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「色柄を持たないパンツはく山崎すぐると、彼の担任の中村大悟」

 番外編07 頭髪検査と懲罰床屋 1980 

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閑話休題 復刻版  学年通信 池永兄貴のアドバイス 1980 

 中村大悟の机の奥から見つかったわら半紙ガリ版刷りの学年通信。その最後には池永先生の兄貴としての貴重な忠告が・・・。その忠告を守らなかった中三男子たちのおケツの運命ははたして!?

 その学年通信を、日光さんの協力を得て、ここにデジタル版として復刻することができました!!日光さん、ありがとうございます!!

 

十四、疑惑のブリーフ・シルエット


 「ちょっとぉ・・・学級委員の青木君、何やったの?」

 その光景を遠巻きに眺める女子生徒たちは、さかんにヒソヒソ話をしている。

 「うわぁ・・・青木が短パン一丁で正座だなんて、なんかスゲェー展開・・・アイツ、何やらかしたんだ?」

 そして、その光景を眺める男子生徒たちも、やや興奮した面持ちで、口々に囁き合っているのだった。

 その光景とは、校庭の端、体育館前の手洗い場の脇で仁王立ちになっている白のポロシャツにジャージ姿の池永先生と吉田先生の後姿、そして、その横に、白のシャツと黒のスラックスで立つ石井先生の後姿。

 両脚をやや広げて立つ池永・吉田両先生のテカったジャージのケツのとこから、三本目の「脚」が見えている。それは間違いなく、竹刀の先端であった。そして、石井先生のしょんぼりした風な後姿もまた印象的であった。

 そして、その3人の先生たちが立つすぐ前には、三人の男子生徒が、顔を真っ赤にして、短パン一丁で正座させられている。小麦色に日焼けして筋肉質の上半身の生徒が二人、そして、色白でヒョロともやしのような上半身の生徒が一人。

 三人とも池永先生の指示で、両目を瞑って反省中。

 すでに、放課後に残った生徒たちの大半が校庭に出てきており、その三人の男子生徒たちは、その喧騒を耳で聞き、また校庭の生徒たちの自分たちを射るような視線を痛いほどに全身で感じていた。

 正座させられている三人のすぐ横には、いつもあの丸椅子が三脚、すでに置かれている・・・。市立三中で、頭髪検査違反があると、繰り返されるいつもの光景だった。

 池永先生の足元にはスピーカーがおかれ、池永先生の右手には小型マイクロホーンが握られている。もちろん、左手には男子生徒指導用の竹刀が握られていたのだった。

「おまえらが、なぜいまここで正座させられているか、わかっているな!!」

 池永先生の声が、そのマイクロホンとスピーカーを通して、校庭中に響き渡る。校庭に出てきている生徒たちで、池永先生の声が聞こえない者は一人としていなかった。

「は、はい・・・」

「声が小さい!!聞こえんぞ!!」

「は・・・はい!!」

「おまえらは、先生たちに、ウソの整髪証明書を提出した!!」

 池永先生のその声が校庭に響き渡ると、取り囲む生徒たちからざわめきが起こる。

「やっぱ、あのウワサ、ホントだったんだ・・・」

「えっ、なんのウワサだよ・・・」

「床屋の息子と同じクラスになると、床屋に行かなくても、整髪証明書もらえるって・・・」

「えっ!そんな裏ワザあったんだ!!」

「うそぉ!?そんなの汚ったねぇーじゃん・・・」

 そんなことをささやきあっている男子生徒たちもいる。

 特に、3A、B、D組の男子生徒たちにとって、3C組男子生徒たちの、頭髪検査直後であっても「中学生」らしからぬ髪型は、羨望の的であると同時に、「よくあれで許されるよな・・・」と疑惑の的でもあったのだ。

「やっぱりね・・・そうだったんだ・・・」

とつぶやく男子生徒も多かった。

 そんな校庭のざわめきを黙らせるかのように池永先生の声がスピーカーから校庭へと再び響き渡る。

「おまえらはいくら言葉で注意しても、学年通信でいくら注意喚起しても、まったく通じないヤツらであることが今わかった!!よって、ウソの整髪証明書を提出して先生たちをごまかすことが、いいことか悪いことなのか、これから先生のこの竹刀で、おまえらの尻にたっぷりと教えてやることにする!!」

 池永先生のその言葉に、校庭は再びざわめく。「おぉ!!」「よぉっ!!待ってました!!」「そうこなくちゃな!!」と、何人かの男子生徒たちが、ちょっとふざけたような声ではやしたてる。

 池永先生はすかさず振り返り、まるで舞台に立った俳優が観客席をみるかのように、校庭にいた男子生徒たちに睨み渡す。

 そして、

「いま後ろでふざけてたヤツは、こっちに出て来い!!」

と一喝するのだった。

「やべぇ・・・池永、マジで怒ってる・・・」

 再び、シィ〜ンと静まり返る校庭。

 9月の放課後の校庭は、まだ日差しも強く、蒸し暑い。正座させられている三人の膝の上の握り拳の上には、ポタリ、ポタリと汗が滴り落ちている。

 特に、ブリーフ3枚履きの秋吉と森田の二人は、己の股間とケツが蒸れに蒸れて、痒くて仕方がない、同時に足のしびれが二人を責め始める。秋吉と森田は、怒り心頭の先生たちの前で正座させられているにもかかわず、短パンのケツをモジモジと落ち着きなく動かし始める。

 その落ち着きのなさを見咎めた吉田先生が、二人に近づいてきて、二人の頭頂部に、ガッツゥ〜ン!ガッツゥ〜ン!と無言の拳骨を容赦なく食らわしていく・・・。

 「いっいてぇ・・・」と、二人とも思わず両手で頭を押さえる。瞑った目の奥に火花が散り、目には涙がジワァとあふれてくるのだった。

 もちろん、池永先生は、今回の反省会のタイムキーパーだ。正座させた三人が、日射病になっては、今度は自分たちが責任をとることとなり、一大事。三人の正座を解き、早速、ケツ出しの命令を下す。

「よし!!三人とも立って、水飲み場の前に立ちなさい!!」

「はい・・・」

「はい・・・」

「はい・・・」

「声が小さい!!聞こえんぞ!!」

 池永先生のその怒鳴り声が、足がしびれて、やっとのことで立ち上がった三人をビクリとさせる。

「はいっ!!」「はいっ!!」と秋吉君、森田君の再返事。

 そして、少し遅れて、青木君が、

「ハ、ハイッ!!!」

と返事をする。しかし、普段から大きな声を出し慣れていない青木君の声がハスキーに裏返ってしまう・・・。校庭からドッと笑いが起こる。青木君の紅潮した顔が、さらにゆであがって、もう沸騰寸前にまで真っ赤になるのだった・・・。

 校庭の笑い声に、池永・吉田両先生の横でまさに「針のむしろ」状態、つらそうに目を瞑って立っていた石井先生が、目をあけて、青木君の様子に目を向ける。

 短パン一枚、校庭の生徒たちからいやが上にも注目され、ヨタヨタと足を引きずるように、秋吉君と森田君の後について、水飲み場の前へと進む青木君。もういつ泣き出してもおかしくないような青木君の表情を、石井先生は、つらそうにジッと見つめる。

 2年生の時の、音楽部発表会で、一人だけ緊張して舞い上がり、シンパルを叩くタイミングを大きく外してしまい、体育館の観客たちから大失笑を受けてしまった青木君。そして、演奏が終わるまで出番がなく、顔を真っ赤にして目をつむり、いまにも泣きそうな表情で、舞台に立ち尽くしていた青木君。石井先生は、あの時のことを、いやが上にも思い出してしまう。

 石井先生は、心の中で、青木君に、「がんばれ!!」と声援を送りたくなる・・・。しかし、今は彼に罰を与えなければならない担任教師である自分の立場に気づかされる石井先生。再び、グッとなにかに耐え忍ぶ表情をして、両目をギュッと閉じるのだった。

 水飲み場の前に立つ三人。独特の臭いが三人の鼻をつく。そこは日陰になっていて、ひんやり、ややホッとする三人。しかし、日陰から太陽光線がまだ強い校庭をの方を見ると、竹刀を持った石井先生と吉田先生の背後に大勢の生徒たちがいて、自分たちを見ていることにあらためて気づかされる。短パン一丁、水飲み場の前で立たされている自分たちの姿に羞恥心を覚え、思わず下を向く三人なのだった。

 もちろん、秋吉君と森田君は、自分たちの白短パンの前の部分にそれぞれクッキリと浮かび上がっているであろう「3B 斉藤」「3B 西原」の黒マジックの記名を、両手でさりげなく隠そうとするのだった。

 そんな三人の気持ちはお見通しなのか、池永先生は、早速、

「さあ、顔を上げろ!!もうわかってるな!!回れ右して、水飲み場の縁に両手をついて、ケツを後ろに出せ!!」

と命令を下す。

 校庭にいた生徒たち全員が、今回の反省会は、ケツ竹刀が先であることに気づかされる。ちょっと意外な顔をする生徒たちもいた。

 「回れ右」の号令に、短パンのフロントに浮かび上がる他人の名前を隠せるとちょっとホッとする秋吉と森田。しかし、いよいよ竹刀が自分たちのケツに飛んでくることを覚悟し、生唾をゴクリのと飲み込む。校舎の塔屋でブリーフを重ね履きしたときの余裕はすっ飛び、心臓がドクンドクンと鼓動を打ち始める。己の短パンのケツが、まだまだ無防備に思え、自然と短パンのケツに両手をあててしまう。

