中に気合が抜けないよう、俺のこの竹刀で、お前らのケツを一人二発ずつ殴り、気合を注入してやるからありがたく思え!いいな!」

「ィ、ィ〜〜〜ス!」

 この説教を、漏れ聞いてしまった他のクラスの連中は、

「えっ!一人二発・・・半端じゃねぇ〜〜〜!」

「ヒェ〜〜!厳しい〜〜〜!」

って、つぶやいていたッス・・・。

「一番!英田(あいだ)!出てこぉ〜〜〜い!!」

「はい!お願いします!」

パァ〜〜〜ン!

「いち!」

パァ〜〜〜ン!

「に!ありがとうございました!」

「次!二番!飯島!出てこぉ〜〜い!!」

って、昨日の1C同様に、1Aのクラス前の廊下でゴリの竹刀が、唸りをあげたッス。

 俺が授業をしている1Bの黒板のすぐ後方で、1Aの連中のブリーフのケツに竹刀が唸りをあげているなんて、なんか、俺、心臓バクバクで、授業にはならなかったッス。 

 1Aは、さすが、ゴリ担任のクラスだけあり、ブリーフ違反者はいなかったようで、一人二発とはいえ、1Cよりもスビーディーにケツ竹刀は進行していったッス。

 もちろん、1A35番、フィルホの柳田は、金サポ一丁、生ケツ竹刀だったッス。

 そして、1A36名のケツ竹刀は、5時間目終業の15分前に終ったッス。全員のケツ竹刀が終ると、ゴリは、

「パンツ一丁で、朝礼台前に集合!ダッシュだ!」

って、1A全体を朝礼台前に集めたッス。

 そして、

「ぜんたぁ〜〜い!右向け右!かけあぁ〜〜し始め!校庭三周だ!」

のゴリの号令で、ピィ!ピィ!ピィ!ピィ!と、ゴリのホイッスルに合わせて、1A全体が、パンツ一丁のブリーフ罰ランっす。

 もちろん、柳田は、金サポ一丁の罰ランっす。1Bのクラスからその様子を眺めると、柳田のケツには、二本の赤い線がクッキリと浮かび上がっていたッス!柳田の表情は、自分の金サポ姿、そして、赤い線の入ったケツを全校生徒に見せつけるように、どこか誇らしげだったッス!!

 

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