「は、はい・・・」

と返事をすると、秋吉と森田は、回れ右をして、水飲み場の縁に両手をつき、両足を少しひらくと、短パンのケツをグイと後ろの突き出すのであった。

 一方、相当緊張しているのか、青木君は、そのまま校庭の方を向き、突っ立ったまま。青木君は、石井先生の方を見つめるが、先生は、両腕を胸の前で組み、目を閉じたまま、反応してくれなかった。

「オラァ!!青木!!グズグズしてんじゃねぇ!!秋吉と森田みたいに、回れ右して、ケツだせ、ケツ!!」

と、池永先生の容赦のないケツ出し督促命令。

 いままで短パン一丁の恥ずかしさが先に立っていた青木君は、ここにきて、初めて、池永先生の竹刀で尻を思い切りぶん殴られる現実に直面する。もちろん、初めてだからって、手加減などしてもらえるはずもない。なんともいいしれない不安感が青木君の心を覆い始め、体がかすかに震え始めるのだった。

「ハ、ハイッ!!」

 再びハスキーに裏返った青木君の返事に、校庭から嘲笑が沸き起こる。

「なんか青木、かわいそうだな・・・・」とC組一の熱血漢男子で、音楽部(トランペット担当)の長谷川博史君がボソッとつぶやく。

 しかし、その横で、C組で音楽部(フルート担当)の谷山啓太君が、

「でも、一番悪いのは、青木だろ・・・」

とつぶやくように言う。

 そして、

「そうだけどさぁ・・・啓太はいつも冷てぇよな・・・ったく、石井先生は何してんだよ・・・」

と、長谷川君がつぶやきかえすのだった。

 青木がぎこちなく回れ右して、秋吉や森田のようにケツを後ろに突き出すと、石井先生は、キッと目を見開くのだった。水飲み場の前に差し出された、自分の学級に所属する男子三人の白短パンのケツ。それが石井先生の目に飛び込んでくる。

「あぁ・・・アイツら・・・また池永先生を怒らせるようなことを・・・」

 石井先生は気がついていた。秋吉と森田の短パンが、青木のそれと比べ、はっきりと膨らんでいる。それは、テニス部で鍛えている秋吉と森田のケツ筋の盛り上がりを考慮しても、膨らみ過ぎだった。

 それだけではない、白短パンのケツに浮かび上がる白ブリーフのシルエットが、異様にはっきりとして透けてみるのだ!!それはよほど生地の厚い白ブリーフを穿いているか、ブリーフを一枚以上重ね履きしているかのどちらかしかなかった。

 石井先生は、なんともいえない苦りきった顔つきをする。そして、何か意を決したような顔つきの石井先生が、言葉を発しようとしたその時だった。

「秋吉!!森田!!上体を起こして!!回れ右!!」

と、池永先生の命令が飛ぶ。校庭が再びざわめくのだった。

「はい・・・」

「はい・・・」

 そう返事をして校庭の方を向く秋吉と森田。先生と目をあわせられるはずがなかった。両手は白短パンのフロント部分を隠すようにモジモジと動かし、視線は校庭の地面に落としたままだった。

 己の竹刀を受けるため、覚悟を決めて白短パンのケツを突き出す男子生徒を何人も見てきている池永先生。秋吉、森田の白短パンのケツが、「先生!!ご指導お願いします!!」と潔く言っている白短パンのケツでないことは明らかだった。

「あいつら・・・パンツを何枚もはいてやがんな!!」

 秋吉、森田の白短パンにケツにクッキリと浮かび上がるパンツのラインの濃さをみて、池永先生が二人のパンツ重ねばきに気がつかないはずがなかった。

「秋吉!!短パンをおろす!!」

と池永先生の厳しい命令が飛ぶ!!校庭からドッと笑いがおきる。

「やべぇ・・・バレてる・・・」

 そう思いながら、秋吉は、短パンだけでなく、重ねて穿いているB組男子の白ブリーフの腰ゴムにも両手をかけて一気にそれらを下ろそうとする。

 しかし、すぐさま、

「短パンだけぞ!!もうバレてんだ!!ごまかしてもわかるんだぞ!!」

と池永先生の警告が飛び、秋吉は、ちょっとむくれてあきらめたような顔をして、白短パンのみを下ろすのだった。

 秋吉の再度の不正が、白日の下にさらされる・・・秋吉がはく白ブリーフのフロント部に「3B 斎藤」とクッキリと記されたクラス名と苗字をみて、校庭からは再びざわめきが起こるのだった。

 もう真っ赤な顔をして、両手は恥ずかしそうにパンツのフロント穴を隠すようにして、下を向いたまま立つ秋吉君。

「校庭にいるみんなに聞こえるように自己紹介だ!!デカい声で、クラス名と名前を言え!!!」

 池永先生の容赦ない命令が飛ぶ!!

「・・・・・・」 

「オラァ!!早くせんか!!」

「は、ハイ・・・」

 今度は、緊張で、秋吉君の声がハスキーの裏返ってしまう・・・。校庭から再び笑い声・・・。

「3年C組・・・秋吉健介です・・・・」

「聞こえんぞ!!部活でやってるみたいに、両手を後ろに組んで、腹から声出してやってみろ!!」

 その命令に、秋吉君は、もうやけになったのか、両手を後ろに組むと、上体を反るようにして、

「ボクは!!さんねーん!!しーぐみ!!あきよし!!けんすけ!!ですっ!!」

と雄叫びをあげるのだった。雄叫びを上げるたびに、秋吉君は、上体をグイと後ろ反らせ、一方、「3B 斎藤」ブリーフの黄色いフロントは前に突き出されるのだった!!

「よし!!おまえは3B斉藤ではないようだな!!ならば、今おまえがはいているパンツをその場で脱ぎなさい!!」

と池永先生の命令が飛ぶ。

「えっ・・・ここで・・・」

「オラァ!!グズグズ言ってないで早く脱げ!!」

 この期に及んでも、まだ懲りない秋吉君。ふてくされた顔をしながら、池永先生の指示に素直に従うフリだけする。秋吉君は、パンツを二枚、一緒に脱ごうとしていた・・・。

 しかし、池永先生には、お見通しだった。

「一枚だけだぞ!!」

と念を押すと、さらに、

「斎藤!!後ろに隠れているのはかわってるぞ!!パンツ返してやるから、前に出て来い!!」

とマイクロホーンを通して、己が担任するクラスの斉藤君に命令するのだった。

「なんだよ!!バレバレじゃん!!」

と、デカい声で、B組ツッパリ軍団の一人、斉藤君が、体操服上着に白短パンの恰好でニヤニヤ顔で前に出てくるのだった。その態度はまるでヒーロー気取りだった。

「こいつらにパンツ貸したヤツ、他にも逃げんじゃねーぞ!!」

と、池永先生は、後ろで隠れている悪ガキたちに対するさらなる牽制も忘れなかった。

 そして、パンツを一枚だけおろす秋吉君。もう顔はベソかき寸前だった。しかし、パンツ一枚剥かれでてきた、その下のパンツの「3B 細川」の記名に、校庭から再びざわめきが起こる。

 それをみた池永先生は、ニヤリとして、

「もう一丁、自己紹介だ!!」

と命令。

 再び、秋吉君の 

「ボクは!!さんねーん!!しーぐみ!!あきよし!!けんすけ!!ですっ!!」

の雄叫びが、まだまだ夏の熱気が残る9月の校庭に響き渡る・・・。

「よし!!おまえは3B細川でもないようだな!!ならば、そのパンツもおろすんだ!!細川!!おまえのパンツ返してやるから前に出て来い!!」

と命令する。

 細川君も、斎藤君同様に、

「チェッ!!人とからパンツ借りたんだったらよぉ、もっとうまくやってほしいよな!!」

と舌うちすると、ふてぶてしい表情で、前に出てくる。斉藤君同様、体育授業後の着替えはまだ済ませておらず、体操服上着に白短パンの恰好だった。

 そして、やっとできた「3C 秋吉」の正しいパンツ。池永先生は、

「よし!!秋吉!!こいつらから借りたパンツを先生に渡すんだ!!」

「は、はい・・・・」

 秋吉は、短パンとブリーフ二枚を脱ごうする。しかし、緊張しているのか、なかなか脱げず、上体をフラフラさせながら、やっとのこと、短パンと白ブリーフ二枚を脱ぐ。そして、「3C 秋吉」ブリーフ一丁をさらしたまま、前に出てきて、「3B 斉藤」「3B 細川」ブリーフを池永先生に渡すのだった。

 そして、再び、水飲み場の前に戻る秋吉君。そして、自分の手に持ったままだった白短パンをはきなおそうとする。

 しかし、池永先生は、それを許さなかった。

「秋吉!!お前に短パンをはく資格はない!!頭にかぶって、しばらく、そこに立ってろ!!!」

と、秋吉君に命令するのだった。校庭から起きる笑い声。

 秋吉君は、観念したのか、真っ赤な顔で、頬をプゥーとふくらましたまま、その白短パンを頭から被り、「もう不正はありません!!」と言わんばかりに、「3C 秋吉」の白ブリーフを、前に晒したまま、立たされるのであった。

 池永先生の秋吉君への処し方を見て、森田は、

「や、やべぇよ・・・最初からバレバレじゃんか・・・だ、だからオレは、パ、パンツなんて借りたくなかったんだよ・・・」

とブツブツと、隣で短パンのケツを出したままの体勢でいる青木君だけに聞こえるような小声でつぶやきながら、両手は前でモジモジさせながら、ジッと下を向いたままだった。

「次!!森田!!短パンおろす!!」

と森田君にも、池永先生の短パンおろしの号令が下る。真っ赤な顔で下を向いたまま、短パンを一枚だけおろす森田君。

 そして、校庭の生徒たちの前にさらされる、森田君のはく「3B 西原」ブリーフ。

「よし!!秋吉がやったように、おまえも、自己紹介だ!!」

と、池永先生の命令が飛ぶ。

 「3B 西原」ブリーフのフロント部のかなりはっきりした黄色い染みに、校庭にいた女生徒たちからは、

「やっだぁ・・・・不潔・・・・」

のささやきが、男子生徒たちからは、

「アイツ、パンツとりかえてんのかよ・・・・」

のささやきが洩れてくる。

 覚悟をきめたのか、真っ赤な顔の森田君は、ギュッと口を結んだまま、両手を後ろに組むと、「3B 西原」の黄色いしょんべん染みをグッと前にさらけ出すようにして、上体を大きく後ろにグイ反らせると、秋吉君よりもデカい声で、

「ボクは!!さんねーん!!しーぐみ!!もりた!!まなぶ!!ですっ!!」

と雄叫びを上げる。

 そして、池永先生の命令で、剥き下ろされる一枚のパンツ。前に呼び出されるツッパリ西原君。

 しかし、さすがの池永先生も、森田学がはく、次の白ブリーフの記名に、驚きを隠せなかった!!森田に二度目の「自己紹介」を命令するのも忘れ、

「び、B組 き、木村だと!!」

と思わず叫ぶと、マイクロホーンを通して、

「木村!!後ろにいるのか?いたら、前に出て来い!!」

と命令する。

 校庭にいた女子生徒たちからは、「えっ!?学級委員の木村君も?」のささやきがもれ、男子生徒たちからは、「おぉ!!木村もか!!真面目な顔しててアイツもなかなかやるなぁ!!」との賞賛ともとれるささやきが洩れてくる。

 木村君は、さばさばしていた。表情一つ変えずに、

「はい!!」

とデカい声で返事をすると、生徒たちの間を通って、池永先生の前に出てくるのだった。斎藤、細川、西原らと同じ、体育の授業の時のまま、体操着の上着と、ちょっと薄汚れた白短パンをはいている学級委員だった。

 池永先生の前に立つB組学級委員・木村康介に、

「康介!!いま、森田がはいているパンツは、おまえのか?」

と聞くのだった。

 木村は、その問いに、

「はい!!自分のパンツです!!」

と、堂々と答える。

「まさか、コイツらに脅かされてパンツとられたのか?」

とさらに聞いてくる池永先生に、

「チェッ!!悪者はいつもオレたちかよ・・・」

と、斎藤たちがつぶやくように言う。

 しかし、木村は、

「いえ違います!!自分が貸しました!!」

と、また堂々と答えるのだった。

「・・・・・・」

 それには、さすがにしばらく沈黙してしまう池永先生。しかし、「これは確信犯か・・・なにかあるんだろうがな・・・」と思いながらも、これ以上、木村を追求しても無駄とわかったのか、

「よし!!覚悟はできてるな・・・学級委員が先生を裏切るようなことしやがって・・・」

と言う。

「はい!!」

とだけ答える木村君。「先生!!オレ、ケツ竹刀の覚悟はできてます!!」といわんばかりの男らしく潔い返事だった。

 池永先生は、

「よし、わかった・・・森田からパンツを受け取って来い!!」

とだけ、ボソリと言うのだった。

 森田君から、西原君と自分のパンツを受け取り、一枚を西原君に返す木村君。もちろん、秋吉君と同様、「白短パンをはく資格のない」森田君には、白短パン仮面になっての、「3C 森田」ブリーフ全校晒しのお仕置きが待っていた。

 池永先生は、

「まずは、B組のお前らからだ!!別のパンツはいてんのか?」

と、自分の前に並んでいるB組の木村君たちに聞いてくる。

「いえ・・・はいてません!!」

と木村君。

「短パン直ばきは、ダメだって、学年通信で何度も書いてるだろ!!おまえら、読んでねーのか!?ったく・・・すぐに体育館の便所に行って、パンツはいて来い!!」

 池永先生は、B組の木村君たちに、まず、パンツを穿いてくるように命令をするのだった。

・・・・・・・・・・

 担任の池永先生の命令で、体育館の男子便所で、C組の悪友たちに貸していた自分のパンツをはき始めるB組の男子四名。

「やっぱ、オレたちも、竹刀でケツぶん殴られんだろうな・・・」

「ったく、アイツらのために、オレたちまで巻ぞいだなんて、割にあわねぇーよ・・・」

「あぁーあ・・・またケツ竹刀か・・・あれやられっと、しばらくはケツ痛くてチャリ乗れねぇんだよなぁ・・・」

 斎藤、細川、西原ら三人は、短パンを脱いで、ブリーフと短パンを両手で持ちながら、ブツブツと不平を言いあっている。フリチンのままだった。体育上着の裾からかわいく顔をのぞかせる三人のプリッとしたケツ。つい先日、池永先生から竹刀で打たれた痣が、まだうっすらと残っていた・・・。

 一方、B組学級委員の木村君だけは、なにかサバサバとした涼やかな顔で、ブリーフと短パンをさっとはき直すと、

「早くパンツと短パンはけよ!!男だったら、グズグズ言ってねぇーで、覚悟決めて戻ろうぜ!!」

と言って、己の短パンのケツを両手でパンパンと叩くと便所を一番先に出ていくのだった。

「チェッ!!恰好つけやがって・・・」

「アイツ、池永のケツ竹刀食らったことねーから、あんなこと言ってられんだぜ!!」

と言いながら、斉藤たち三人も、頬をプゥッと膨らましながら、ちょっと不満顔で、ブリーフと短パンをはき終え、木村の後に続くのだった。

 先頭切って校庭の池永先生のところへと戻る木村康介君の顔は、不安と言うよりも、覚悟を決めた男のキリリとした顔つきだった。

「よし!!これでまなぶにあの時の借りを返せるぜ・・・だって、あの時、まなぶは、オレのかわりにコーチからケツを叩かれてくれたんだから・・・」

 そう、小学生の時通っていたスイミング教室でスイム帽を忘れた木村君にスイム帽を貸してくれた森田君。でもそれは余分に持っていたスイム帽ではなかった。スイム帽がない森田君は、木村君の代わりにコーチからプールサイドでビート板でケツを十発叩かれてしまったのであった・・・・。

 練習後、ちょっと照れくさそうに、「へへへ・・・オレはなれてるからだいじょーぶ・・・」とおどけてみせた森田君の笑顔を木村君は忘れていなかったのだ。


十五、これで借りは返したぜ!!男覚悟の白ブリ一丁ケツ竹刀 〜B組男子・お仕置きの段1〜 



 「誰が短パンをはいていいと言った!!オレは、パンツをはいて来いとはいったが、短パンもはいて来いなどとは言っとらんぞ!!」

 体育館の便所からブリーフと短パンをはいて戻ってきたB組の斎藤、細川、西原、そして木村を待っていたのは、竹刀を持った池永先生の厳しい言葉だった。

 校庭からざわめきと笑いが起こる。そして、B組の他の男子たちからささやきが聞こえてくる。

「ひぇ〜、アイツら、みんなの前でパンツ一丁だ・・・」

「池永、いかりくるってるぜ・・・」

「うわぁ・・・女子もみてるんだぜ・・・」

 竹刀を持った担任が、男子のことを白ブリ一丁にさせる時、それは先生が激怒している時だ。「女子は廊下に出てろ!!」池永先生がそう命じた時、それはB組男子の白ブリ一丁のケツに、竹刀が飛ぶ時だった・・・。しかし、今回は、女子たちもみている校庭で、白ブリ一丁だった。

 斎藤、細川、西原らは、すぐに

「チェッ・・・」

と舌打ちする。

 そして、さすがの木村君も、頬をピンク色に染め、とまどった表情だ。しかし、すぐに、ギュッと両目を閉じて、覚悟を決めたような表情になり、

「はい!!すいませんでした!!」

と独り返事をして、他の三人の先頭を切って、白短パンの腰ゴムに両手をかけて、短パンを脱ぎ始めるのだった。それを見て、最初はためらっていた斎藤、細川、西原らの三人も、木村の潔さに負けじと、短パンを脱ぎ始める。

 B組男子4人の下半身がスクールブリーフ一丁になるのにそう時間などかかるはずがない。すぐさま、校庭の教師たち、そして、女子を含む生徒たちの目に、斎藤たちの体操服上着の裾の下にチラチラと見え隠れするこんもりとふくらんだ白い逆三角形が、いやが上にも飛び込んでくる。それは、斉藤たちB組男子四人がはくスクールブリーフのちょっと黄色に染まったフロント部であった。

「よし!!青木、もとの位置に戻って、正座してろ!!」

 池永先生は、水飲み場のところでいままでずっとケツをだしていた青木君を脇にどかすと、

「おまえら、四人ならんで、そこに両手をついてケツを出せ!!」

と命令する。

 厳しいパンツ一丁のケツ叩きが確実となり、校庭から再びざわめきが起きる。池永先生の隣で、じっと目をつむったままだった石井先生も、その命令を聞き、黒縁メガネの中の眼をカッと見開くのだった・・・。

 斎藤、細川、西原らの三人は、不満そうに頬をプッとふくらませ、真っ赤な顔で、池永先生の指示に従う。体操着の裾の前の部分を両手ではずかしそうに引っ張るようにしてブリーフのフロント部を隠しながら、水飲み場の方へと向うのだった。

 そんな中、覚悟を決めた男・木村君だけは、

「はい!!お願いします!!」

と元気のよい返事をする。

 顔は真っ赤に染まっていたが、両手で前を隠すこともなく、己のはく白ブリーフのフロント部のモッコリしたふくらみを、チラッチラッと晒しながら、水飲み場の前に立ち、その縁を両手で握るようにしてつかむと、池永先生の指示通り、白ブリーフで覆われたケツを後ろへグイと突き出すのだった。

 学級委員のその様子をみて、池永先生は、ニヤリとし、

「アイツ、粋がりやがって・・・康介、いい覚悟だ・・・おまえのパンツ一丁のかわいいケツにたっぷりと灸をすえてやる・・・フフフ」

と思うのだった。

 水飲み場の前に並んで晒された、B組男子四人の白ブリーフのケツ。池永先生担任クラスの男子たちだけあって、慣れているのか、4人は、両足を適度に開いてふんばるようにし、ちょうどよい間隔で、水飲み場の端から端まで並びケツを出す。彼らの白ブリ一丁のケツは、さながら、真白き雪を戴いた見事な逆さ富士にさえ見えた。

 ケツ竹刀常連の斎藤、細川、西原らに混じって、ケツ竹刀初心者の木村は、どうにか己の白ブリ一丁のケツを後ろに突き出してはみたものの、白ブリのケツの無為防備さにあらためて気がつくのだった。

 しかし、後悔の念が沸き起こるのを振り払うかのように、首をブルブルッと横に振ると、

「これであんときの借りは返したぞ!!森田!!」

と噛みしめるようにつぶやくのだった。

 ケツ竹刀に関しては、木村よりもチト先輩の、斎藤、細川、西原ら三人は、

「あぁ〜、このケツの感覚、なれねぇー」

とつぶやく。9月だというのに、後ろに突き出したケツの妙にスースーした無防備感。池永先生の竹刀の強襲を前に、それは何回経験しても慣れることのできない不安感でもあった。

 自分たちの白ブリ一丁のケツに池永先生が近づいてくる気配を感じる4人。4人ともギュッと両目を閉じ、身構えるのだった。

「いいか、秋吉と森田の不正に加担したおまえらも同罪だ!!パンツ一枚につき一発追加の6発だ!!奥歯をグッと喰いしばってろ!!」

と、白ブリ一丁のケツが並んだその後ろで、竹刀を構える池永先生から、厳しい言葉が飛ぶ。

 その言葉に校庭がざわめき、そのすぐそばで短パンを頭からかぶって正座させられている秋吉と森田は、

「ひぇ〜、もしかして、オレの場合、パンツ2枚だから、ケツ竹刀7発・・・・」

「や、やべぇ・・・マジでころされるかも・・・」

と思い、生唾ゴクリ状態だった。

「斎藤!!行くぞ!!」

 見事な白ブリ逆さ富士をご披露中の斎藤君。しかし、池永先生の気配を感じ、斉藤君は、ケツ筋にキュッと力を込める。それと同時に、その見事な逆さ富士は、白ブリ逆三角形へと変化する。

ブゥ〜〜〜〜ン!!!

 斉藤君は、ケツに竹刀の風圧を感じ、思わず、全身を縮めるようにして身構えるのだった。

パァ〜〜〜ン!!

 斉藤君の期待は裏切られなかった。ガツゥ〜ン!!と脳天へ突き抜ける衝撃。そして、しばらくしてからケツを襲う、焼きつけられるようなジリジリとした痛み。再び、斎藤君の後ろに突き出したケツの上に、見事な逆さ富士が披露される。脳天へと突き抜ける一瞬の衝撃が過ぎ、斎藤君がケツ筋を弛緩させたのだ。

「いっ、いてぇ・・・こんなのあと5発もかよ・・・」

 しかし、そんなことを考えている暇はなかった。

ブゥ〜〜〜〜ン!!!

 再び、聞こえてくる竹刀が空を切る音。そして、白ブリに覆われたケツに感じるあの風圧・・・。斉藤君が再び、ケツ筋に力を込めて、キュッとケツ穴を閉じる。斎藤君のはく白ブリーフの綿生地が、斉藤君のケツの谷間に挟み込まれる。再び、白ブリ逆さ富士が白ブリ逆三角形に変形だ。

パァ〜〜〜ン!!

「うわぁ・・・・い、いてぇ!!!」

 思わず叫んでしまう斉藤君。

「痛くてあたりまえだ!!!しっかりと反省せい!!」

 池永先生の厳しい言葉が飛ぶ。池永先生は、腰を思い切り入れて、竹刀をフルスイングしていた。そして、すでに3発目を繰り出すため、斉藤君のケツを覆う、白い逆三角形に狙いを定めていたのだった。

ブゥ〜〜〜〜ン!!!

パァ〜〜〜ン!!

「うぐぅ・・・・」

 なんともいえないうめき声をあげる斉藤君。ケツがジリジリと焼けつくように痛かった。しかし、そうしている間もなく、あの音と風圧・・・。

ブゥ〜〜〜〜ン!!!

パァ〜〜〜ン!!

 そして、ケツから脳天へと再びガツゥ〜ン!!と突き抜けていく重い衝撃。斎藤君は、鼻がスゥ〜と抜けるような感覚に襲われるのだった。

「・・・・・・・」

 斉藤君は、つかの間の静けさに、気が遠くなるようだった。しかし、休む暇もなく、再び、脳天にガツゥ〜ン!!と衝撃が走る。もう何回目なのかわからなかった。ただ、ケツを後ろにしっかり突き出していることだけで精いっぱいだった。

「あぁ・・・ケツがふくらんだみてぇだ・・・熱い・・・・」

 ケツが熱り、斉藤君は、ケツに何か重くて熱いものがくっついたような感覚だった。斉藤君のケツを覆う、白ブリーフは、常時逆三角形の状態へと遷移する。斉藤君は、ケツ筋にキュッと力をこめまま、両ケツペタはギュッと締めたまま、白ブリ一丁のケツへのキツイお仕置きに耐えていたのだった。

 ラストの一発。池永先生の竹刀の打擲は、手加減なかった。

ブゥ〜〜〜〜ン!!!

パァ〜〜〜ン!!

と、池永先生の竹刀が、斎藤君のケツを遠慮会釈なく強襲する。そんな衝撃にも麻痺してきたのか、斉藤君は、ケツになにか重いものを受けていることを感じるだけになっていた。

 約束の6発を食らい、全身から力が抜けていく斉藤君。大きく息をして全身を揺らしていた。そして、斉藤君のケツの上を覆う白ブリーフの綿生地。そこから赤くはれたケツが透けて見えて、すこし赤みがかった見事な逆さ富士となっている。まるで夕日に照らされて精進湖に写る霊峰富士のように・・・。

「良し!!斎藤!!立って、森田の横で正座!!」

 その命令に、斉藤君は、ゆっくりと上体を起こし、足を引きずるようにして、すでに短パンを頭からかぶって正座している森田君の横へと行くのだった。

 ケツに触れると激痛が走ることはわかっていた。

「いっ、いちぃ・・・・」

 白ブリの綿生地がちょっと擦れるだけで、斎藤君のケツに痛みが走る。斉藤君は、できるだけゆっくりと歩いて、正座する場所へと向かう。そして、コンクリートに両手をついて、できるだけケツに刺激を与えないように、そぉ〜〜と白ブリ一丁で正座しようとする斉藤君。白短パンを穿くことさえも忘れていた・・・。

「いっ、痛い・・・・」

 顔を歪ませながら、やっとのことで己の白ブリのケツを両足裏の上の置くことができる斉藤君。そのつらそうな様子を、校庭に出てきていた教師も生徒たちも、ジッと眺めていた。

 池永先生は、やっとのことで正座した斉藤君に、

「斎藤!!短パン仮面だ!!」

と命令する。

 その命令に、特に、3Bの男子たちがドッと湧きかえる・・・。それは、池永先生が担任クラスの男子たちによく科す、羞恥罰の一つだった。そう、すでに秋吉君と森田君がやっているように、体育用の白短パンを頭から被って、廊下などに正座することだった。

「よぉっ!!正義の味方!!短パン仮面参上!!」

 斉藤君は、すでに覚悟を決めていたように、右手に持った薄汚れて薄茶色の体育用白短パンを、ケツの方を前にして、頭から被り、恥ずかしさで真っ赤になった自分の顔を覆うのであった。斎藤君の白短パンのケツは、右側が特に茶色く汚れていた。

 ケツ竹刀6発を受け、己の不正を直された斎藤君は、正義の味方、短パン仮面となり正座する。短パン仮面となったことで、斉藤君の反省はさらに深まり、正義とはなにかについてじっくりと考えることができるようになる。これぞ、池永先生流の男子生徒向け道徳教育。そのテーマは「正義とは何か」だった。

 ケツ竹刀のあとに、正義の味方「短パン仮面」のお仕置きも待っていると知り、白ブリ一丁のケツを出してお仕置き待ちの細川、西原、木村の三人は、さらに顔を赤らめるのだった。

 特に、木村君は、ちょっと悔しそうにギュッと唇をかみ、

「ちくしょう・・・短パン仮面もかよ・・・」

とつぶやく、しかし、すぐに頭を振ると、

「こ、これで森田への借りが返せるんだ・・・」

と、自分に言い聞かせるようにし、自分のケツを待つ痛いお仕置きと、その後の、恥ずかしいお仕置きに耐えようとする気持ちを整えるのだった。

「よし!!次、細川、行くぞ!!」

 さっきまで、斉藤君が身をかがめてケツを後ろに突き出していた場所あたりに立って、竹刀を構える池永先生。

パァ〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜ン!!

 斉藤君の時と同様に、細川君のケツも、容赦なく打ち据える池永先生。もちろん、西原君のケツも同様に遠慮会釈なく打ち据えられる。そして、斉藤君、細川君、西原君、B組ツッパリ男子三人による正義の味方・短パン仮面の揃い踏みだった。

 斉藤君、細川君、西原君ともにB組きってのやんちゃ坊主。三人の短パン仮面の正座風景は、それほど珍しいものではなかった。しかし、最後に残ったB組学級委員の木村君もとなれば、話は違ってくる。校庭に出ている教師と生徒たちの注目は、B組の男子学級委員の白ブリ一丁のケツへといやが上にも集まるのだった。



十六、道徳教育 1980 〜B組男子・お仕置きの段2〜

 一人だけ最後まで残されるというのも恥ずかしいものだ。木村君は、己のケツに注がれる先生や生徒たちの視線をビンビンに感じて、後頭部が恥ずかしさでカァッと熱くなるのを感じる。しかし、その視線だけでなく、池永先生の竹刀の先がすでに自分のケツに狙いを定めている気配を感じていた。

「木村!!奥歯をグッとくいしばってろ!!行くぞ!!」

「は、はい・・・」と返事をする暇はなかった。池永先生の声が聞こえたかと思うと、すぐに、あの鈍い音が木村君の耳に飛び込んでくる。隣で斉藤、細川、西原らがケツを打たれるのを聞いていた木村君は、条件反射的に、身構えるのだった。

パァ〜〜〜ン!!

 グッと腰を入れて容赦なく木村君の白ブリ一丁のケツを打ち据えた池永先生。

「おぉ〜〜!!」

 B組男子たちからは、賞賛とも感嘆ともとれる声が漏れてくる。優等生の木村君には、池永先生も贔屓して手加減すると予想していたのだった。しかし、その予想は完全に外れていた。

 ガツゥ〜〜ン!!と脳天へと突き抜ける衝撃。その初めての感覚に、木村君のギュッと閉じた眼の奥には火花が散り、瞼の裏にあの時のことが鮮明に映し出される。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ど、どうしよう!!ボ、ボク、スイム帽、わすれちゃったよぉ・・・」

 スイミングスクールの男子更衣室で着替えをしていた小4の木村康介君。自分のバッグの中に、スイム帽が入っていないことを知り、半べそ状態。

 となりですでに着替えを済ませていた森田君が、

「バッグのどこかにあるかもよ・・・きちんとさがせよ・・・」

と声をかけてくる。

「う、うん・・・・」

 もう一度、必死でバッグの中をさがす康介君。しかし、スイム帽はなかった。家の物干し場に干したままで、康介君の母親が入れてあげるのを忘れたらしい・・・。

「やっぱりない・・・ま、まなぶぅ・・・ボ、ボク・・・ど、どうしよう・・・グスン・・・コーチからお尻たたかれちゃうよぉ・・・・グスン」

 もういまにも泣き出しそうな康介君。それを困ったような顔つきで見つめる森田学君だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うわぁ・・・」

 池永先生のフルスイング竹刀を受けたケツに、ジリジリと熱い痛みが容赦なく襲う。それにジッとこらえる木村君。しかし、その痛みは、弱まるどころか、だんだんと強まってくるのだった。思わず「痛てぇ・・・」叫びたくなるのを必死で堪える木村君だった。

ブゥ〜〜ン!!!

「く、くる・・・・」

 再び、耳に飛び込んでくる竹刀が空を切る鈍い音。思わず身をすくめ、両ケツペタにギュッと力を込める。木村君のケツを覆う白ブリの綿生地が、木村君のケツの谷間に挟み込まれる・・・。そう、木村君のケツを覆う、薄く白い生地の形状が、逆さ富士から逆三角形へと変化するのだった。

 ガツゥ〜〜ンとした衝撃をケツのど真ん中に感じ、ケツの奥から脳天へ突き抜けていくような波動を再び感じる木村君。

「あっあぁ・・・」

 竹刀がケツを強襲する直前まで、水飲み場の流しのところにあった小さな石ころをジッと眺めていた木村君。しかし、その衝撃に再び、両目をギュッと閉じる。そして、その瞼の裏に、また、あの時のことが鮮明に映し出される。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「こうすけ・・・泣くな・・・泣くなよぉ・・・女にみられちゃうぞ・・・泣くな・・・」

 まだそういう年頃なのか、小4の森田学君は、康介君が泣きそうなので、自分も泣きそうになってしまう。

「だ、だって・・・グスン・・・ボ、ボク、コーチからお尻たたかれちゃうよぉ・・・グスン・・・・」

 そんな森田君は、意を決したように、

「じゃあ、これ、オレのスイム帽をこうすけがつけるんだ!!」

と言うと、森田君は、すでにかぶっていたスイム帽を脱いで、木村君に、

「はい!!」

と渡すのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブゥ〜〜ン!!!

ガツゥ〜〜ン!!

「あぁ・・・」

 3発目。白ブリ一丁のケツから脳天への容赦のない衝撃。そして、その後、すぐさま襲ってくる、ジリジリと焼き付けるようなケツの痛み。ケツのつらさは、もう頂点に達している。我慢できずに、思わず、右手をケツにあてようとする・・・。

「コラァ!!ケツをさすっていいと誰が言った!!このくらい我慢せい!!」

と、池永先生のお情けなしのキツイ一喝。

「は、はい・・・・」

 木村君は、悔しそうに唇をギュッと結び直すと、両手で水飲み場の流しの縁をギュッと握り直し、両足を開き直して、腰をグッとさげ、今一度、グイと白ブリ一丁のケツを後ろに突出すのだった。

「あ、あと三発・・・これで借りが返せるんだ・・・」

 木村は奥歯をグッと噛みしめ直す。

「康介・・・そろそろ泣きてぇーくらいケツが痛てぇようだな・・・でも、つれぇーのはまだまだこれからだぞ!!パンツ貸したことを、たっぷりと後悔させてやる!!」

 池永先生は、後ろに突き出された木村君の白ブリ一丁のケツに、狙いを定める。そして、フルスイングで、木村君のケツを打ち据えるのだった。

ブゥ〜〜ン!!!

ガツゥ〜〜ン!!

「いっいてぇ!!」

 思わず声を出してしまう木村君。

 後ろでみていた女子の何人かからは、

「木村君・・・かわいそう・・・」

「ちょっと・・・池永先生、やりすぎなんじゃない・・・」

との声も漏れてくる。

 しかし、木村君は、ケツ竹刀の特徴である、ケツにジリジリと残り、焼けつくように強くなっていく痛みをグッと堪えながら、

「ちくしょう・・・まけねぇ・・・」

とつぶやき、再び、白ブリ一丁のケツをグイと後ろに突き出し直すのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「で、でも・・・それじゃ、まなぶがコーチからお尻たかかれちゃうよぉ・・・グスン・・・」

「いいから、オレは、なれているから、だいじょーぶ!!」

 森田学君は、少年忍者・青影の真似をして、鼻に親指をやりグーからパーへひらきながら、「だいじょーぶ」という。それは、当時の少年たちに流行したポーズであった。

 そして、

「練習におくれるぞ!!」

とだけ言うと、走って男子更衣室を出ていくのだった。

 森田学君の後姿をみながら、

「あ、ありがとう・・・」

と言って、そのスイム帽をかぶる木村康介君。そして、急いで海パンに着替えると、コーチが待つ、プールサイドへと急ぐのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブゥ〜〜ン!!!

ガツゥ〜〜ン!!

 池永先生の竹刀・五発目が、B組学級委員、優等生・木村康介の白ブリ一丁のケツを強襲する。

 後半三発のつらさは、前半三発の比ではなかった。あのケツのジリジリとした焼けるような痛みが絶え間なく増強しながら続いているのだ・・・。そんなケツを、また情け容赦なく、竹刀で打たれる。

 木村は、初めて経験するケツ竹刀のつらさに、いまにもギブアップしそうだった。そのたびに、あのプールサイドでの光景を思い出す。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 20代前半の山本コーチが、一人、黒髪を出したままプールに入っている森田君を呼び出す。

「コラァ!!まなぶ!!またスイム帽忘れたのか!!ビート板持って上がって来い!!」

 コーチの命令でプールサイドに上がってくる森田学君。

 山本コーチは、180cm近くある長身。大学の水泳部に所属する学生コーチだった。こんがり日焼けして、引き締まった体。きれいに割れた腹筋。ビキニ海パンの上からヘソのところまで続く濃く黒い毛並のそろったギャランドゥ―、すなわち、へそ毛・・・。赤のビキニ海パンがいやが上にも似合っていた。

「おまえなぁ・・・何回、帽子忘れりゃ、気が済むんだ!!」

「エヘヘ、はぁ〜い・・・ごめんなさぁーい・・・」

「ごめんなさいじゃねーよ・・・お仕置きだ・・・そのビート板、オレによこして、ケツを出せ!!指先をつま先のところまでしっかりつけるんだ!!」

「はい・・・・」

 プールの中で教室仲間が眺めるなか、プールサイドに呼ばれた森田君は、コーチの前で、前屈みとなり、指先をつまさきまでしっかりとつけて、ケツを出すのだった。

「よし!!行くぞ!!十発だ!!!」

パァ〜〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜〜ン!!

 山本コーチは、ビート板の端を両手で持ち、森田君の小さなかわいい赤色の海パンで覆われたケツを、厳しく打ち据え行く。ビート板と森田君の濡れた海パンのケツが接触するたびに、ド派手な音が、プールサイドに響き渡る。

 それをプールの中から見上げている木村君は、森田君のケツにビート板が着地するたびに、キュッとかわいく両目を閉じて、肩をすくめるのだった・・・。そのド派手な音は、当時から優等生だった木村君をビビらせるには、十分なド迫力だったのである。

パァ〜〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜〜ン!!

パァ〜〜〜〜ン!!

 約束通り、十発。ビート板で木村君のケツを叩いた山本コーチは、自分のスイム帽を脱ぐと、森田君に、グイッと乱暴に被せる。そして、

「よし!!プールに戻れ!!もう忘れんじゃねーぞ!!今度忘れたら、十発じゃすまねぇーぞ!!」

と言うのだった。スイム帽を脱いだ山本コーチは、丸刈り頭。なかなか精悍な風貌の青年コーチだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブゥ〜〜ン!!!

ガツゥ〜〜ン!!

 ラストの6発目も容赦なかった。木村君は、「いってぇーーーー!!」と叫びたいのを必死で堪える。

「よし!!康介!!立ってこっちを向け!!」

と、後ろで池永先生の命令が聞こえ、自分がもう上体を起こしていいことに気がつく木村。

 焼けたばかりの餅がくっついて離れないような熱くて重い感覚を、白ブリ一丁のケツに感じる木村。

 そのなにかくっついているような感覚が嫌で、両手をケツの方にやる。指先でブリーフに包まれたケツをちょっと触れるだけで、ズキッと激痛が走り、思わず、「いてぇ!!」と声をあげる木村君。体育上着の下から、彼の白ブリの逆三角形のモッコリがチラチラと見え、ブリーフのフロント部分に太く書かれた「3B 木村」の文字が、体育上着の上からでも、クッキリと読むことができた。しかし、それを恥ずかしいと思う心の余裕は、その時の木村君にはなかった。

 そんな木村君に、池永先生は、

「どうだった?」

と聞いてくる。

「ケツが痛かったです!!」とキッパリ答える木村君。

「ばかもん!!ケツがいてぇのは当たり前だ!!反省したかときいてるんだ!!」

「は、はい・・・は、反省、しました・・・」

「ったく・・・まだ十分に反省してねぇーようだな・・・康介!!今回のおまえにはがっかりさせられたぞ!!今度、担任を裏切らるようなことをしやがったら、6発では済まされんぞ!!」

 その言葉を聞きながら、あのプールサイドでの山本コーチが森田君にいった言葉を思い出す・・・「今度忘れたら、十発じゃすまねぇーぞ!!」。

「あっ・・・あんときのコーチと同じこと言っている・・・」

 そう思う木村君。あの翌週、今度は森田君が、スイム帽を忘れてしまったのだった。でも、ビート板ケツ叩きの回数は十発だった・・・。そして、木村君は、森田君に、スイム帽を貸す勇気がなかったことを深く後悔することになるのだった・・・・。

「コラァ!!木村!!なにボケェーとしてんだ!!わかってんのか!!」

「は、はい・・・」

「よし!!おまえも短パン仮面だ!!西原の隣に正座!!も一度、よく反省せい!!」

「はい!!」

 先生の「短パン仮面」宣告に、校庭で遠巻きに見ているB組男子たちから再び笑いが漏れる。

 一方、木村君は、そんな笑い声を気にしている風もなく、「いっいてぇ・・・」と顔をちょっと歪めながら、こすれて痛い白ブリのケツの部分を、両手でつまみながら、ヨチヨチ歩きで西原君の横へと向かう。

 そして、まだちょっと触れただけでズキリと痛むケツをいたわるかのように、そぉ〜と正座をすると、まるで剣道の面をつけるかのような堂々とした面持ちで、ケツの部分がちょっと茶色く汚れた自分の短パンを頭にかぶり、短パン仮面となる。

 短パン仮面に変身する時の木村君は、恥ずかしい風もなく、昔からの友人に長年の借りを返した男のすがすがしい表情をしていたのである。

「康介・・・初めての割にはよく耐えたな・・・見直したぞ・・・」

と、隣の短パン仮面・西原が、小声で木村に言ってくる。

 木村は、西原の正座した太股の間に挟まったように見える白ブリーフのフロント部の黄色い染みを見つめながら、

「あぁ・・・あんなの余裕だったぜ・・・」

と、中三男子らしく、ちょっと見栄をはってみせるのだった。

 しかし、正義の味方・短パン仮面・木村君に課せられた正座時に考えるべき課題は難しかった。

「昔の恩を返すため、木村君は、森田君に、白ブリーフを貸して不正に加担しました。果たしてそれは正義だったのでしょうか?400字以上800字以内であなたの考えを述べなさい。」

 そうなのだ。「道徳」など正式教科になどしなくても、白ブリ一丁、短パン仮面になって正座して考えさせれば、当時の中三男子にとって、それはもう十分、道徳教育に成り得たのである。

 

十七、ケツ竹刀デビュー 〜C組男子・お仕置きの段〜

 ケツ竹刀を食らった後、正義の味方・短パン仮面、すなわち短パンを頭から被り、下は白ブリーフ一丁で正座させられている3B男子4人のすぐ横に並んで正座させられているC組の森田、秋吉、そして、青木君ら三人は、もうビビりまくっていたことは述べるまでもないだろう。

 池永先生のいつも以上の気合。それは竹刀がB組男子たちの白ブリ一丁のケツに炸裂する音で、短パンをかぶって正座させられている秋吉君や森田君にも十分に伝わっていた。

 そして、普通に短パン一丁で正座し、お仕置き待機状態の青木君も、竹刀で打たれた後の木村君たちのつらそうな表情とうめき声から、あらためて池永先生のケツ叩きのお仕置きの厳しさを実感し、今回の不正に加担してしまったこと、担任の石井先生を裏切ってしまったことへの後悔の念を深めるのであった。

「い、いよいよ、オ、オレたちの番だ・・・」

 秋吉と森田がそう思う間もなく、池永先生の厳しい声が飛ぶ。

「秋吉!!森田!!短パンとって、水飲み場のところへ行ってケツを出せ!!おまえら二人はパンツ一丁のケツに7発だ!!わかってるな!!青木!!お前は、約束通り、短パンのケツに5発だ!!立って、水飲み場のところへ行きケツを出せ!!」

「は、はい・・・」

「は、はい・・・」

「は、はい・・・」

 再び、校庭がざわめく。

 そして、C組の女子たちからは、

「なんで池永先生なの?」

「石井先生は、なにやってんのよ・・・」

との声が洩れてくる。

 また、他の教師たちからは、

「担任教師が甘すぎるのも困りものですな・・・。」

「そうそう、やはりここぞという時は、池永先生に締めてもらわないとダメなんですよ・・・。」

「あの白うるりじゃねぇ・・・、女子生徒一人、まともに叱れんでしょう・・・」

との声が洩れくる。

 「白うるり」とは、教師たちの間でつけられていた石井先生のあだ名である。

 これは、徒然草 第六十段 真乗院の盛親僧都のお話において、

この僧都、或法師を見て、しろうるりといふ名をつけたりけり。「とは何物ぞ」と人の問ひければ、「さる者を我も知らず。若しあらましかば、この僧の顔に似てん」とぞ言ひける。

との行の中の「しろうるり」からきており、もちろん、市立三中において、国語教師の間から広まった石井先生への侮蔑の気持ちを含んだあだ名であった。

ブゥ〜〜ン!!

ブゥ〜〜ン!!

ブゥ〜〜ン!!

 自分が担任するクラスの男子四人のケツを竹刀でそれぞれ6発ずつ思い切りぶん殴った直後であっても、池永先生は息を切らすこともなく、まだまだ元気いっぱい余裕の様子で、吉田先生から受け取ったもう一本の竹刀で素振りを始める。

 そして、「よし行くぞ!!」と元気いっぱい気合たっぷりに言うと、森田君のブリーフ一丁のケツに狙いを定めるのであった。

「あぁ・・・く、来る・・・。」

 森田君が池永先生からケツ竹刀を受けるのは、中一の時、一時間目の体育の授業に寝坊して遅刻した時の「めざましケツ竹刀」以来だった。ギュッと両目を閉じ、奥歯をグッと喰いしばり、あの時のケツへの衝撃と痛みを思い出す森田君。

「あんときは一発だけだったよな・・・な、七発だなんて・・・冗談じゃねぇ・・・あぁ、パンツなんて借りるんじゃなかった・・・」

 いまさらながらに後悔する森田君。しかし、後悔先に立たず・・・であった。

「よし!!行くぞ!!森田!!覚悟はいいか!!」

 そう言って、池永先生が竹刀を後ろに構えて、森田君の白ブリ一丁のケツに狙いを定めたその時だった!!

「ちょっと待ってください!!この三人の尻は、私が打ちます!!」

と、石井先生の声が校庭に響き渡るのだった。

「えっ!!」

 校庭にいた誰もが、思わず顔を上げ、石井先生の方を見つめる。もちろん、竹刀を構えていた池永先生も、ケツを出していた秋吉、森田、青木の三人もだった。

 一瞬、静まり返る校庭。しかし、すぐに、

「何言ってんだ・・・石井先生じゃ無理だろう・・・。」

「白うるりじゃねぇ・・・・。」

との先生たちのささやきが聞こえてくる。

「せ、先生!!コイツらの懲罰は、私に任せておいてください!!先生のような素人が竹刀を振り回したら、逆に、危険です!!コイツらに大けがさせかねませんよ!!」

と池永先生も石井先生に言う。

 しかし、石井先生は、池永先生の言葉を無視するかのように、盛夏であっても、まるでトレードマークのように着ていた白の長袖シャツを脱ぎ始めるのだった。そして、吉田先生に、その脱いだシャツを無造作に渡すのだった・・・。

「・・・・・」

 石井先生のその行動に何も言い返せない吉田先生。石井先生の突飛な、しかし自信に満ちた行動に驚かされていた。しかし、それだけではなかった。吉田先生は、長袖シャツを脱いだ石井先生の白のランニングシャツの下にみえる鍛えられた上半身に目を奪われるのだった。

 それは、長髪で色白で黒縁メガネの石井先生からは想像することもできない筋骨隆々とした27歳の青年のトルソーであった。もちろん、色白ではあるが、いつも長袖シャツで隠されていたその腕も、野太くゴツイ労働者のような腕だった。

「こ、コイツ・・・どこでこんなに鍛えてたんだ・・・」

 体育教師・池永もそうつぶやかざるを得ないほどの見事な上半身。ズボンを脱ぎパンツ一丁にならなくとも、下半身の鍛え具合は容易に想像できる体躯だったのである。

 上半身は白のランシャツ一丁、下は黒スラックスの石井先生は、まさに黒縁メガネのマッチョ兄貴だったのだ!!

 校庭にいたC組女子たちの目の色が変わる。

「あんなかっこいい石井先生、みたことない・・・」

「も、もしかして、私、ギュと抱かれてみたいかも・・・ウッソォー・・・まさかあの石井先生にねぇ・・・」

と、女子たちは口々につぶやくのであった。

「さあ、その竹刀を貸してください!!」

 そう言うと、石井先生は、池永先生から奪い取るようにして、竹刀の柄を握り、さらに、池永先生に対抗するかのように、

ブゥ〜〜〜ン!!

ブゥ〜〜〜ン!!

と、竹刀を横に素振りし始めるのだった。

 池永先生は、「もう勝手にしろ・・・恥をかくのはあんたなんだから・・・」と言いたげな顔つき。

 そして、吉田先生の方を向き、

「先生!!石井先生に何か言ってやってくださいよ!!」

と催促するような視線を投げかけるのだった。

 しかし、吉田先生は、石井先生の想像以上に力強い、その竹刀の横素振りをみて、無言のまま首を横に振り、

「まあ、石井先生にまかせておきましょう・・・」

と言った表情をするだけだった。

 石井先生は、素振りを終えて、水飲み場の前でケツを出している3C男子三人のところへ近づくと、

「秋吉!!森田!!短パンをはきなさい!!」

と命令するのだった。

 その命令に、池永先生が、

「せっ、先生!!」

と異を唱えようとする。

 しかし、石井先生は、すぐさま、

「池永先生!!短パンまで脱がせるのはやりすぎです!!」

と言い放つ。その語気は、池永先生、そして、吉田先生をも黙らせるほどの迫力に満ちていた。

「おぉ〜〜!!」

 校庭の男子たちから、「やっぱ、男だってパンツ一丁はやりすぎだよな・・・恥ずかしいし・・・」とでも言っているような反応がでる。

 石井先生のその言葉に、不満そうな顔をするも、黙り込んでしまう池永先生だった。

「秋吉!!森田!!青木!!君たちは、不正をはたらき、先生たちをだまそうとした!!だから、これから罰を受けなければならない!!わかっているな!!」

「は、はい・・・」

「は、はい・・・」

「は、はい・・・」

 秋吉も森田も青木も、こんな厳しい石井先生の言葉を聞いたことはなかった。

 青木君は、「そんなときはね・・・石井先生、ものすごく怒っているの・・・本当よ・・・」と自分に言った3D小山修一の言葉をあらためて思い出す。

「せ、先生・・・ごめんなさい・・・。」

 青木君は、音楽部顧問として中一の時から「打楽器」の指導でお世話になった大好きな石井先生、その物静かでやさしい石井先生を本気で怒らせてしまったことを、恥ずかしく思い、軽率だった自分の行動を悔いるのだった。そして、石井先生から早く竹刀でお尻を叩いてもらい、自分の罪を償いたいと心から思う。青木君は、後ろに突き出している尻にグッと力を入れるようにしてふんばり直すのだった。

 一方、秋吉、森田の二人は、池永先生の「鬼の」ケツ竹刀からあわやのところで逃れられ、「短パンもはけて、ラッキー(^_^)v」状態。短パン一丁のケツを余裕の表情で後ろに突き出すだ。しかし、その余裕は、すぐさま打ち砕かれる運命だった。

「よし!!いくぞ!!しっかり奥歯を喰いしばるんだ!!」

 そう言うと、上半身、白のランニングシャツ一丁の、「白うるり」あらため、黒縁メガネ・マッチョ兄貴の石井良太先生は、竹刀の柄を両手でしっかりと握り、それを後ろに構える。そして、森田学の短パン一丁の尻に狙いを定め、それをグイと腰を入れて、振り下ろす。

ブゥ〜〜〜ン!!パァ〜〜〜〜ン!!

「ぎゃぁ!!いっ、いてぇ〜〜〜!!!」

 石井先生の竹刀がケツに炸裂するが早いか、森田は叫び、思わず両手で尻を押え、膝を折るようにして崩れ、水飲み場の前で座り込んでしまう。

「大人をだました罰なんだからこのくらい当然だ!!今の尻の痛みを忘れるな!!」

と、石井先生は、厳しい言葉を森田君になげかける。

 森田君の絶叫を聞き、石井先生の振り下ろした竹刀が、森田君の尻以外の場所は打ってしまったのか・・・今度は、池永先生と吉田先生が、思わず、近づいてくる。しかし、石井先生の竹刀は、森田君の尻のど真ん中にジャストミートしていた。

 石井先生は、自信の表情で、すでに秋吉君の尻に狙いを定めている。

 そして、秋吉君の尻にも、石井先生の竹刀が振り下ろされる!!

ブゥ〜〜〜ン!!パァ〜〜〜〜ン!!

「いてぇ〜〜〜!!!」

 秋吉君も森田君と同様、両手で尻を押え、崩れるようにして座り込む。

 そして、最後は、青木君だった。

「義之・・・君は三年生であり、学級委員なんだぞ!!みんなの前で、先生の前で、いまこうして、短パン一枚の尻を出さなければならないことを恥ずかしいと思いなさい!!手加減はしないぞ!!今日の尻の痛みをしっかりとかみしてめて、自分のしでかしたことをよく反省するんだ!!いいな!!」

「は、はい・・・」

 石井先生が再び、自分のことを「義之」と呼んでくれて少しだけホッとする青木君。そして、ギュッと両目を閉じ、短パンと白ブリーフに包まれた己の尻を再びしっかりと後ろに突出し直し、大好きな先生からの「愛のムチ」が自分の尻に飛んでくるのを待つのだった。

ブゥ〜〜〜ン!!

 あの音が青木君の耳に飛び込んでくる。前の二人を打った竹刀が空を切る音だ。短パンから出た太股の後ろに風圧さえ感じる青木君。その竹刀の先が着地するのは、自分の尻の双丘のてっぺんだということを、青木君はいやが上にも自覚するのだった。

パァ〜〜〜〜ン!!

「あぁあっ・・・いたいっ・・・」

 石井先生の竹刀が青木君のケツのど真ん中に着地する。それは、エクストラ・ハード・ランディングだった・・・。脳天へ突き抜ける衝撃に、思わず声を上げ、やはり両手で尻をおさえるようにして、その場にしゃがみこんでしまう青木君。そして、すぐさまやってくる、尻の焼けるような痛みの不快感に、思わず、両目をギュッと閉じるのだった。

 石井先生のケツ竹刀の懲罰は、太く短いものだった。

「さあ、立ちなさい!!これから吉田先生に反省の丸刈りにしてもらうんだ!!その後は、上着をきて、先生がいいというまで、3Cの教室の前で、正座して自分のしでかしたことをじっくりと考えていなさい!!」

と、自分の前で、尻を痛そうにおさえてしゃがみこむ男子生徒三人に命令をする石井先生。

 その命令に、「竹刀一発じゃ困ります!!」と不満げな顔をする池永先生。しかし、吉田先生は、池永先生の肩に手をかけて、首を横に振る。先輩教師のその表情に、池永先生もあきらめたような表情をするのだった。

 3C担任・音楽教諭・石井良太先生の鮮烈なるケツ竹刀デビューであった。

・・・・・・・・・・

 蛇足ではあるが、石井先生は、桐山音大三年生の時、ピアノコンクール第二位に終わり、そのあまりのショックで、ピアノ科から打楽器科へと転科を決めてしまう。

 音大三年での転科である。石井先生を受け入れることを承諾した講師は、打楽器科(和太鼓専攻)の特任教授、祭田六尺(まつりだ ろくしゃく 本名読み:さいだ むつのり)師だけだった。

 当時、祭田は、「魂の和太鼓奏者」とマスコミに持ち上げられていた有名人だったが、

「和太鼓を専攻する男子学生は、練習にあたり、睾丸を粗塩で十分に揉み清めた後、全員、白の六尺褌を締め込んで臨むこと!!」

いうルールを敷いたため、和太鼓を専攻する学生など一人もいなかったのだ。

 当時の石井先生は、そんな祭田六尺特任教授の下で、一から指導を受け、和太鼓奏者としての素養を身につけて行く。そして、一年留年はしたが、師・祭田六尺が作・編曲した卒業課題楽曲

「和太鼓とピアノのための華麗なるアダージョ」

を卒業演奏会で見事披露し、無事、五年間の音大生活を終えたのであった。

 もちろん、その卒業演奏会では、六尺褌の白の晒し木綿をその谷間にグイ喰いこませた、キリリと締まってプリッとはじける見事な青年の和尻の双丘を観客たちに披露し、特に女子学生たちをブイブイうならせたことはもう述べるまでもない。

 卒業までに和太鼓を打つための基礎体力も十分に養い、今のような、マッチョなトルソーの青年に成長していた石井先生だったのである。

 なので、男子生徒の尻を竹刀で打つなど、その気になれば朝飯前であることなど、当たり前田のクラッカー。その日のケツ竹刀デビュー曲は、さしずめ、石井良太・作編曲

「小エチュード(*) 竹刀と三人のウソつき坊やの尻の双丘」

といったところであったのかもしれない。

太朗注:(*)エチュード 練習曲のこと。

 

十八、懲りない奴ら パート2

 反省の丸刈りの後、石井先生の命令で、3Cの教室の前に正座させられている秋吉、森田、青木君の三人。三人とも、頭はスースー、両脚はジンジン、そして、おケツには、なにか温かいものがくっついたようでムズ痒かった。

 3C学級委員の青木君は、廊下を通る生徒たちの視線を感じる度に、反省の五厘刈り頭をこうして晒さなければならない恥ずかしさにジッと目を閉じて耐えながら、不正に加担したことへの反省を深めるのであった。

 一方、秋吉君と森田君は、

「チェッ・・・丸坊主なんて、テニス部の後輩の手前、カッコわりぃよなぁ・・・」

「オレ、結構、モテてたんだけどなぁ・・・坊主頭じゃ、女の子に嫌われちゃうよなぁ・・・」

と、まだまだ反省が足りないようだった。

「どうだ?三人とも十分に反省したか?」

 その聞き慣れた声に、思わず目を開ける三人。三人の前に立っていたのは、いつものやさしい石井先生だった。

 いつものやさしい声に戻った石井先生に思わずホッとする青木君。

 そして、秋吉君と森田君は、いつもの調子で、

「は、反省しました・・・だから、もういいですか?」

「せ、先生・・・ボクたち、もう部活に行かないと・・・。」

「そ、そうなんです。早くいかないと、宮本先生におこられちゃうよなぁ・・・」

と、石井先生のやさしさにつけこもうとするのだった。

 石井先生は、「仕方ないなぁ・・・」とでもいいたげな顔つきをして、ちょっと溜息をつくと、

「もういいぞ。だったら、はやく部活に行きなさい。」

と言って、二人の正座を解くのだった。

「ありがとうございます!!」

と言い、ちょっとよろめきながらも立って、逃げるようにその場を立ち去る秋吉君と森田君。

 一方、正座したままの青木君。

「さあ、義之も立っていいんだぞ。」

「せ、先生・・・ボ、ボク・・・。」

「もう何も言わなくいい・・・その顔とその頭に十分に反省しましたって書いてある・・・」

 そして、少しニヤリとして、

「それに、尻にもそう描いてあるだろう・・・・さあ立ちなさい。」

と言うのだった。

 青木君は、頬を赤く染め、恥ずかしそうな顔で、

「は、はい・・・」

と、うつむきがちに答えるのだった。しかし、青木君は、まだ石井先生の顔をまっすぐに見ることができないでいた。

 石井先生は、まだ正座したままの青木君の前でしゃがむと、右手でそんな青木君の青々とした坊主頭をちょっと強く押さえつけるようにしながら、青木君の目をまっすぐにジッと見て、

「もう二度とあんなことをしてはいけない・・・わかったね・・・」

と言うのだった。

 石井先生のその真剣な口調と眼差しに、青木君は、もう顔をそむけることができなかった。

「は、はい・・・」

 ちょっと自信なさげに答える青木君。

 石井先生は、そんな青木君に、

「さあ、だったら、今日は音楽部の練習は休みなんだから、早く、帰りなさい・・・」

と、再びやさしい口調で言うのだった。

「は、はい・・・失礼します・・・」

と、元気なく答える青木君。そして、立ち上がると、しびれた脚を引きずるようにして教室へと入っていく。立ち上がった石井先生は、そんな青木君の後姿を見て、心配そうな顔をする。

「義之、独りで大丈夫か?先生が一緒に・・・」

「だ、大丈夫です!」

 心配する石井先生の声かけに、さっきとは別人のように、きっぱりと応える青木君。今回の整髪証明書不正の件は、吉田先生から電話で、青木の両親にもすでに報告されていた。家に帰ったら、何が待ち受けているのか。青木君はすでに覚悟を決めていたのである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「せ、先生・・・今日の部活休んでいいですか?」

「石井先生から叩かれたケツが、まだズキズキ痛むんです・・・」

 テニスコートの脇におかれた椅子に座ったテニス部顧問兼監督の宮本先生の前に立って、秋吉君と森田君は、両手でケツを大げさにさすりながら、部活を休む言い訳を盛んに申し立てるのであった。

 そんな二人に、宮本先生は、ニヤリと笑って、

「そうか・・・そんなにケツが痛むか・・・石井先生も随分思い切り、おまえらのケツを叩いていたからなぁ・・・」

と言う。

 そんな宮本先生の言葉に、秋吉君が図に乗って、

「そうなんですよ・・・ったく、石井先生、竹刀使うの慣れてないからなぁ・・・叩き方下手なんですよ・・・」

と言う。

「よし!!そんなに痛むのなら、オレがおまえらのケツを診てやる!!まずは秋吉からだ!!こっちへ来い!!」

 宮本先生は、そう言いながら、なんと、椅子に座った自分の膝を指さすのだった。

「えっ・・・いいです・・・そ、そんなに痛くない・・・い、いえ・・・痛いんですけど・・・だいぶ痛くなくなってきたかも・・・」

 ケツを見せてみろと言われて逃げ腰になってしまう、そんな秋吉君の右腕をグッとつかむと、宮本先生は、秋吉君を自分の方へグイと引き寄せ、体勢が崩れた秋吉君の坊主頭をグッと抑えて、己の膝上へと秋吉君を乗せてしまうのだった!!

「よぉし・・・部活を休む必要があるケツか、先生が、おまえのケツをたっぷりと観察してやるからな!!」

 そういうと、宮本先生は、己の膝の上に乗っている、OTK状態の秋吉君の、短パンと白ブリの腰ゴムをムンズとつかむと、それを一気に、膝あたりまで、ドバっと引きずり脱がすのであった。

 宮本先生の膝上で、プリッ!!とはじける秋吉君のテニス部ケツ。それは小ぶりながらも、しっかり鍛えて盛り上がったケツであった。そして、その双丘の「尾根」にそってまるで「縦走」するかのように、一本の紫色の線がクッキリと走っている。それは石井先生の「愛のムチ」の痕だった。

 宮本先生は、興味があったのだ。あの大人しい石井先生が繰り出すケツ竹刀の威力がどの程度のものなのか。

「おお、こ、これは正確かつ鋭いな・・・竹刀の痕にまったくブレがない・・・福本のケツにあった池永先生の竹刀痕に負けず劣らずクッキリとしている・・・。」

 自分の膝上の秋吉君の生ケツにクッキリとついた一本線の痣を観察しながら、そんなことを思う宮本先生だった。そして、指先で、その痣をちょっと押してみるのだった。

「いっ、痛い!!!」

 思わず苦痛の声を出す秋吉君。

 いつのまにか周りを取り囲んでいたテニス部員たちから笑い声が漏れる。その中には、秋吉君にとっては後輩の女子部員もいた。

 秋吉君は、自分のケツが、テニス部員たちの晒し物になっていることに気がつき、恥ずかしさで、顔が真っ赤になるのだった・・・。そして、宮本先生の膝上からもう一刻でも早く起き上がり、パンツと短パンを穿きたくて、宮本先生の膝上で、ケツをモジモジと動かすのであった。

 しかし、宮本先生は、己の膝上で反省の色なくモジモジと動く秋吉君のケツを見て、怒りが沸々とこみあげてくる。

「ったく、こいつは、ここまで石井先生を怒らせて、全く反省していないようだな・・・あのおとなしい石井先生の竹刀一発の重みが全くわかっとらん!!」

バッチィ〜〜〜〜〜ン!!

 そんなことを思いながら、宮本先生は、秋吉君のケツに、平手一発を思い切り入れるのだった。

「いっ、いてぇ〜〜〜!!!」

 そう叫びながら、秋吉君は、もうたまらんと、宮本先生の膝から起き上がり、あわててパンツと短パンを上げるのだった。そんな秋吉君の姿に、テニス部員たちからは、一斉に、嘲笑があびせかけられる。

「バカもん!!痛くてあたりまえだ!!なぜ今日、ケツの痛い思いをしなければならなかったのか、もっと反省せんか!!」

「は、はい・・・」

「森田!!おまえも、秋吉みたいに、先生にケツを診てもらいたいか!!」

 森田君は、あわてて、宮本先生からちょっと遠ざかると、ケツを両手でおさえながら、

「い、いえ・・・遠慮しときます・・・」

と言うのだった。

「よし!!だったら、二人とも、今日、部活を休むことは許さん!!おまえら二人は、日が暮れるまで、ケツにジンジン響く、地獄のサーキットトレーニングだ!!その後、後片付けは、おまえら二人が、一年生に代わってやること!!」

 その言葉に、テニス部員たちから、拍手と歓声が起こる。

 秋吉君と森田君は、あきらめたようにガックリと肩を落とし、

「は、はい・・・」

「は、はい・・・」

と元気なく返事をするだけだった。

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